他担狩り【特別編】

ゆきんこ

比来ネオの事件簿③(脚本)

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〇美容院
キリゑ「イヤン、素敵♥」
キリゑ「やっぱり響はこの髪色じゃないと、ワッショイできないわね♥」
比来(ヒライ)ネオ(やっぱり黒髪じゃ ワッショイされなかったのか!)
比来(ヒライ)ネオ(ワッショイは奥が深い!)
キリゑ「もう帰っちゃうのね・・・」
比来(ヒライ)ネオ「──って、彼女が言っているけど」
比来(ヒライ)ネオ「キリゑさんは、いつ帰れるの?」
神谷(カミヤ)「──っと、ええっと・・・」
神谷(カミヤ)「終わり次第タクシーを呼びますよ!」
神谷(カミヤ)「もちろん、タクシー代はお支払いします!」
蒔田(マキタ)「響さん、本日はありがとうございました」
比来(ヒライ)ネオ「俺にはタクシー奢らないの?」
神谷(カミヤ)「今日は失礼致しました!」
神谷(カミヤ)「次回は営業時間外でも、確実に対応させて頂きます!!」
比来(ヒライ)ネオ「あ〜そうそう」
比来(ヒライ)ネオ「帰る前にひとつ聞きたいんだけど」
比来(ヒライ)ネオ「蒔田さんの下の名前は?」
蒔田(マキタ)「あ、指名ですか!?」
蒔田(マキタ)「名刺をお渡しします!」
比来(ヒライ)ネオ「蒔田 健介(マキタ ケンスケ)」
比来(ヒライ)ネオ「あれ?」
比来(ヒライ)ネオ「神谷さんも『健介』ですよね」
比来(ヒライ)ネオ「偶然かなあ?」
比来(ヒライ)ネオ「下の名前、漢字も一緒なんですね〜!」
蒔田(マキタ)「何か勘違いされているようですが」
蒔田(マキタ)「神谷の下の名前は康弘(ヤスヒロ)です」
蒔田(マキタ)「大体、響さんに神谷の名前は教えていないハズですよ」
比来(ヒライ)ネオ「だって、あの賞状に下の名前が」
蒔田(マキタ)「ッ・・・」
比来(ヒライ)ネオ「さっき俺に、この賞状は神谷さんの賞状だと」
比来(ヒライ)ネオ「教えてくれたのは、アナタですよ!」
比来(ヒライ)ネオ「蒔田さん・・・コレ本当は、アナタの管理美容師の賞状なのでは?」
キリゑ「ど、どういうこと?」
比来(ヒライ)ネオ「蒔田さんの本名は 神谷健介(カミヤ ケンスケ)」
比来(ヒライ)ネオ「このお店の管理美容師であり、 ベテランスタイリスト」
比来(ヒライ)ネオ「だよね」
比来(ヒライ)ネオ「それから『健介』と『康弘』という名前だけど、」
比来(ヒライ)ネオ「2人の名前の頭文字を組み合わせると『健康』」
比来(ヒライ)ネオ「よく2人兄弟で名付けられる名前だよね」
キリゑ「アナタたち、兄弟なの!?」
キリゑ「名字を変えたのは何故?」
蒔田(マキタ)「・・・指名制の美容室で名字が被ると、面倒なんです」
蒔田(マキタ)「誤解を避けるために、片方が偽名を使うことがあります」
蒔田(マキタ)「確かに賞状は神谷のもだと言ったけど、」
蒔田(マキタ)「それは響さんを混乱させたくなかったからです」
比来(ヒライ)ネオ「まだ歯に詰まった言い方するなら、コッチもハッキリ言うけど」
比来(ヒライ)ネオ「俺が気になったのはね」
比来(ヒライ)ネオ「スタイリストの健介さんが仕事が出来ないアシスタントを装い、」
比来(ヒライ)ネオ「まだアシスタントである康弘さんに、大事なモデルを担当させていたということです!」
キリゑ「エェッ!? 神谷さんはスタイリストじゃないの!?」
神谷(カミヤ)「さっきから何なんだよ!」
神谷(カミヤ)「言いがかりは止めてくれ!!」
比来(ヒライ)ネオ「アナタは、施術が丁寧と装っていたけど、不慣れで遅かっただけだ」
神谷(カミヤ)「営業妨害だ!!」
比来(ヒライ)ネオ「通常、スタイリストは鋏を腰から下げているのに、」
比来(ヒライ)ネオ「康弘さんの腰には鋏ケースが無い」
比来(ヒライ)ネオ「免許があれば、鋏を持つことくらいは可能なのに持たないのは」
比来(ヒライ)ネオ「普段からカットはしていない、 若しくは」
比来(ヒライ)ネオ「免許すら持っていないから、鋏を持つ必要が無いのではないですか?」
神谷(カミヤ)「・・・」
比来(ヒライ)ネオ「美容師免許は国家資格。 厚生労働省の管轄なのはご存知ですよね」
比来(ヒライ)ネオ「無免許の人は、シャンプーはおろか、お客様に触ることも許されないはず!」
比来(ヒライ)ネオ「名店であればあるほど行政処分を受ければ、墜ちるのは一瞬ですよ!」
神谷(カミヤ)「もう駄目だ」
神谷(カミヤ)「・・・兄ちゃん!どうしよう」
蒔田(マキタ)「・・・」
比来(ヒライ)ネオ「やっぱり兄弟だったんだね」
比来(ヒライ)ネオ「ちゃんとした事情があるなら、」
比来(ヒライ)ネオ「話してもらえたら、力になれるかもしれないよ」
神谷(カミヤ)「全部、俺のせいだ・・・」
蒔田(マキタ)「ハァ・・・」
蒔田(マキタ)「弾切れだな──」
蒔田(マキタ)「聞いて貰えますか?」
神谷(カミヤ)「兄ちゃん・・・」
蒔田(マキタ)「うちの親父が、この美容室の店長なんです」

〇教会の控室
神谷聖(カミヤ タカシ)「また国家試験に落ちたですって!?」
神谷聖(カミヤ タカシ)「信じられない、もう3回目じゃない!!」
神谷(カミヤ)「ゴメン。 次は必ず・・・」
神谷聖(カミヤ タカシ)「資格無くても仕事が出来ると思って遊び歩いていたんでしょう」
神谷聖(カミヤ タカシ)「次なんて、あるワケないじゃない!」
神谷(カミヤ)「そんな・・・」
神谷聖(カミヤ タカシ)「健介は1回で合格したのに、アンタには失望したわ」
神谷(カミヤ)「・・・!」
神谷聖(カミヤ タカシ)「もう援助はしないわ」
神谷聖(カミヤ タカシ)「一生アシスタントで居なさい!」
神谷(カミヤ)「クッ・・・ウウウ」
蒔田(マキタ)「康弘、大丈夫か?」
蒔田(マキタ)「・・・お前が営業時間以外でも練習していたのを、俺は見てたぞ」
神谷(カミヤ)「頑張っても・・・」
神谷(カミヤ)「合格出来なきゃ認められないんだ・・・」
蒔田(マキタ)「専門学校の先生が言っていた」
蒔田(マキタ)「美容師の資格は、そもそも男には厳しいらしい」
蒔田(マキタ)「家が美容室で長男じゃないと合格率は低いそうだ」
神谷(カミヤ)「何でだよ」
蒔田(マキタ)「歴史的に女性社会だし、一般的に社会的地位も年収も低い」
蒔田(マキタ)「開業して稼げる美容師はごく一部だからだ」
蒔田(マキタ)「でもお前は、俺よりも才能がある」
蒔田(マキタ)「諦めないで頑張っていれば、いつか父さんも考え直してくれ・・・」
神谷(カミヤ)「同情なんてやめてくれ!!」
神谷(カミヤ)「いつかって何時だよ!?」
神谷(カミヤ)「大体、一発合格している兄ちゃんに、俺の気持が分かるのかよ!?」
蒔田(マキタ)「康弘・・・」

〇公園の砂場
康弘(ヤスヒロ)「チョキチョキ」
康弘(ヤスヒロ)「お客様いかがですか?」
健介(ケンスケ)「気に入りました! 上手ですね〜」
康弘(ヤスヒロ)「てへ☆」
康弘(ヤスヒロ)「おれ大きくなったら、父ちゃんみたいなスタイリストになる!」
健介(ケンスケ)「じゃあ、2人で店やろうな!」
康弘(ヤスヒロ)「ゆびきりげんまん!」
  あの時の約束
  俺は必ず守ってみせる。
  康弘と店を営業するんだ──。

〇渋谷のスクランブル交差点
蒔田(マキタ)「あの女の子だ」
神谷(カミヤ)「見たことないけど、 本当に有名モデルなの?」
蒔田(マキタ)「SNSで出没情報が出ていたから間違いない!」
神谷(カミヤ)「東京コレクションで成功したら、親父も許してくれるかな」
蒔田(マキタ)「ああ。 お前は免許はないけど」
蒔田(マキタ)「丁寧さと、センスと技術はピカイチだ!」
蒔田(マキタ)「俺なんかより、間違いなく美容師に向いているんだ」
蒔田(マキタ)「絶対に成功させてやるからな!」

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コメント

  • 美容師知識も入れて、兄弟のいい話も入れて…実は登場人物全員が嘘ついてましたっていう見事なラスト。
    サイドストーリーというか、こっちが本編でいろいろ作れそうですね。

  • くっ…騙された。どう締めるのかと思ったらみんながみんな騙され、最後はマモルで読者を騙した、と。
    しかし今回も思うのはワッショイは凄い発明ということです。ワッショイって言っておけばなんでも収まる気がします。
    決め台詞羨ましい。

  • 全員(兄以外)経歴詐称なのが面白いですね‼
    いや~やっぱり推理物は書けないなぁ…特殊な才能だと思います。
    どこから思いつくのだろう?
    素晴らしい‼ ワッショイ😋

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