第7話『自称オタサーの姫』(脚本)
〇魔界
家来「またもや失敗してしまいました」
エスティーナ「あの意味わからん人間たちは何よ」
エスティーナ「よく分からない理由で 分かりあってんじゃないわよ!」
家来「とにかく次の手を打ちましょう」
エスティーナ「それなら私に考えがあるわ」
家来「さすがです!エスティーナ様!」
エスティーナ「今度こそ、奴らを消し去ってやるわ」
〇市場
エスティーナ「我ながら完璧な変装」
エスティーナ「オタクはこういうのが好きらしいからな」
シャルティア「あれ?」
シャルティア「あなたは?」
エスティーナ(シャルティアか まあまあ、可愛いわね)
エスティーナ(私の方が可愛いけど)
エスティーナ「交通事故に遭って気付いたら ここにいたんです」
エスティーナ(我ながら完璧)
シャルティア「そうだったんだね」
シャルティア「名前は何て言うの?」
エスティーナ「え、えっと」
エスティーナ「上杉っていいます」
シャルティア「ウエスギさんね!」
エスティーナ(何で、今パッと名前が出てきたんだろ)
エスティーナ(ウチ、日本なんて知らないはずなのに)
シャルティア「どうかした?」
エスティーナ「いえ!何でもないです!」
エスティーナ「あの、私日本って国から来たんですけど ここって異世界なんですか?」
シャルティア「そうだよ」
エスティーナ「色々と教えてほしいです」
シャルティア「もちろん」
シャルティア「まずはお部屋に案内してあげるね」
エスティーナ(とりあえず、今は何も知らないふりだ)
〇地下室
石井「どうやら、また女子の異世界転移者が 来たようです」
佐々木「伊藤さんだけで手一杯だというのに」
岩本「みんな、分かっているな?」
「もちろんです」
「あれですね?」
〇貴族の部屋
エスティーナ「よし、早速計画を実行しよう」
エスティーナ「誰か来たか」
エスティーナ「はーい!どうぞ!」
シャルティア「お部屋はどう?」
エスティーナ「とっても気に入りました」
シャルティア「良かった!」
シャルティア「良かったら村を案内するけど」
エスティーナ「まずは1人で散歩してみたいんですけど いいですか?」
エスティーナ「そのあと案内していただけたら嬉しいです」
シャルティア「もちろん!」
シャルティア「ゆっくり散歩していいからね」
エスティーナ(計画通り)
〇華やかな広場
エスティーナ「まずはじめのターゲットは ”岩本”にしとこう」
エスティーナ「難民最年長で恋人いない歴と年齢が同じ 1番こじらせてそう」
エスティーナ「あのー」
岩本「・・・・・・」
岩本(伊藤さん事件により結んだ 我らの紳士協定)
岩本(女の子不可侵協定)
岩本(落ち着くんだ自分)
エスティーナ「あれ?無反応?」
エスティーナ(仕方ない、強引に色仕掛けだ)
エスティーナ「わたしぃぃ、岩本さんを 初めて見た時から興味持ってたの」
エスティーナ「みんなには内緒でいいことしない?」
岩本「エリザベス」
エスティーナ「え、エリザベス?」
〇豪華な部屋
エリザベス「みんな!おかえり!」
「ただいま!」
エリザベス「バトルはどうだった?」
キリット「大成功だ」
アレクサンダー「姫の欲しがってたアイテム手に入れたよ」
エリザベス「みんな、すごーい!」
エリザベス「ありがとう!」
〇池のほとり
キリット「今日は狩りに行くかな」
エリザベス「私も行きたーい」
キリット「もちろん」
エリザベス「キリット君って優しいよね」
エリザベス「ね、ねえ」
キリット「どうかした?」
エリザベス「ね、ねえ、結婚しない?」
エリザベス「ゲームの中だけどいいかな?」
キリット「えっ?」
エリザベス「みんなには内緒だよ」
キリット「えっと、俺なんかでいいの?」
エリザベス「キリット君がいいの」
エリザベス「いつも優しくて頼れるし 私のことを守ってくれるから」
エリザベス「どうかな?」
キリット「もちろん」
エリザベス「嬉しい」
キリット「泣くなよ」
エリザベス「嬉し泣きってやつだよ」
エリザベス「これからよろしくね」
キリット「ああ」
〇後宮の一室
エリザベス「2人だけの家だね」
エリザベス「いつか本当に会いたいな」
キリット「リアルってこと?」
エリザベス「う、うん」
エリザベス「いやかな?」
キリット「そんなわけないだろ!」
エリザベス「嬉しい」
〇池袋駅前
岩本「初めてのオフ会だ」
岩本「どんな人たちが来るんだろ」
岩本(エリザベスちゃんも 今日来るんだよな)
アレクサンダー「どうも、もしかして ギルド”ファンタジア”の人ですか?」
岩本「いかにも」
アレクサンダー「アレクサンダーです」
岩本「どうも、キリットです」
アレクサンダー「あとエリザベスさんだけですね」
岩本「そうですね」
岩本(ボイチャもしたけど 可愛い声してたからな)
岩本(俺の嫁さん、どんな顔してるんだろ)
???「もしかして、ファンタジアの人?」
岩本「違います」
???「冗談上手いわね」
???「キリット君とアレクサンダー君でしょ?」
「・・・・・・?」
???「私はエリザベス」
「えっー!?」
岩本(嘘だ!あのエリザベスちゃんが こんなおばちゃんのはずない!)
???「今日のオフ会楽しみにしてたのよね」
???「今日はよろしくね」
???「朝まで楽しもうね」
〇モヤモヤ
岩本「うわぁぉぁ」
岩本「嘘だあぁ」
岩本「ゲームの世界なんて嘘ばかりだぁぁ」
〇華やかな広場
エスティーナ「何で動かないの?」
岩本「ナニがモクテキだ?」
エスティーナ「えっ?」
岩本「ショウタイをミセロ」
エスティーナ(嘘?私の変装がバレてる?)
エスティーナ(そんなわけない 強い魔力によって認識障害を施している)
岩本「キサマ、ボイチェンをツカッッテルナ?」
エスティーナ「はあぁ?」
岩本「ネンレイサショーもシテイル」
岩本「ユルサナイ」
エスティーナ「ちょ!ちょっと!」
エスティーナ「これ、ヤバくない!」
エスティーナ「こっちに来ないで!」
岩本「ニガサナイ」
〇市場
エスティーナ「はあはあ」
エスティーナ「魔術で吹っ飛ばしていいけど それをやるとユーリにバレる」
岩本「ミツケタ」
岩本「イタイケなココロをモテアソンダ」
岩本「ユルサナイ」
エスティーナ「よく分かんないけど私じゃないわよ!」
岩本「ウソツケ」
エスティーナ「ちっ」
岩本「マテ」
シャルティア「今の何?」
〇おしゃれな廊下
エスティーナ「何よ、これ!」
エスティーナ「何で、私は追われてるのよ」
岩本「ミツケタ」
岩本「オトコのココロをモテアソぶ ニンゲンユルサナイ」
エスティーナ「きゃあああ」
岩本「ニガサナイ」
〇地下室
エスティーナ「お願いだから、来ないで!」
エスティーナ「ひいいい」
「モウニゲラレナイ」
エスティーナ「お願い許して!」
「アケロ!」
「カエセカエセ」
「オデのコイゴコロをカエセ」
エスティーナ「知らないわよ」
エスティーナ「誰か助けて」
「良かった、間に合った」
エスティーナ「誰?」
ユーリ「大丈夫か?」
エスティーナ(ユーリ?)
エスティーナ「どうやってここに?」
ユーリ「ここには隠し通路があって そこから来た」
ユーリ「早くこっちへ」
エスティーナ「はい」
〇市場
岩本「オタサーのヒメはドコだぁ?」
〇作戦会議室
岩本暴走事故対策本部
ユーリ「岩本のやつ、自我を失ってるな」
石井「岩本さんの独り言を聞くに どうやら過去のトラウマによって 正気を失っているみたいです」
ユーリ「どんなトラウマを持ってるんだよ」
佐々木「しかしこのままでは 上杉さんを探し続けますよ」
ユーリ「ただのホラーじゃねえか」
ユーリ「何かに使えそうだけど」
石井「どうします?」
ユーリ「仕方ない」
ユーリ「・・・・・・」
ユーリ「殺そう」
「鬼ですか!?」
石井「いやいや」
石井「決断早過ぎですよ!」
石井「何工程無視してるんですか!」
石井「最終手段を最初に 持ってこないでくださいよ!」
石井「じゃなくて、もっと他にあるでしょ」
ユーリ「じゃあ、もう楽にしてやろう」
佐々木「オブラートに包んでもダメです!」
ユーリ「じゃあ、絞める」
石井「若干罪悪感消した言い方してもダメです」
ユーリ「暴走した悲しきモンスターは 殺すって昔からの決まりだろ?」
佐々木「モンスターじゃなくて岩本さんです」
石井「人の心とかないんですか?」
佐々木「我々仲間じゃなかったんですか?」
ユーリ「ん?」
(今疑問に思った?)
ユーリ「多分元に戻らねえよ」
ユーリ「殺す方が早くね?」
佐々木「一手目からサジ投げてどうするんですか!」
佐々木「もっと他の方法を探してください!」
石井「そうですよ」
石井「捕獲とか説得を試みるとか」
ユーリ「さっさと片付けて飯いこうぜ 腹減ったよ」
佐々木「ご飯の方が大事なんだ」
石井「村で1番のサイコパスが ユーリさんなんだよな」
ユーリ「じゃあ、どうするんだよ」
ユーリ「殺す以外に方法あるのか?」
石井「仕方ありません」
石井「我々住人でどうにかします」
ユーリ「じゃあ、失敗したら殺すってことで」
佐々木「ちょっと、殺すから離れてください!」
〇華やかな広場
岩本「オタサーのヒメはドコだー?」
石井「岩本さん!正気を取り戻してください!」
佐々木「悲しみや怒りでは解決しません!」
岩本「オデ ユルサナイ」
岩本「オタサーのヒメ クビからシタをツチにウメテ サラス」
石井「思い出してください」
石井「岩本さんは1人じゃありません」
岩本「ヒトリ ジャナイ?」
佐々木「そうです」
佐々木「みんな、トラウマを抱えてるんです」
石井「僕らは仲間です」
佐々木「恋人いない歴年齢」
石井「女の子たちから虐げられ 悲しい過去を持つ仲間です」
岩本「ナカマ」
石井「そうです!」
佐々木「いつもの岩本さんに戻ってください!」
岩本「はっ!?」
岩本「ここは?」
石井「どうやら正気に戻ったようですね」
佐々木「よかった」
岩本「遠い意識の中で、みんなの声が聞こえたよ」
岩本「ありがとう」
石井「そんなの当然じゃないですか」
佐々木「僕たちは仲間じゃないですか」
岩本「仲間っていいな」
〇大樹の下
ユーリ「ちっ」
〇貴族の部屋
シャルティア「ほらほら、もう怖くないからねー」
エスティーナ「えっぐえっぐ」
シャルティア「えっ?男の人怖い?」
シャルティア「大丈夫みんな本当は優しいから」
エスティーナ「えっぐえっぐ」
シャルティア「うんうん」
シャルティア「もうオタサーの姫はコリゴリ?」
シャルティア「オタサーの姫って何?」
岩本さん……ガンバレッ💪
トラウマエピソードの生々しさと、岩本さんの心情描写の細緻さに衝撃を覚えたのですが、ひょっとして作者様のリアル体験談……いやいや、バレンタインデーに甘酸っぱいエピソードをお持ちの作者様に限って……などという感想が脳内に去来しました😊
エスティーナ様がオタサーの姫ッ!? 世のオタサーの姫は得てして(問題発言につき削除)であり、エスティーナ様ほどカワイイ人は…😂