サイキック赤ちゃんHIKARI

西瓜頭

第3話「月のうらがわ」(脚本)

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〇研究所の中枢
  妹は、生まれつき優秀なサイキッカーだった
  施設で、俺と同じように「番号」で呼ばれていた彼女は
  順番を抜かして部隊に引き抜かれ、実戦に投入された

〇荒野
  だから、特務部隊に志願した
  自分が最前線に行く代わりに、妹を守る
  それしか、方法がわからなかった

〇黒
  妹をひとりぼっちにしないように
  せめて、さみしくないように
  ずっと、寄り添っていたかった
  ──だけど、知らなかった
  俺たちの部隊が相手どるテロリストは
  そのほとんどが同じエスパーで
  異端扱いされ、世界から爪弾きにされた同胞たち
  彼らを手にかける度に
  心の底が掻き毟られるような
  魂が濁るような
  鈍い痛みを、胸に覚えていた
  第3話
  「月のうらがわ」

〇古いアパートの一室
  前回の
  サイキック赤ちゃん洸
  サイキック・エネルギーで
  増幅された洸のギャン泣き

〇古いアパート
  その大音声は摂理を超え

〇地球
  暗黒物質さえ震わせて
  はるか彼方に届いた

〇パールグレー
  月
月光「・・・」
月光「ネロ・・・?」
月光「・・・」
月光「あれれ? 身体が動かないよ?」
月光「ここは──」
月光「なんで俺の身体、お月様から生えてるの?」
月光「・・・」
月光「さみしいよー」
月光「孤独だよー」
月光「妹成分が足りない・・・うっうっ」
月光「ふぐううう!」
月光「出ァして! 出ァしてェ!」
月光「ネロ────────! お兄ちゃんはここだよ〜〜〜〜〜! ! !」
月光「むなしい・・・ウッウッ・・・」
月光「あ」
月光「あ、頭──が・・・」
月光「そ──うだ、そんなわけない」
月光「妹は」

〇宇宙空間

〇黒
「死んだんだ」

〇秘密基地のモニタールーム
槇島 諒(まきしま りょう)「問題ないか」
オペレーター「はい」
オペレーター「対象を固着し、継続的に反ESPの力場を展開」
オペレーター「しかし、真空の月面で・・・」
オペレーター「とんでもない生命力ですね」
槇島 諒(まきしま りょう)「元々はそうでもなかったさ」
オペレーター「というと?」
槇島 諒(まきしま りょう)「ヤツ──月光は相対したエスパーの能力を奪い取る」
槇島 諒(まきしま りょう)「戦えば戦うほど、化物になっていく」
オペレーター「・・・」
オペレーター「その能力で──」
オペレーター「そのために、長官は彼を生け捕りにされたんですね」
槇島 諒(まきしま りょう)「ああ、奴には生きて役に立ってもらう」
槇島 諒(まきしま りょう)「──全てのエスパーを」
槇島 諒(まきしま りょう)「この世から消し去るために」

〇黒
月光「・・・」
月光「組織(ネロ・ファミリア)の皆と バカやってる時は楽しかったよなァ」

〇秘密基地の中枢

〇黒
月光「──けど」
月光「ひとつ能力を奪うたび」
月光「ひとつ命を屠るたび」
月光「俺の中で同胞(みんな)が さわぐんだ」
月光「人生を戻せ」
月光「生命を戻せ」
月光「なぁネロ 兄ちゃんさ」
月光「もう我慢しなくていいよね」

〇黒
月光「月のうらがわはケロイドみたいに穴だらけだ」
月光「こいつを、地球にくれてやる」

〇古いアパート

〇古いアパートの部屋
春風 海(はるかぜ うみ)「時間だ」
春風 海(はるかぜ うみ)「おっぱいをくれてやる!」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「えぅ〜」
春風 海(はるかぜ うみ)「ほぉ〜らヒカ〜 おいで〜❤」
「ただいま〜」
春風 海(はるかぜ うみ)「おつかれ〜」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「あっ!」
春風 海(はるかぜ うみ)「なに」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「おっぱいあげてる・・・」
春風 海(はるかぜ うみ)「あげてますがなにか?」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「羨ましい(直球)」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「俺もおっぱいあげたいのに・・・」
春風 海(はるかぜ うみ)「あ、そっち?」
春風 海(はるかぜ うみ)「あげればいいじゃん ほ乳瓶でミルクをさ」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「そうじゃない」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「俺は「おっぱい」をあげたいんだ!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「チクショウ俺にもおっぱいがあれば!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「ここが父乳(ふにゅう)の出る世界線だったらなああああ!」
春風 海(はるかぜ うみ)「何言ってんだコイツ」
春風 海(はるかぜ うみ)「育児ノイローゼかな?」
春風 海(はるかぜ うみ)「ヒカ〜? オメーのとーちゃんやっべっぞ」
春風 洸(はるかぜ ひかり)「・・・へぅ〜 (アナタの旦那さんですよ?)」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「なんだよ、俺がいない間に仲良くやってくれちゃってサ!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「おっぱいによる赤ちゃんの独占 断固反対!」

〇古いアパートの部屋
春風 洸(はるかぜ ひかり)(赤ちゃんの身体で飛び出すのちょっと無謀だったかな・・・)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(エスパーってバレるのは危ないけど)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(まずはこのアパートを拠点に足場を固めなきゃ・・・)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(身体が成長すれば、超能力も戻ってくるはず)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(そうと決まれば──)
春風 海(はるかぜ うみ)「ん? アレ?」
春風 海(はるかぜ うみ)「なんか噛んでない?」
春風 海(はるかぜ うみ)「あだっ! あだだだ!!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「およそ授乳から出ちゃいけないエフェクトが出てる!」
春風 海(はるかぜ うみ)「ヒカちゃん! 痛い! 痛いよ!?」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「洸、めっ! めっだよ!」
春風 海(はるかぜ うみ)「引っ張らないで〜!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「ゴメーン!」
春風 洸(はるかぜ ひかり)(全力で栄養(おっぱい)を)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(吸い尽くすのみ!!!)
春風 海(はるかぜ うみ)「! ! ! ! ?」

〇古いアパート
「ぐああああああああああああ! ! !」

〇古いアパートの部屋
春風 海(はるかぜ うみ)「ギ、ギギ・・・」
春風 洸(はるかぜ ひかり)(や・・・)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(やりすぎた・・・)
春風 海(はるかぜ うみ)「ちくびとれた」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「大丈夫!」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「乳首がとれても、まわりのブツブツが 次の乳首になるって聞いたことあるよ!」
春風 海(はるかぜ うみ)「今いらねーんだよ 都市伝説レベルの気休めは!」
春風 海(はるかぜ うみ)「あとまだ取れてないわァァァ!!!!」
春風 海(はるかぜ うみ)「あ・・・」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「海ちゃん!」

〇古いアパートの部屋
「・・・」
「大丈夫?」
「・・・うん、でも」
「なんか、熱出てきたかも」
「あと──おっぱい」
「出なくなっちゃった」
「・・・うう」
「ごめんね、洸」
春風 洸(はるかぜ ひかり)(・・・)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(どうしよう)
春風 洸(はるかぜ ひかり)(私のせいだ)

〇安アパートの台所
春風 陸太(はるかぜ りくた)「・・・」
「もしもし・・・?」
「うん、海が・・・」

〇古いアパートの部屋
春風 陸太(はるかぜ りくた)「海、もうちょっとの辛抱だぞ」
春風 陸太(はるかぜ りくた)「ばあちゃん来てくれるって!」
春風 海(はるかぜ うみ)「え゛〜、呼んだのォ?」
「なんだいなんだい! 散らかってるねえ!」
「こんなんで子育てができるのかい!?」
春風 洸(え? この声って・・・)
???「呼ばれて飛び出て──」
春風 海(はるかぜ うみ)「うわもう来た」
春風 洸(ゲエッ!)
喜島 春枝(きじま はるえ)「アタシだよッッッッッ!!!」
「出たな妖怪ババア!!」
喜島 春枝(きじま はるえ)「カァ────────ッ! ! !」
  つづく

コメント

  • 今回もおもしろかったです〜!
    相変わらずギャグがキレキレでめちゃくちゃ笑いました! 
    これからシリアスパートも増えてくるのかな?楽しみにしています✨

  • おどろおどろしいスチルの連続からの兄ちゃん闇堕ちフラグ……という、前半シリアスから打って変わっての後半。まさかの切れ味鋭い授乳ギャグ。吹きました。
    パパの反応から「もう一個空いてる」とか駄々こねるのかな……?と読みながら次の展開を予想していたら、まさかの父乳だもの。リアルでも思わず「え、そっち!?」と声に出てしまうほど、反応シンクロしながら笑いました☺︎
    次回も楽しみにしてます!

  • 宇宙のお話が洸の妄想じゃあないかって思えるくらいほのぼのファミリーストーリーで癒されます。月の表面の描写が上手くて自然でした。単色背景侮れませんね!
    お兄ちゃんとの再会が待ち遠しいです

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