エピソード14『それぞれの道』(脚本)
〇豪華な部屋
【2034年、アラスカ『ホーム』。『グリーン・ブラザー』】
いつからだろう。ボクは彼女に惹かれていた。その姿をいつも追いかけていた。
グリーン・ブラザー「──その子、セキセイインコだろ? 強くなるよう弄ってやろうか?」
パープル・マム「・・・『グリーン・ブラザー』。この子を弄りたいの? この子の中を」
慌てて謝る。
彼女『パープル・マム』を前にボクはいつもカラ回りしていた。会話が上手くかみ合わない。
『マム』は努力の積み重ねで『ボーイ』や『ガール』を凌駕した。そんなところにどうしようもなく惹かれた。
パープル・マム「・・・『奈夢《なゆめ》』。ご飯があるからお食べ」
鍛錬、勉学の合間に『マム』はホームのテラスに居るインコへ会いにきた。
グリーン・ブラザー「あのさ、その子普通のセキセイインコだろ? なんでそんな贔屓にするのさ?」
パープル・マム「この子は、私が選んだ子。たった1人私が選んだ命なの」
インコ『奈夢』を見る眼差しは慈愛に満ちたもの。本当の『友人』を見る瞳の色をしていた。
パープル・マム「あなた美味しそうに食べるから、私いっぱいご飯作っちゃった。たくさん食べるのよ?」
器からサンドイッチを取り出し『奈夢』へ差し出す。それを『奈夢』が小さな口でついばんだ。
それを見守る『マム』は、ただただ、本当にキレイだった。
ボクはそんな『パープル・マム』がきっと、 ・・・誰よりも好きだった。
〇貴族の応接間
【2034年、モンガル。『歯車フォーチュン』】
国家主席「いやあ、本当に子は国の宝ですな。昔のあの政策に意味が在ったのか? 今となっては疑うばかりだよ」
国は子作りを推奨した。このユーラシア大陸のほぼ全てを統治している『モンガル大帝国』は今、まさに人で溢れている。
そしてそれは労働力となり国のあらゆる事業に貢献、『モンガル大帝国』は栄えに栄えた。
国民の義務に私が提言した『精子、卵子の提供』が盛り込まれ、今、国は『クローン』による新たな軍事力へチカラを注いでいる。
国家主席「いやあ、これもそれも『ノア』の科学主任『ジョーカス・オリファー博士』のおかげですな」
歯車フォーチュン「ああ、そんな名前も在ったかもしれないね。古い、今では汚いだけの名称だがね」
国家主席「そうでした。今は、クローン統治科学国家総統『歯車フォーチュン様』でしたな」
「これは失礼失礼」と『モンガル大帝国』の国家主席が嬉しそうに笑う。
国家主席「そうそう、」
国家主席が、そのでっぷりとした唇を開いた。
国家主席「島国の貧民集団、・・・化け物、・・・ナントカ、だったか? それにずいぶんと入れ込んでるみたいじゃないか?」
国家主席「アナタが目を掛けるなんて、そんなに有益な奴らなのかい?」
歯車フォーチュン「さあね、どうだったかな。・・・全然思い出せないよ」
グラスを傾ける主席を置き捨て、そのまま部屋を後にした。
杯に盛られた今にも香ってきそうなブドウと、その隣に積まれたキロ10000元の脂が気にいらない。
〇洋館の廊下
それよりも、そうだ。
──『化け物クリエイターズ』、彼らがイイ。彼らは私が望むものを望むだけ吐き出すだろう。
吹き出すように笑い、喉を転がす私の後方で、椅子から落ちた国家主席(ブタ)が、転がり床をのたうった。
閉じた扉の先からブタの嗚咽が響く。それは金と権力の悦びを覚えた家畜が発する、金満で芳醇な死の咆哮だった。
〇村の眺望
【2034年、イバラキ。『飼葉 タタミ』】
リーダーとの決別から半年、この国は夏を迎えようとしている。
あれから『真衣ちゃん』は著しい成長を遂げ7歳くらいの大きさになった。培養液を卒業したのもつい最近の事だ。
今はわたしが文字や運動、生きていくために必要な事を教えている。
『真衣ちゃん』は優秀だった。そして、とても優しい子だった。
液体の寝床を卒業した彼女は、わたしの隣りで体を休めている。
タタミ「『真衣ちゃん』、アナタはこれからどんな恋をするんだろうね」
タタミ「うわ!起きてたの? ごめんね」
真衣「・・・お姉ちゃん、恋って何なんだろう」
タタミ「うーん、・・・本当に何なんだろうね」
2人悩みながら、初夏の夜空を見上げた。
この地球を照らす太陽に似たあの人に、
──わたしたちは、きっと恋をしていた。
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭
それぞれの敵対しなくててはならない…しかし描きわけが!きちんとされていて感情移入します🌿それぞれが思うもの。美しさや愛しさ。恋に落ちまする🌿