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あとりポロ

エピソード15『チカラを』(脚本)

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〇村の眺望
  【2034年、イバラキ。『言霊 みれい』】
  夏の朝露が木々の葉に灯る中、『創』と彼、・・・『ジョーカー』がやってきた。
  
  『ジョーカー』が徐に、私たちの前に立つ。
みれい「『ジョーカー』。アナタがあの・・・」
グリーン・ブラザー「その通りだよ、『みれい』」
グリーン・ブラザー「この人こそが、世界の支配者『ブラック・ダド』。その人さ」
グリーン・ブラザー「そしてこの人は、ボクの『父さん』になってくれたんだ」
緋色「・・・隣町のおじちゃんが、あの『ジョーカー』で『ブラック・ダド』? そんな可笑しな話が、」
ブラック・ダド「『緋色くん』、私が此処に居る事実、それこそがただ1つの真実だよ。そして私は、・・・ここに居る皆を選ぼう」
  私たち1人、1人の腕を取って語りかける。その表情は以前と同じ、誠実さの籠ったモノだった。
ブラック・ダド「『緋色くん』」
ブラック・ダド「『みれいくん』」
ブラック・ダド「『タタミくん』、『楽々くん』」
ブラック・ダド「おいで我が家へ。我が『ホーム』へ」
  その眼差しは心から愛しい私たちが愛した『ジョーカー』、その人のモノだった。彼が私たちを偽ったことは、一度として無い。
ブラック・ダド「私は選んだものを見捨てない。救ってみせるから」
コージ「じゃ、じゃあ僕も?」
  あわてて駆け寄る『コージ』へ、何故だろう、『ジョーカー』『ブラック・ダド』であるそのヒトが、手を伸ばす事は無かった。
ブラック・ダド「すまないがキミはダメだ」
ブラック・ダド「キミとキメラの皆を、私は選ぶことが出来ない。お金なら与えよう。去っていくといい」
ブラック・ダド「皆に教えておこう」
ブラック・ダド「この世界は、日々、秒刻みで生き物が増えている。手を加えなければ決して減ることは無い。直接の原因は『ノアの大移民』だ」
ブラック・ダド「キミたち子供が生きていく過程で、私たち家族は、百、千、万の経済的・食糧的負担を抱える。飢えなければならない」
ブラック・ダド「・・・それを回避する為には」
ブラック・ダド「例えば、『名も分からぬキミ』、キミは死ぬべきなんだ」
  『コージ』を守る為にキメラの皆が動いた。『コージ』を守ろうとその爪を光らせ『ブラック・ダド』へ襲い掛かる。
ブラック・ダド「──所詮、畜生、という事か」
グリーン・ブラザー「帰投してくれ父さん! すぐに滅菌し、完全にその傷を塞ぐんだ!」
グリーン・ブラザー「『ペスト』を、『タマ』はボク達の中で唯一『ペスティス』を内包している! 引いてくれ!」
  『創』は控えていた無人機へ強引に『ブラック・ダド』を押し込み、そのレバーを引いた。
グリーン・ブラザー「『タマ』? こんな死に方あるかよ? おかしいだろ? なんでキミが死ぬんだ? キミは父さんに選ばれる子だったはずだ!」
グリーン・ブラザー「名前だって『ブラウン・パル』って決めていたのに! なんで?」
  ──『緋色』は『タマちゃん』の亡骸から『創』を離し、出来るだけキレイにした布を『タマちゃん』の顔に掛けた。
  『しまちゃん』と『パブロフ』の顔にも、頭下げ白い布を掛けていく。
  ・・・皆が深く黙祷した。
  『創』を乗せた無人機だけが、パスパス、と悲しげな音を立て大気へ飛び立つ。
  
  その後に私たちと、仲間の死体を遺して。

〇豪華な部屋
  【2034年、アラスカ『ホーム』。『グリーン・ブラザー』】
グリーン・ブラザー「おかしい、おかしいだろ? こんなのおかしい! な、何でだ?」
  可笑しかった。何故可笑しいのか解らない。けれど、絶対に何かが可笑しかった。そして真理を1つ其処に見た。
グリーン・ブラザー「そうだ。 みんな、みんなが弱かったからいけないんだ! みんなが強かったら、父さんはきっと、全てを選んでくれた!」
  きっと、それこそがこの世の真理なのだと思った。全ての真実は其処に在る。
グリーン・ブラザー「なら、ボクはその先駆けを創らないと、」
グリーン・ブラザー「最強のキメラ。クローンじゃない、キメラの最強形を!」
  地下の保冷室から、命の次に大切な『姉ちゃんの卵巣』を取り出す。それは未だ瑞々しい血の赤を、ボクの瞳へ映していた。

〇村の眺望
  【2034年、イバラキ。『言霊 みれい』】
  『創』と別れた私たちは、『緋色』の土地に『学校』を建てた。建築を営む夫婦に習い一から皆で。これできっと冬も凍えない。
  晴れたその日『緋色』が私へ話してくれた。この土地を『緋色』に譲ってくれたのは、あのおじさん『ブラック・ダド』だった、と。
  そして、そんな『緋色』が行った事は、
  
  隣町の隣町の工場《こうば》へ行って、左手用の『武器』を手に入れる事だった。
  頭を下げ少ない生活費から本当に貴重な『紙幣《おかね》』を求めた。
  
  『緋色』は一言も語らず皆へ頭を下げた。
  『緋色』は私たちと再会して初めて、
  
  
  
  武器を、──『ちから』を求めたの。
  𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭

次のエピソード:エピソード16『緋色のチカラ』

コメント

  • これが為政者と日々を生きる者。後者は私たちの多く。この世界はそれによって。人の世界そのものが造られて。しかし人ゆえに。それがいつも正しく幸福であるとは限らず。そうした人の悲しみや屍の上に。この世界について思います🌿

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