ひめおと~ 姫が男に転生しても勇者の愛は変わらないのか?~

イトウアユム・いわさきなおみ

第13話 「真実は・・・」(脚本)

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〇おしゃれな居間
  夕食後、リビングに5人が集まっている時に要が口を開いた。
大和要「みんな ちょっと俺の話を聞いてほしいんだ」
黒須雫「んー? なんだよ、改まって」
近衛尊文「・・・・・・」
大和要「ここにいる人は全員、クリスタリアの転生者か、そのことを知っている人たちでしょ?」
大和要「だからさ、ちょっとだけ、俺の思い出話につき合ってほしいんだ。・・・いいかな?」
江西紫「まあ、構わないぞ」
黒須雫「いいぜー。学校じゃあ、なかなか 大っぴらに話せねーもんな」
姫野葵「懐かしい話ですね 私にも聞かせてください」
大和要「ありがとう。じゃあ──」
  テーブルを囲んで5人は丸くなって座り
  要の思い出話に耳を傾けた。
  時に笑いが、時にため息が出る時間が
  しばらく続き、やがて話は魔王ラピス
  との最終決戦に差し掛かる。
大和要「魔王ラピスの力は、強大だった。正直 勝てるかどうかは五分五分だったんだ」
大和要「でも、俺は勝った」
大和要「・・・さて、ここで問題です!」
大和要「紫、俺はどうやって魔王を倒したと思う?」
  急に話を振られた紫は、一瞬驚いたような顔をしたものの、すぐにいつものクールな表情を取り戻す。
江西紫「そうだな やはり、心臓を狙ったんじゃないか?」
江西紫「いくら魔王といえど、心臓を一突きに されれば息絶えるだろう」
近衛尊文「!」
江西紫「魔王には心臓が2つあったはずだ」
江西紫「普通の人間より的が多いからな 倒す確率も上がるはずだ」
大和要「・・・そっか。そうだったんだね」
江西紫「? なんだ、どうしたんだ」
大和要「ごめん、紫 カマをかけさせてもらったんだ」
江西紫「・・・カマ?」
近衛尊文「江西くん、夕方の会話から、君が魔王ラピスの生まれ変わりだと踏んだのだが・・・」
近衛尊文「どうやら違ったらしいな」
江西紫「えっ」
姫野葵「・・・・・・」
黒須雫「・・・・・・」
大和要「話は尊文さんから聞いた」
大和要「紫が『魔王には心臓が2つある』って 言ってたって。それは確かに事実だよ」
大和要「でもそれは『クリスタリア幻想記』には 書かれていない」
大和要「だからそれを知っている紫はラピスだろうって、尊文さんが言ってた」
江西紫「・・・その推理の、どこが間違っているというんだ?」
黒須雫「紫、お前・・・」
  何かを言いかけた雫を
  紫がさっと手で制する。
大和要「魔王の心臓はね、1つが命を宿す心臓 もう1つが魔力を宿す心臓なんだ」
大和要「命を宿す心臓を突けば、魔王だって死ぬ でも・・・」
姫野葵「・・・間違ってもう1つの心臓を突くと 魔力に取り込まれてしまい、突いた側が 死に追いやられてしまうんです」
江西紫「! な・・・」
大和要「うん。だから、勇者は 魔王の心臓を狙わない」
大和要「万に一つも、失敗するわけには いかないからね」
大和要「だから俺は・・・オニキスは 魔王の首を剣で切り落としたんだ」
大和要「首を切れば、さすがの魔王だって ひとたまりもないから」
姫野葵「ええ、私も見ていました。オニキスが 魔王の首を落とす、その瞬間を・・・」
  魔王絶命と共に、オニキス最期の瞬間を思い出したのか、葵が悲しげに目を伏せる。
  そんな葵の肩に、要がそっと手を乗せる。
大和要「ごめん、葵さん。 つらいことを思い出させちゃって」
大和要「・・・紫」
江西紫「・・・なんだ」
大和要「話を聞いていると、紫はまるで自分を 魔王だとほのめかしているみたいだ」
大和要「・・・どうしてそんなことをするの?」
江西紫「それは・・・」
  決しておしゃべりではないが、言葉に
  詰まることなど滅多にない紫が、唇を
  噛んだまま黙ってしまう。
大和要「俺、尊文さんに話を聞いた時、紫が俺に隠し事をしていたのか、今まで騙されていたのかって思って、すごくショックだった」
大和要「でもその後葵さんから話を聞いて、それって俺の独りよがりだなって、思い直したんだ。だから、ちゃんと理由を聞きたいって」

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