勇者の姉とビン詰め魔王

久望 蜜

第8話 勇者の始まり②(脚本)

勇者の姉とビン詰め魔王

久望 蜜

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〇闇の要塞
  魔王城

〇要塞の回廊
イーノク「まさか生きているのか、ヴィンセント・・・」
イーノク「どうする、どうする、どうする──」
イーノク「暗殺計画がバレていれば、私の身が危ないぞ」
イーノク「こうなったら、奴が戻ってくる前に──」
イーノク「何としてでも、消すしかない・・・!」

〇黒

〇原っぱ
カニーラ「聖教によって、勇者が量産されている──」
カニーラ「そのことを知っているっすよね?」
イーさん「・・・ああ」
イーさん「各地域の大きめの街に聖剣を設置し、」
イーさん「有望そうな若者が来たら、それを抜かせる」
イーさん「あとは証と僅かばかりの金を与えて、魔王討伐へ行かせる」
イーさん「仲間は勇者自ら集めてくれるから、教会の戦力が減ることもない」
カニーラ「そんなの、あんまりっす!」
イーさん「だが、聖教がやっているのは、それだけじゃない」
イーさん「子どもに勇者への憧れを植えつけているんだ」
イーさん「俺はその責任をとるために、ここにいる」
カニーラ「どういうことっすか・・・?」
イーさん「なあ、ところで──」
イーさん「ルークのやつ、どこへ行った?」
カニーラ「え」

〇城の客室
司教「捕えなさい!」
ライラ「こうなったら──」
ライラ「ウマちゃん、お願い!」
ライラ「『封印、緩んで!』」
ウマ「ウマ〜!」
司教「な、何だ! この魔物は!」
司教「どこから出てきた!」
ライラ「ポケットからよ」
ライラ「ウマちゃん、脱出して!」
ウマ「ウマッ」
聖騎士「窓から逃げたぞ! 追え!」
聖騎士「捕まえろ!」
司教「ここまで追いつめたのに、みすみす逃すとは・・・」
アルマ「ちょっと司教様! わたしの娘がいないわ!」
司教「何!?」

〇西洋の城
聖騎士「聖女様が誘拐されたぞ!」
ライラ「あ、バレちゃったみたい」
ライラ「ウマちゃん、ビンスくんたちの居場所がわかる?」
ウマ「ウマウマッ」

〇噴水広場
ビンス「まさか聖教で、そのようなことが行われておったとは・・・」
カニーラ「勇者パーティーの一人で、もと聖騎士だったイーサンに聞いたから、間違いないっす」
ビンス(あの男、聖騎士だったのか・・・)
ビンス(どうりで、魔物への敵意がすごかったわけだ)
カニーラ「それよりも、ライラさんに早く伝えなきゃいけないことが・・・」

〇噴水広場
ライラ「あ、ビンスくん、カニーラ!」
ライラ「よかった、合流できた!」
ウマ「ウマ〜」
ビンス「おお、ウマちゃんも無事であったか!」
ライラ「ビンスくんも急いで、もとの大きさに戻さなきゃ」
ライラ「『封印、緩んで!』」
ビンス「おお、大きくなった」
ビンス「しかし、なぜ急に──」
ビンス「ん? その赤ん坊はどうしたのだ?」
ライラ「聖女様なんだって!」
ライラ「かくかくしかじかで、連れてきちゃった」
ビンス「は!? なぜ!?」
ライラ「この子には聖なる力が宿っているらしいから、」
ライラ「封印魔法が解けたらいいな、っていうのもあるんだけど・・・」
ライラ「簡単にいえば、人質?」
カニーラ「聖女様を!?」
ライラ「だって、聖教の悪事を暴いたって、私だけでどうにかできるわけないし・・・」
ライラ「何より、勇者の秘密が皆にバレて、ルーくんが勇者じゃなくなるのは困るからね」
ライラ「せっかく頑張って、勇者になったんだもん」
ライラ「立派に魔王を倒させてあげたいじゃない?」
カニーラ「それ、魔王本人に聞かせていいセリフっすかね・・・・・・?」
ライラ「この聖女ちゃんがいれば、聖教と交渉しやすくなるかと思って」
ビンス「だからといって赤ん坊を攫ってくるのは、人としてどうかと思うぞ・・・」
ライラ「魔王に人間の倫理を説かれるのも納得いかないけど──」
ライラ「このまま聖教に置いていくのも、心配だったんだよね」
ライラ「勇者みたいに、聖女だってどう利用されるかわからないでしょ?」
ビンス「まあ、それはそうだが・・・」
カニーラ「でも、赤ちゃんを連れて、逃げきれるっすかね・・・?」
カニーラ「絶対、血眼になって追ってくるっすよ」
ライラ「うん、だから聖教には諦めてもらおうかと思って」
聖騎士「いたぞ! あの女だ!」
聖騎士「捕まえろ!」
ライラ「あちゃあ、見つかっちゃった」
ライラ「カニーラ、お願いがあるの」
ライラ「ゴニョゴニョ」
カニーラ「え!? あたしがやるんすか!?」
ライラ「うん、ビンスくんだと心配だけど、カニーラなら大丈夫だよ」
ビンス「我でも問題ないわ!」
ライラ「こっちは引きつけておくから、お願い」
カニーラ「・・・わかったっす」
ライラ「あとウマちゃん、ごめんね」
ライラ「また走ってくれる?」
ウマ「ウマッ!」

〇市場
聖騎士「待てっ!」
ウマ「ウマッウマッ」
ライラ「どうしよう、追いつかれる!」
聖騎士「覚悟しろっ!」

〇市場
ウマ「ウマッ」
ライラ「ちょっと! ウマちゃんが焦げちゃうじゃない!」
ライラ「『炎さん、封印!』」
ライラ「ウマちゃんは、すでに最高の焼き加減のケーキなんだから!」
ウマ「ウマウマ!」
聖騎士「魔物め、聖女様を返せ!」
ビンス「これしきの攻撃、我には効かぬわ!」
ビンス「それ、お返しだ!」
「ぐあっ」
ビンス「しかし、キリがないな・・・」
ライラ「この数だと、封印魔法も対処しきれないよ」
ビンス「まあそもそも、解けない封印魔法を人間相手に使うわけにもいくまい」
赤ちゃん聖女「おぎゃあ、おぎゃあ」
ライラ「ごめんごめん、怖かったね」
赤ちゃん聖女「ぎ・・・」
赤ちゃん聖女「ぎゃあああー!!」
「え・・・」
「うわあ、熱っ!」
ライラ「今の、この子がやったの?」
ビンス「制御はできていないようだが、おそらく・・・」
ライラ「とにかく、今のうちに逃げないと!」
ウマ「ウマ〜」
ライラ「あ!」

〇西洋の市街地

〇市場
ライラ「前方にも待ちぶせ!?」

〇西洋の市街地
「『業火よ、神の敵を焼きはらえ!』」

〇市場
ライラ「炎の竜巻3つ!?」
ライラ「ちょっと! 聖女ちゃんがいるんだから、 加減を考えてよ!」

〇城の客室
アルマ「まさか、あの子が攫われるなんて・・・」
アルマ「いいえ、これは考えようによってはラッキーなのかも」
???「何がラッキーなんすか?」
アルマ「誰!?」
カニーラ「こんばんはっす!」
アルマ「カニ!?」
カニーラ「通りすがりのカニっす」
カニーラ「で、何がラッキーなんすか?」
アルマ「む、娘が誘拐されて、ラッキーという話よ」
アルマ「あの子の面倒をみなくていいかと思うと、 せいせいするわ」
カニーラ「嘘っすね」
アルマ「何が嘘だっていうのよ!」
カニーラ「だって、あなたは心の底から聖女ちゃんを心配しているっす」
カニーラ「カニの目は誤魔化せないっすよ」
アルマ「どうして・・・」
カニーラ「あたしはライラさんのおつかいで、ここに来たんす」

〇噴水広場
ライラ「やっぱり勇者パーティーに、聖女の仲間はほしいよね」
ライラ「──というわけでカニーラ、お願いがあるの」
ライラ「もと聖女さんが信用できる人かどうか、見極めてきてほしい」
カニーラ「え!? あたしがやるんすか!?」
ライラ「うん、ビンスくんだと心配だけど、カニーラなら大丈夫だよ」
ライラ「カニさん相手だと、彼女も油断して本性を出してくれると思うから」

〇城の客室
カニーラ「正直、話を聞いた感じだと、いい人だとは思えなかったっすけど・・・」
カニーラ「実際に見て、わかったっす」
カニーラ「娘を心配する、普通のお母さんなんだって」
アルマ「・・・・・・」
カニーラ「勇者パーティーに入らないのも、勇者が偽物なこと以外に理由があるんじゃないっすか?」
アルマ「・・・司教が、聖なる力を狙っているのよ」
アルマ「自分の地位を盤石なものとするために、」
アルマ「何とかして聖女から聖なる力を奪えないか、画策している」
アルマ「だから、娘から離れるわけにはいかなかったの」
アルマ「まあ、まだその方法も見つかっていないようだけど」
カニーラ「あんな小さな子から力を奪うんすか!?」
アルマ「わたしの力はもう、全盛期には及ばないからね」
アルマ「それに、あの子はわたしよりも強くなる」
カニーラ「そうだとしても、あんまりっす!」
アルマ「だから攫われたとき、チャンスだとも思ったのよ」
アルマ「このまま聖教から無事に逃げてくれればって」
カニーラ「そうだったんすか・・・」
カニーラ「なら尚更、あなたにも一緒に来てほしいっす」
アルマ「え?」
カニーラ「ルークさんの勇者パーティーに、入ってほしいっす」
カニーラ「聖女ちゃんと、また再会するためにも!」

〇黒
???「ライラ! ライラ!」
???「しっかりせぬか!」
  誰・・・?
  誰かが、必死に呼んでいる・・・
  そういえば、前にもあったな・・・
  こんなこと・・・
  あれは──

〇森の中
ライラ「ルーくん、走ると危ないよ!」
ルーク「姉ちゃん、こっちこっち!」
ルーク「この先に、キレイな花畑が──」
魔物「ギシャアァァァ」
ルーク「うわっ、魔物!?」
ライラ「ルーク、逃げて!」
ライラ「きゃあっ」
ルーク「姉ちゃん!」
ルーク「姉ちゃん! 姉ちゃん!」
ルーク「しっかりして!」
魔物「キシャアッ」
ルーク「やめろ、来るな! 姉ちゃんに近づくな!」
ルーク「誰か、助けて──」
???「ちっ、なかなかしぶてぇな」
魔物「グオォォォ・・・」
???「よお、坊主! 無事か?」
ルーク「だ、誰?」
???「俺は──」
イーさん「勇者だ!」

〇黒

〇巨大な城門
ルーク「ふう、やっと着いた♪」
ルーク「ようやく会えるね、姉ちゃん」

次のエピソード:第9話 勇者の始まり③

コメント

  • 赤ちゃん誘拐にはひっくり返りましたが😂ああ、そうだった。キャラブレはしていないぞ……!後からママにもフォローが入ってほっとしました。
    ついにブラコンシスコンの共演なるのか??

  • ライラさん……あらゆるモラルやルールよりもルーくんが大事、ってとこでしょうか……このブラコンっぷりに改めて恐怖を😱
    「ウマちゃんは、すでに最高の焼き加減のケーキ」「通りすがりのカニっす」…ワードの強さに爆笑してしまいました🤣
    そして次回、ブラコン&シスコンに拍車がかかる展開なのか、楽しみで仕方ないっす🦀

  • わ~ルーク一行が追い付いた!
    鉢合わせするのかしないのか!?😆
    したらしたで面白そうですが、ライラはうまく隠れそうですね🤭

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