王様と裸の真実(脚本)
〇古風な和室(小物無し)
「和宏〜!和宏〜!」
高津 和宏「何だよ!うっせぇな!」
ルグレー王「大変じゃ!」
痩せ紫「どうされました?王様?」
ルグレー王「コレを見よ!」
高津 和宏「世界の童話集?」
ルグレー王「32ページ目じゃ!」
童話「裸の王様」
高津 和宏「何だそれ?」
高津 宅浪「「裸の王様」有名な童話だ!」
高津 和宏「へぇ〜俺は読んだ事ねぇけど おっさん、それがどうしたんだよ?」
ルグレー王「その本、絵を見たかぎりではワシの事を記しておるのは理解出来たが、もっと重大な事があっての──」
高津 和宏「まさか!財宝隠した場所が記されていたとか?」
ルグレー王「違う!そんな事ではない!」
高津 宅浪「教えてもらえますか?」
ルグレー王「ふぅ──」
ルグレー王「ワシには!文字が読めん!」
ルグレー王「という訳で!和宏読んでくれ!」
高津 宅浪「・・・ちょっと出掛けて来る」
高津 和宏「あっ!ズリぃぞ、兄貴!」
ルグレー王「ワシの愛に満ちた活躍が記されておるかの?」
高津 和宏「知るかよ!」
ルグレー王「読んでくれぬのか?和宏?」
痩せ紫「読んであげて下さい。和宏様!」
高津 和宏「しょうがねぇな、読んでやる!」
ルグレー王「楽しみじゃのぉ〜」
高津 和宏「──って話しだ!どうだ?おっさん!」
ルグレー王「何という事じゃ!ワシが愚かでマヌケみたいに書かれておるぞ」
高津 和宏「マヌケの部分はそうじゃねぇか!」
ルグレー王「違うわ!」
ルグレー王「──よかろう!なぜワシが裸なのか、和宏には真の理由を話そうぞ!」
高津 和宏「興味ねぇよ!そんな話!」
ルグレー王「そうか・・・」
痩せ紫「か、和宏様!空気を読んで下さい!」
高津 和宏「お、悪りぃ!」
高津 和宏「聞かせてくれよ!おっさん!」
ルグレー王「うむ!あれは数百年以上前のこと──」
〇謁見の間
ネクター「どうか服を着て下さい!王様!」
ルグレー王「嫌じゃ!断る! この服を見せるパレードを行う!」
パウロ「愚か者には見えない服なんて、嘘です王様!」
ルグレー王「そんなの分かっておる!」
ネクター「えっ?では何故!」
ルグレー王「この国の民は幾度と繰り返されている争いで皆、心が疲弊しておる、ならば元気と笑顔を与えてやるのが王であるワシの努めじゃ!」
ルグレー王「透明な服を騙されて着るワシの姿を見せる事で、少しは民の疲弊が癒えるはずじゃ!愚かな王様と笑って欲しいの!」
ネクター「・・・王様」
ルグレー王「これは、ヨハンの為に行うパレード でもあるのじゃ!」
パウロ「ヨハンの為?」
ルグレー王「そう。パウロお主は初め透明な服が見える設定で、パレードに参加して欲しいのじゃ!」
パウロ「・・・・・・」
ルグレー王「おそらく、誰かが王様は裸と言ってくるじゃろう、そしたらパウロよ、ヨハンにワシの服がみえるか?と問うて欲しいのじゃ」
パウロ「分かりました」
ルグレー王「あやつは優しいからの、ワシの立つ瀬を考えて「見える」と答えるじゃろう」
ルグレー王「そしたら、パウロよ、実は服は見えていなかったと真面目な顔で言ってほしいのじゃ!ワザとヨハンに嘘をつかせて牢獄に閉じ込める」
パウロ「王様、それの何処がヨハンの為なのですか?」
ルグレー王「それはな──」
〇古風な和室(小物無し)
ルグレー王「──という事だったのじゃ!」
ルグレー王「・・・・・・」
ルグレー王「和宏は?」
痩せ紫「慌てて、出掛けて行きましたよ」
ルグレー王「何処へ!?」
痩せ紫「最寄りのコンビニへ行かれたようです」
ルグレー王「コン──何じゃそれ?」
〇コンビニ
高津 和宏「水曜の朝はこれだな!」
高津 和宏「子供の頃から発売日はワクワクするぜ!」
「お〜い和宏!」
高津 和宏「どうした?おっさん?」
ルグレー王「話も聞かずに、そんな本を買いに来るとはの、ワシは呆れておるぞ!」
高津 和宏「怒んなよ!俺は雑誌は紙派だぜ! デジタルは愛が感じられねぇ!」
ルグレー王「どうでもよいわ!」
「おわっ!」
友浦 由里「これ、頂戴!」
友浦 由里「じゃあね!」
ルグレー王「盗まれたぞ!」
高津 和宏「ふざけやがって!追いかけるぞ!おっさん!」
〇古いアパート
友浦 由里「ハァ、ハァ、ここまでは追って来ないわよね!?」
〇古いアパート
高津 和宏「追いついたぞ!ここが家か?説教してやる」
ルグレー王「和宏!暴力はいかんぞ!」
ルグレー王「おい!和宏!」
〇古いアパートの部屋
高津 和宏「おいコラッ!盗んだ物を返しやがれ!」
高津 和宏「んっ?」
友浦 由里「起きて!」
友浦 由里「目を開けてよ智幸!」
高津 和宏「どうしたんだ!」
友浦 由里「私達、3日間何も食べてなくて、うわぁぁん!智幸が死んじゃった!」
高津 和宏「と、とりあえず救急車だ!」
〇古いアパート
救急隊員「衰弱が見られますが命に別状はありませんよ、近くの病院に入院させます」
高津 和宏「お、おう」
救急隊員「後ほど連絡致しますね」
友浦 由里「智幸・・・」
〇古いアパートの部屋
友浦 由里「・・・・──」
ルグレー王「怒るでないぞ、和宏」
高津 和宏「で、何でこんな生活してんだよ!」
友浦 由里「お父さん会社が半年前に倒産しちゃって、今は働いてないの」
友浦 由里「お母さんはお父さんとケンカして出て行ったきり・・・食費は振り込んでくれるけど──」
高津 和宏「なにっ!」
ルグレー王「これ、和宏、落ち着くのじゃ!」
高津 和宏「はぁ、とりあえずその飯を食っとけよ! 腹減ってんだろ?」
友浦 由里「えっ?いいの?怒ってない?」
高津 和宏「ああ!たっぷりと恩に着ろよ!」
友浦 由里「ありがとうございます!」
ルグレー王「和宏は優しいのう」
高津 和宏「うるせぇぞ!おっさん!」
友浦 由里「ごちそうさまでした!」
高津 和宏「おう、足りたか?」
友浦 由里「うん、ありがとね!お兄ちゃん!」
高津 和宏「お前の父ちゃんは何処にいる?」
友浦 由里「たぶん、駅前のパチンコ屋」
友浦 由里「お母さんが振り込んだ食費を使っちゃうから、食べ物がなくて」
高津 和宏「俺がお前の父ちゃんと話しをしてやる!」
高津 和宏「いくぞ!おっさん!」
ルグレー王「お、おい!和宏!」
〇パチンコ店
ルグレー王「賑やかな場所じゃ!」
高津 和宏「久々に来たぜ!」
ルグレー王「して、和宏よ相手の顔がわかるのか?」
高津 和宏「分かる訳ねぇだろ!」
ルグレー王「そうか!分からぬとな!愉快、愉──」
ルグレー王「和宏!?」
高津 和宏「心配すんな、奥の手があるからよ!」
友浦 茂実「どうも!」
ルグレー王「誰!」
高津 和宏「霊体になって間もねぇあのガキのじいちゃんだ」
ルグレー王「おじいちゃん登場!」
高津 和宏「部屋にいたから付いて来てもらった!」
友浦 茂実「孫の由里がお世話になりました」
友浦 茂実「あそこにいる男が父親でございます」
高津 和宏「サンキューな」
友浦 茂実「大樹にこの言葉を伝えて下さい」
高津 和宏「了解だ!」
高津 和宏「おいっ!」
友浦 大樹「んっ?何か要かな?」
高津 和宏「要かな?じゃねぇ!さっさと娘の所に戻れ!腹空かせて、弟が病院に運ばれてんだよ!」
友浦 大樹「な、何だと?」
高津 和宏「テメェ、子供達に振り込まれてた食費を使ってパチンコしてんだろ?」
友浦 大樹「君には関係ないだろ!私の子供がどうなろと!」
高津 和宏「あんっ?」
友浦 大樹「そもそも私の実の子でない!帰りたまえ!」
高津 和宏「一つだけ質問いいか?答えたら帰ってやらぁ」
友浦 大樹「・・・言ってみなさい」
高津 和宏「マンガを読む時は紙派か?それともデジタル派か?どっちだ?」
友浦 大樹「今の時代はデジタルに決まってるだろ? 紙なんて邪魔になるだけだ」
高津 和宏「そうか!俺はな絶対に紙派なんだよ!」
友浦 大樹「それがどうしたんだ?」
高津 和宏「どうもしねぇよ!」
友浦 大樹「は?」
友浦 大樹「さぁ、もういいだろ?帰りなさい!」
高津 和宏「紙の雑誌はよデジタルと違って──」
高津 和宏「こんな場面で役に立つぜ!」
友浦 大樹「ん?」
友浦 大樹「痛い!」
高津 和宏「痛ぇだろ?」
高津 和宏「テメェのガキはこれよりもっと痛ぇんだよ!」
高津 和宏「これでも、まだ家に帰らねぇか?」
友浦 大樹「す、すいません、帰りますから、もう許して下さい!」
高津 和宏「振り込まれた食費も使うんじゃねぇぞ!」
友浦 大樹「わ、分かりました!」
高津 和宏「それと!テメェの親父から伝言だ!」
友浦 大樹「伝言!?」
高津 和宏「大樹覚えておるか?昔お前と行った遊園地で、ヒーローショーをみた後に僕はヒーローになると叫んだ事?」
友浦 大樹「へっ?何でそれを!」
高津 和宏「今からでも遅くない、家族を愛する本物のヒーローになっておくれ!頑張れ大樹!だとよ」
高津 和宏「実の子じゃねぇからって突き放すなよ!」
友浦 茂実((負けるでないぞ!大樹!))
高津 和宏((安心して成仏しな))
友浦 大樹「親父・・・」
高津 和宏「愛ってのはな、この本みてぇに、分厚く重みがあるもんだぜ!邪魔とか言うんじゃねぇ!」
ルグレー王「邪魔と言ったのは愛ではなく、紙じゃけどな」
高津 和宏「あん?」
〇古風な和室(小物無し)
高津 和宏「朝はドタバタしたぜ!」
高津 宅浪「和宏、午後から除霊の依頼が3件あるぞ!」
高津 和宏「マジか!」
高津 宅浪「13時には客が来る。準備よろしくな!」
高津 和宏「それが終われば、おっさんの嫁さん探し くたびれるぜ!」
ルグレー王「和宏よ、お主は女性の霊体が見えぬのじゃろ?」
高津 和宏「なっ!知ってたのか?おっさん!」
ルグレー王「当たり前じゃ!」
ルグレー王「もうよい、今日の捜索は休みじゃ」
高津 和宏「怒らせちまったか?」
〇謁見の間
パウロ「それの何処がヨハンの為なんです?」
ルグレー王「それはな──ヨハンに強制的な休暇を与えようと考えておる!」
ルグレー王「働き過ぎな、あやつの身体が心配でな」
ルグレー王「ヨハンには健康でいて欲しいのじゃ!」
パウロ「了解です王様!ヨハンに伝えておきます!」
ルグレー王「つ、伝えてはならぬ!これはドッキリじゃ!」
パウロ「冗談ですよ!王様!」
ネクター「ドッキリしました?」
ルグレー王「なんじゃい、からかいおって」
〇広い玄関
ルグレー王「和ひ・・・」
ルグレー王「先程のワシの言い方で怒らせたかのう?」
痩せ紫「──いえ」
〇牢獄
ヨハン•アンデルセン「原作の文脈、皇帝の服が見えない対象は「父の実の子ではない者」から王様の側近で、「愚か者」に変更しよう」
ネクター「ヨハン様、怒ってますか? 原作の皇帝の部分を王様にするなんて──」
ヨハン•アンデルセン「怒ってなどおらぬ、王様の愛ある行動と裸である理由を皆に覚えてて欲しくてな!」
ネクター「でもこの文の内容だとヨハン様の真意は見えてないですよ?」
ヨハン•アンデルセン「大丈夫、王様ならきっと分かってくれる」
ネクター「ちなみに、本の題名って──」
ヨハン•アンデルセン「もちろん」
「裸の王様」だ!
〇広い玄関
痩せ紫「怒っていません。どちらも愛があります」
〇霧の立ち込める森
???「そなた、名はグレイシアか?」
グレイシア「・・・はい」
???「すまぬが、魂を頂戴する。悪く思うなよ」
グレイシア「・・・・・・」
???「効かない!?お前まさか!」
現在と過去、更にアンデルセンの視点もあるのでとても複雑な多重構造ですね💦 多重構造は好きなので憧れます😮
王様が皆のためにワザと馬鹿のふりをするのは、既定の物を変えずに、王様の印象を変える中々高度な技だと感服致しました‼ 素敵な裸ですね!