指先に魔法はいらない

星月 光

chapter04 運命の足音(脚本)

指先に魔法はいらない

星月 光

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〇おしゃれな居間
ピオノノ・ダイン「ボクたちが製造されたのも、そのためです」
サフィ「ボク・・・たち?」
サフィ「ピオ以外のスペルロイドが いるってことですか?」
ピオノノ・ダイン「そうだけど、ちょっと違う」
ピオノノ・ダイン「いるんじゃない ・・・いたんだ」

〇怪しげな酒場
ピオノノ・ダイン「母は酒場の歌姫だった」
ピオノノ・ダイン「お忍びで城下町へ遊びに行った父は 母に一目惚れをしたそうです」
ピオノノ・ダイン「父は熱心に好意を伝え続け・・・」
ピオノノ・ダイン「周囲の猛反対を押し切り、結婚しました」
ピオノノ・ダイン「でも──」

〇地下室
ピオノノ・ダイン「誰かが国庫からアビス閃石を持ち出し」

〇華やかな裏庭
ピオノノ・ダイン「砕いた粉末を母に飲ませたんです」

〇おしゃれな居間
サフィ「アビス閃石・・・って 恋ができなくなるんですよね」
サフィ「お父さんのことを好きじゃなくした ・・・ってことですか?」
ピオノノ・ダイン「・・・目的は副作用だ」
アストリッド「生殖機能の低下か」
ピオノノ・ダイン「・・・そうです」
サフィ「えっと・・・」
アストリッド「子どもを作れないようにしたってこと」
アストリッド「お貴族様は自分たちの血にこだわるからね」
ピオノノ・ダイン「・・・ええ」

〇貴族の応接間
クレメント・ダイン「モルゲッタ!」
モルゲッタ・ダイン「クレメント様・・・」
クレメント・ダイン「なぜわたしから離れようとする!」
モルゲッタ・ダイン「あたし、難しいことはわからないけど」
モルゲッタ・ダイン「・・・子どもが生めなくなったの」
モルゲッタ・ダイン「だからもう、あなたと一緒にいられない」
モルゲッタ・ダイン「さよなら、クレメント様」
モルゲッタ・ダイン「あなたの子を産んでくれる女性と どうかお幸せに・・・」
クレメント・ダイン「・・・モルゲッタ!」
クレメント・ダイン「わたしから離れることは許さぬ」
クレメント・ダイン「わたしたちがともにいられる方法を なんとしても探してみせる!」
モルゲッタ・ダイン「クレメント様・・・!」

〇おしゃれな居間
アストリッド「・・・その方法とやらが スペルロイドを製造させることだったと」
ピオノノ・ダイン「・・・そうです」
サフィ「ピオのお父さんは・・・」
サフィ「お母さんのこと・・・ ほんとに好きだったんですね」
アストリッド「他人を巻き込む愛ほど 迷惑なものはないけどね」
アストリッド「おまえの両親がほんとに愛し合ってたなら」
アストリッド「なにもかもを捨ててでも どこへなりと行けばよかったのにね?」
ピオノノ・ダイン「そうですね」
ピオノノ・ダイン「本当に・・・迷惑な話です」
サフィ「ピオ・・・」
ピオノノ・ダイン「父はスペルロイドを9人造らせた」
ピオノノ・ダイン「ボクはそのうちの1人です」
サフィ「他の人たちも一緒に暮らしてたんですか?」
ピオノノ・ダイン「同じ屋敷の中にはいた」
ピオノノ・ダイン「けど、あんなの・・・ 一緒に暮らしてたなんて言えない!」
サフィ「それ、どういう・・・」
島民「魔王様、大変です!」
島民「町に魔物が・・・!」

〇ファンタジー世界

〇謁見の間
シーラ・オブ・ワーズワース「父上、なぜわかってくださらないのです!」
シーラ・オブ・ワーズワース「ピオノノは無実です!」
シーラ・オブ・ワーズワース「いいえ、仮に罪人であったとしても」
シーラ・オブ・ワーズワース「裁判の場も設けず、弁明もさせないなんて」
シーラ・オブ・ワーズワース「どんな罪人であっても 裁判で裁かれる権利があるはず」
シーラ・オブ・ワーズワース「それなのになぜ・・・」
ワーズワース王「シーラ」
ワーズワース王「おまえはハーゲン王子との婚姻を控えた身」
ワーズワース王「他の男のことばかり考えるなど言語道断」
シーラ・オブ・ワーズワース「そ、そんなつもりでは」
ワーズワース王「臣下に想いを寄せられる王女など 嫁の貰い手がいなくてもおかしくない」
ワーズワース王「ハーゲン王子は寛大なお心で それでもよいとおっしゃった」
ワーズワース王「王子に感謝し、誠心誠意尽くすのだ」
シーラ・オブ・ワーズワース「・・・はい・・・」

〇おしゃれな居間
ピオノノ・ダイン「魔物・・・!?」
アストリッド「珍しいことじゃない」
アストリッド「サントエレンは100年前 聖者エレンが悪魔を封印した場所」
アストリッド「封印の力が緩んできてるから 瘴気から魔物が生まれるってわけ」
サフィ「大変!」
ピオノノ・ダイン「行かないと!」
アストリッド「助けたいの?」
ピオノノ・ダイン「当たり前でしょう!」
アストリッド「昨日のこと、思い出してみなよ」
アストリッド「バカ2人に絡まれてたおまえらを 島の奴らはどうしたんだっけ?」

〇島の家
サフィ「やめて、離して!」
ピオノノ・ダイン(どうして誰も止めに入らないんだ!?)

〇おしゃれな居間
ピオノノ・ダイン「・・・そうだ」
ピオノノ・ダイン「彼らは見ない振りをして・・・!」
アストリッド「あいつらは我が身かわいさに おまえらを見殺しにしたってこと」
アストリッド「そんな奴らを助ける価値、ある?」
ピオノノ・ダイン「・・・わかりません」
ピオノノ・ダイン「でも・・・」
ピオノノ・ダイン「助けられる人を見捨てたら ・・・きっと後悔する」
ピオノノ・ダイン「だから、ボクは彼らを助けたい」
アストリッド「・・・そう」
ピオノノ・ダイン「アストリッドさんが行かないなら ボク一人でも行きます!」
アストリッド「勘違いしてるようだから 一応、訂正してやるけど」
アストリッド「行かないとは一言も言ってないよ」
ピオノノ・ダイン「えっ」
アストリッド「おまえも来い、ピオ」
アストリッド「魔術を覚えるなら、座学よりも実践だ」
ピオノノ・ダイン「は・・・はいっ!」
アストリッド「サフィ、おまえは留守番だ」
アストリッド「あいつが無事に戻るよう せいぜい祈ってれば?」
サフィ「・・・ピオ!」
サフィ「えっと・・・」
サフィ「昨日、デザートを作ったんです」
サフィ「きっと、おいしくできてると思うんです」
サフィ「だから、無事に戻ってきてくださいね」
アストリッド「だってさ、ピオ」
ピオノノ・ダイン「うん・・・必ず」
サフィ「約束です!」
サフィ「アストリッドも!」
ピオノノ・ダイン「ですって、アストリッドさん」
アストリッド「・・・はいはい」
島民「魔王様! いらっしゃらないのですか?」
アストリッド「・・・やれやれ 待てができないようだね」
ピオノノ・ダイン「行きましょう!」
サフィ「いってらっしゃい!」

〇城の廊下
シーラ・オブ・ワーズワース(・・・やっぱりおかしい)
シーラ・オブ・ワーズワース(父上、なにを隠して・・・)
侍女ディアナ「殿下!」
シーラ・オブ・ワーズワース「ディアナ、なぜここに?」
侍女ディアナ「殿下が心配で・・・」
シーラ・オブ・ワーズワース「わたくし、少し疲れたわ」
シーラ・オブ・ワーズワース「お茶とお菓子を用意してちょうだい」
侍女ディアナ「今からでございますか?」
侍女ディアナ「僭越ながら、今日はもうお休みになっては」
シーラ・オブ・ワーズワース「わたくしの頼みが聞けないの?」
侍女ディアナ「いえ、そのような!」
「この冬に嫁ぐってのに 相変わらずだな、殿下」
「だから庶子のナタリア様に 王位継承権を奪われるんだよ」
侍女ディアナ(シーラ様・・・)

〇島の家
ピオノノ・ダイン「あれは・・・」
アストリッド「たいした魔物じゃないな」
アストリッド「初戦にはおあつらえ向きだね」
アストリッド「魔力の流れを意識して、呼吸を・・・」
ピオノノ・ダイン「け、けど、町の人たちが・・・」
「ウオオーッ」
アストリッド「わたしの見立てでは おまえの魔術は風属性」
アストリッド「風属性のコツは・・・」
ロメオ(ならず者)「おい魔王・・・様!」
ブノワ(ならず者)「俺らまで殺す気・・・ですか!?」
アストリッド「そうしてやってもいいけど?」
アストリッド「死にたくないなら 住民を避難させろ」
「ヘイ!」
アストリッド「重要なのはイメージを描くこと」
アストリッド「身体から魔力を放出」
アストリッド「そして魔力を拡散させる」
ピオノノ・ダイン「魔力・・・拡散・・・」
アストリッド「目の前に魔力の球が出てくる感じかな」
アストリッド「それを広げるんだ」
ピオノノ・ダイン「・・・・・・」
ピオノノ・ダイン(体内の魔力を感じることはできる)
ピオノノ・ダイン(でも、それを放出するイメージができない)
ピオノノ・ダイン(やっぱりボクは・・・)
アストリッド「ピオ」
アストリッド「さっき言ってたよね」
アストリッド「ルクス輝石を活性化させる儀式を 王都ペンリスで何度か受けたって」
アストリッド「逆だよ」
アストリッド「おまえが受けたのは 不活性化の儀式だ」
アストリッド「理由は後で教えてやる 今は集中しろ」
ピオノノ・ダイン「でも・・・」
アストリッド「わたしは凡百の魔術師より 実力も魔力も遥かに上」
アストリッド「天才のわたしが 魔術を使えるようにしてやったんだ」
アストリッド「できないなんて言わないよね?」
ピオノノ・ダイン「はっ・・・はい!」

〇幻想空間
ピオノノ・ダイン「魔力の流れを意識・・・」
ピオノノ・ダイン「身体から魔力を放出・・・」
ピオノノ・ダイン「そして魔力を拡散させる!」

〇島の家
ピオノノ・ダイン「で・・・できた!?」
ピオノノ・ダイン「でも効いてない・・・!」
アストリッド「見せてあげるよ」
アストリッド「おまえがこれから覚える神の御業 ――本当の魔術ってやつをね」

〇島の家

〇島の家
ピオノノ・ダイン「すごい・・・!」
アストリッド「さっさと帰るよ」
ピオノノ・ダイン(あれがアストリッドさんの風魔術)
ピオノノ・ダイン(いつかボクもあんな魔術を・・・)
ピオノノ・ダイン(・・・使えるのかな)
ピオノノ・ダイン(いや、使えるようになってみせる!)

〇海辺

〇おしゃれな居間
サフィ「おかえりなさい!」
サフィ「2人とも怪我は・・・」
サフィ「ピオ・・・!」
アストリッド「魔力欠乏症だね」
アストリッド「初めて魔術を使ったから 魔力が一気に失われて・・・」
アストリッド「・・・要するに ちょっと気絶してるだけだよ」
アストリッド「じきに目を覚ますはずだ」
サフィ「よかった!」
サフィ「乱暴です!」
アストリッド「そうでもないけど?」
アストリッド「それより デザートとやら、持ってきなよ」
アストリッド「こいつが初めて魔術を使った そのお祝いをしようじゃない?」
サフィ「はい!」
アストリッド「・・・・・・」

〇大聖堂
ジュリアン・ダイン「わたしはなんとしても兄を助けたい」
ジュリアン・ダイン「だから貴方の力をお借りしたい」
ジュリアン・ダイン「兄はスペルロイドです」
ジュリアン・ダイン「それでも、ピオノノはわたしの兄」
ジュリアン・ダイン「兄を助けるためなら どんなことだってします」
ジュリアン・ダイン「一生暮らせるお金でも 宮廷魔術師の地位でも」
ジュリアン・ダイン「貴方が望むものはすべて用意します」
ジュリアン・ダイン「ですから、絶対に兄を助けてください!」

〇おしゃれな居間
アストリッド「宮廷魔術師、ね」
アストリッド(確かジュリアン・ダインは 先月で13歳になったはず)
アストリッド(ワーズワースの法律では成人まで4年ある)
アストリッド(ダイン家の次期当主とはいえ クレメント・ダインはまだ現役)
アストリッド(宮廷魔術師の選出も 一生暮らせるほどの大金も)
アストリッド(そんな権限はまだ持ってないはずだ)
アストリッド(なにを企んでる・・・?)
「アストリッド!」
サフィ「ピオの魔術がどうだったか あとで教えてくださいね!」
アストリッド「そんなの本人に聞けっての」

〇薄暗い谷底

〇研究所の中枢
???「サフィリーンをすべて廃棄しただと!?」
???「・・・ああ」
???「あんなこと、サフィは望んでいない」
???「サフィが死んだのは おまえのせいでもある!」
???「忘れたとは言わせない」
???「違う、おれは・・・!」
???「あたしはサフィを取り戻す」
???「無論、おまえにも力を貸してもらう」
???「今さら、自分だけが 罪から逃げられると思うなよ!」
???(サフィ・・・)
???(せめて、海の底で 安らかに眠っていてくれ)
???(きみが好きだった、あの海で・・・)

次のエピソード:chapter05 人形の哀歌

コメント

  • ピノくんやサフィちゃんの真っ直ぐな心根と、王宮あたりの思惑渦巻く空気感が、あまりにも対照的でいずれの展開も目を惹かれます✨ そして、双方のことを了知しているアストリッドさんの立ち居振舞いの素敵さったら😊
    この二項を軸にお話が進むのかなと思っていたら、とっても気になるラストが…😥 彼女たちが何者なのか、続きが気になって仕方ないです😊

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