ジャンキー アパートメント

もと

カゴの中の鳥は いついつ出やる?(脚本)

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〇風流な庭園
大家「慣れました?」
101号室 ハヤシ「うっす、良くしてもらってます」
101号室 ハヤシ「ウメちゃん、あ、メイドちゃん、いや、 ウメさんに鍛えてもらいましたから」
101号室 ハヤシ「一通りの事は出来るようになったっす」
大家「ウメちゃん良いでしょ? アレで七十七歳ですよ、信じられます?」
101号室 ハヤシ「は? いや、マジっすか? 屋根掃除を教えてもらっ・・・マジっすか」
大家「笑えるぐらいお元気でしょ、むふふ」
大家「まあウチで働いてもらうメイドちゃんは アレぐらいじゃないとねえ」
101号室 ハヤシ「・・・はあ、へえ・・・ウメちゃん・・・ 昨日、屋根から飛んで降りたんすよ・・・」
大家「むふふ」
大家「さてさて、ではでは、そういうコトならば お掃除なんかをお任せしても大丈夫?」
101号室 ハヤシ「あ、はい、もちろん、うっす」
大家「それはそれは何よりです、 では仕事として一つお願いしたいのですが」
101号室 ハヤシ「え?」
大家「難しいコトじゃありません ちゃんとした仕事なので給料も出しますよ」
101号室 ハヤシ「え、マジっすか、はい、やります」
大家「むふふ」

〇汚い一人部屋
「ホンマこんなにして! このへん全部捨てんで!」
103号室 アラキ「ダメ! 大事なモンもあるから! 触んなや!」
101号室 ハヤシ「うっす! さーせん、お母さん!」
「大事なモンなんて無い! 全部ゴミやゴミ!」
103号室 アラキ「ああもう、触んなって!」
101号室 ハヤシ「さーせん! すぐ片付けるんでちょっと待って下さい!」
103号室 アラキ「・・・」
103号室 アラキ「・・・なんでハヤシさんが謝ってんの?」
101号室 ハヤシ「『なんで』? あー・・・なんとなくっすね」
103号室 アラキ「・・・なんだそれ?」
101号室 ハヤシ「さーせん」
103号室 アラキ「・・・」
103号室 アラキ「・・・フフッ」
「ホラ! 手止まってんで! ゴミ袋よこし!」
「さーせん!」
「昼までには終わらすで! 巣鴨の赤パンの店行くんやから!」
103号室 アラキ「赤パン?」
101号室 ハヤシ「赤パン・・・」
101号室 ハヤシ「あ、まず紙と服とゴミとかぐらいに 大まかに分けるんすよ」
103号室 アラキ「・・・えっと・・・」
101号室 ハヤシ「・・・うん、仕分けは俺がやるんで アラキ君はそこから必要な物を取って」
103号室 アラキ「うん」
101号室 ハヤシ「そうっすね、大事な物は机に 服は洗濯機に放り込んで下さい」
103号室 アラキ「はい」
101号室 ハヤシ「てか紙多いっすよマジで」
103号室 アラキ「うん」
101号室 ハヤシ「・・・Thesis? 論文?」
「アンタちゃんと食べてんの? 冷蔵庫空っぽやん!」
「さーせん!」
「ヤダ床なんかに炊飯器置いて! まったく・・・」
103号室 アラキ「あ! それアカンで母ちゃん!」
「ぎ」
101号室 ハヤシ「・・・ああ、ちょっとハードっすね」
103号室 アラキ「・・・うん」
103号室 アラキ「前に母ちゃんが来た時に炊いたヤツ・・・」
101号室 ハヤシ「ソレいつ頃っすか?」
103号室 アラキ「先月・・・一ヶ月半ぐらい前かな」
101号室 ハヤシ「あー、それぐらいが一番ヤバいんすよ」
「イヤやー! 何コレー!」
101号室 ハヤシ「・・・カビっすよ、お母さん・・・」
103号室 アラキ「・・・」
103号室 アラキ「・・・フフッ」
103号室 アラキ「ヤッベー色してるやん、フフフッ」
101号室 ハヤシ「・・・フフ・・・なんか飛んでるし」
「・・・」
101号室 ハヤシ「写真撮ってイイっすか」
103号室 アラキ「僕も撮る」

〇古いアパートの一室
301号室 魔王「・・・」
301号室 魔王「・・・今日は下階の下階が騒がしい・・・」
301号室 魔王「いや・・・言い方・・・」
301号室 魔王「・・・しもじもの者が・・・」
301号室 魔王「少々・・・魔王らしい、か・・・?」
301号室 魔王「・・・」
301号室 魔王「・・・楽しそうだ・・・」
301号室 魔王「・・・ふむ、よし、出来そう」
301号室 魔王「・・・ハッ!」
301号室 魔王「・・・ふう・・・」
301号室 魔王「・・・」
301号室 魔王「・・・まだまだ練習が必要か・・・」
301号室 魔王「・・・魔王とは難しいモノだな・・・」

〇広い和室
101号室 ハヤシ「──そんな感じで、片付けたっす」
103号室 アラキ「片付けられたっす!」
大家「お疲れ様でございました ハヤシさんなら出来ると思ってましたよ」
101号室 ハヤシ「うっす」
大家「アラキさんもホドホドになさって下さいよ 虫とか出たら一生恨みますから」
101号室 ハヤシ「・・・あ」
大家「なんですか『あ』って? 何かあったの? いたの? いるの?」
「大丈夫っす!」
大家「・・・」
大家「・・・まあ信じましょうか」
「うっす」
大家「ではではハヤシさん、ハイお給料です」
101号室 ハヤシ「お! ありがとうございます! あの、これで家賃払えます!」
101号室 ハヤシ「今日まで貰った分も持ってきたから 滞納分は完済・・・」
大家「ハイ、ストーップ」
101号室 ハヤシ「はい?」
大家「家賃を真っ先に考えて下さったのは 大家冥利に尽きますが、まずは水道光熱費」
101号室 ハヤシ「えっ?」
大家「次に保険やら年金やら、アララそういえば 電話料金も優先すべきですねえ」
101号室 ハヤシ「マジっすか? 家賃より先に? いいんすか?」
大家「はいはい、良いんですよ ウチの家訓は『有る時払いの催促無し』」
大家「先に生活を整えて下さいな それと定職を探すコトですよ」
大家「ああそれから・・・」
103号室 アラキ「あの!」
大家「はい?」
103号室 アラキ「僕にも仕事ありませんか?」
大家「なるほどなるほど では学生のアラキさん、何が出来ますか?」
103号室 アラキ「え・・・何が出来るか・・・って 言われると、ちょっと・・・」
101号室 ハヤシ「アラキ君はアレです、なんか賢いっすよ!」
103号室 アラキ「・・・え?」
101号室 ハヤシ「超ムズい英語とか読めるっぽいし なんか、うん、賢いっす!」
大家「なるほどなるほど」
103号室 アラキ「・・・えっと」
101号室 ハヤシ「やりたいって言ってるし なんか紹介してあげれませんか?」
大家「なるほどなるほど」
103号室 アラキ「いや、出来ればハヤシさんみたいな・・・」
大家「では心当たりにアレして来るので ちょっと待っててもらえます?」
103号室 アラキ「いま?」
101号室 ハヤシ「良かったじゃん」
103号室 アラキ「・・・うん、まあ」
101号室 ハヤシ「迷惑だった?」
103号室 アラキ「いや、助かる、嬉しい・・・けど」
103号室 アラキ「ガチで『賢い仕事』持って来られたら 死ぬかもしれん」
101号室 ハヤシ「・・・賢い仕事ってナニ?」
103号室 アラキ「・・・」
101号室 ハヤシ「・・・」
「・・・フフッ」
101号室 ハヤシ「分かんねえや」
103号室 アラキ「分からん」
101号室 ハヤシ「なんかあの大家さんって ハッカーのバイトとか持ってきそう」
103号室 アラキ「ありそう、表沙汰にならんヤツね この家もヤバいぐらいデカいし」
101号室 ハヤシ「たぶん普通の人じゃないよな 絶対ひとつぐらいはヤバい仕事してそう」
103号室 アラキ「出勤とかしてるイメージ無いし」
101号室 ハヤシ「スーツ姿とか見た事ないな」
103号室 アラキ「そもそも僕らって外に出ないから知らんし」
101号室 ハヤシ「ナニして儲かってんだろうな? 殺し屋とか?」
103号室 アラキ「似合うやん」
「・・・」
101号室 ハヤシ「・・・大丈夫だよな」
103号室 アラキ「・・・だとイイな」
101号室 ハヤシ「・・・なんか、ごめん」
103号室 アラキ「・・・うん、バイトは本当にしたいから いっつも続かなくて、うん」
101号室 ハヤシ「そっか」
103号室 アラキ「ハヤシさんみたいに一日だけの 掃除とか手伝いとかそういうの・・・」
101号室 ハヤシ「・・・うん、やっぱ、なんかゴメン」
103号室 アラキ「・・・うん」

〇古いアパートの一室
301号室 魔王「・・・フンッ」
301号室 魔王「・・・」
301号室 魔王「・・・ふむ、まだ維持は出来ぬか」
301号室 魔王「・・・しかしながら結構伸びるな、ツノ」
301号室 魔王「良きかな、良きかな・・・」

〇開けた景色の屋上
大家「・・・どっこいしょ」
大家「・・・やれやれ」
オネコ「シャーッ!」
大家「あらあら酷くないですかソレは」
大家「オネコさんは見た目でヒトを判断しますの」
オネコ「にゃ」
大家「ハイおりこうさん」
大家「いやあ色々と手は出しましたけどねえ 大物はどうしましょうか、ねえ?」
オネコ「みゃ」
大家「のんびり眺めておくのも愉快ですけどね」
大家「・・・でもねえ?」
大家「勝手気ままに転がったりするんですよ まったくニンゲンとは摩訶不思議」
大家「オネコさんから見たら馬鹿みたいでしょ?」
オネコ「にゃん」
大家「むふふ、今日もご飯食べていきます?」
オネコ「・・・」
大家「アラもうどこかで済ませちゃいました?」
大家「上手く生きてますねえ、尊敬しちゃいます」
オネコ「にゃ」
大家「むふふ」

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