第6話 エルヴィスの沈黙【後編】(脚本)
〇魔物の巣窟
【エルヴィス】「ソノ情報ハ ロック サレテイマス」
霧生華清(きりゅうかせい)「お祖父さんの情報が・・・!?」
キース・フォスター「【エルヴィス】」
キース・フォスター「キリューの爺さんはここへ来たことが あるのか?」
【エルヴィス】「ソノ情報ハ ロック サレテイマス」
キース・フォスター「キリューの爺さんがロックをかけたのか?」
【エルヴィス】「ソノ情報ハ ロック サレテイマス」
キース・フォスター「教えられないということは」
霧生華清(きりゅうかせい)「ここに来たことがあるんですね」
キース・フォスター「そして、自らの情報にロックをかけた」
霧生華清(きりゅうかせい)「パラディス島は祖母の生まれ故郷ですが」
霧生華清(きりゅうかせい)「祖母が亡くなってからは訪れていません」
キース・フォスター「となると、だ」
キース・フォスター「あんたの爺さんは15年前──」
キース・フォスター「つまり戦争中、ここを訪れたか」
霧生華清(きりゅうかせい)「ここ最近、訪れたか」
キース・フォスター「あるいは、その両方かもな」
霧生華清(きりゅうかせい)「両方?」
キース・フォスター「あんたの爺さんはかつて【エルヴィス】を 使った」
キース・フォスター「そしてまた【エルヴィス】を使うため この島へとやって来た」
霧生華清(きりゅうかせい)「それこそが祖父の『為すべきこと』ですか」
キース・フォスター「いや、【エルヴィス】は目的じゃない」
キース・フォスター「手段だ」
霧生華清(きりゅうかせい)「祖父は目的を果たすために【エルヴィス】を使った・・・?」
キース・フォスター「決め手に欠けるな」
キース・フォスター「【エルヴィス】」
キース・フォスター「古代パラディス人の遺物について」
キース・フォスター「教えられる範囲で教えてくれ」
【エルヴィス】「検索完了シマシタ」
【エルヴィス】「カツテ パラディス人 ガ 技術ノ粋ヲ 結集シテ 創リ上ゲタ 研究施設デス」
キース・フォスター「研究施設、ね」
霧生華清(きりゅうかせい)「何を研究していたんですか?」
〇未来の都会
【エルヴィス】「人々ノ 暮ラシ ヲ 支エル研究デス」
【エルヴィス】「浄水 医療 未来予測 ナド 多岐ニ ワタリマス」
〇魔物の巣窟
キース・フォスター「『人』のための研究か」
霧生華清(きりゅうかせい)「優しい研究なんですね」
キース・フォスター「星には厳しいみたいだがね」
キース・フォスター「これほどの技術があったってのに」
キース・フォスター「古代パラディス文明は滅びちまったのか」
【エルヴィス】「正確デハ アリマセン」
【エルヴィス】「古代パラディス人ハ 自ラ 文明ヲ 手放シタノデス」
キース・フォスター「何だって?」
霧生華清(きりゅうかせい)「どうして?」
【エルヴィス】「人間ガ 住メル 環境デハ ナクナッタ カラデス」
キース・フォスター「何が起こったんだ?」
【エルヴィス】「繧ェ繧コ繝ッ繝ォ繝峨?陬∝ョ」
霧生華清(きりゅうかせい)「壊れてしまったのでしょうか?」
キース・フォスター「作為的なものかもね」
霧生華清(きりゅうかせい)「叩いてみましょう」
キース・フォスター「待て!」
キース・フォスター「いや」
キース・フォスター「頼む」
【エルヴィス】「オ──オ オズ オ──ズオ オ──オオ」
霧生華清(きりゅうかせい)「直りました!」
キース・フォスター「ううむ」
【エルヴィス】「オズワルド ノ 裁定 ガ 下サレマシタ」
霧生華清(きりゅうかせい)「『オズワルドの裁定』?」
キース・フォスター「そいつは何だ?」
【エルヴィス】「セキュリティ エラー」
【エルヴィス】「セキュリティ エラー」
【エルヴィス】「三十分後 全区域ガ閉鎖サレマス」
【エルヴィス】「課員ハ 速ヤカニ 退避シテクダサイ」
キース・フォスター「この揺れ」
霧生華清(きりゅうかせい)「沈んでいます!」
キース・フォスター「先人様はモノを隠すのがお好きだね」
霧生華清(きりゅうかせい)「戻りましょう!」
霧生華清(きりゅうかせい)「何の──」
キース・フォスター「こ、こいつらは一体・・・!」
霧生華清(きりゅうかせい)「何なんですか!?」
【エルヴィス】「彼ラ ハ 古代パラディス人 デス」
霧生華清(きりゅうかせい)「まさか──!」
キース・フォスター「古代人が生きているだと!」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん!」
キース・フォスター「助かった」
【エルヴィス】「コノ場所ハ 危険デス」
【エルヴィス】「速ヤカニ 退避シテクダサイ」
【エルヴィス】「彼ラ ト 共ニ」
「ケテ──タス、タスタスタタタタタ──」
「ケケケケケテェェェェェェ──」
キース・フォスター「助けてもらう態度かね」
キース・フォスター「笑えないジョークだ」
霧生華清(きりゅうかせい)「自分が道を切り開きます」
キース・フォスター「死ぬ気か?」
霧生華清(きりゅうかせい)「いいえ」
霧生華清(きりゅうかせい)「生きるためです」
霧生華清(きりゅうかせい)「自分は祖父の真意を知り」
霧生華清(きりゅうかせい)「自らの為すべきことを見定めます」
たとえ相手が人間であろうとも
目の前に立ちはだかるのであれば
なぎ倒すまで
霧生華清(きりゅうかせい)「この意志、貫き通します」
キース・フォスター「面白い」
キース・フォスター「乗った」
【エルヴィス】「銃火器ヲ 下ロシテクダサイ」
キース・フォスター「先人様ってのは声ばかり大きいね」
キース・フォスター「図体のせいかな?」
【エルヴィス】「彼ラ ハ 環境ノ変化ヲ 乗リ越エルタメ」
【エルヴィス】「頑強ナ身体ヲ 求メマシタ」
キース・フォスター「過去に興味はないんでね」
【エルヴィス】「彼ラ ハ 生キヨウトシタノデス」
霧生華清(きりゅうかせい)「こんな異形となってでも・・・」
キース・フォスター「欲望の成れの果てだよ」
キース・フォスター「面倒を見る義理はない」
〇秘密基地のモニタールーム
【エルヴィス】「彼ラ ハ 不死ノ代償ニ 理性ヲ 失イマシタ」
キース・フォスター「文明ってのも万能じゃないね」
【エルヴィス】「文明ハ 彼ラ ノ 理性ヲ 保持シマシタ」
【エルヴィス】「理性ヲ 手放シタノハ 彼ラ自身デス」
キース・フォスター「人生は悠久だからこそ耐えられる」
キース・フォスター「所詮、人間は神になんてなれないのさ」
霧生華清(きりゅうかせい)「そこまでして、どうして・・・?」
【エルヴィス】「彼ラ ハ 文明ヲ 手放セナカッタノデス」
【エルヴィス】「ソレガ 彼ラ ノ 積ミ上ゲタ財産デアリ」
【エルヴィス】「生キタ証ダッタカラデス」
霧生華清(きりゅうかせい)「過ぎたる文明は滅びを招く、ですか」
キース・フォスター「だが、滅びは免れたはずだ」
キース・フォスター「あんたの血がそれを証明している」
【エルヴィス】「不死ヲ 拒絶シタ者タチ ハ」
【エルヴィス】「新天地デ ゼロ カラ ヤリ直シマシタ」
キース・フォスター「なるほど」
キース・フォスター「確かに『ウラシマタロウ』の気分だね」
霧生華清(きりゅうかせい)「それが古代パラディス人の血統」
霧生華清(きりゅうかせい)「祖父の指輪も、もしかすると──」
キース・フォスター「せいぜい過去の栄光にしがみつけばいい」
キース・フォスター「俺たちは駆け上がっていくよ」
〇らせん階段
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん!」
霧生華清(きりゅうかせい)「こちらではありません!」
キース・フォスター「来た道を引き返したところで間に合わない」
キース・フォスター「山で遭難した時と同じだよ」
霧生華清(きりゅうかせい)「理解しました」
霧生華清(きりゅうかせい)「共に駆け上がりましょう!」
「ツレ──ツツツツツ、ツレツレテツレ──」
キース・フォスター「惨めだね」
キース・フォスター「こんな場所に住み着いているのも」
キース・フォスター「【エルヴィス】が拠り所だからだろう?」
霧生華清(きりゅうかせい)「【エルヴィス】さえあれば、やり直せる」
霧生華清(きりゅうかせい)「そう信じて──」
キース・フォスター「夢を見るのも疲れるだろう」
〇黒
おやすみ
〇空
キース・フォスター「白んできたな」
霧生華清(きりゅうかせい)「ここは・・・?」
キース・フォスター「特等席さ」
〇原っぱ
霧生華清(きりゅうかせい)「永年樹の頂上・・・」
霧生華清(きりゅうかせい)「風が気持ちいい」
キース・フォスター「こんな日も悪くないね」
〇大樹の下
キース・フォスター「よっと」
霧生華清(きりゅうかせい)「【エルヴィス】の話は真実でしょうか?」
霧生華清(きりゅうかせい)「古代パラディス人があんな姿に・・・!」
キース・フォスター「さてね」
キース・フォスター「だが、意図的に隠された話があった」
霧生華清(きりゅうかせい)「遺物の在り処と──祖父のこと」
キース・フォスター「となれば、信憑性は高くなる」
キース・フォスター「わからないこともあるがね」
霧生華清(きりゅうかせい)「わからないこと?」
キース・フォスター「何故パラディス島に人が住めなくなったのか」
霧生華清(きりゅうかせい)「【エルヴィス】は言っていました」
霧生華清(きりゅうかせい)「オズワルドの裁定が下された、と」
キース・フォスター「オズワルド、ね」
キース・フォスター「遺物の類だろうな」
霧生華清(きりゅうかせい)「自然環境を改変する遺物、ですか」
霧生華清(きりゅうかせい)「自然環境・・・」
〇島
キースさんも言ったように
パラディス島は特異な気候となっています
砂漠も、荒野も、密林も、世界中の
あらゆる気候を網羅している
人呼んで──神が宿る島
〇けもの道
霧生華清(きりゅうかせい)「自然環境を改変するという遺物と この気候も関係あるんでしょうか?」
キース・フォスター「さてね」
キース・フォスター「だが、あんたの爺さんには関係あるだろうな」
〇海辺
あんたの爺さんは遺物を知っていた
遺物に関わる何らかの使命を果たすため
島を訪れ──
〇地下倉庫
奴らに捕まった
そこで、あんたが古代パラディス人の子孫
つまり『鍵』だと知ったんだろう
〇森の中
霧生華清(きりゅうかせい)「お祖父さんが口を割るとは思えません」
キース・フォスター「なら、別ルートで調べ上げたか」
キース・フォスター「爺さんに確認すれば早い話だが──」
〇警察署の霊安室
祖父は事故に見せかけて葬られました
ですが、何らかの方法で生き延び
〇豪華な部屋
キースさんに依頼をしました
自分と瓜二つの姿で
過去を取り戻してほしい──と
遺物の在り処を指し示す指輪と共に
〇草原の道
キース・フォスター「あんたの過去で見た爺さん」
必ず見つけ出す
キース・フォスター「あの口ぶりだと、まるで──」
霧生華清(きりゅうかせい)「まるで?」
キース・フォスター「まるで、あんたの爺さんが戦争を 終わらせたみたいじゃないか」
霧生華清(きりゅうかせい)「あり得ません」
霧生華清(きりゅうかせい)「当時の兵役は15から40まで」
霧生華清(きりゅうかせい)「お祖父さんは40を超えていました」
キース・フォスター「手段ならいくらでもあるだろう?」
霧生華清(きりゅうかせい)「まさか──!」
〇島
異常気象による国軍の壊滅
死者1万人にものぼる未曾有の大災害
パラディスの悲劇
〇荒野
霧生華清(きりゅうかせい)「異常気象、自然環境の改変、そして── オズワルドの裁定」
霧生華清(きりゅうかせい)「祖父が戦争を終わらせたのは・・・」
霧生華清(きりゅうかせい)「大災害を起こしたのは自分が──!」
キース・フォスター「キリュー」
キース・フォスター「推測はおしまいだ」
キース・フォスター「軍の奴らに遺物を確保される前に」
キース・フォスター「俺たちの手で遺物を止めちまおう」
キース・フォスター「あんなもの命がいくつあっても足りやしない」
霧生華清(きりゅうかせい)「・・・はい」
キース・フォスター「柄にもないことしたね」
キース・フォスター「日が昇ったら起こしてくれ」
霧生華清(きりゅうかせい)「代わります」
キース・フォスター「ん?」
霧生華清(きりゅうかせい)「免許ならここに」
キース・フォスター「紙切れに命を預けたくないね」
霧生華清(きりゅうかせい)「紙切れでは──」
〇黒
安全運転で頼むよ
おいキリュー!
・・・まったく
危なっかしい奴だね・・・
まるで・・・誰かさんみたいだ・・・
〇砂漠の基地
ロブ・テイラー「兄貴! 見てくだせェ!」
夢が叶ったな
ロブ・テイラー「へへ」
ロブ・テイラー「ちょっくら付き合ってくだせェ!」
荷が重いよ
ロブ・テイラー「最初に乗せるのは兄貴って決めてたんです!」
それなら、お言葉に甘えるかね
いきなり飛ばす奴があるか!
ロブ・テイラー「これがロブ・テイラーの生き様ですよォ!」
〇英国風の部屋
キース・フォスター「生き様・・・」
キース・フォスター(ここは?)
〇島の家
キース・フォスター(この景観・・・『トゥゾーリ』か)
キース・フォスター(何故こんなリゾート地に・・・)
通りすがりの美女「あら、お寝坊さん」
通りすがりの美女「もうお昼よ?」
キース・フォスター「眠れなくてね」
通りすがりの美女「情熱的な夜だったのね」
キース・フォスター「とても、ね」
キース・フォスター「興味あるかな?」
通りすがりの美女「ええ、とても」
キース・フォスター「失礼」
通りすがりの美女「つれない人ね」
アドルフ・フォスター大佐「──わかった?」
霧生華清(きりゅうかせい)「はい」
キース・フォスター「何の用だ?」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん」
霧生華清(きりゅうかせい)「もう平気ですか?」
キース・フォスター「イイ揺りかごだったよ」
アドルフ・フォスター大佐「ちょっとしたお喋りだよ」
キース・フォスター「キリューと話すことなんてないだろう」
アドルフ・フォスター大佐「束縛する男は嫌われるぜ?」
キース・フォスター「あんたは信用できない」
アドルフ・フォスター大佐「せっかく高級リゾートに招待したってのに」
アドルフ・フォスター大佐「ヒドい言い様だねェ」
キース・フォスター「キリュー、何を話していた?」
霧生華清(きりゅうかせい)「申し訳ありません」
霧生華清(きりゅうかせい)「秘密です」
キース・フォスター「な──」
キース・フォスター「何ィッ!?」
世界観を誰かが急に説明するのではなく、さりげなくエルヴィスによって数々の謎が明らかにしてもらったことで違和感なく物語に没入することができました!
キリューとフォスターの秘密の話は何なのですかね🤔すっごく気になります!
設定大好き人間なので、いくらでも読みたいですね。笑
失われた古代文明というだけでタマりません🤤 モデルとかあるんですかね? アトランティスとか、ムーとか、シュメールとか…… 嗚呼、止まらない❤
パラディス人の悲惨な末路が衝撃的な回でした😰
そのままのを選んだ人々はキリューをはじめとする子孫たちを残し人生を全うした、と考えると
命に限りがあるのも意味があるのだろうなと思いました
そしてなにより突然のロブの回想が泣ける😭
キースとキリューが順調に仲良くなってるのが
本当に微笑ましいです
まだ色々やることが残っているけれど、最終的には
2人とも幸せになってほしいですね😌