第22話 休息(脚本)
〇殺風景な部屋
2021年 北海道日本海側海上 ミサイル艦わかたか 船内
斎王達はひとまずミサイル艦わかたかに乗船し、エンチャントは『できるだけゆっくり航行して欲しい』と頼んだ
海士長はそれを聞き入れ約『2日』掛けて航行すると言った。
ひとまずの目的地は『京都の舞鶴』と海士長はエンチャントに伝え、エンチャント達は今後の事について話し合う事に
エンチャント魔導法士「さて···次の目的地は『大阪』だったな?目標は紅色派の行動目的、どうやって探る?」
フェード「ミンさんに会う、紅色派の幹部であるあの人なら何か知ってるはずだ」
エンチャント魔導法士「ミンか、まぁ頼ってもいい相手だが問題は居場所だ。目星はついてるのか?」
フェード「ついてない。だから大阪に入る前に民主派の中国人達に『電話して』聞いて見ようと思う」
エンチャント魔導法士「お前携帯持ってるのか···?」
フェード「いや、公衆電話から掛ける。至る所にあっただろ?」
エンチャント魔導法士「公衆電話か~···まだあったか···?」
鸞「携帯電話の普及で撤去が進んでいるから探すのも一苦労だな、公民館や学校などでは残ってる事も多いからそこを探らねばな」
フェード「ないのか···公衆電話···」
キング「京都から大阪までどんくらいあんだ?普通に行けるのか?」
鸞「車で4時間だが···どうやって行くか考えておかねばな···」
皆そこで頭を悩ませていた。そんな中早速飽きたのか、凪園が部屋を出て数分した後戻ってくる
凪園無頼「地図もらってきたー。これなら分かりやすくねー?」
キング「どれどれ···ってこれ『海図』じゃねえか!返してこい!!」
鸞「待った。色々書いてるな···京都のおすすめソープ···飯がうまい店···『大阪に安全に着く道順』なんてのも書いてあるな」
その言葉を聞くや否や2人が前のめりになり反応する
フェード「『飯がうまい店!?』」
エンチャント魔導法士「『京都のおすすめソープ!!?』」
「詳しく聞いてこなければ!!」
鸞「少し黙ってろ」
そんな中遂に斎王が目を覚ます。斎王は状況が飲み込めず混乱していたがひとまず今までの経緯を鸞から説明される
斎王幽羅「お、俺の首に懸賞金5000万···?なんでそんなに···?」
フェード「正確には250万人民元だ、恐らく紅色派が斎王の『何か』を狙っているかもしれないな」
鸞「ついでだ、それも大阪で探る必要がある···というかいいのか斎王。お前が嫌なら大阪は避けて通ってもいいんだぞ?」
斎王の表情が柔らかなものに変わり、鸞に言葉を返す
斎王幽羅「いや、行かなければならないなら行った方がいいよ。俺に掛けられた懸賞金の理由、紅色派の目的を知っておかなきゃ」
鸞「そうか、それならいいが···ところで皆気になっていることだが」
鸞「『クローン兵器はどうなった?』」
鸞がそれを切り出すと、斎王は暗い顔をしながら答える
斎王幽羅「ごめん···『覚えてない』」
皆が一様に驚きの様子を見せる中、凪園はこんな事を喋り出す
凪園無頼「キレすぎて覚えてねーとか?だったらウケんだけどねー」
斎王幽羅「多分そうだと思う。クローン兵器が音声を流したんだけどそれが···『母さんがレイプされてる時の物』だったんだ」
斎王幽羅「それで頭に血が上って···気づいたらこの船内に居た」
鸞「確証はあるのか?別の女という事も考えられるぞ?」
斎王幽羅「最初は気づかなかったけど、女の人が『父さん』の名前を呼びながら泣いてやめてって言ってたから間違いないよ」
キング「でもよ斎王、20人近くいた奴らは全員雪月頼、斎王勇次郎、鬼月冷羅がその場で皆殺しにしたんだろ?」
キング「『誰が音声撮ってたんだ?』」
斎王幽羅「わからない···俺もずっと気がかりなんだ、誰がなんの目的でこんな事を···エンチャントだんは何か知らない?」
エンチャント魔導法士「聞いたこともないな···今でこそあれだが当時は頼、勇次郎、冷羅の3人は恨みを買って··· ··· ···いや、買ってるな」
斎王幽羅「誰?中国人?」
エンチャント魔導法士「カルト教団、闇ギルド残党、国際異能連盟、警視庁、あげればキリがないぞ」
凪園無頼「敵だらけじゃん、どうしてそんな敵だらけな訳?」
エンチャント魔導法士「三代目の時代鸞の父親が参謀役で方々に顔建てしてたんだが」
エンチャント魔導法士「時代も進んでXヒーローに付け入ろうとするう組織が増えたんだ、それを頼が拒否して喧嘩になって···って流れだな」
エンチャント魔導法士「色々うまくやればいいものを頼の奴はいつも···」
エンチャント魔導法士「『私が死神より頭悪いからふっかけてもバレないって?万が一にでも喧嘩王より弱いから戦闘になっても勝てるって?』」
エンチャント魔導法士「『ナメないで、死神や喧嘩王に通じても私には通じないわ。今日で縁切りよ、二度とXヒーローに近づかないで』」
エンチャント魔導法士「なーんて言ってたな。四代目の時代は幹部メンバー含め全員『参謀役』が途中まで居なかったからなぁ···」
凪園無頼「はいはーい、じゃあ6代目Xヒーローの参謀役俺やるー!」
「絶対やめろ!!」
凪園無頼「は?全員で拒否るとかマジで意味わかんねーし、じゃあ誰がいい訳?」
斎王幽羅「鸞じゃない···?と、とにかく!母さんを襲うよう指示したヤツらの特定もしよう。いいよね?」
キング「当たり前だろ、お前は俺らのリーダーなんだからよ。従うぜ『マスター』」
斎王幽羅「改めてマスターって言われると···て、照れるね···えへへ···」
そして暫く時が経ち、各々が時間を過ごす中··· ··· ···
フェード「キング、隣いいか?少し話したいことがある」
キング「おう、なんだ?」
フェード「改めてだが···変化武器達の事はすまなかった。私が拉致しなければ変化武器達は···」
頭を下げようとするフェードに対してキングは強く背中を叩く
キング「もう終わった事だ、気にすんな!それに元々何人かで中国に行く予定だったんだ」
フェード「中国に···?なぜだ···?」
キング「俺ら変化武器達で考えた『ピース作戦』ってのがあってな?まぁ内容はあんま言えねえがよ」
キング「イギリス、中国、ギリシャに遠征して日本に集合するって話だったんだ。まぁ···誰も帰ってきてねえがよ」
キング「中国に行くメンバーのリーダーが『クロノス』って変化武器でお前が着けてるその『グローブ』って訳だ」
フェード「クロノス···この変化武器はクロノスという名だったのか···」
フェードはグローブを強く握り締め、数秒間祈るように目を閉じる
フェードが目を開け、キングに話始める
フェード「キング、中国組の中に『孔明扇』の変化武器はいたか···?そいつの異能を教えて欲しい」
キングはそれを聞くと頭を抱え、暗い顔をし始める
キング「クソッ、あいつもやられてたか···まぁ考えてみればか···」
キング「そいつの武器の名前は『運命の風』で『こうしたいと願った事が因果律をねじ曲げ無理やり叶える』異能だ」
フェード「因果律をねじ曲げて無理やり願いを叶える···?代償は無いのか···?」
キング「使用者の生涯かけての『運』を使う。それが尽きれば運命の風の異能は使えなくなる」
フェード「『運』か···諸葛孔明の最後に準えてるのか」
キング「え?そうなのか?」
フェード「諸葛孔明はライバル司馬遼と五丈原という場所で戦った。川を隔てての戦いだったが長雨で長期化」
フェード「それだけでなく運悪く司馬遼サイドに援軍が到着、諸葛孔明は防戦の準備をしていた最中病で亡くなってしまうんだ」
フェード「長雨がなければ勝っていた。と言われている」
キング「へぇー、よく知ってんなぁ··· ··· ···おい、てことは敵が運命の風持ってるって事になるぞ?マジか?」
フェード「マジだ。孔明扇を振るわれて急に転んだり、異次元の開口が極端に開きずらくなったりした」
フェード「不思議に思っていたがそういう異能武器なら合点がいった。対策を練らねばな···」
キング「そういう事なら一緒に考えるぞ、俺もあいつには勝てた試しがないが『始まりの武器達』は負けた事ないって言ってたしな」
フェード「なんだそれは」
キング「変化武器は親父が魂の一欠片を武器に込めて作った種族だが」
キング「初めに作った『24の変化武器』だけは史実の物を使ってる、つまり『実際の歴史に存在する武器』って事だ」
キング「親父の愛剣である泉の宝剣『アロンダイト』も円卓伝説で実際にランスロット卿が使ってた物だしな」
フェード「す、すごいな···だがそんな大昔の武器相当劣化が激しいはずだぞ···?」
キング「本来だと武器の記憶を取り出して別のもんに移すんだよ、銃とか。でも始まりの武器達は」
キング「『親父が無理して作りたかった』って聞いてる、敵が持ってる孔明扇も始まりの武器の1人だ」
フェード「え、じゃああれは紛い物では無いのか···?」
キング「正真正銘『諸葛孔明が使用していた羽扇子』だぜ?」
フェード「うっ··· ··· ···羨ましい···私も三国志時代の武器が欲しい···」
キング「そこかよ··· ··· ···まぁとにかく、そんなヤツらが打破できたんだ。策はある、一緒に考えようぜ」
斎王幽羅「キング、フェード、鸞とエンチャントさんと凪園知らない?」
フェード「鸞とエンチャントは甲板に行くと言っていたな、凪園は知らん」
斎王幽羅「またどっかいったのか凪園···探してくるね···」
〇沖合
日本海沖 ミサイル艦わかたか 甲板
エンチャント魔導法士「寒っ···鸞、話ってなんだ?さっさと済ませて中に入らんか···?」
鸞「あんたがイヴァン司教の津波に向けて放った魔術『セラフィムの愛』、俺にも教えてくれないか?」
エンチャント魔導法士「別に大したことはしてない、それにお前もイサマの呪い?とかいう術を使っただろ」
エンチャント魔導法士「原理は同じだ、空気中の酸素を凝縮しながら着火」
エンチャント魔導法士「着火時の炎を空気の流れを操り形作って、後はぶつけるだけだ」
鸞「俺が聞きたいのはそこじゃない、あの『威力の差』を埋めたいんだ」
鸞「津波を蒸発させられない炎じゃこの先斎王を助けられない。もっと強い威力が必要なんだ」
珍しく焦る様子を見せる鸞にエンチャントは昔の自分を重ねていた
エンチャント魔導法士「まぁ座れ。まずはそれからだ」
2人が甲板で腰を降ろし、エンチャントは話始める
エンチャント魔導法士「ワシも昔、お前の親父さんに『同じ事』聞いたよ。ブッ殺されるかもとか思いながらな」
鸞「··· ··· ···父は何と返したんだ?」
エンチャント魔導法士「『知らん』って言われたな。いやぁおっかなかったわ」
鸞「本当に母さん以外には口下手だな、あの人は」
エンチャント魔導法士「まぁでもあの人見てて思ったよ」
エンチャント魔導法士「『力は与えられるものではなく自らで見つけ出す物だ』ってな」
鸞「見つけ出す··· ··· ···あんたはどうやって見つけ出したんだ?」
エンチャント魔導法士「ワシか?ワシはひたすら喧嘩王の後引っ付いて歩いてたよ。気づいたら『命の魔術師』なんて呼ばれとったがな」
エンチャント魔導法士「おかげで何万回も死にかけたがな。あっはっはっはっ!」
鸞「笑い事なのか···?でもそうか···『修羅場が人を成長させる』鳳凰様も仰っていたな」
鸞「··· ··· ···エンチャント、試したい技がある。練習に付き合ってくれるか?」
エンチャント魔導法士「いいぞ、ワシはお前の親父と違って『優しい』からな」
そんな中、凪園が現れ『自分も試したい技がある』といい3人で技の特訓をすることになった
〇沖合
数時間後··· ··· ···
エンチャント魔導法士「鸞、お前の技は全て『肺』に依存している。口だけじゃなく鼻からも空気を吸え」
エンチャント魔導法士「肺という点では凪園も同じだ、威力としてはまだまだだ。お前の場合深く長く吸うことを意識しろ」
鸞「思った以上に上手くいかないものだな···インド式の呼吸ではダメか?」
エンチャント魔導法士「インド式の呼吸は浅く長く吸う事になっている、より深くそして長さを保て」
凪園無頼「今以上に深く長くとか無理くね?時間取られんだけど」
エンチャント魔導法士「最初はそれでいい、肺が慣れていくうちに呼吸にかかる時間も減ってくる。さぁもっかいやれ」
鸞と凪園はエンチャントの言われた通り、長くそして深く息を吸い始める
数十秒経ち、互いが動きを見せる
鸞「『獄炎 閻魔裁きの術!!』」
凪園無頼「風のビート『アストレイア・ゼピュロス!!』」
〇殺風景な部屋
同時刻 船内 待機室内
突然大きな爆音が船内に鳴り響き、部屋の外では船員達が慌ただし動き始めた。
しかし船内放送にてこの爆音の正体が知らされる
只今の爆音は敵の攻撃や艦の損傷によるものでは無い。繰り返す、なんでもないから『地上に出るな』
あーあ···どうすんだよこれ··· ··· ···じいさん直せるのか?
え?直せないの?勘弁しろって···あ、やべ
余計な事まで聞こえてしまったためか船内にいる船員達はパニックになっていた
機関士達は隅々まで点検をしたが放送通り特に異常はなかった。やはり地上で何かあったらしい
キング「··· ··· ···斎王、さっき凪園探してたけど見つかったか?」
斎王幽羅「見つからなかった··· ··· ···これってもしかして···?」
斎王幽羅「凪園がミサイルかなんかを壊したのかな···?」
キング「あれっていくらすんだ?俺今320円しかもってねえぞ」
フェード「一発で20億ぐらいしなかったか?」
「やべェ!今すぐ外行って謝ってこよう!」
To Be Continued··· ··· ···