ひめおと~ 姫が男に転生しても勇者の愛は変わらないのか?~

イトウアユム・いわさきなおみ

第17話「唇まで、ゼロ距離」 (脚本)

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〇綺麗な一人部屋
大和要「葵さんっ!」
姫野葵「!」
  自由に身動きが取れないほど大きな揺れの中、要はとっさに葵に覆いかぶさり、自分より大きな体をぎゅっと抱きしめた。
大和要(葵さんを・・・守るんだ!)
姫野葵「かなめ、く・・・」
大和要「・・・あ。止まった、かな?」
  やがて揺れが収まりふと我に返ると
  2人の顔はまつげが触れるほど
  近づいていて──
姫野葵「・・・っ」
大和要「あ──」
  間近に迫る葵の顔は、羞恥で真っ赤に
  染まり、うるんだ瞳には同じように頬
  を染めた要の顔が映っている。
  すぐ傍にある葵の唇はひどく艶かしく
  そこから漏れる微かな吐息は要の肌を
  甘くくすぐった。
  ――触れたい
  本能に誘われるまま、要はその唇に
  自身のそれを寄せていき――・・・
姫野葵「要、くん・・・」
大和要「!」
  絞り出したような葵の声に
  要は弾かれたように体を離す。
姫野葵「あ・・・」
大和要「あっ! え、ええとっ、地震! び、びっくりしたね」
大和要「ごめん、いきなり あの、危ないって思ったら、夢中で」
姫野葵「あ、ええ・・・そう、ですね 要くん、大丈夫でしたか?」
大和要「お、俺は全然! ――あ、物がちょっと 落ちちゃってるね。片付け、手伝うよ」
  そう言って要は葵に背を向け
  部屋に散乱した物を拾い始める。
大和要(俺、今一瞬だけ、葵さんに キスしたいって思ってた)
大和要(葵さんがすごく色っぽく見えて たまらなくなって・・・)
大和要(なんなんだ、この気持ち!?)
大和要(ううっ、恥ずかしくて、今はとても 葵さんの顔、見られないよ・・・!)
姫野葵「・・・・・・」
  一方葵は、深く悲しみに沈んだ表情で
  要の背中を見つめている。
  そして自身の唇に指先でそっと触れ、要には届かないほど小さな声でぽつりと呟く。
姫野葵「やっぱり・・・ 今の私じゃダメなんですね」

〇体育館の舞台
  翌日、要はクラスメイトたちと演劇
  『クリスタリア幻想記』の最終稽古を
  行っていた。
小早川翠「オニキス、私も連れて行ってください」
大和要「やあ、カーネリア姫。待っていたよ さあ、共に行こう」
男子生徒「おい、要ー。また視線おかしいよ どこ見てんの。小早川の顔見て!」
大和要「あ・・・ごめん」
大和要(またやっちゃった。相手がカーネリア姫だと思うと、どうしても葵さんの顔が浮かんで、見上げちゃうんだよな)
  オニキスだった頃、カーネリア姫は
  自分よりも小柄だった。
  だから本当なら
  見上げることはありえない。
大和要(最初は葵さんにカーネリア姫の面影を 見ていたのに)
大和要(俺、いつの間にか葵さん個人を 見るようになっていたんだな)
  葵さん
  心の中で名前を呼ぶと、不意に昨日の
  キス未遂事件の映像が脳裏に浮かび
  かっと全身が熱を持つ。
小早川翠「要くん、顔赤いけど、大丈夫?」
大和要「だ、大丈夫!」
大和要「ちょっと練習に熱が入っちゃったみたい 水でも飲んで、クールダウンするよ」
大和要(あの時、葵さんを押し倒すみたいな格好になって、衝動的にキスしたいって思った)
大和要(そしてたぶん、それ以上のことも・・・)
  男相手に、そんな気持ちを抱くなんて
  ありえない。
  ――少し前までなら
  そう一笑に付したはずだ。
大和要(でも、今は・・・)
  まさにその時、要の視界に体育館の扉を
  開けて、おずおずと入ってくる葵の姿が
  飛び込んできた。
大和要「っ! ゴホゴホッ・・・!」
小早川翠「ちょっと、要くん、大丈夫!? なんで急に咳込んで・・・」
大和要(葵さん・・・! そうか、昨日俺が 練習を見に来るように誘ったから・・・)
大和要(でも昨日の今日で、ちょっと気まずいな)

〇学校の体育館
  体育館に入ってきた葵に
  真っ先に声を掛けたのは雫だった。
黒須雫「あっれー、姫野サンじゃん! そんなとこでなーにコソコソしてるしてるワケ?」
姫野葵「わっ! し、雫くん・・・」
黒須雫「要に呼ばれたんでしょ?」
黒須雫「アンタは『クリスタリア幻想記』の作者で 要の恋人なんだから、もっと堂々と入って くりゃいーのに」
姫野葵「こ、恋人だなんて! 冗談でもやめてください」
姫野葵「皆さんに誤解されてしまったら 要くんに申し訳ないです」
黒須雫「ふうん? でも毎日連絡取り合ってるし 週末にはデートもしてるんでしょ?」
黒須雫「今更気にするよーなコト?」
  冗談めかしてはいるが、どこか刃物の切っ先を思わせる鋭い視線に、葵が目を伏せた――その瞬間。
近衛尊文「黒須くんっ! そこまでにしてもらおうか」
姫野葵「! た、尊文さん・・・?」
黒須雫「げ。アンタなんでここに?」
近衛尊文「葵さんいるところ、この近衛尊文は いつ何時であっても参上する!」
近衛尊文「・・・貴様、これ以上葵さんを 苦しめるとどうなるか・・・」
黒須雫「あれェ? そーんな怖い顔しちゃって どーしたんすか?」

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