異界転生 ~学校では教えてくれない、世界の救い方~

資源三世

異界探索 ~現存じゃない、あれもこれも~(脚本)

異界転生 ~学校では教えてくれない、世界の救い方~

資源三世

今すぐ読む

異界転生 ~学校では教えてくれない、世界の救い方~
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇空

〇寮の部屋
白「む?」
晴「起こしてしまったかしら?」
白「ここは?」
晴「ここは学生寮・・・」
晴「寄宿舎なら分かるかしら?」
白「うむ」
晴「その寄宿舎の、私とそこの床で転がってる子の部屋よ」
玲緒「うぅ・・・」
白「昨日の娘」
白「そうか。約束を守ってくれたか、感謝する」
白「主はこの娘の友か? 主にも感謝する」
晴「礼はいらない」
晴「私はあなた達を保護するつもりはない」
晴「玲緒は脊髄反射とノリで生きてるような子だから、あなた達を受け入れたけど」
晴「私はあなた達のことは、素性を含めて保留中よ。味方とは思わないことね」
白「勇者に全て聞いたか」
晴「えぇ」
晴「昨夜、玲緒があなたを背負い、手に凶器、背後にスケルトンを引き連れてきたときは自分の目と常識を疑ったわよ」
白「まぁ、そうだろうな」
晴「けど、あなた達はそれ以上に非常識な存在だった」
晴「異世界から転生してきた勇者と剣聖だの、そこから侵攻する軍勢が迫っているだの、どこのファンタジーよ」
白「信じて貰えるとは思っておらんよ」
白「それに全て我らの世界の不始末だ。決着は我らでつける」
白「この世界の人々には、我らの戦いなど知らないで済ませてみせるさ」
晴「その体で?」
晴「あなたは刀を振っただけで体力が尽きる。勇者は聖剣の力を引き出すと聖なる力で自分が焼かれる」
晴「なにより、この世界には既に魔獣が現れ始めてるというじゃない」
白「しかし・・・」
玲緒「うぅ・・・」
玲緒「晴・・・に、幼女ちゃん。おはようございます」
晴「おはよう。丁度、良かったわ」
玲緒「はい?」
晴「この子を文化祭に案内してあげて」
白「ブンカサイ?」
玲緒「いいんですか? 森のことや凶器の調査があると覚悟してたんですが」
晴「そっちは私が指揮しておくわ」
玲緒「で、では5分で支度するので待っていて下さい。絶対ですよ」
白「ブンカサイとは何だ?」
晴「学生が、この世界の歴史や風習なんかを展示したりするお祭りよ」
晴「こちらとしても考える時間が欲しいの。だから、文化祭を巡って私達の世界のことを知ってきて」
晴「そうすれば、あなた達の存在はこの世界にとって、どれだけイレギュラーなのか分かると思うわ」
晴「その上で、もう一度、話をしましょう。それまでは、あなた達のことは誰にも言わないわ」
白「うむ、感謝する」
晴「・・・」
玲緒「お待たせしました! さあ、文化祭へ行きましょう。まずは、どこがいいですか?」
晴「図書室へ行って。学園の成り立ちを展示してるから」
玲緒「図書室にはアレがいるから嫌なんですが・・・」
晴「さっさと行く!」
玲緒「ひぃん」

〇文化祭をしている学校
白「な、なんだこの人の数は」
玲緒「離れちゃダメですよ、人混みに紛れたら、見つけられなくなりますから」
白「祭りと聞いていたが、よもやこれほどとは」
玲緒「この学校の文化祭は人気がありますからね。島外からたくさんの観光客が訪れますよ」
白「王都ですらこんなに賑わうことはないぞ」
玲緒「幼女ちゃん・・・と、そういえば、まだちゃんと自己紹介してませんでしたね」
玲緒「玲緒は氷狩 玲緒。この学園の2年生で風紀委員長・・・ えっと公的な治安維持組織の長みたいな?」
白「憲兵のことか」
玲緒「多分、そんな感じです」
白「それでそのヒカリとレオというのは何の称号だ?」
玲緒「称号?」
玲緒「えーと・・・」

〇中庭のステージ
白「まさか貴族以外でも名を授かることが出来るのか。これが文化の違いか」
玲緒「玲・・・んんっ、私は、名前がない世界の方がビックリですよ」
玲緒「でも、私は人の名前をまるで覚えられないので、お嬢ちゃんの世界がちょっと羨ましいです」
白「お嬢ちゃんはやめてくれ。我が国王より賜った称号は白金だから、白で良い」
玲緒「白ちゃんですね。これなら私でも覚えられます。改めてよろしくお願いします、白ちゃん」
白「ふむ、よろしく頼む、玲緒」
玲緒「で、出来れば、玲緒お姉ちゃんと呼んで欲しいです」
白「気が向いたらな。それで図書室と言うのは」
玲緒「白ちゃん、大丈夫ですか?」
性格悪そうな風紀委員「ご、ごめんなさ──」
性格悪そうな風紀委員「げっ!」
どうでもいい風紀委員「おい、どうし──」
どうでもいい風紀委員「あ!」
玲緒「あなた方は・・・」
どうでもいい風紀委員「し、失礼します」
玲緒「あれ?」
白「あの二人、知り合いか?」
玲緒「風紀委員の後輩です。顔見て逃げるとか、相変わらず嫌われてるみたいですね」
白「気にするな。組織の上官というのはそういうものだ。それにほれ」
「せんぱーい!」
白「慕ってくるものもおるではないか」
玲緒「後輩ちゃん?」
玲緒「えっと、また不良が暴れてましたか? それとも新しい凶器が見つかったとか?」
風紀委員・後輩「いえ、私は今日、非番なので」
風紀委員・後輩「ただ見かけたので声をかけただけです」
玲緒「そうですか」
風紀委員・後輩「あ、もちろん、昨日のことは誰にも言ってませんよ」
玲緒「あー、えーと! そうだ、あの二人の怪我は大丈夫ですか?」
風紀委員・後輩「はい、強い打撲でしたが骨などに異常はなくて、今日の選抜試合にも出るみたいです」
風紀委員・後輩「もちろん、私も試合に出ますよ。いいとこ見せるので、応援してくださいね」
風紀委員・後輩「それでは失礼します」
白「慕われておるではないか」
玲緒「えー? いや、昨日までは会うと怯えられてたんですが? 私の弱みを握って精神的優位に立ったとかじゃありませんよね?」
白「変に拗らせておるの」
白「しかし、今は文化の展示の祭りではないのか? 何の試合があるのだ」
玲緒「あぁ、それも含めて、図書室で話しますよ。行きましょう」

〇図書館
白「ここが図書室か。本が多いな」
玲緒「文化祭の間は、この学園の歴史なんかを展示してます」
玲緒「ここには近寄りたくなかったのですが」
白「先ほどもそう言ってたな。ここに何かあるのか?」
玲緒「それは・・・」
「おっ、やっと来たか」
玲緒「出た・・・」
白「知り合いか?」
玲緒「ただの図書委員長です」
ぬりかべ「兄貴に対して随分な言い方だな、おい」
玲緒「ちーがーう! 勝手に兄貴分を気取ってるだけじゃないですか」
ぬりかべ「なんだ、相変わらずの反抗期か? 身長も精神年齢も成長しないな」
玲緒「あなたが大きすぎるだけです。同じもの食べてたのに、一人だけ大きくなって」
ぬりかべ「本当、お前がとった栄養はどこにいったんだろうな」
玲緒「あー・・・ この何言っても無駄な感じが嫌だから、ここには来たくなかったんです」
白「難儀な相手のようだな」
ぬりかべ「あんたが晴の言ってた異世界から来た剣聖か」
ぬりかべ「そんなに警戒すんな。俺は敵対するつもりはねぇよ」
玲緒「大丈夫です。こんなのですが、信頼できる相手ですから」
白「わかった。玲緒を信じよう」
ぬりかべ「改めて。2年、図書委員長。田浦 堅牛だ」
玲緒「覚えにくいので、私はぬりかべと呼んでます」
ぬりかべ「何でも好きに呼んでいいぜ。好きなものと特技は喧嘩だ。文字通り、力が必要なら呼んでくれ」
白「白金の剣聖だ。白でよい」
ぬりかべ「本当はこのまま手合わせ願いたいところだが、晴にきつく言われてるからな」
ぬりかべ「さっさと歴史の授業といこうか」
玲緒「私、歴史も苦手なんだけどなぁ・・・」

〇歴史
ぬりかべ「人類が初めて有人での異世界到達に成功したのは、今から半世紀も前、1969年7月──」
ぬりかべ「それまで理論上の存在に過ぎなかった異世界は、その日を境に現実のものと認識されるようになった」
白「この世界は、既に異世界へ到達しておったのか」
ぬりかべ「到達だけは、な」
ぬりかべ「その世界は既に滅んでいたんだ」
ぬりかべ「土は死に、水は腐り、空気は毒ガス同然。建築物はいつ崩れるかもわからない瓦礫だったとか」
ぬりかべ「それでも、僅かに残った原型を残した遺産を持ち帰ったんだが」
ぬりかべ「それが未知の物質やテクノロジーの塊だったもんで、飛躍的な技術革新が巻き起こすきっかけとなった」
玲緒「簡単に言うと、棍棒で殴り合ってた時代に、鉄の剣を見つけたみたいな?」
白「なるほど」
ぬりかべ「常識を覆すテクノロジーだ。各国はすべからく、その遺産を手に入れようと奔走した」
ぬりかべ「だが異世界に到達できるのは10%以下、更に回収に至っては1%未満だ」
ぬりかべ「そのくせ航行の失敗は命に関わるものだ。それでも各国は利益を求め、異世界への進出を繰り返した」
白「どの世界でも、人の命を安く見る為政者は居るのだな」
ぬりかべ「行き過ぎた競争は、やがて限界を迎えた」
ぬりかべ「今から17年前、数えきれない死傷者を出す大事故が起きた」
ぬりかべ「当時はリスクとリターンが釣り合わないと、異世界進出を停止する直前まで行ったらしい」
ぬりかべ「だが、事故で発生した副産物が、新しい異世界探査の道しるべとなった」
ぬりかべ「それが異世界転生技術。100%異世界に行って、高確率で遺物の回収まで行える画期的な代物だ」
白「この世界は異界転生術を使えるのか」
ぬりかべ「相性があるから、1年に2~3度、15~20歳前後の人間しか送れないという条件がつくがな」
ぬりかべ「制限年齢があるなら、それ用の人材を教育するのが手っ取り早い。そうして、この学園は作られた」
玲緒「基本は普通の学校と同じですが、帯剣したり、異世界に関する授業を受けたりするんですよ」
白「その剣か」
ぬりかべ「『制剣』っていう、異世界遺物のコピー品だ。オリジナルの損傷が激しく、劣化コピーだけどな」
白(勇者の聖剣に似ていると思っていたが、この様子だと出どころは近いのかも知れんな)
白「しかし、何故、遺物なのだ。それほど進出が容易くなったなら、他の異界文明と接触していないのか」
ぬりかべ「見つかってないんだよ」
白「どういう意味だ?」
ぬりかべ「異界進出を開始してから半世紀。人類は一度として、異世界人を見つけたことはない」
ぬりかべ「人類が発見した、どの異世界も、文明の進化具合に関わらず同じように滅んでいたんだ」
玲緒「原因は不明ですが、有力な仮説として、生きた世界同士は繋がれないというのがあります」
白「生きた世界同士は繋がらない・・・」
白(晴が、我らの存在を持て余していたのはこれが理由か)
玲緒「でも、白ちゃんがこの世界に来たということは、その仮説は否定されたってことですよね」
白「いや、まあ、そうなるのか?」
玲緒「逆に言えば、玲緒も、白ちゃんのいた世界に行けるってことですよね?」
白「そ、そうなのか?」
玲緒「白ちゃんの世界は、魔王とかなんとか大変そうですが、それなら玲緒もお手伝いにいきます」
玲緒「白ちゃんに玲緒に晴、そこの壁に、骨もいれば、悪者なんてあっという間に倒せますよ」
玲緒「そして、世界を救った英雄となった暁には、玲緒はたくさんの幼女に慕われて・・・ぐへへ」
玲緒「じゃなくて」
玲緒「初めて異世界の人たちと仲良くできるかも知れないんです。誰が何と言おうと、玲緒は白ちゃんの味方です」
玲緒「白ちゃんを元居た世界に、必ず連れて行きますよ」
ぬりかべ「俺は暴れられるならなんだっていい」
白「感謝する」
白(ここは一体、どんな世界かと思っていたが)
白(心根の真っすぐな者達が育つ、良い世界ではないか)
白(なればこそ、彼奴に異界侵攻などさせるわけにはいかぬ。必ず・・・)
玲緒「あっ!」
玲緒「もう、後輩ちゃんの試合が始まる時間! 急いでいかないと!」

〇体育館の外

〇体育館の中
風紀委員・後輩「きゃぁっ!」
実況「おぉっと、謎の攻撃でついに剣が折れた! このまま心も折れてしまうのか?!」
風紀委員・後輩「そんな・・・」
「もう降参しろよ」
どうでもいい風紀委員「こいつに勝てないのは、分かるだろ?」

次のエピソード:異界凶器 ~壊れるほど斬りつけても、3分の1も伝わらない~

ページTOPへ