13 素質と覚醒 ―天郷編―(脚本)
〇祭祀場
久遠 陽菜(くおん ひな)(え!? この人が『翠霊斬』?)
翠霊斬(すいれいざん)「おぬし‥名は?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「ひ、陽菜です!」
翠霊斬(すいれいざん)「ふむ‥陽菜よ、供物をここへ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「は、はい! どうぞ!」
翠霊斬(すいれいざん)「‥おい」
久遠 陽菜(くおん ひな)「ひゃい!」
翠霊斬(すいれいざん)「先ほどから聞こえる腹の音、どうにかせよ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「き、聞こえてましたか!?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「すみません‥」
翠霊斬(すいれいざん)「・・・」
久遠 陽菜(くおん ひな)(ああ~! お腹の音が止まらない~!)
久遠 陽菜(くおん ひな)「昨日の朝、パンケーキを食べたきり、なにも食べてなくて」
久遠 陽菜(くおん ひな)「お腹がペコペコなんです」
翠霊斬(すいれいざん)「‥過去を見通し、把握した」
翠霊斬(すいれいざん)「おぬし、人間界からか‥ふむ」
翠霊斬(すいれいざん)「なるほどな」
翠霊斬(すいれいざん)「仕方ない‥ほれ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「え?」
翠霊斬(すいれいざん)「食え」
久遠 陽菜(くおん ひな)「いいんですか!?」
翠霊斬(すいれいざん)「食って、腹の音を鎮めよ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「ふぁ~♪ ありがとうございます!」
翠霊斬(すいれいざん)「ふっ‥いい食べっぷりじゃ」
翠霊斬(すいれいざん)「天郷では、人間界のように朝昼晩と食べる習慣がないからの」
久遠 陽菜(くおん ひな)「(もぐっ) へぇ~、そうなんですね」
翠霊斬(すいれいざん)「腹は満たされたか?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「はい、とっても美味しかったです♪」
久遠 陽菜(くおん ひな)「『翠霊斬』さんって、優しいんですね」
翠霊斬(すいれいざん)「ふん‥供物を食う巫女なんぞ初めてじゃ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「あは‥すみません」
翠霊斬(すいれいざん)「では」
翠霊斬(すいれいざん)「問う」
久遠 陽菜(くおん ひな)「!!」
翠霊斬(すいれいざん)「陽菜、おぬしは緋紗に立ち向かうために余の元に来たのだろう?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「はい!」
翠霊斬(すいれいざん)「緋紗の封印を解いたのは、おぬしの友の佐恵、ということは知っておるな?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「‥はい」
翠霊斬(すいれいざん)「おぬしは佐恵を正気に戻して救い出したい、そうじゃな?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「はい!」
翠霊斬(すいれいざん)「佐恵が正気を失って、緋紗に従うようになったのは」
翠霊斬(すいれいざん)「おぬしへの『妬み』の感情につけこまれたから、というのは知っておるか?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「え‥佐恵が私を、妬んでた?」
翠霊斬(すいれいざん)「自身を妬むような奴を助けたいと思うか?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「う~ん‥」
久遠 陽菜(くおん ひな)「思います!」
翠霊斬(すいれいざん)「!!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「だって佐恵は、私の親友だもん!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「私だって‥誰だって、いいなぁ‥羨ましいなぁって思うことはあります」
久遠 陽菜(くおん ひな)「佐恵はたまたま、そんな気持ちのときに、緋紗につけこまれちゃっただけ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「佐恵が私に、わだかまりを持ってるんだとしたら」
久遠 陽菜(くおん ひな)「ちゃんと話せば解決できる」
久遠 陽菜(くおん ひな)「大切な親友だから」
久遠 陽菜(くおん ひな)「絶対に助けます!」
翠霊斬(すいれいざん)(こやつ‥笑顔で、助けると言いきりおった)
翠霊斬(すいれいざん)「‥おぬしの気持ちは分かった」
翠霊斬(すいれいざん)「では」
翠霊斬(すいれいざん)「次に」
翠霊斬(すいれいざん)「最大限のおぬしのチカラを、余に見せてみよ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「はい!」
翠霊斬(すいれいざん)「ふん‥こんなものか」
翠霊斬(すいれいざん)「余を扱うためには、この倍のチカラは必要じゃ」
翠霊斬(すいれいざん)「残念じゃが、おぬしに余は扱えぬ」
久遠 陽菜(くおん ひな)(うそ‥人間界で修練してたときより、チカラが出せたと思ったのに)
久遠 陽菜(くおん ひな)「でも! 私‥夢で『翠霊斬』‥剣を手にしているのを見て」
翠霊斬(すいれいざん)「なぬ‥夢?」
翠霊斬(すいれいざん)(予知夢は、巫女の誰もが持つわけではない、稀有な能力)
翠霊斬(すいれいざん)(この程度のチカラしか持たぬのに、なぜ)
久遠 春菜(くおん はるな)「『翠霊斬』様、失礼いたします」
〇祭祀場
翠霊斬(すいれいざん)「なんじゃ、すでにチカラの選定が済んでおる巫女には用はない」
久遠 春菜(くおん はるな)「はい、おっしゃる通り、私はすでに選定が済んでおりますが」
久遠 春菜(くおん はるな)「いま一度、選定をお願いしとうございます」
久遠 春菜(くおん はるな)「陽菜と、一緒に」
久遠 陽菜(くおん ひな)「春菜!?」
久遠 春菜(くおん はるな)「陽菜、私に考えがあるの。任せて♪」
久遠 陽菜(くおん ひな)「うん‥?」
久遠 春菜(くおん はるな)「『翠霊斬』様! 見てください、私たちそっくりでしょう?」
翠霊斬(すいれいざん)「‥ふむ」
久遠 春菜(くおん はるな)「陽菜は、双子の妹なんです」
久遠 春菜(くおん はるな)「双子は元々ひとつ」
久遠 春菜(くおん はるな)「私が陽菜とひとつになれば、本来のチカラが発揮できると思うんです」
久遠 陽菜(くおん ひな)「春菜‥? なにするつもり?」
久遠 春菜(くおん はるな)「大丈夫、陽菜は目をつむってて」
久遠 陽菜(くおん ひな)「わ、わかった」
久遠 春菜(くおん はるな)「『翠霊斬』様、見ていてください」
翠霊斬(すいれいざん)「‥ふん」
翠霊斬(すいれいざん)「ほお‥」
翠霊斬(すいれいざん)「‥覚醒、したか」
久遠 陽菜(くおん ひな)「へ!? 覚醒!?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「あ! 服が変わってる‥髪‥長くて、色が変わってる!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「は、春菜は!?」
陽菜! 思ったとおり!
久遠 陽菜(くおん ひな)「春菜?」
もう一度、『翠霊斬』様に
チカラを見せてみて?
久遠 陽菜(くおん ひな)「‥うん」
久遠 陽菜(くおん ひな)「きゃ!」
翠霊斬(すいれいざん)「‥想定以上じゃ」
翠霊斬(すいれいざん)「わかった‥余を使うがいい」
翠霊斬(すいれいざん)「そして、すべてを元に戻せ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「戻った!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「春菜ぁ、無事?」
久遠 春菜(くおん はるな)「うん♪」
久遠 陽菜(くおん ひな)「ありがとう‥春菜」
久遠 春菜(くおん はるな)「成功して良かった♪」
久遠 春菜(くおん はるな)「私のチカラが必要なときは、助けに行くから」
久遠 春菜(くおん はるな)「ほら! 早く人間界に帰りなさい」
綺羅(きら)「よ~お、終わったかの~?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「綺羅♪」
久遠 春菜(くおん はるな)「綺羅さん、陽菜の転送をお願いします」
綺羅(きら)「任せとけ!」
綺羅(きら)「わしは玲仁とは違う!」
綺羅(きら)「ポンコツ玲仁のところへ、寸分の狂いもなく送ってやるぞ!」
久遠 春菜(くおん はるな)「おおー♪ 頼もしい~♪」
綺羅(きら)「では! 行くぞ!」
〇謎の扉
〇女の子の二人部屋
玲仁(れいじ)・神狐「陽菜は頑張っておるかのぉ‥」
久遠 陽菜(くおん ひな)「玲仁! ただいま!」
玲仁(れいじ)・神狐「陽~菜~♪ 早かったのぉ」
玲仁(れいじ)・神狐「昨日ぶりじゃな!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「ええ!? 私、3日くらい天郷にいたよ?」
玲仁(れいじ)・神狐「人間界とは時の進みが異なるからのぉ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「そうなの!?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「言っといてよ~」
玲仁(れいじ)・神狐「すまぬすまぬ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「それより玲仁!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「私、認められたよ『翠霊斬』に♪」
玲仁(れいじ)・神狐「まことか!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「ほら、これ♪」
玲仁(れいじ)・神狐「おお‥『翠霊斬』」
久遠 陽菜(くおん ひな)「巫女神の集落に、私の双子のお姉ちゃんがいてね」
久遠 陽菜(くおん ひな)「お姉ちゃん‥春菜のおかげで、覚醒して、『翠霊斬』に認めてもらえたの」
玲仁(れいじ)・神狐「‥そうか」
玲仁(れいじ)・神狐「永かった‥まさか『翠霊斬』を陽菜が手にするとは」
玲仁(れいじ)・神狐「やはり、陽菜は我の運命の巫女じゃ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「運命の‥巫女‥?」
玲仁(れいじ)・神狐「我らは、出会うべくして出会ったのじゃ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「‥玲仁」
まさに映画のごときスチル演出にドキドキしてしまいました🥰
そして、翠霊斬さんの問いへの陽菜ちゃんの回答、彼女らしい真っ直ぐで清々しいものですね😊
……冒頭のお腹の音のラッシュ、笑いが止まりませんでした🤣🤣
陽菜ちゃんの怒涛のお腹の音が凄かったです…w(最初、何の音が鳴っているのかと思いました…w)
双子が合体して真の力に目覚めるのは熱いです…!そして玲仁様との仲が急接近…!?