ひめおと~ 姫が男に転生しても勇者の愛は変わらないのか?~

イトウアユム・いわさきなおみ

第14話「魔王が生まれた日」 (脚本)

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〇荒廃した市街地
  ――物心ついた頃
  ラピスは既に奴隷として生きていた。
  魔王が君臨する以前のクリスタリアでは
  魔族と人間の力が拮抗していたが
  ラピスが住む地域は人間の方が強く
  魔族は人間の奴隷として飼われ、使役され
  虐げられるだけの存在と成り果てていた。
  しかし、ラピスは
  子ども心に理解していた。
  自分に、世界を揺るがすほど
  強大な力が秘められていることを──
ラピス「もういい加減にしやがれ! オレはもうこんな生活まっぴらなんだよ!」
人間「ああ!? クズみたいな魔族のガキ風情が 何言ってやがる!」
人間「てめえらは俺たち人間様の 役に立ってナンボだろーが!」
ラピス「・・・ふざけるなよ」
ラピス「・・・力を持たない人間ごときが 調子に乗りやがって!」
人間「ひっ・・・この光は・・・」
人間「っ、ぎゃあああ!」
  身の内に宿る力を少し解放しただけで
  あっさりと目の前の人間は死んだ。
ラピス(なんだ・・・こんな簡単なことだったんだ 人間なんて・・・脆い存在なんだ)
ラピス(――いける。この力があれば)
ラピス(このクソみてえな日々から抜け出して クリスタリア中の魔族を救って・・・)
ラピス(弱いくせに威張り散らすことしかできない ゲスな人間どもを支配して、魔族の国を 創り上げる。オレなら、できる──)
  そう確信したラピスは、生まれ育った
  スラム街を離れることを決めた。
  そこを抜け出しても、身寄りのない魔族の子どもに対する風当たりは強く、生きるために泥水を啜るような日々が続く。
  それでもラピスは、もっと力をつけて人間を滅ぼし、魔族のためだけの国を創るために必死に耐えた。
  やがて時は流れ──

〇闇の闘技場
闇の司祭「汝、ラピスは今から闇の魔王となる。その力をもって、人間どもを討ち滅ぼすが良い」
魔王ラピス「・・・心得た」
魔王ラピス(ついにこの時がきた オレが、闇の魔王になったんだ・・・!)
魔王ラピス(人間どもを、殲滅する。魔族のための国を オレが創るんだ・・・!)
  司祭から洗礼を受け振り返ると、目の前で数百、数千もの魔族がラピスに視線を注いでいる。
魔王ラピス「皆のもの、よく聞くがいい」
魔王ラピス「今からこのオレ・・・ 我が闇の魔王として魔族の長に君臨する」
魔王ラピス「我の願いは唯一つ」
魔王ラピス「人間どもを根絶やしにし クリスタリアを魔族の国とすることだ!」
魔族たち「オオーッ!」
魔王ラピス「行け! 我が同志たちよ! 1つ残らず、人間の国を滅ぼすのだ!」
魔族たち「オオオオッ!!」
  ――それから、闇の魔王が生まれた話は
  またたく間にクリスタリア中に広まった。
  拮抗していた闇と光の力のバランスが崩れ
  世界は一気に闇に飲まれていく。
  数多の人間の国が魔王によって
  滅ぼされた。
  着実に、魔族の国・クリスタリアの
  誕生が近づいている。
  しかしラピスの虚無は埋まらなかった。
  ――そんな時だった。人間が信仰する
  光の信教から、勇者が生まれたのは。
魔王ラピス(勇者オニキス、か。さて・・・)

〇西洋の市場
  ラピスの次なる狙いは
  大国スフェーン王国。
  先日誕生したばかりの勇者オニキスを
  庇護していると言われている。
  面倒が大きくなる前に芽を摘み取っておこうと、ラピスは人間に化け、城下町の視察に来ていた。
  ――そこで
  ラピスは運命的な出会いを果たす。
ラピス「!」
???「うわっと! ごめん、大丈夫!?」
ラピス「あーいや、こっちこそごめん」
???「そう? 良かった! あれ、この辺じゃ 見たことない顔だけど、旅の人?」
ラピス「えっ、あー・・・まあ、そんなとこ」
???「そっか! ならこれ、食べてみてよ おいしいから」
???「――おっちゃん スフェベリー2つちょうだい!」
店主「おっ、オニキスじゃねえか! あいよ、いつもありがとうな!」
ラピス「オニキス・・・?」
オニキス「はい、お待たせ これ、この辺でしか取れない特産品 なんだけど、すごくおいしいんだ!」
オニキス「・・・どうかした?」
ラピス「今、オニキスって・・・ もしかして、勇者オニキス?」
オニキス「あー、うん、一応。でも、勇者って言われても自分じゃよくわかんないんだけどさ」
オニキス「ところで、良かったら君の名前も 教えてくれない?」
ラピス「オレは・・・ルビィっていうんだ」
オニキス「ルビィか! いい名前だね 改めてよろしく、ルビィ」
オニキス「俺、生まれ故郷からここに来てまだ日が浅いから、あまり同年代の知り合いがいなくてさ」
オニキス「しばらく滞在するつもりなら 仲良くしてくれると嬉しいな」
  そう笑って、オニキスは手を差し出した。
  ラピスは一瞬だけ逡巡したが
  すぐに笑顔を浮かべ、その手を取る。
ラピス「ああ、こっちこそヨロシク! オニキス」
ラピス(こんな所で勇者に会えるとは幸運だったな)
ラピス(あとは隙をついてこいつを殺せば 魔族の勝利は確定だ。ふふふっ)
  ――しかしオニキスと共に過ごすうちに
  ラピスの心は徐々に変化していった。

〇西洋の市場
オニキス「魔族だから悪ってのは、人間の都合だと思うんだ。俺はそういうやり方はしたくない」
オニキス「今すぐには難しくても、いつか人間も魔族も手を取り合って、平等に生きられる世界を築けたらって思ってる」

〇西洋の市場
オニキス「魔族の王、ラピスについて?」
オニキス「そうだなあ立場上は敵対する立場に あるから、あまり大きな声では言え ないけど・・・」
オニキス「実はちょっと、親近感持ってるんだ」
オニキス「だってほら、俺は田舎で暮らしてて 急にお前が勇者だ! なんて言われてさ」
オニキス「こっちは戸惑いしかない状態で でも周りの重圧だけすごくて」
オニキス「それってもしかしたら 魔王も同じかもしれないなって」

〇西洋の市場

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