ひめおと~ 姫が男に転生しても勇者の愛は変わらないのか?~

イトウアユム・いわさきなおみ

第16話「尊敬か、それとも」 (脚本)

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〇空
  ――それぞれの思いが交錯した
  夏が終わり、秋。
  要は毎日のように葵と連絡を取り、時間があれば家で勉強を教えてもらったり、週末には2人で出かけたりしていた。

〇教室
江西紫「要、おはよう 昨日も姫野さんの家に行ったのか?」
大和要「おはよ、紫。うん、葵さんの教え方うまいから、すっかりお世話になりっぱなしだよ」
黒須雫「毎日家に入り浸ってるだけじゃなくて おはよーからおやすみまでメールしま くりなんだろ?」
黒須雫「お前らラブラブ過ぎじゃね?」
大和要「あはは・・・ ラブラブとか、そんなんじゃないけど」
大和要(とはいえ雫の言う通り 葵さんってすごくマメなんだよね)
大和要(さりげない挨拶とか、気遣いとか 負担にならない範囲でしてくれて)
大和要(俺が女の子だったら、ああいう男に 惚れるだろうなあ、確実に)
大和要(それに比べて俺は・・・)
大和要「はあ・・・」
江西紫「話を聞く限り、順調そのもののようだが 何か心配事か?」
大和要「いやさ、なんで俺は葵さんみたいに うまく振る舞えないんだろうって」
大和要「前世では、もう少しちゃんと できてたはずなのに」
黒須雫「オレにとっては、ドジっ子なとこ 含めて要! ってカンジすっけどな」
江西紫「まあそうだが・・・」
江西紫「前世で要は勇者だったのだろう?」
江西紫「なら、保有スキルが『チート』 だったのではないか?」
大和要「チート?」
江西紫「つまりは、何をやっても うまくできてしまう能力だな」
江西紫「勇者というからには、それくらい 優遇されていてもおかしくはない」
大和要(言われてみれば、思い当たることがある)
江西紫「まあ、お前のことだから 人一倍の努力はしていたんだろうがな」
大和要「でも、そのチートが使えなくなった今の 俺が、等身大の俺ってことなんだろうな」
大和要「・・・ついでに背も低いし」
大和要(逆に葵さんは体格も良いし、思慮深い)
大和要(他人への気遣いもできて、まさに俺が 憧れてきた理想の男性像そのものだ)
大和要「でも、俺だって、いつかああいう かっこいい男になりたいんだ」
大和要「葵さんと、肩を並べられるような 立派な男に」
江西紫「それは、どういうつもりで 言っているんだ?」
大和要「えっ」
江西紫「『あの人に釣り合う人間になりたい』」
江西紫「――純粋な尊敬なのか、それとも恋慕 なのか。お前の真意はどちらなんだ」
大和要「れっ、恋慕って・・・!」
江西紫「おかしなことを言っているか? 姫野さんとお前は前世で恋仲だったのだろう」
江西紫「そして今も、姫野さんはお前を想っている」
江西紫「そろそろ、自分の気持ちに答えを出す時 なんじゃないか、要」
大和要「俺、は――・・・」
大和要(確かに、男とか女とか関係なく あの人はすごく素敵な人だ)
大和要(優しくて、繊細なところもあるけど 芯が強くて)
大和要(・・・正直、葵さんを想うだけで 胸が苦しくなることがある)
大和要(それって本当に尊敬だけなのか?)
大和要(それとも・・・)

〇広い厨房
男性「新人! オーダー入ったぞ、いけるか?」
大和要「はいっ、大丈夫です!」
  熱海から帰ってきた要は、葵へのプレゼントを買う資金を貯めるため、レストランの厨房でバイトを始めた。
  コンビニやホームセンター、ファストフードなどいくつかある選択肢の中で要がレストランを選んだのには、理由がある。
大和要(料理を覚えて、いつか葵さんに 俺の手料理を食べてもらうんだ)
大和要(いつもご馳走になってるから そのお返しに)
大和要(葵さん、俺の作った料理を食べたら どんな反応してくれるかな)
大和要(喜ぶかな、それとも・・・)
  そこで要は思考を止め
  緩く口元に笑みを滲ませる。
大和要(俺の頭の中・・・葵さんのことばっかりだ)

〇綺麗な一人部屋
姫野葵「だから、ここはこの公式を応用して・・・」
大和要「あー、そっか! うう、難しいなあ」
大和要「ごめんね、何度も同じことを教えて もらっちゃって」
姫野葵「いいえ、反復練習は勉強の基本ですから」
姫野葵「それに要くん、かなり覚えが良くなって いますよ。努力の賜物ですね」
大和要「へへ、ありがと」
大和要「・・・今の俺はオニキスだった頃みたいに 勇者スキルがないからさ」
大和要「努力しても必ずしも うまくできるわけじゃない」
大和要「でも、そんな俺でも応援してくれる 葵さんに誇れる自分になりたいから」
大和要「人一倍、努力くらいはしないとね」
姫野葵「そう、ですか・・・」
姫野葵「素敵だと思います」
大和要「うん。それに、超難関校の透京国立大を 受けるんだから、必死でやらないと」
姫野葵「要くんがうちの大学を志望していると聞いた時は驚きましたが、将来のことを考えての決断、素晴らしいと思います」
大和要「へへ、ありがと」
大和要(実際は、葵さんと一緒にキャンパスライフを送りたいって、ただそれだけなんだけど)
大和要(葵さんってしっかりしてるけど、時々危なっかしいところがあるから、俺が傍で見守っておいてあげないと不安なんだよね)
姫野葵「そうだ、飲み物を切らしていたんです」
姫野葵「私ちょっとコンビニに行ってくるので 少し待っていてくださいね」
大和要「俺が行こうか?」
姫野葵「いえ、ついでに日用品も買い足してくるので大丈夫ですよ。すぐ戻りますね」

〇ゆるやかな坂道
姫野葵(要くんはオニキスの頃と変わらず、真っ直ぐでひたむきで、時々目を開けていられないくらいに眩しい人・・・)

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