勇者にはほしい才能がある

東龍ほフク

13/アググ・リシュケ作『ムラサキが集う』(脚本)

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〇古書店
ギン「アググ・リシュケの 『ムラサキが集う』って本、知ってる?」
ヴァガ「しらなァい」
ギン「説明してあげよう!」
マモ「おい、お前、それは‥‥‥」

〇砂漠の基地
  とある国に、生まれつき
  紫色の肌の子供がいたんだ。
  名前はティキ・ドゥ。
  周りの人の肌は、もちろん肌色。
  ティキの実の両親の肌の色も
  ちゃんと肌色だった。
「ムラサキ星人〜!」
「風呂に入ってないから紫色ってマジィ?」
  そんなんだから、ティキは「キメェ」と
  周りから疎まれていじめられて
  日々を過ごしていたんだ。
ティキド・ウ「‥‥‥‥」
ティキド・ウ「どうして、ぼくの肌は紫色なんだろう‥‥‥」
ティキド・ウ「‥‥‥‥死にたい‥‥‥‥」
ヴァガ「ティキ、かわいそうだね!」
ニヤニヤするギン「お。それくらいはわかるんだぁ」
ぷんすかヴァガ「ばかに するな!」

〇城壁
  そんなある日、ティキの国の王様が
  「ちょっと集まれ〜」って民に言ったんだ。
  王様は人気者だったから、民は
  「なぁ〜に〜?」ってニコニコ集まって。
  そして、集まった民に向かって
  とある子をお披露目したんだ。
  王様がお披露目したのは、ティキと同じ
  薄紫色の肌の女の子だったんだ。
  もちろん、王様やその奥さんの肌も肌色だ。
  実は、王様は民に何を言われるのか
  怖くて「紫色の娘が産まれたよ」と
  皆にずうっとお知らせしてなかったんだよ。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「王様の娘さん、はじめまして!」
「ラベンダー色の肌、キレイですね!」
ヴァガ「ん? 「きもちわるい」とか いわないんだ?」
ニヤニヤするギン「王様は人気者だったから」
ヴァガ「ティキくん、よかったね! おなじ ムラサキ色のコがいて!」
ニヤニヤするギン「いやぁ、それがな? ティキはプンプン怒ってたんだ」
ヴァガ「?」

〇モヤモヤ
ティキド・ウ((‥‥‥‥は?))
ティキド・ウ((みんな、石とか投げなよ))
ティキド・ウ((お前らが今まで蔑んできた、 紫色の気っ持ち悪い肌の人間だぞ?))
ティキド・ウ((王女様は紫色でも許されるんだ?))
ティキド・ウ((ぼくは紫色なせいで、ずっと、 ずっとずっとずっと虐げられてきたのに))
ティキド・ウ((ふぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん))
ヴァガ「そ、そっちなの???」
ヴァガ「「ムラサキ色のなかまだー♡」 ‥‥‥ってなるんじゃないの?!」
ニッコニコギン「アググ・リシュケが そんな奴を書くわけないだろ」
ニッコニコギン「アググ・リシュケの作品に 『平和』の2文字はない」
ヴァガ「どういう さっか なんだよ‥‥‥」

〇砂漠の基地
  でも、そのおかげでティキにも
  いい事はあった。
  王女が紫肌だと判明してから、
  ティキのいじめはなくなったんだ。
「王女さまと同じ肌の色‥‥‥」
「もしかして、実はティキも 王族だったりして?」
「よくよく考えてみると、紫色の肌って 珍しくて縁起が良さそうだよな!」
ティキド・ウ「‥‥‥‥‥‥」
ヴァガ「ティキ、よかったね!」

〇城壁
  と、いうわけでティキは王女を殺そうと
  城に潜入しました。
ヴァガ「なんで?!?!?!」
ヴァガ「王女さまのおかげで いじめが なくなったじゃん??」
ニッコニコギン「いや、それより何よりな?」
ニッコニコギン「だって、同じ紫肌なのに王女はとても 幸せそうに皆から祝福されてたんだぞ?」
ニッコニコギン「ムカつくだろ?」
ニッコニコギン「一方、国の奴らは自分がどんだけ 泣いても拒否してもいじめてきてたのに」
ニッコニコギン「王女が紫色と知った途端に 手のひら返しだぜ?」
ニッコニコギン「ティキは、民も王女も大嫌いになったんだ」
ヴァガ「こ、こわいよぉ‥‥‥」
ニッコニコギン「おぉ。そうやって怖がったり、 キャラの行動に疑問を持つ事も 賢くなる1歩だぞ」

〇宮殿の部屋
  ティキが王女の寝室に向かうと、
  王女が部屋でくつろいでいた。
ニャニ・コレ「まぁ! あなたはもしかして‥‥‥ この国の紫色の肌の人‥‥‥?!」
ニャニ・コレ「ウワサで聞いたことはあったの。 私と同じ『紫色の肌の子』がいる、って‥‥‥」
ニャニ・コレ「会えて うれしいわ!」
  憎悪100%で来たはずなのに、王女が
  あまりにもゆるふわ癒し系だったから
  ティキはちょっと和んじゃったんだ。
ヴァガ「よ、よかったぁ‥‥‥」
ニコニコギン「まぁ、やる事はやったんだがな?」
ヴァガ「ティキくん???!!!」
ニャニ・コレ「あはは‥‥‥」
ニャニ・コレ「『なぁに? コレ』」
ティキド・ウ「‥‥‥?! 治癒能力‥‥‥?!」
ニャニ・コレ「う〜ん。ちょっと違うな」
ニャニ・コレ「私が『なぁに? コレ』と言った対象は ソレが”どうしてそうなったのか”を 忘れてしまうの」
ニャニ・コレ「つまり、切られた私の腕は “切られた事”を忘れて元に戻っちゃうの」
ニャニ・コレ「まぁ、まだ曖昧で自分でも よくわかっていない“同情能力”なんだけどね」
ティキド・ウ「はぁ‥‥‥?」
ニャニ・コレ「あなたの同情能力は何?」
ティキド・ウ「????」
???「おやぁ? ムラサキ2人がお揃いでぇ?」
ギャッ・ゴイーン「やぁやぁやぁ! やぁやぁやぁ!」
ギャッ・ゴイーン「ニャニちゃんを迎えに来たのに、 まさかもう1人の方にも会えるなんてね?!」
ニャニ・コレ「見て、ギャアさん。 この子‥‥‥私を切るガッツがあったのよ?」
ギャッ・ゴイーン「マジ? 町で見かけた時は死んだ目をしていたから」
ギャッ・ゴイーン「「つっまんねー奴だなぁ」と思って スルーしてたのに!」
ティキド・ウ「あの‥‥‥あのぉ???」
ギャッ・ゴイーン「本当だ! あの時と違ってずいぶん 生気のある顔してるじゃん?」
ギャッ・ゴイーン「いっそ、キミも来る?」
ギャッ・ゴイーン「紫色の奴しか乗ってない飛行船に!」
ティキド・ウ「えっ、えっ‥‥‥えぇ???」
ギャッ・ゴイーン「‥‥‥社交辞令で誘っただけだからな!!!! 男なんて本当はいらねぇんだからなっ!!!!」
ティキド・ウ「ひぇっ!?!?」
ニャニ・コレ「私も行っちゃうけど‥‥‥ ついでに君はどうする?」
ティキド・ウ「どこへ‥‥‥?」
ニャニ・コレ「‥‥‥‥」
ニャニ・コレ「お母さんお父さんとは、仲良し?」
ティキド・ウ「ん? ん〜‥‥‥普通‥‥‥かな?」
ニャニ・コレ「へぇ〜‥‥‥」
ニャニ・コレ「‥‥‥‥‥」
ニャニ・コレ「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
ニャニ・コレ「いいんじゃない?」
ニャニ・コレ「ここで一生、だまされて生きるのも」
ニャニ・コレ「私は」
ニャニ・コレ「パパとママを信用できない」
ティキド・ウ「ま‥‥‥待て!」
ティキド・ウ「なんっ、なんなんだよ‥‥‥!」
追うティキ「待てよ、クソがっ!」
???「‥‥‥‥」
メイド「王女‥‥‥様?」

〇古書店
ヴァガ「‥‥‥‥」
ヴァガ「面白そう‥‥‥!」
ヴァガ「むらさきの人たちは なんか のうりょくを もってるんだね!」
ギン「そうなのです!  よくわかりまちゅたねぇ〜」
ギン「続き、知りたいだろ?」
ヴァガ「うん!」
ギン「じゃあ、実際の本を探してきまちゅね〜♪」
マモ「お前、最低だぞ‥‥‥」
ギン「え? 何が?」
ヴァガ「‥‥‥‥」
ヴァガ「白いおにーちゃんは あのおにーちゃんの おともだち?」
マモ「‥‥‥‥」
マモ「‥‥‥‥」
マモ「ただの、奴のファンだ」
ヴァガ「ふぁん?」
マモ「あいつの書く“絵のない絵本”が 好きなだけなんだ」
ヴァガ「うん。 それはそれとして“おともだち” で べつにいいじゃん?」
マモ「‥‥‥」
マモ「“書く人”と“読むだけの人”は 友達になれないんだ」
マモ「思考が違う」
マモ「“読むだけの人”は“書く人”の 悩みや苦しみを真に理解できない」
マモ「相談されたって困るしな」
ヴァガ「そ~ぉ~?」
マモ「そ〜ぉ〜」
ギン「おっす、『ムラサキが集う』 持ってきたぞぉ」
ヴァガ「ぶあつっ!!!!!」
ヴァガ「ちょっと まて!!!! まくらみたいに ぶあつい!!!!!!!」
ギン「大丈夫×2、中はちゃんと読みやすいから」
ヴァガ「‥‥‥‥」
ヴァガ「いままで みたことないくらい 文字が ビッシリ???!!!!!」
ギン「ちなみに、俺がさっき説明した部分は 本のこれくらいの部分だ」
  ※ギンは、本の始めの7ページほどを
  つまんだ。
ヴァガ「まだ めっちゃ さいしょのところ!!!!!」
マモ「この本は、読解力のない奴からの 的外れな感想にうんざりしたアググ先生が ほぼ嫌がらせで刊行した本なんだ」
マモ「改行もほとんど無く、字も小さい」
マモ「『読めるものなら読んでみろ』 『別に読まなくてもいい』‥‥‥」
マモ「『だが、俺の勝ちだ』と謎のケンカ腰でな」
ヴァガ「アググは イカれてるの‥‥‥?」
ギン「酒もタバコもギャンブルもやらない、 真面目な先生だぜ」
ヴァガ「えぇ‥‥‥?」
ヴァガ「おにーちゃん‥‥‥ひどいよ‥‥‥」
ヴァガ「こんなん、よめるわけないよ‥‥‥」
ヴァガ「それなのに なんで さいしょのほうを せつめい しちゃったんだよ‥‥‥」
ヴァガ「つづきは気になるけど‥‥よみたくないよぉ‥‥」
ギン「ざまぁみろ!!!!! 文具泥棒!!!!!」
マモ「大人げねぇ‥‥‥」
ヴァガ「‥‥‥‥」
ヴァガ「うん‥‥‥よめるように するよ‥‥‥」
ギン「お?」
ヴァガ「だって、こんなに ヴァと ながく おしゃべり してくれた人 はじめて なんだもん‥‥‥!」
ヴァガ「おにーちゃん ありがとう‥‥‥」
ギン((バカだから、今まで誰も相手して くれなかったのか‥‥‥?))
ヴァガ「ヴァ、いつかこの ほんよめるように するから‥‥‥ まずはもっと かんたんな ほんから おしえて!」
ギン「お、おぅ‥‥‥」
ギン((単なる嫌がらせだったんだけど、 まさか食いついてくるとは))

〇古書店
  ヴァガが読めそうなレベルの本を
  大量に見繕って、買ってやった。
  で、ヴァガは例の転移魔法‥‥‥の
  先の空間にその本を収納した。
ヴァガ「おにーちゃん ありがとぉ!」
ヴァガ「これからは あたまを つかって よんでみるね!」
ヴァガ「わかんないところが あったら おしえて もらいに くるね!」
  ‥‥‥え?
  「教えてもらいに来る」‥‥‥?
ギン「そういやアイツ、転移魔法が使えるの 結局やっぱりスゴくない?」
ヴァガ「そぉ? 行きたいところを おもっていれば かんたんに できるよ?」
マモ「‥‥‥あぁ。雑念がわくほどの知識が ないから、すんなりと転移できるのか」
マモ「バカは真っすぐ、どこにでも行ける」
ギン「‥‥‥無駄にいい言葉に聞こえる‥‥‥」

〇古書店
ギン「にしても『ムラサキ〜』懐かしいなぁ」
ギン「不覚にも、後半辺り覚えてないもんなぁ‥‥‥」
マモ「俺は重みで腕を痛めて以降、 再チャレンジ出来てない」
ギン「‥‥‥」
  ※『ムラサキが集う』をパラ見するギン
ギン「んん‥‥‥?」
お目々しぱしぱギン「‥‥‥‥‥?」
ギン「何かさぁ。 すげぇ、目が滑るページあるんだけど」
マモ「あん?」
マモ「まぁ‥‥‥ それだけ分厚いんだから、何ページかは 目が滑るような箇所があるだろうよ」
ギン「あぁ、なるほど」
マモ「それよか、あんな妖精にばかり 本を買ってやって‥‥‥」
マモ「お前も、どうせ何か買うんだろ?」
マモ「この本屋のオススメ棚、動物特集だぞ」
ギン「‥‥‥‥‥」
ギン「疲れてるのかな。今日はいいや」
マモ「‥‥‥珍しいな」
マモ「宿の台所を借りて、ハンバーグ作ってやるよ」
ギン((‥‥‥いや))
ギン((あのアググ先生の本に、 そんなページあるわけなくね‥‥‥?))

〇空

〇西洋風の受付
編集者「ふ〜! 最近の天気の崩れはヤバイヤバイ!」
郵便局のお姉さん「お疲れ様です」
郵便局のお姉さん「こちら、ピューブリカ社『恋愛小説大賞』の 最後の応募まとめとなります」
編集者「あ〜いよっ! 持ってきまぁ〜すっ」
郵便局のお姉さん「あのぉ‥‥‥」
郵便局のお姉さん「外、すっごく嵐ですけど‥‥‥ 応募原稿を持っていって大丈夫なんですか?」
編集者「ジョブジョブ!」
編集者「中で更に皮袋で包んでるしぃ〜」
編集者「とっととこんな雑用、終わらせたいしぃ」
編集者「あははははははぁっ!」

次のエピソード:14/ VS 大手出版社のクソ編集者

コメント

  • どべさ……ゲフン、東龍さんの劇中劇おもしろいもんてすわ……独特……。
    紫の話も続きが気になっています(笑)。
    ……で、ああ〜……問題の編集者がっ……!

  • ヴァガくん、かーいいなぁ…🤤💕実は自分で気づいてないだけで凄い子なのでは…。
    紫が集うも続きがめっちゃ気になります!ティキ君の気持ちもわかるがニャニちゃんも何やら訳あり…。アググ先生…流石鬼才っスわ…🤔✨
    そしてまったり夫婦感出してる2人🤤🤤

  • 紫が集う、面白そう…。劇中作の主人公に感情移入するとは思いませんでした。姫様を殺しに行ったらよりエキセントリックな展開で返してくるのが好きです。コレを読んだギンが「ニワトリのデッカくん」を書いてしまうのもなんとなく納得してしまいましたね。あっちも面白かったです!

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