クードクラース

イトウアユム

第4話「快楽殺人」(脚本)

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〇黒背景
  遅れてやってきた牧羊犬のセルベール。
  死闘の翌日、
  静と一緒に囲む温かい朝の食卓。
綾瀬静「――生き返らせたい大切な人がいる。 その人のためにタリスマンを使いたい」
黛ましろ(静には・・・大切な人がいるんだ・・・)
  静のゲームに参加した理由に
  ましろの胸は締め付けられるのだった。

〇綺麗なダイニング
黛ましろ「・・・確認するんだよね。 『海崎蓮』が登校してないか」
綾瀬静「ああ。でも迂闊に近づくなよ?」
綾瀬静「海崎蓮はストレイシープだ。 まずは彼の今の状況だけ確認して欲しい」
黛ましろ「うん、わかった」
綾瀬静「相手は学校一の秀才らしいし、高校という場所でやり合うほど馬鹿ではないだろう」
綾瀬静「だが、万が一襲われるようだったら・・・」
黛ましろ「殺すんだね」
綾瀬静「阿呆、逃げるんだっての」
綾瀬静「相手のことを把握しないまま、 しかも俺が不在で戦ってどうするんだ」
黛ましろ「だけど・・・静がいなくても カードは召喚出来るし・・・」
綾瀬静「とにかく逃げる。わかったな」
黛ましろ「はあい」
黛ましろ「そういえば・・・私が学校に行ってる間、静はどうしてるの?」
綾瀬静「そりゃ、俺も仕事に行くに決まってるだろ」
黛ましろ「そっか。お医者さん、だよね?」
綾瀬静「ああ、せっかく生き返ったんだから―― 生前と同じ人並みな生活を送らないとな」

〇学校の廊下
  ましろは小さくため息をつくと
  窓に持たれかかった。
  海崎蓮は登校していなかった。
  それどころか、
  最近ずっと休んでいるらしい。
  これは、ゲームの参加者たちの情報を
  確認できる特別なアプリだ。
黛ましろ(・・・羊のアイコンはストレイシープで、山羊のアイコンがスケープゴート)
  参加者が近くにいる場合、アプリ上の地図にアイコンが表示されるため、居場所を知ることができる。
  さらに、ストレイシープについては
  氏名とその生死まで分かる。
  生きているストレイシープは、
  静を含めて8人だった。
  一方、スケイプゴートは
  そのどちらも知ることができない。
  分かるのはカード名のみだ。
  近辺の地図に、ストレイシープの海崎蓮の
  羊は、どこにも見つからない。
  つまりは何処か遠い場所にいる
  という事だ。
  アヤセシズカと書かれた羊をタッチすると
  所有しているタロットカードの名前が表示された。
黛ましろ(静のカードは、 前から持っている死神のカードと)
黛ましろ(このあいだの戦いで手に入れた 戦車と節制のカード・・・)
黛ましろ(それと私の吊るされた男のカードを 合わせて、4枚かぁ)
黛ましろ(全部で22枚。 早くあと18枚、集めないと・・・)
  ひしめき合う動物たちの画面の中で
  1匹の羊がましろの目をひいた。
  真っ白な羊の体には『NO NAME』と
  記載されている。

〇綺麗なダイニング
黛ましろ「・・・この白い羊は、 どうして一匹だけ名前が無いの?」
綾瀬静「ああ、ノーネームか。 それは悪魔からの祝福《ギフト》だからな」
黛ましろ「ノーネーム? 名前が無いってこと?」
綾瀬静「名前というのは、その人物の生い立ちや背景がわかる個人情報の塊みたいなモンで、揺さぶり合い、殺し合うゲームでは重要だ」
綾瀬静「だから1人だけ選ばれたストレイシープは 悪魔からの祝福《ギフト》として、名前を 隠すことが出来る」
綾瀬静「選ばれる条件は1つ」
綾瀬静「――ストレイシープの中で生前、 人を殺した人数が1番多い事だ」

〇学校の廊下
黛ましろ「ノーネーム・・・一体何者なんだろう」

〇綺麗なダイニング
綾瀬静「――そうか。 今日も海崎蓮は登校してなかったか」
黛ましろ「うん。他の家畜も動きが無いし・・・ なかなかカードが手に入らないね」
綾瀬静「もしかしたら、お前は警戒されてるのかもな。初戦で一輝達を倒した事もあるし」
黛ましろ「私より静が警戒されてるのかも」
黛ましろ「だって静は殺人鬼だしね」
綾瀬静「え? ――どういう、意味だ?」
黛ましろ「私ね、静のこと、 全部知りたかったから調べたんだ」
黛ましろ「――『アヤセシズカ』のこと」
綾瀬静「いつのまに・・・」
黛ましろ「簡単だよ、今はネットがあるから いつだって好きなだけ調べられる」
黛ましろ「結構有名なんだね。 『殺人ドクターアヤセ』って」
  殺人ドクターアヤセこと綾瀬静。
  戦後最大の殺人鬼と言われる、
  若き天才医師。
  生まれながらのサイコパスで人を殺す
  事に快感を覚え、次々と患者を殺した
  マッドドクター。
  最後は真実を突き止めた婚約者と
  婚約者の兄に追い詰められるが、
  2人を殺し病院もろとも焼死。
  焼け跡から発見された人骨から
  推測だけで、犠牲者は100人を
  くだらないと言われている。
  しかし戦後の混乱で事件についての資料や証拠品は皆無で本当にあった事か、単なる噂なのか定かではない。
  とにかく、すべての真相は闇の中へ──
  都市伝説好きの中では
  有名な殺人鬼の名前だった。
綾瀬静「・・・マニアしか知らないと 思ったんだがなぁ」
綾瀬静「ああ、俺がその狂った医者だよ」
綾瀬静「ましろは・・・俺が怖くないのか?」
黛ましろ「本当かなぁ? ――本当に、静が殺したの?」
綾瀬静「・・・何を言ってるんだ?」
黛ましろ「答えたくなければ、答えなくても良いよ。 ・・・大切なことは、ソレじゃないから」
黛ましろ「ネットだと、都市伝説の殺人ドクター 綾瀬静は、醜い自分にコンプレックスを 持っていたんだって」

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