ジビエの姫

山本律磨

フィールドワーク!(脚本)

ジビエの姫

山本律磨

今すぐ読む

ジビエの姫
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇事務所
  有給届『12月18日から25日まで』
ゆりあ「随分取ってますね。年末の忙しい時に」
梶「まあアイツも長い間頑張って働いてくれてたし。ちょっとくらいの骨休めは・・・」
ゆりあ「アイツ?」
梶「あ、いや、乾さんも」

〇華やかな裏庭
綾「よ、よろしくお願いしますっ!」
姫子「では始めるわね」
姫子「まず工具から」
姫子「結構物騒なものもあるから怪我に気をつけてね」
姫子「次に革の説明ね」
姫子「鹿革は柔らかく伸びる特性があって・・・」
綾「・・・強くなりたんです」
姫子「・・・」
綾「強く、美しく生きたいんです!」
姫子「・・・」
姫子「スキンケアは十年後の衰えの為にやるの。今からすぐ始めなさい」
綾「はい!」
姫子「香水は・・・」
姫子「匂いを感知されるからしばらくいいわ」
綾「は、はいっ!」

〇山並み
  『弓引山。標高522メートル』
姫子「かつての造林政策によって植えられた広葉樹は過疎化によって放置され、ただでさえ多かった野生動物は今や飽和状態」
姫子「この山は今、まさに獣のメガロポリスね」
綾「熊も増えてるんですか?」
姫子「勿論」
綾「ひっ・・・!」
姫子「例のアニマルガードさん達にどうにかしてもらいたいものね」
姫子「オトモダチみたいだからさ」

〇山並み
姫子「さあ、よくご覧になって」
綾「はい」

〇山の中
  『サイン1』
  『木々の下方の枝葉が食べつくされて林が開けてるでしょ』
  『摂食線ですね』
姫子「つまりここは?」
綾「鹿の餌場です」
姫子「結構」

〇森の中の沼
姫子「サイン2」
姫子「地面が掘り起こされて荒らされてる。実に行儀が悪い」
姫子「つまりここは?」
綾「猪の餌場でしょうか?」
姫子「よろしくてよ」
姫子「次は上級者向けいってみようか」

〇霧の立ち込める森
姫子「サイン3」
姫子「この糞は誰のもの?」
綾「う~ん」
姫子「ダ、ダジャレも言うのね。意外」
綾「偶然です」
綾「猪・・・いや、熊かも」
姫子「鹿よ」
綾「え、だって大きさが・・・」
姫子「鹿の糞は本来俵型だけど、ここの食性では塊になることもあるの」
姫子「大きさは均一。多分猪じゃない」
姫子「嗅いでみると分かるわ」
綾「か、嗅ぐって」
姫子「うん。匂いも全然フルーティーじゃない。だから熊でもない」
姫子「コロコロしてないけどこれは鹿のものよ」
綾「ただ撃つだけじゃない。山を知り獣を知る」
綾「やっぱり本物のハンターですね」
姫子「褒める時はもっと大きな声で」
姫子「姫子!サイコーーーーーーーーーッ!」
綾「先を急ぎましょう」
姫子「モテないのはそういうとこだぞ・・・乾君」

〇山中の川
姫子「ねえ、蹄痕ってピースサインに似てない?」
綾「ははっ。確かに」
「イエーイ!」

〇山道
姫子「彼らは一月を過ぎると繁殖期に入って不味くなるのよ」
綾「はい」
姫子「では問題。繁殖期の肉はどうして美味しくないのでしょう?」
綾「う~ん・・・繁殖期・・・」
綾「あ・・・」
綾「つまり・・・その・・・あの・・・」
綾「精液・・・的な?」
姫子「・・・」
姫子「何を言っとるんだ君は?」
綾「ああいや!嘘です冗談です!そんな訳ないじゃないですか!」
姫子「あ!」
姫子「さっきの丘に水筒忘れたみたい。ねえちょっとここで待ってて下さる?」
綾「分かりました」
姫子「一人で動いちゃダメよ。一応ここ、ハイキングコースから外れてるから」
綾「・・・」
綾「獣達のメガロポリスか・・・」
綾「確かに騒がしいや」
綾「・・・」
綾「・・・落石」
綾「・・・やっぱり一人だとちょっと怖いな」
綾「・・・」
綾「・・・え?」
綾「・・・」
綾「何かいる・・・」
綾「木切れとか・・・ないかな?」
綾「・・・」
綾「ひっ!」
綾「や、ヤ~ッ・・・ホ~・・・ホ~・・・」
綾(声が出ない・・・)
綾(怖くて声が出ない・・・)
綾(た、助けて!誰か・・・!)
「お待たせ~」
綾「姫子さん・・・」
姫子「どうしました?顔、真っ青ですわよ」
綾「・・・」
姫子「そっか・・・」
姫子「ゴメンね。一人にしちゃって」
姫子「やっぱり先生なんて向いてないかな」
綾「私こそ・・・不肖の弟子です」
姫子「なんか、食べ行こっか」
姫子「私本当はフランス料理よりもスイーツよりもラーメンが好きなんだ」
綾「私もです」

〇山並み
「何派?」
「とんこつ味噌バター」
「キャラ通りのチョイスね」
「姫子さんは?」
「激辛系全般」
「そっちこそキャラ通りですね」
  Tobe・・・

次のエピソード:ジェノサイド!(前編)

ページTOPへ