第24話 木の葉(脚本)
〇殺風景な部屋
2021年 日本海沖 ミサイル艦わかたか 船内
凪園無頼「マジ意味わかんねー!中国人のくせに中華料理好きじゃないとかありえねー!」
フェード「お前だって日本人のくせに日本料理好きじゃないだろ!韓国料理好きで何が悪い!」
キング「なんで喧嘩してんだあいつら」
斎王幽羅「好きな料理の話になって凪園が中華料理、フェードは韓国料理が好きって言ったらヒートアップしてああなっちゃった···」
キング「うまけりゃ何でもいいだろ···ま、1番はトルコ料理だがな」
その発言を聞いた瞬間、フェードと凪園はキングに勢いよく掴みかかる
「1番は韓国料理(中華料理)だろうがッ!!」
そしてキングがここで顔色を変え反論し始める。
キング「なわけあるかァ!じゃあお前ら金輪際ケバブとピラフ食うんじゃねえぞ!?あぁ!?」
斎王幽羅「キングまで参加しないでよ···エンチャントさんと鸞も止めてよ···」
エンチャント魔導法士「全くガキじゃあるまいしそんな事で一々騒ぎおって···」
鸞「全くだ、どの料理にも違った魅力があって俺はそれぞれが好きだぞ?」
鸞「まぁ強いて1番を挙げるなら···」
「俺(ワシ)は日本料理(フランス料理)だろうな」
そして鸞とエンチャントもこの『どの料理がいちばん美味いか』口論に参加し、いよいよ収拾がつかなくなった
最終的に斎王に決めてもらうことになったが斎王の好きな料理は
斎王幽羅「母さんの手作りカレーだけど···ダメかな···?」
ということになりこの場は『母の味が1番』という結果に落ち着いた。
皆穏やかなな時間を過ごす中、終わりを知らせるように汽笛が船内に鳴り響く
そして放送が流れる中、改めて大阪に行くためのルートを確認する一行。
鸞「さてもう一度おさらいだ、斎王は潜って移動。俺は雀に変化して皆の後をついて行く」
鸞「北海道の自衛隊の様子だとエンチャント以外の皆の『顔』が割れてる。そこで俺達が行く方法は··· ··· ···」
〇街中の道路
京都府 舞鶴市 余部 市街地内
エンチャント魔導法士「考えてみればだったな、ワシとした事が『根本的な所』に頭がいかんかった」
エンチャントはともかく、キングとフェードと凪園はマスクのみで平然と歩いていた
彼らは知らないがかなり大々的に斎王達の事は取り上げられていた。だがそれ以上に世間が注目していたものがあった
2021年といえば『新型コロナウイルス』の2回目接種と三回目接種があったのである。
コロナパニックは落ち着いてきた頃だがまだ『マスク着用』や『ソーシャルディスタンス
』などが過敏な頃であった
幾ら報道されたからと言って連日連夜コロナウイルスの騒ぎを報じるのと
少し前に何度か報道された指名手配犯の報道と比べたら『指名手配犯の報道』を忘れる人間が出始めるのである
一見大胆不敵な行動だが、皆が見るのは他人との『距離感』のみであり『顔』なんて大して覚えてもいない
こんな奇跡的な時期と重なりが幸そうしたのか、斎王達はすんなり大阪へ入る事に成功した
〇雑居ビル
大阪府 大阪市 中央区 道頓堀
エンチャント魔導法士「ひ、膝が··· ··· ···もう限界だ···」
キング「わかるぜじいさん、俺もキツイ···堺市まであとどんくらいなんだ···?」
フェード「数十キロ程だ、歩いて数時間くらいか···?」
途中バスを使って移動はしていたものの、流石に老人が一日中歩く距離では無いため
エンチャントの膝は悲鳴をあげていた。そして鸞と斎王が現れひとまず今日は道頓堀で休む事に。
ホテルは流石にバレるため、民宿に泊まることに。それぞれがそれなりの変装をして無事一室に着く
〇広い和室
民宿 おいでや亭 一室
斎王幽羅「広すぎない···?いくらするんだろ···」
凪園無頼「1人3800円だってーやばくねー?」
エンチャント魔導法士「道頓堀に構えてる割には安いな、これだけ店が多いから4500円くらいが妥当じゃないか?いでで···」
鸞「念の為に探りを入れてみるか、万が一ということもあるしな」
そう言うと鸞は口笛を吹く。そしてカラスが数匹やってきた後飛び去っていく
鸞「これでいい、後は黙って待ってればカラス達が知らせに来る」
鸞「さてエンチャント···膝治してやるか?『多少』痛いぞ?」
鸞は悪い笑みを浮かべながらエンチャントに提案する。長年の感でエンチャントは何かあると察するも
今の痛みを残したまま歩きたくないので渋々鸞の提案に承諾。そして鸞は術でエンチャントの口を塞ぎ
エンチャントの膝を治し始めるが···
エンチャント魔導法士「んぐぐ···!むぐぐー!ふぐっ、ふぐむぐー!」
凪園無頼「あはっ、エンチャントすげーいい顔すんじゃーん!これ何やってるのー!?」
鸞「膝の軟骨を作り出している所だ。今日すり減った分増やすだけだから神経には影響しないが」
鸞「たとえ軟骨でも骨は骨。骨を人工的に作り出す痛みは『女性の生理』と同等という奴がいるくらい激痛でな」
鸞「今その痛みに耐えてもらってる真っ最中だ。面白いだろ?」
凪園無頼「ちょーおもしれー!もっとやってー!」
半ばおもちゃ扱いされているエンチャントを不憫に見ている斎王だったが、ふとフェードがどこかに行こうとするのを見掛ける
周りを見ると『電話』が置かれていない事に気づき、斎王もマスクをしてフェードの後をついて行く
〇旅館の受付
民宿 おいでや亭 フロント
フェード「わかった、教えてくれてありがとう」
フェードは従業員に公衆電話の場所を聞き、風呂場前に向かう。
お目当ての公衆電話を見つけ、使用を試みるが上手く使えずあたふたしていた。そこに斎王が現れ使い方を教える事に
斎王幽羅「受話器取って小銭入れてから番号押すんだよ?受話器を戻せばそれで切れるからね?」
フェード「謝謝(ありがとう)。ふーっ··· ··· ···よし」
フェードは大きく息を吐き呼吸を整えた後、番号を押して電話をかける
数秒後、繋がったのかフェードは中国語で話始める。斎王はその内容を理解できないが
フェードの表情が深刻なものに変わっていくのを見ていた
フェードが受話器を置いた後、近くのソファに座り頭を抱え始める
何を話したのか斎王が問うとフェードは静かに話始める
フェード「今紅色派の民主派と共産派で戦争状態で警察が堺市を『特別警戒区域』に指定したそうだ」
斎王幽羅「つまりどういうこと···?」
フェード「堺市に『紅色派』と『警視庁』が同時に滞在している···今堺市に行くのは危険すぎる···」
斎王幽羅「···皆に話してみよう。そうすれば入る方法だけじゃない、フェードの育て親であるミンさんにも会えるかも!」
斎王のその発言を聞いたフェードは立ち上がり部屋に戻ろうとする。
不安と焦りが見て取れる彼女の様子に斎王が気づかないはずもなく、フェードの腕を掴み引き止める
斎王幽羅「一人で行く気?それだけは絶対ダメだ、フェードだけを行かせる訳には行かない」
こちらを振り向くことなくフェードは返す。その声は誰が聞いてもわかるくらい『震えていた』
フェード「私の勝手で斎王達を危ない目に合わせるわけにはいかない。私は大丈夫だ、誰に何をされようとも何とも···」
斎王はフェードを無理やり振り向かせ、両肩を掴むと彼女に言葉を発する
斎王幽羅「『仲間が傷付いて黙ってられる程、俺は大人じゃない!』」
斎王幽羅「フェードはもう仲間だ。でもそれ以前にミンさんは親同然の人だろ!?」
斎王幽羅「仲間の恩人を助けたいこの気持ちを『受け取ってくれ!!』」
フェードは何も言わず静かに涙を流す。斎王はその様子をただじっと見守っていた
永遠に思える静寂の中、フェードは斎王の胸に寄り添いか細い声で、しかし確実に聞こえるように斎王に向けて言葉を放つ
フェード「斎王··· ··· ···ミンさんを助けたい。ミンさんを失いたくない···助けてくれ··· ··· ···」
斎王幽羅「わかった。少しここに居よう、落ち着いてから部屋に戻って皆に話そう」
フェードは斎王の言うことにこくこくと頷き、ソファに座る。斎王は隣に座り、フェードの背中を撫でる
フェードは声を殺し、静かに泣き続けた。斎王はただフェードを落ちつかせる為に撫でることしかできなかった
それでも、フェードはそれに心地良さを感じ自然に斎王に寄り添うようになった。
To Be Continued··· ··· ···