第7話 ヴィヴィアンの蠱毒【前編】(脚本)
〇島の家
キース・フォスター「俺に秘密だとォ!?」
キース・フォスター「2人でコソコソ何を話していたんだ!?」
霧生華清(きりゅうかせい)「申し訳ありません」
アドルフ・フォスター大佐「責めてやるなよ」
アドルフ・フォスター大佐「こんなに律儀で真摯な奴はそういねェぜ?」
キース・フォスター「あんたを責めているんだよ!」
霧生華清(きりゅうかせい)「仲睦まじいですね!」
キース・フォスター「その目は節穴か!?」
アドルフ・フォスター大佐「相性抜群だねェ」
アドルフ・フォスター大佐「それなら坊主も任せられるな」
アドルフ・フォスター大佐「よろしく頼むぜェ?」
霧生華清(きりゅうかせい)「はい」
キース・フォスター「ガキ扱いするな」
キース・フォスター「あんたも返事をするんじゃない」
アドルフ・フォスター大佐「ほら、ガキだろう?」
キース・フォスター「あんたなあ──!」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん、親心ですよ」
キース・フォスター「冗談だろう?」
キース・フォスター「親なんて柄じゃないよ」
キース・フォスター「血も繋がっちゃいない」
アドルフ・フォスター大佐「嫌われてるねェ」
霧生華清(きりゅうかせい)「ですが、キースさんの身を案じていました」
アドルフ・フォスター大佐「もういいよ」
霧生華清(きりゅうかせい)「アドルフさん!」
アドルフ・フォスター大佐「Mr.キリューに感謝しとけよ?」
アドルフ・フォスター大佐「誰よりもお前を心配していたんだ」
アドルフ・フォスター大佐「善行を積めよ、坊主」
キース・フォスター「すまない、大人げなかった」
霧生華清(きりゅうかせい)「いえ」
霧生華清(きりゅうかせい)「あんな風にムキになる姿は初めて見ました」
霧生華清(きりゅうかせい)「やはり親子なんですね」
キース・フォスター「・・・育ててもらった恩はある」
キース・フォスター「だが、あいつは親の責務を果たしていない!」
キース・フォスター「家のことを全部丸投げしやがって!」
キース・フォスター「金勘定まで俺に押しつけたんだぞ!?」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさんは頭が回りますし、手際が良い ですからね」
キース・フォスター「褒めてもらいたいわけじゃない」
キース・フォスター「俺が1番腹立たしいのは──」
霧生華清(きりゅうかせい)(良かった)
霧生華清(きりゅうかせい)(キースさんはアドルフさんを嫌っている わけじゃない)
霧生華清(きりゅうかせい)(これは──)
キース・フォスター「聞いているのか、キリュー!」
霧生華清(きりゅうかせい)「聞いていますよ」
霧生華清(きりゅうかせい)「もっと聞かせてください」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさんの思い出話を」
〇海沿いの街
そんなもんじゃないッ!!
〇荒野
数時間前
シャッフルへの帰り道
アドルフ・フォスター大佐「よお」
霧生華清(きりゅうかせい)「アドルフさん・・・!」
アドルフ・フォスター大佐「心配するな」
アドルフ・フォスター大佐「今日はオフだよ」
アドルフ・フォスター大佐「坊主は?」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさんは・・・」
アドルフ・フォスター大佐「軍に追われてるってのに呑気だねェ」
霧生華清(きりゅうかせい)「自分が守りますので問題ありません」
アドルフ・フォスター大佐「そりゃ頼もしい」
アドルフ・フォスター大佐「そうだ!」
アドルフ・フォスター大佐「トゥゾーリへ行こう!」
霧生華清(きりゅうかせい)「『トゥゾーリ』って海辺にある──」
アドルフ・フォスター大佐「そう! リゾート地!」
アドルフ・フォスター大佐「今から向かうところなんだが」
アドルフ・フォスター大佐「どうせなら一緒にバカンスしようぜ?」
霧生華清(きりゅうかせい)「ですが、追手が──」
アドルフ・フォスター大佐「誰にも言わねぇよ」
アドルフ・フォスター大佐「今日の俺は大佐じゃなくて一般人」
アドルフ・フォスター大佐「そいつの『親』だよ」
霧生華清(きりゅうかせい)「親・・・」
霧生華清(きりゅうかせい)「そういうことなら」
〇市場
キース・フォスター「──それでトゥゾーリまで来たと」
キース・フォスター「起こしてくれて構わなかったんだが」
霧生華清(きりゅうかせい)「アドルフさんが起こすな、と」
霧生華清(きりゅうかせい)「きっと断られるだろうから」
キース・フォスター「まったく、あいつは」
キース・フォスター「当たっちゃいるがね」
ブラッド・ラッセル「お、アンちゃん!」
ブラッド・ラッセル「こんなところで奇遇だね!」
キース・フォスター「あんたは──」
〇砂漠の基地
スージァの行き倒れか
〇市場
キース・フォスター「商人だったのか」
霧生華清(きりゅうかせい)「お知り合いですか?」
ブラッド・ラッセル「俺はブラッド・ラッセル」
ブラッド・ラッセル「アンちゃんは命の恩人よォ!」
霧生華清(きりゅうかせい)「自分は霧生華清と言います」
霧生華清(きりゅうかせい)「息を吸うように人助けとは」
霧生華清(きりゅうかせい)「さすがです、キースさん!」
キース・フォスター「よしてくれ」
キース・フォスター「お茶をしただけだよ」
ブラッド・ラッセル「あン時はありがとなァ!」
ブラッド・ラッセル「よっしゃ! まけてやンよ!」
キース・フォスター「みずみずしいな」
キース・フォスター「こいつは美味そうだ」
ブラッド・ラッセル「お、わかるかい?」
ブラッド・ラッセル「こいつァ、アーチェで採れた極上品さァ!」
ブラッド・ラッセル「2パルムでどうだい?」
キース・フォスター「高いな」
キース・フォスター「アーチェなら1パルムで買える」
ブラッド・ラッセル「そりゃ手間暇かかってるからなァ」
キース・フォスター「なら1.5パルムでどうだい?」
ブラッド・ラッセル「そいつは厳しいなァ」
キース・フォスター「人を試すような言動は気に入らないね」
キース・フォスター「傷物を頂こう、という話だ」
ブラッド・ラッセル「気づいてたか」
ブラッド・ラッセル「並の商人ならコロッといくんだが」
ブラッド・ラッセル「イイ目だ」
ブラッド・ラッセル「試すような真似して悪かったな」
ブラッド・ラッセル「持っていってくれ」
キース・フォスター「悪いね」
キース・フォスター「最高だ」
ブラッド・ラッセル「へへ、嬉しいこと言ってくれるねェ」
ブラッド・ラッセル「ほれ、連れのアンちゃんも」
霧生華清(きりゅうかせい)「お気持ちは嬉しいんですが」
霧生華清(きりゅうかせい)「手持ちがなくて」
ブラッド・ラッセル「いいって! いいって!」
ブラッド・ラッセル「イイ出会いに乾杯、ってな!」
霧生華清(きりゅうかせい)「ありがとうございます」
霧生華清(きりゅうかせい)「では、お言葉に甘えて」
キース・フォスター「待て」
キース・フォスター「こっちでもいいか?」
ブラッド・ラッセル「いいぜ、持ってきな!」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん」
キース・フォスター「酸っぱいものは苦手なんだろう?」
〇怪しげな酒場
霧生華清(きりゅうかせい)「あいにく辛味も酸味も苦手で」
〇市場
霧生華清(きりゅうかせい)「憶えていたんですね」
キース・フォスター「断るのも礼儀だよ」
霧生華清(きりゅうかせい)「しかと記憶しました」
霧生華清(きりゅうかせい)「ひーふはん、ほへほふぁわいれす! (キースさん、とても甘いです!)」
キース・フォスター「イイ客だよ、あんたは」
ブラッド・ラッセル「アンちゃんらもバカンスかい?」
キース・フォスター「夢を見に来たってところかな」
ブラッド・ラッセル「面白いこと言うね、アンちゃん」
ブラッド・ラッセル「よっしゃ! これも何かの縁だ!」
ブラッド・ラッセル「トゥゾーリを案内させてくれ!」
霧生華清(きりゅうかせい)「ありがたい申し出ですが──」
キース・フォスター「いいじゃないか」
キース・フォスター「三人で回ったほうが──楽しい」
キース・フォスター「だろう?」
霧生華清(きりゅうかせい)「・・・ですね」
霧生華清(きりゅうかせい)「よろしくお願いします」
ブラッド・ラッセル「そうこなくっちゃなァ!」
〇海沿いの街
海の街『トゥゾーリ』
パラディス島の中でも過ごしやすい気候
だからか
ここいらはリゾート開発が進んできててね
富裕層が集まるってんで俺たち商人も
よく立ち寄るのさァ
おかげでこの盛況っぷりだよ
10年ちょっと前まで荒れてたとは思えねェ
だろォ?
この街は平和そのものだよ
〇城壁
ブラッド・ラッセル「中でもこの『ローガン橋』は特別でね」
ブラッド・ラッセル「どんな暴風雨にも耐えやがる」
ブラッド・ラッセル「大砲の弾にも絶えたってウワサなんだぜ?」
キース・フォスター「戦火にも耐えた、か」
霧生華清(きりゅうかせい)「とても頑丈な造りなんですね」
ブラッド・ラッセル「おうよ!」
ブラッド・ラッセル「こいつはな、どんな苦境にも屈しなかった」
ブラッド・ラッセル「『復興の象徴』ってワケさァ」
霧生華清(きりゅうかせい)「『復興の象徴』」
霧生華清(きりゅうかせい)「素敵です」
キース・フォスター「確かに興味深いね」
ブラッド・ラッセル「何だァ、こりゃあ!?」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん、これは──」
キース・フォスター「バカンスはお預けだね」
キース・フォスター「なあ、橋の下には何がある?」
ブラッド・ラッセル「橋の下ァ?」
ブラッド・ラッセル「何もねェぜ?」
ブラッド・ラッセル「空洞があるだけさァ」
〇岩穴の出口
霧生華清(きりゅうかせい)「随分と奥まっていますね」
霧生華清(きりゅうかせい)「まるで防空壕です」
キース・フォスター「そのために造ったというよりは」
キース・フォスター「流用したという印象だな」
〇暗い洞窟
霧生華清(きりゅうかせい)「行き止まりですね」
霧生華清(きりゅうかせい)「触れてみます」
キース・フォスター「ああ、気をつけてくれ」
霧生華清(きりゅうかせい)「やはり、ここには遺物が・・・」
キース・フォスター「今度こそ依頼の遺物があればいいんだがね」
霧生華清(きりゅうかせい)「『過去を取り戻してほしい』ですか」
霧生華清(きりゅうかせい)「遺物の手がかりがあればいいんですが」
キース・フォスター「言えてるね」
キース・フォスター「指輪(こいつ)は道を教えてくれるが」
キース・フォスター「気分屋なところがあるからな」
霧生華清(きりゅうかせい)「せめて遺物の在り処に規則性があれば 探しやすいんですが」
キース・フォスター「規則性、ね」
キース・フォスター「思い当たることならあるよ」
〇地下広場
キース・フォスター「文明が発展する場所には川がある」
キース・フォスター「生きる上で水は不可欠だからね」
霧生華清(きりゅうかせい)「古代パラディス文明も同じだと?」
キース・フォスター「住みやすい場所は今も昔も変わらないよ」
〇砂漠の基地
スージァは川の近くにあった
〇中東の街
シャッフルも同じだ
〇近未来の通路
霧生華清(きりゅうかせい)「ですが、遺物は街から離れた場所にありました」
キース・フォスター「【エルヴィス】が言っていたじゃないか」
キース・フォスター「自然環境の変化があった、と」
キース・フォスター「離れていると言っても1時間もかからない」
キース・フォスター「自然環境の変化はあったが」
キース・フォスター「地形の変化は少なかったんだろう」
キース・フォスター「この島は一度人間が住めない環境になったが」
霧生華清(きりゅうかせい)「人が住める環境に戻った・・・ですか」
キース・フォスター「理由はわからないがね」
霧生華清(きりゅうかせい)「では、パラディス島の各都市を巡れば──」
キース・フォスター「いずれ目的の遺物に辿り着ける」
霧生華清(きりゅうかせい)「過去を取り戻す遺物」
霧生華清(きりゅうかせい)「お祖父さんが求めた遺物」
キース・フォスター(過去、か)
〇山道
大人しい少年「────!!」
〇コンピュータールーム
──さん
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん!」
キース・フォスター「すまない、考え事だ」
霧生華清(きりゅうかせい)「確かに悩みますね」
霧生華清(きりゅうかせい)「これまでと比べて直接的過ぎます」
霧生華清(きりゅうかせい)「『汝の血肉を捧げよ』」
霧生華清(きりゅうかせい)「指を詰めればいいんですか?」
キース・フォスター「何を言っているんだ?」
霧生華清(きりゅうかせい)「母国では一部地域でそういった風習が 残っているんです」
キース・フォスター「東洋のモノノフは血気盛んだね」
霧生華清(きりゅうかせい)「ひとまず進みましょう」
キース・フォスター「そうだな」
キース・フォスター(バカだね)
キース・フォスター(取り戻せるものだったら、こんなに──)
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん?」
キース・フォスター「ああ、今行くよ」
キース・フォスター(せめて、こいつだけは──)
キース・フォスター(・・・情けないな)
キース・フォスター(キリューに『あいつ』の面影を重ねちまうなんて)
キース・フォスター(過去に執着するなよ)
キース・フォスター(これじゃあ、アドルフの言うとおり ──ガキじゃないか)
〇島の家
一方その頃
アドルフ・フォスター大佐(こんなにお膳立てしてやったんだ)
アドルフ・フォスター大佐(うまくやってくれよ?)
〇黒
なあ──ケイレブ
ここ最近キースたちの信頼関係が強固なものになっている描写が多くてなんだか嬉しくなりますねー!!
20代とは思えないほどの落ち着きようと渋い台詞回しのキースですが、ここにきて若者らしさというか、
距離の近い人物には素の部分が出てしまうのがあざとくて良いですね
キリューへのさらりとした気遣いは、キースの良い漢感が伝わってきて、一層主人公としての魅力を感じられた回でした
キースとキリューが互いを思いやれて完全に同志と呼べる存在になっていますね!いい関係に憧れます☺️
あれ?ケイレブ?って、確かムキムキの中将ですよね?アドルフさんも育ての親として良き理解者と思ってたんですが…、やはり権力に逆らえないのか不穏な空気に次回が気になります🤔