クードクラース

イトウアユム

第6話「ショック死」(脚本)

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〇黒背景
  高校でましろを襲ったスケープゴートは
  人気動画配信者レイナだった。
  天罰と称しカードの力を使って悪人を
  血祭りに上げる、自称絶対正義の独裁者。
  そして彼女はましろのカードの
  能力を知っていた。
綾瀬静「これは・・・共同戦線を張るべきかもな」

〇総合病院
黛ましろ(大きな病院だな・・・ これが静のお勤めしてる病院かぁ)
黛ましろ(病院に来ても良いって、 やっと静に言ってもらえたんだよね・・・)
黛ましろ(ふふ、一緒に帰るの楽しみ)

〇病院の廊下
黛ましろ(静のお仕事が終わるまで・・・まだ時間があるから少し見て回ろう。こっちは病棟?)
  ましろは迷路のような病棟の中を
  行く当てもなく進んでいく。

〇中庭
黛ましろ(・・・ここは中庭? 公園っぽいなぁ、 緑がたくさんあって・・・ん?)
  男の子が胸元を抑えてうずくまっている。
黛ましろ「・・・君、大丈夫?」
  可愛らしい顔は苦悶の表情を浮かべていたが、一瞬で笑顔に代わり、ゆっくりと首を振る。
亜里寿「・・・大丈夫、いつもの発作だから・・・ こうしていれば・・・楽になるから」
黛ましろ「でも苦しそうだよ? 誰か呼んでこようか?」
亜里寿「ダメッ!」
亜里寿「あ・・・ご、ごめんなさい、 大きな声を出しちゃって・・・」
黛ましろ「ううん、私の方こそ驚かせちゃったね」
亜里寿「そんなことないよ・・・ お姉ちゃんは心配してくれたのに・・・」
亜里寿「ごめんなさい」
亜里寿「でも先生を呼ばれたら・・・ おうちに帰れなくなっちゃうから・・・」
黛ましろ「そっか。じゃあ・・・ 君が落ち着くまで一緒にいてもいい?」
亜里寿「えっ! で、でも、 それじゃお姉ちゃんに悪いよ・・・」
黛ましろ「気にしないで。私は時間があるし、 それに1人じゃ心細いでしょ」
亜里寿「・・・うん・・・ありがとう、お姉ちゃん」
  他者に興味を持たないましろであったが、
  少年の事はなぜか放っておけなかった。
  苦しい時こそ、寂しさがつのり、
  悲しみもつのる。
  隣に誰かいてくれさえすれば、
  和らぐのに。
  ――そんな痛みを思い返したからだった。

〇中庭
亜里寿「・・・ふぅ、 もう苦しくなくなってきた・・・」
黛ましろ「良かった。えっと・・・」
亜里寿「亜里寿だよ。お姉ちゃんのおなまえは?」
黛ましろ「アリスくんって言うんだ。私は黛ましろ」
亜里寿「くんはいらないよ。 亜里寿って呼んで欲しいな──」
亜里寿「ましろお姉ちゃんも入院するの?」
黛ましろ「ううん、今日はこの病院で働いている人を迎えに来ただけ。一緒に帰るんだ」
亜里寿「そうなんだ・・・ ボクも早くおうちに帰りたいな・・・」
亜里寿「お薬も手術も頑張ってるのに・・・ ボクの病気、なかなか治らなくて・・・」
亜里寿「きっとボクの努力が足りないんだよね ・・・だから辛くても我慢して ・・・もっともっと頑張らないと」
黛ましろ「辛いなら、 もう頑張らなくても良いんじゃないのかな」
亜里寿「でも、お姉ちゃんやお兄ちゃんはボクの ために、頑張ってくれてるのに・・・」
  自分に言い聞かせるように返す亜里寿に
  ましろは小さく笑って頭を撫でた。
黛ましろ「誰が頑張ったからなんて関係ないし、 それで亜里寿が我慢する事はないよ」
  ましろは思う。
  自分も母親に愛されるように努力した。
  感情を押し殺し母に尽くして頑張った。
  それでも・・・結局最後まで
  母親が愛してくれることはなかった。
  絶望を通り越した虚無の中で初めて
  自分のために自分の意志で選んだ行動。
  『自殺』しようとした時に――
  ましろは静に出会えた。
  ――自分を理解し、依存させてくれる
  命よりも大切な人と思える人に。
  世の中にはどれだけ頑張っても
  報われない事がある。
  だからこそ、
  時には見切りをつける事も大事なのだ。
黛ましろ「だから・・・ その体も心も亜里寿のものなんだから、 亜里寿の好きなようにして良いんだよ」
亜里寿「ましろお姉ちゃん・・・ うっ・・・う・・・ぐす・・・」
亜里寿「うわぁあ・・・!」
  そんなましろの言葉に堪えきれない想いがあったのだろう。
  亜里寿は泣きじゃくりながらましろに抱きつき、ましろはただ黙って抱きしめ返した。

〇中庭
亜里寿「・・・ボク、また、 ましろお姉ちゃんに会いたいな・・・」
  ましろの腕の中で存分に泣き、落ち着いた亜里寿は泣きはらした目でましろを見上げる。
亜里寿「ごめんね、わがままで・・・」
亜里寿「でもっ! 我慢しなくて良いって言ったの・・・ お姉ちゃんだもん・・・」
黛ましろ「うーん・・・ たまにになっちゃうけど、良い?」
黛ましろ(あまり頻繁に迎えに来るなって、 静に言われたし・・・)
亜里寿「うんっ!」
  満面の笑みで亜里寿が頷いたその時。
綾瀬静「――こんなところにいたのか、亜里寿君。 看護師さんたちが探してたぞ・・・」
綾瀬静「って、ましろ?」
黛ましろ「静!」
亜里寿「――ましろお姉ちゃん、 綾瀬先生のこと、知ってるの?」
黛ましろ「うん、静は私の・・・」
綾瀬静「俺の姪っ子なんだ」
黛ましろ「・・・姪っ子」
綾瀬静「そう、ましろは俺のかわいい可愛い 姪っ子だろ?」
黛ましろ「・・・むむ」
  頬を膨らませてどこか不満げなましろ。
  でもそれは気を許した相手に見せるような、親密さも感じられる。
綾瀬静「亜里寿君の担当の先生方が探してたから 呼んでくるよ」
亜里寿「・・・・・・」
  亜里寿は静の後ろ姿を
  冷めた眼差しで見送る。

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