精霊の湖

桜木ゆず

第9話 その祈りは運命をも変える(脚本)

精霊の湖

桜木ゆず

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〇噴水広場
レギン「こんな所で、どうしたの? 一人?迷子?」
ホープ「いいえ 戦祭りが見ていられなくて 外に出てきたんです」
ホープ「私、あまり好きじゃないかな・・・」
ホープ「あっ!ごめんなさい! 祭りの関係者に失礼でしたよね」
レギン「ふふっ、いいのよ 私もね、戦祭り、嫌いなの」
ホープ「えっ?」
レギン「だって血は出るし、人が傷つくし 私は反対、かな」
ホープ「そうなんですか・・・ 私と同じですね」
レギン「ねぇ、良かったら暇だし祭りの露店を 一緒に見に行かない?」
ホープ「面白そうですね! でもルーフェンさんが あんまり遠くに行くなって・・・」
レギン「大丈夫! すぐそこの通りだから!」
ホープ「・・・」
ホープ(お店かぁ、見てみたいな)
ホープ「では少しだけなら」
レギン「良かった! じゃあ行きましょうか?」

〇王宮の入口
ホープ「わわっ! 人がたくさん!」
レギン「ふふっ、賑やかで楽しいわよね」
「ワンワン!」
エレ「ハッハッ!」
店主「はいはい、ご飯ね」
レギン「こんにちは かわいいワンちゃんですね」
レギン「ここは一体どんなお店ですか?」
店主「やぁ ここは動物用品店だよ」
ホープ「動物用品店?」
店主「質の良いエサや首輪なんかを売ってるのさ」
店主「あんた達は何か動物を飼っているかい?」
ホープ「いいえ レギンさんは?」
レギン「私もよ、残念ですわ・・・」
店主「あらら、そうかい」
ホープ「ん?」
ホープ「これは何ですか?」
店主「これは犬笛だよ 遠くにいる犬を呼ぶためのものさ」
レギン「犬笛・・・ いったい、どんな音が鳴るのかしら?」
店主「ふふふっ 聞いてみる?」
店主「すぅ──」
ホープ「・・・!」
エレ「・・・!!」
エレ「ワン!」
店主「よーしよし」
ホープ「すごく高い音・・・」
ホープ「耳が変になりそうですね」
「えっ?」
店主「あんた今の音が聞こえたのかい!?」

〇王宮の入口
店主「あんたは聞こえたかい?」
レギン「いいえ、私は聞こえなかったわ」
店主「そうよねぇ・・・ 犬笛っていうのは基本的に 人に聞こえない音域なんだけれど」
店主「あんた・・・」
店主「犬なんじゃないの?」
「えっ?」
店主「あっはっはっ! 冗談よ、冗談!」
店主「そんな間に受けなさんな」
店主「良かったら、犬笛をあげるよ」
店主「あんた面白いからさ」
ホープ「えっ、いいんですか?」
レギン「もらっておきなさい」
ホープ「じゃあ──」
ホープ「ありがとうございます」
店主「ええ、どういたしまして」
店主「無くさないように、 首からかけられるようになってるからね」
ホープ「ほんとだ、助かります」
ホープ(わぁ、銀が光に反射して綺麗だなぁ・・・)
レギン「ではそろそろ・・・ 私たちはこれで失礼しますわ」
ホープ「ありがとうございました」
店主「ええ、じゃあね」
レギン「犬笛もらえて良かったわね」
ホープ「はい、とっても嬉しいです!」
レギン「・・・あっ!」
ホープ「レギンさん? どうかしました?」
レギン「戦祭り!」
ホープ「あっ!」
レギン「少し長居してしまったかもしれないわ」
レギン「そろそろ戻りましょう」
ホープ「はい!」

〇噴水広場
ホープ「あれ? なんだか人がたくさん」
レギン「どうやら午前の試合が 終わってしまったようね」
ホープ「えっ?! ルーフェンさんは会場の中かな・・・」
ホープ「あっ、ルーフェンさんだ!」
ルーフェン「・・・」
レギン「ルーフェン様が見つかった? それは良かった」
レギン「私ももうそろそろ 仕事に戻らないと・・・」
ホープ「はい、楽しかったです ありがとうございました」
レギン「じゃあね」
ホープ「ルーフェンさん、 私にまだ気づいていないみたい」
ホープ「驚かしてみようかな」
ルーフェン「──」
ホープ「ルーフェンさん!」
ルーフェン「・・・!!」
ホープ(ふふっ、驚いた!)
ルーフェン「ホープ! どこに行ってたんだ」
ホープ「えっ?」
ルーフェン「遠くまで行くなと言ったろう」
ホープ「ご、ごめんなさい」
ルーフェン「祭りでは普段は日影に居るような 危ない奴らも出てくる」
ルーフェン「何もなかったから良かったが、 全く・・・」
ルーフェン「もう勝手な、危ないことはするな 分かったか?」
ホープ「分かりました」
ルーフェン「よし、この話はもう終わりだ 昼食でも食べに行くこうか」
ホープ「はい」
ホープ(もしかして今のは──)
ホープ(心配、してくれたのかな──)
ホープ「・・・」

〇古い競技場
ホープ(あっ雪だ・・・ 綺麗だなぁ)
ホープ「そろそろ午後の試合が始まりますね・・・」
ホープ「あれ? 古代の戦士の服・・・に着替えなくて いいんですか?」
ルーフェン「あぁ、いいんだ 今朝、あの大司教に許可をとったからな」
ホープ「・・・どうしてですか?」
ルーフェン「それは──」
ルーフェン「足が・・・」
戦祭り受付の女性「ルーフェン・ディンさん 試合が始まりますよ」
戦祭り受付の女性「さぁ、あちらへ」
ルーフェン「あぁ、分かった」
戦祭り受付の女性「お連れのあなたは、 そのままここで観ていてね」
ホープ「は、はい」
戦祭り受付の女性「では、お願いしますね」
ルーフェン「行ってくる」
ホープ「・・・はい」
ホープ「・・・」
ホープ「ルーフェンさん!あの!」
ルーフェン「ん?」
ホープ「頑張ってください! あと、気をつけて下さいね」
ルーフェン「ふっ・・・ あぁ、ありがとう」
ホープ「あぁ、どうか──」
ホープ「──どうか 怪我がありませんように・・・」

〇古い競技場
「それでは午後の試合を開始しまーす!」
「15番ルーフェン・ディン!」
ルーフェン「・・・」
「そして前回の優勝者! トレイユ国からはるばるやって来た! トレイユ騎士長の~~」
「バラバイ・サイドルだ!!」
バラバイ「いやぁ・・・ どーも、どーも!」
「それでは! よーいファイト!」
バラバイ「お互いに、かわいい弟子に 無様な姿は見せられませんからな」
バラバイ「行きますよ!」
ルーフェン「あぁ」
バラバイ「はぁっ!!」
ルーフェン「っ!」
バラバイ「おぉっ! 今のをかわすとは!なかなかやりますな!」
バラバイ「でしたら!」
ルーフェン「っ!!」
バラバイ「はぁはぁ・・・ 全て受け止めるとは!」
ルーフェン「そこだっ!」
バラバイ「!!」
バラバイ「は、早い・・・! そして重い!」
ホープ「ルーフェンさんと互角だなんて!」
ホープ「さすが前回の優勝者だ・・・」
ホープ「ルーフェンさん!負けないで!」
ルーフェン「・・・!」
ルーフェン「全力でいくぞ」
ルーフェン「はぁっ!」
バラバイ「ぐわっ!」
バラバイ「はぁ、はぁ」
バラバイ「くそっ! 私は負ける訳にはいかないんだ!」
バラバイ「トレイユの騎士として・・・」
バラバイ「そして何より、 愛弟子の前で負けることなど!」
バラバイ「うぉぉぉぉ!」
ホープ「!!」
ホープ(な、なに?)
ホープ(空気が震えてる?)

〇古い競技場
ホープ「この感じ・・・」
ホープ「──魔法?」
バラバイ「うぉぉぉ!」
ルーフェン「!!」
ホープ「また空気が! まさかっ!」
ホープ「ルーフェンさん!危な・・・」
バラバイ「くらえっ!」
  バラバイは固い拳で
  ルーフェンを殴り付ける
  しかしルーフェンは
  バラバイの拳を蹴りで相殺した──
  ──かに思えたが、
  バラバイはルーフェンの足首を掴み
  捻りあげる
ルーフェン「しまった! 身動きがとれな──」
バラバイ「これで終わりだぁぁぁぁ!」
ルーフェン「っ!?」
「ぐっ──!!」

〇古い競技場
「魔法を使ったようだぞ!!」
「きゃっー!! 足が・・・!足が吹き飛んでる!!」
「は、早く医者を!」
ホープ「そんなっ!」
ホープ「ルーフェンさんっっ!!」

〇古い競技場
ルーフェン「・・・」
ホープ「ル、ルーフェンさんっ! ルーフェンさん!!」
ホープ「・・・っ! そんな!」
ホープ「右足首から下がっ・・・」
ホープ「吹き飛んでる・・・!!」
ホープ「ルーフェンさんっ! 目を覚まして下さいっ!」
ホープ「・・・うそ・・・」
ホープ「やだよ・・・」
ホープ「死なないでぇっ!」
ルーフェン「・・・?」
イリーナ「ルー・・・」
イリーナ「・・・っ!」
ルーフェン「イリー・・・ナ?」
ルーフェン「イリーナ・・・ どうして・・・?」
ホープ「ううっ・・・」
ルーフェン「ホープ・・・か?」
ホープ「ルーフェンさん!?」
ルーフェン「お前・・・どうして試合に・・・」
ルーフェン「痛っ・・・」
ホープ「ルーフェンさんっ!」
ルーフェン「こんな所まで・・・ 入って・・・きたらダメだろ」
ホープ「だってっ! だって足がっ!」
ルーフェン「足──?」

〇古い競技場
ルーフェン「足が・・・吹き飛んで・・・」
ルーフェン「・・・」
ルーフェン「あぁ、なんだ そういうことか」
ルーフェン「泣くな、俺は大丈夫だから」
ホープ「全然大丈夫じゃないです!」
ホープ「どうしていつもそうなんですか!」
ルーフェン「・・・」
ルーフェン「よく見てみろ 血は出てないだろう」
ホープ「えっ?」
ホープ「・・・」
ホープ「本当だ・・・」
ホープ「でも、どうして?」
ルーフェン「ふっ・・・」
ルーフェン「俺の右足は・・・」
ルーフェン「義足・・・なのさ」
ホープ「ぎそく?」
ルーフェン「だから大丈夫だ──」
ルーフェン「心配するな」

次のエピソード:第10話 "意志"の力

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