第19話 『二つの選択肢』(脚本)
〇まっすぐの廊下
夕日に朱く染まった廊下。
行き止まりがなく、どこまでも伸びているその廊下を凪が走っていく。
梵凪「ハァ・・・ハァ・・・ッ!!」
梵凪(私、ただ変わりたかっただけなのに! 強くなりたかっただけなのに!)
梵凪(蕗子さんみたいになりたかっただけなのに!!)
〇女の子の二人部屋
鎧坂蕗子「弱い私じゃ、だめかな」
〇まっすぐの廊下
梵凪「ずるい──ずるい、ずるいずるいずるい!!」
梵凪「今更そんなこと言うなんてずるいよ! もっと早く言ってよ!」
梵凪「言ってくれたら私だってちゃんと蕗子さんのこと、助けようって──」
ふと、凪は走るのをやめて立ち止まった。
梵凪「私だって助けようって・・・」
〇豪華なベッドルーム
梵凪「だ、駄目だった。 私・・・なんにも変わってなかった」
梵凪「怖い・・・もうやだ・・・」
梵凪「・・・私、もうどこにも行きたくない。 蕗子さんとふたりだけがいい」
梵凪「助けて。私を、守って」
〇まっすぐの廊下
梵凪「・・・私、自分のことしか考えてなかった」
梵凪「本当に蕗子さんを助けてあげたいなんて思えたのかな」
梵凪「でも仕方ないよ。 あの時、私だって辛かったんだもん」
梵凪「悪くない──悪くない、よね・・・?」
梵凪「もうやだ・・・何も考えたくないのに! 誰か・・・誰か助けてよ」
私がいるよ
梵凪「えっ!?」
さあ、おいで
凪の目の前には上階へと向かう階段があった。
梵凪「階段・・・いつの間に」
どうすればいいか、私が全部教えてあげる。
もう何も考えなくてもいいの、凪
梵凪「なんで私の名前・・・」
凪、充分頑張ったよ。
もう我慢しなくていい。いえ、我慢しちゃ駄目
自分の気持ちに、素直に、正直になっていい
梵凪「え・・・それ・・・その、言葉」
鎧坂蕗子は凪を裏切った──憧れを踏みにじった、ただの弱い人間
梵凪「・・・あなた、もしかして」
あいつは凪を捨てた、守れなかった。私は違う
鎧坂蕗子「待って、凪!」
梵凪「!」
凪! おいで、早く!!
凪はどこからか聞こえてくる声に誘われるようにして、階段を駆け上がった。
〇階段の踊り場
鎧坂蕗子「ハァ・・・ハァ・・・!」
鎧坂蕗子「待ちなさい!」
梵凪「ほっといて、私のことなんか!」
鎧坂蕗子「お願いだから話を聞いて、凪!!」
蕗子が声をかけるものの凪は止まらず、ぐんぐんと先へと走っていく。
鎧坂蕗子(終わらない階段・・・それに、身体も妙に重い)
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