第2話「ボロアパートを脱出せよ」(脚本)
〇安アパートの台所
春風 洸(はるかぜ ひかり)「抜けたッッ!(父ちゃんの股ぐらを)」
春風 洸(はるかぜ ひかり)(イヤ、喜んでる場合じゃない!)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(ドアを開けて、脱出するんだ!)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(でも、今の私の念動力じゃ・・・)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(──いいや)
やるんだ!
〇古いアパート
第2話
「ボロアパートを脱出せよ」
〇安アパートの台所
春風 陸太(はるかぜ りくた)「パパ嫌・・・パパ嫌された・・・」
春風 海(はるかぜ うみ)「泣いとる場合か!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「まあでも、鍵してあるから」
「へ?」
「!?!?!!!?」
〇安アパートの台所
春風 洸(はるかぜ ひかり)(で、出た! 念動波! なんで!?)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(なんか母ちゃんから離れたら 超能力が戻ったような・・・?)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(前に比べたらミジンコみたいな威力 ──それでも)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(鍵は壊せた!)
行くよッ!
〇安アパートの台所
春風 海(はるかぜ うみ)「あぁ〜敷金が・・・」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「言ってる場合かよ!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「洸ッ!」
〇古いアパート
隣の大家さん「うるせーぞ春風家! 何時だと思ってんだ!」
隣の浪人生「お勉強がちっともはかどらないよォ〜〜〜!!?」
隣の浪人生「キエエエエエエエエエ!」
〇安アパートの台所
春風 陸太(はるかぜ りくた)「待ってくれ、洸ッ!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「・・・」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「どうして」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「どうしても、出ていくの?」
春風 海(はるかぜ うみ)「・・・」
〇黒
だって、決めたんだ
私は兄ちゃんに会いにいく
2人共、とってもあったかいけど
──でも
私が、普通の人と暮らせるはず
ない、から──
〇組織の廊下
特務部隊職員「聞いた? あの噂」
特務部隊職員「あぁ、新しく来た戦闘員?」
特務部隊職員「1人でテロ組織を鎮圧したって・・・」
特務部隊職員「噂じゃないぜ、それ」
特務部隊職員「しかも、念動力で占拠したビルごと潰して、血祭りに上げたんだと」
特務部隊職員「えっ・・・」
特務部隊職員「っと、そっちは噂だったか」
特務部隊職員「なによもう」
特務部隊職員「たしか、テレパシーもかなり使えるのよね」
特務部隊職員「ああ、訓練で見たけど、凄まじかったぜ」
特務部隊職員「攻撃しようとしたヤツの武器が、端から全部壊されちまう」
特務部隊職員「こっちの頭の中は筒抜けってわけ」
特務部隊職員「その癖、あの無表情じゃない? 何考えてるかわからなくて」
特務部隊職員「・・・不気味なのよね」
特務部隊職員「あっ・・・オイ!」
特務部隊職員「ひっ」
ネロ「・・・」
特務部隊職員「い、いや」
特務部隊職員「その・・・」
〇組織の廊下
別に、今更取り繕わなくても
ずっと全部きこえてるよ
怖い
気持ち悪い
聞かれた?・なんでこんなところに・怒ってる?・畜生これもテレパシーで・嫌だ嫌だ嫌だ・全部バレてる
殺される?・チクショウ嫌だ・やめて・嫌だ!・殺さないで!・近寄るな・来ないで!・この──
『化物』
こんなの、知りたくないのに
こんな力、なければいいのに
ネロ(いや──いなければいいのは)
ネロ「私の方、か」
〇組織の廊下
特務部隊職員「助かっ・・・た?」
〇安アパートの台所
春風 陸太(はるかぜ りくた)「・・・」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「わかった、もう止めない」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「どこへでも、行けばいい」
春風 海(はるかぜ うみ)「ちょっと、ナニ言ってんのよ!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「その代わり!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「洸がここを出てくならッ!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「俺も出て〜〜〜く! ! !」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「・・・」
春風 海(はるかぜ うみ)「ハァ〜〜〜〜?」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「俺も! 出て〜〜〜〜くッッッ!」
春風 海(はるかぜ うみ)「2回言わんでええわ!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「だってしょうがないじゃないか!」
春風 海(はるかぜ うみ)「何が!?」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「我が子の逃避行に、熱いパトスを感じてしまったんだから!」
春風 海(はるかぜ うみ)「パトスて、お前・・・」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「その上でッッッ!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「一緒に行くよ俺は! だって!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「お父さんだからねッッッ!」
〇黒
こんな言葉、いつか
何処かで──
〇組織の廊下
ネロ「・・・」
「ネロ!」
ネロ「・・・兄ちゃん」
月光「その荷物、もしかしなくても──」
月光「ここを出るつもりか?」
ネロ「・・・」
ネロ「だって、ここには」
ネロ「私の居場所、ないから」
月光「・・・」
月光「そっか──」
ネロ「・・・」
月光「じゃあ十分後にロビーで待ち合わせでいい?」
ネロ「うん──」
ネロ「ってえええ!?」
ネロ「なに当然のように付いてこようとしてるの!?」
月光「逆に聞いていい? 兄ちゃんの妹愛をナメてないか?」
月光「どんなに逃げても、世界中の草を根絶やしにして必ず追い詰めるからな」
ネロ「いや怖いな!」
月光「アレ・・・? 草の根を分けて、だっけ?」
ネロ「もう、兄ちゃんは・・・隙あらば地球環境を破壊しようとするんだから」
ネロ「・・・」
ネロ「──ふふっ」
月光「へへっ」
〇黒
ネロ「これから、どうしよう」
月光「どこに行ってもいいよ どこにいてもいい」
月光「今みたいに、笑える場所にしてみせる」
ネロ「──」
ネロ「もう・・・」
ネロ「どうしてそんないつも 私が欲しい言葉がわかるの?」
月光「そりゃ、決まってる」
『俺は、お兄ちゃんだからな』
〇安アパートの台所
春風 洸(はるかぜ ひかり)「・・・」
春風 海(はるかぜ うみ)「そういうことなら、わかったよ」
春風 海(はるかぜ うみ)「ちょうど私も、心無い隣人の壁ドンに辟易してたところさ」
春風 海(はるかぜ うみ)「どーせ敷金返ってこねーし」
隣の大家さん「オイイ! 聞こえてんゾォ!?」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「でも、海ちゃんは・・・」
春風 海(はるかぜ うみ)「止めても無駄だぜ陸太!」
春風 海(はるかぜ うみ)「お産直後で体ボロッボロだけどなぁ」
春風 海(はるかぜ うみ)「こちとら、お母さんだぞ!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「・・・」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「いや、あの」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「まず服着て・・・?」
春風 海(はるかぜ うみ)「いやん」
〇黒
言ってくれるのかな、この2人なら
私がエスパーでも
『ここにいていいよ』って
春風 洸(はるかぜ ひかり)(あ、あれ・・・?)
〇安アパートの台所
春風 海(はるかぜ うみ)「あ、洸が」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「新生児のあるべき姿に戻った・・・」
春風 洸(はるかぜ ひかり)(悲しいわけじゃないのに)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(どうして? 急に──)
春風 洸(はるかぜ ひかり)「ふぐっ」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「へふっ、へふっ・・・へぐっ・・・!」
〇古いアパート
「アア────────ァァァ・・・」
〇古いアパートの一室
春風 海(はるかぜ うみ)「よしよし・・・」
春風 海(はるかぜ うみ)「ここに来て初めての大泣きだなぁ〜」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「こうやって泣いてくれるのもさ 考えたら嬉しいよな」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「なんかさ」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「安心して甘えられるって 認めてくれたみたいでさ」
春風 海(はるかぜ うみ)「そっか、そうだね」
春風 海(はるかぜ うみ)「そうだといいな」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「──なあ、洸」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「父ちゃん達の腕の中でなら」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「いくらでも泣いていいからな」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「・・・」
コォオオオオオオオオ!
「えっ」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「オンッッッッッッッッッッッッッッッ」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「ギャァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」
〇古いアパートの一室
春風 洸(はるかぜ ひかり)「ア゛ァァァ! ア゛ァァァァァァン! (お腹空いた! ミルク飽きた! ピザとか食べたーい!)」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「ェエエ゛エ゛ィェエエ゛エ゛ーーィ! (ねむいのにねむれな〜〜〜〜〜〜い!)」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「ヴァァァァァァァァァァァアアアアアア!!! (感情が何もかも処理しきれなぁああああああああああああい!!!)」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「あわわわわ」
春風 海(はるかぜ うみ)「こ、鼓膜が・・・」
隣の浪人生「事件ですか、事故ですか、虐待ですかァ!? 通報しましたァァァ!」
隣の浪人生「私、心ある隣人ですから! ! !」
春風 海(はるかぜ うみ)「ちょタイム! ごめんて!」
隣の大家さん「とっとと出てけやァァァ〜〜〜!!!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「もう少し住みまっす!」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「ア゛ィア゛ァァァア゛ア゛ア゛ア゛! (だいたい私がこんなになってるのに!)」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「イァイアイァ゙ァ゙ァ゙アア〜〜〜!!! (兄ちゃんも組織のみんなも何やってるの〜〜〜!!!)」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「エ・・・エ・・・ェエエ (ていうか今のショックで・・・)」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「ウワアアアアアアアアアアア゛ア゛ン! (ウ ン チ も ら し た ァ ン!)」
春風 海(はるかぜ うみ)「よーしよしよし よーしよしよしよし!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「パパ、ヒカちゃんの笑顔が見たいなあ!」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「ンィヤア゛ァァァアアアアアアアアア! (ヤダもぉぉぉぉぉおおおおおおん!)」
「お・・・」
「おんぎゃあ〜〜〜〜〜!」
〇古いアパート
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
〇古いアパート
「────────ァァァ」
〇古いアパートの一室
春風 洸(はるかぜ ひかり)「ァァァ──ァァア・・・」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「ァ・・・」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「や、やっと寝た・・・」
春風 海(はるかぜ うみ)「・・・かわいい寝顔だぜ」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「パ〜・・・ェスパ〜・・・」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「・・・キャッキャッ」
つづく
鎮まりたまえ!
今の自分にぴったりな言葉。
いやしかし見た目赤ちゃんなのにその記憶にすごい感情が揺さぶられますね。
パトスは笑いました。ボケっぱなしかと思いきや、秒で嫁が突っ込んでいていい夫婦だなとほっこりしました。
怒涛の大事件でしたね、赤ちゃんや両親にとっては(≧▽≦)
もう少し住みまっす!の冷めたパパのコメントに笑いました。
しかし、赤ちゃんに生まれ変わるのは大変そうですね。嗜好品の味を覚えた後でミルクだけは確かに飽きちゃいます😭
楽しく温かい物語!!次話も楽しみです😆
隣人たちのキレのあるツッコミ、笑いました! それにしてもアパートの壁が薄すぎる。笑
泣ける回想からのギャン泣き、感情がぐちゃぐちゃになったせいかと思いきや、ピザ食べたい等の欲望も丸出し! 回想シーンのネロ様と洸のギャップが、何ともかわいかったです^^