ひめおと~ 姫が男に転生しても勇者の愛は変わらないのか?~

イトウアユム・いわさきなおみ

第15話「友達」(脚本)

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〇おしゃれな居間
近衛尊文「魔王ラピスは勇者オニキスを殺し カーネリア姫様を不幸にした張本人だ」
近衛尊文「貴様はその生まれ変わりだと そう言うのだな」
黒須雫「ああ、間違いないよ」
近衛尊文「では何故そのことを今まで黙っていた」
近衛尊文「今世でも何かよからぬことを企んでいる のではあるまいな。返答次第では・・・」
  尊文の目が鋭さを増し
  ぎらりと憎しみの光が強まる。
  そんな尊文を制したのは、葵だった。
姫野葵「尊文さん、落ち着いて」
姫野葵「――雫くん、魔王ラピスと私たちの間には 水に流せと言われても簡単でないほどの 過去があります」
姫野葵「私の大切な人・・・オニキスを 魔王が殺したのは確かですし・・・」
黒須雫「・・・ああ、そうだな」
姫野葵「でも私は過去の因縁より 今の要くんの考えを尊重したい」
姫野葵「だから私は、要くんの決定に従います」
  その場にいる全員の視線が要に注がれると
  要はふっと笑みを浮かべる。
大和要「なんていうか・・・雫も紫も意外と 気を遣うタイプだったんだね」
黒須雫「要?」
大和要「だってそうでしょ。雫は、俺の気持ちを 考えて魔王だってことを黙ってたわけだし 紫も俺と雫のことを思って嘘をついた」
江西紫「・・・・・・」
大和要「たしかに、俺は前世で 魔王ラピスに命を奪われた」
大和要「でも逆に、俺だってラピスの命を 奪ったんだ。お互い様だよ」
大和要「それにもう過去のことだ。俺も雫も普通の人間に生まれ変わって、今はこうして平和な時代で生きてる。それでいいじゃないか」
黒須雫「要、お前って奴は・・・」
大和要「それにさ、もし雫がラピスだっていうなら 俺1つ聞きたいことがあるんだよね」
黒須雫「なんだ?」
大和要「スフェーン王国の城下町で知り合った ルビィって奴、あれはラピスと同一人物 だったんじゃない?」
黒須雫「! お前、気づいて・・・」
大和要「やっぱりそうだったんだ うん、なんとなく気づいてたよ」
大和要「俺はルビィと友達のつもりだったけど ルビィはその話をするといつも寂しそうに笑うだけだった」
大和要「その度に、『ああ、きっとルビィには俺に言えない大きな秘密があるんだろうな』って思ってたんだ。だからさ──」
大和要「クリスタリアでは無理だったけど 今世でちゃんと友達になれて嬉しいよ」
黒須雫「!」

〇西洋の市場
オニキス「信頼していた人に嘘をつかれてたら どうするか?」
オニキス「――ははっ」
ラピス「なんで笑うんだよ?」
オニキス「いや。つい最近、まったく同じことを 聞かれたなあと思ってさ」
ラピス「ふーん? で、お前はなんて答えたワケ?」
オニキス「相手を恨んだり憎んだりする前に なぜその人が嘘をついたのか理由を 考えてみて、って」
ラピス「理由?」
オニキス「うん。自分が信頼に足る相手だと思ってたくらいの人なんだから、よほどの理由があるんじゃないかって」
ラピス「・・・最初から、そいつは騙そうと思って近づいたのかもしれないだろ」
オニキス「たしかにそうだけど、でもそれって 自分が勝手に信じちゃっただけの話でしょ」
オニキス「それに応えてもらえなかったからって 憎んだり責めたりするのは、ちょっと 違うかなって思うんだ」
ラピス「・・・そーかよ 相変わらずオニキスはお気楽だなァ」
オニキス「あっ、なんだよールビィ! 今俺のこと馬鹿にしたでしょ?」
ラピス「いやー? べっつにしてないけどォ?」
ラピス(馬鹿になんて、してない むしろ、そういう奴だからオレは お前のことが──)

〇おしゃれな居間
黒須雫「そっ、か。そうだよな、お前は昔っから そーゆー奴だったよ」
大和要「そういうこと。ってわけで改めて これからも友達としてよろしく、雫」
  にこりと微笑みかけ、手を差し出す要に
  雫は苦笑を返す。
黒須雫「・・・ああ。よろしく頼むわ」
  2人は固い握手を交わす。
  その様子を見た葵が要の傍に歩み寄り
  そっと肩に手を置いた。
姫野葵「要くん。・・・良かったですね」
大和要「ありがとう、葵さん 葵さんが相談に乗ってくれたおかげだよ」
  要と葵が微笑み合っていると、少し離れたところから尊文の咳払いが聞こえる。
近衛尊文「ゴホン! ひとまずは様子見とさせてもらうが、私はまだ気を許したわけではないのでな! 勘違いするでないぞ!」
姫野葵「尊文さんは、素直じゃないですね」
大和要「ふふ、本当だね」
  要を見つめる葵の目には
  深い愛情が灯っている。
  そして葵を見る要の目も
  ひどく穏やかで優しい。
黒須雫「はは・・・やっぱ、ラブラブじゃねーの」
  雫の言葉尻に滲んだ寂しげな声音に
  気づいた者は、誰もいなかった。
  ――ただ1人を除いて。

〇おしゃれな居間
  皆が部屋に引き上げた後、雫は1人で
  リビングに残っていた。そこへ──
江西紫「雫。まだここにいたのか」
黒須雫「おー、紫じゃねーの」

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