不死を殺すクズ達へ

樹 慧一

エピソード2:殺人体験の男①(脚本)

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〇シックなカフェ
  ――カラン。
  入り口のベルの音と共に、2人並んで店内へ入る。
  奥にある個室に入りたい旨を伝えると、店員が丁寧な案内と共にメニューを手渡した。
フシ「わ、どうしよ。ここ凄く高いんじゃない?うわ、うわあ・・・・・・」
纏 白檀「高い?」
  少年のあまりの萎縮振りに、白檀から素っ頓狂な声が上がる。
纏 白檀「(ここはそこまで値の張る店じゃない。何なら中高生でも使うような所だ)」
纏 白檀「(もしかして少年、思った以上に切羽詰ってるのか・・・?しかし初対面でそこまで聞くのも何だな)」
纏 白檀「・・・・・・平気。個室ってここらの店だとこの店にしかないからね。聞かれたらマズいだろう?内容的に」
フシ「別に良いのに」
フシ「あ、でもお姉さんはわざわざお金出して聞いてくれるのに回りがタダ聞きじゃあ不公平か」
纏 白檀「・・・・・・」
纏 白檀「まあ続きは食べながら話そうじゃないか。さて少年、何にする」
フシ「水!話の経費で落ちないでしょ?食事代」
纏 白檀「・・・・・・」
纏 白檀「・・・・・・・・・・・・」
纏 白檀「・・・・・・はあ」
  少年の一言を聞いて、ため息。の後に、白檀はぐいとメニューを押し付けた。
フシ「わ。な、何?」
纏 白檀「馬鹿か君は。いい年して同伴者に水だけ飲ませる阿呆がどこにいる」
纏 白檀「チップって事で私が出すから好きに頼みなさい」
フシ「いいの!?やったあ!じゃ、ええと・・・・・・」
  今日なさげな反応から一転。白檀の言葉を聞いた少年の目が、せわしなくメニューを横断し始める。
  そんな初めて垣間見えた年相応だろう彼の振る舞いに、ふ、と白檀から満足げな笑みがこぼれた。

〇シックなカフェ
フシ「うわ、壮観」
纏 白檀「はは、気持ちよく頼んだからな」
フシ「お姉さん、ありがと」
フシ「で、どうしよっか。今のでもうエグいのでも話す気満々なんだけど。お姉さん、ゴア系とか平気?」
纏 白檀「映画ならまあまあだけど、ドキュメンタリー・・・・・・いや、ノンフィクションか。は初めてだな」
纏 白檀「どうだろう、楽しみだ」
フシ「ふは、そこ拘っちゃう?どのみち楽しみならいいけどさ!」
纏 白檀「何だ、不満か?少年」
フシ「ううん。あのさ・・・・・・フシでいいよ」
纏 白檀「フシ?」
フシ「俺の呼び方。それで通してるからさ」

〇シックなカフェ
  食べ初めて、少し。もくもくとグラタンをほおばっていたフシが、おもむろに口を開いた。
フシ「じゃ、そろそろ話そっか。食事中だから今回は軽いジャブ的なのでいい?」
フシ「でも安心して。ジャブでもちゃんと俺死んでるからさ」
纏 白檀「・・・・・・」
  フシの言葉に、白檀も軽く同意の意を示す。
纏 白檀「OK。で、ジャブってのはどんな客・・・・・・いやパターンを言うんだ?」
フシ「うーん、ありがちって奴。結構多い殺され理由のひとつだよ。と、その前に」
纏 白檀「?」
フシ「俺ね、殺される前お客様にひとつだけ言ってる言葉があるの。お姉さんにも、いい?」
纏 白檀「・・・・・・どうぞ?」
  にわかに、空気が張り詰める。
フシ「ねえ、お姉さん。「不死」でもね、心はちゃんと死ぬんだよ」
纏 白檀「!!」
フシ「・・・・・・・・・・・・」
  白檀の出方を静かに見つめるフシ。そんな中白檀が発した言葉は、ひどく端的なものだった。
纏 白檀「・・・・・・川柳?」
フシ「!?!?」
フシ「・・・・・・は、あははは、あはは!!」
フシ「いろんな人の反応を見てきたけど、お姉さんのは初めてだよ!」
フシ「俺さ、この言葉への反応を見て殺されるかどうか決めるんだよね」
纏 白檀「ほおう?」
纏 白檀「私のは、どうなんだ」
フシ「うん。めちゃくちゃ殺されたくなっちゃったよ!」
纏 白檀「は、酔狂だな。少年」
フシ「フ、シ!!」
フシ「じゃ、話すね。・・・・・・覚悟は、いい?」
纏 白檀「ああ、勿論だ」
  そしてフシは、語り始める────

〇ビルの裏
フシ「・・・・・・不死でもね、心はちゃんと死ぬんだよ」
殺人体験の男「ほおう、それは結構」
フシ「・・・・・・」
  都会の喧騒を少し外れた、物寂しい路地裏。そこに、ともすれば父子にも見える2人は立っていた。
フシ「はい、いいですよ。で、俺どんな風に殺されたらいいですか?おじさんストレス多そうだしはけ口とか?」
殺人体験の男「・・・・・・随分とお喋りな子だね。そうだなあ、色々話す前にこれを書いて貰おうか」
  言葉と共に、男が2枚の紙切れをひらつかせる。
フシ「・・・・・・まも?えと、すみません。読めません」
殺人体験の男「・・・・・・「守秘義務」締結の書類だよ。勿論口止め料は弾む」
殺人体験の男「仕事柄かこういったものが無いと不安でね」
フシ「お金を下さるなら、いくらでも!口止め料も頂けるなら、俺絶対おじさんの事バラしません!」
殺人体験の男「うんうん、素直でいい子だ」
フシ「えへへ」
  一見仲睦まじい、2人の会話。しかしその内容は、得てして物騒な空気を帯びていた。
フシ「で、理由と方法を聞いても?聞いとくと覚悟ができるんで助かるんですが」
殺人体験の男「そうだね、言わないとフェアじゃあない。そうだな・・・・・・端的に言うと「興味」というやつだよ」
フシ「ああー・・・・・・」
殺人体験の男「その分だとおじさんみたいな人が沢山居るのかな?はははは!世も末だ」
フシ「で。方法は?」
殺人体験の男「ああ、すまないね。絞殺で頼むよ。じっくりと経過を観察したいから、程ほどに耐えてくれたまえ」
フシ「はーい、了解!」

次のエピソード:エピソード3:殺人体験の男②

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