ひめおと~ 姫が男に転生しても勇者の愛は変わらないのか?~

イトウアユム・いわさきなおみ

第12話「魔王の生まれ変わり」(脚本)

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〇おしゃれな居間
近衛尊文「江西紫――おそらく奴が 魔王の生まれ変わりだ」
大和要(紫が、魔王ラピスの生まれ変わり? そんな、まさか・・・)
大和要「ど、どうしてそう思うの?」
近衛尊文「どうしてだと?」
近衛尊文「むしろ貴様は、今まで一緒に過ごしてきて そう感じたことはなかったのか?」
大和要「・・・確かに、紫は賢くてクールで ラピスと共通する部分は多いよ」
大和要「でも、それだけじゃとても 決めつけられないでしょ」
大和要(何より、紫は俺の幼なじみで親友だ)
大和要(もし紫がラピスの生まれ変わりなら ずっと俺を騙していたってことになる)
大和要(そんなの 信じられるわけないじゃないか・・・!)
近衛尊文「ふん。葵さんから 貴様らの関係は聞いている」
近衛尊文「にわかには信じられんのも無理はないが 私には確固たる根拠があるぞ」
大和要「根拠?」
近衛尊文「左様」
近衛尊文「先ほど江西紫と黒須雫の3人で 片付けをしていた時──」

〇海辺
黒須雫「へー! 近衛サンもクリスタリアからの 転生者なんっスか!」
近衛尊文「左様。私と葵さんの間には 切っても切れぬ縁があるのだ」
黒須雫「ねね、ちなみに昔はなんて 名前だったんスか?」
近衛尊文「ベリルだ。王国の騎士団長を務めていた」
黒須雫「騎士団長! うおーっ、カッケー!」
江西紫「・・・尊文さんは『クリスタリア幻想記』 の編集をされたんですよね」
江西紫「要によると、かなり事実に基づいているということですが、中には虚構が含まれていたり、逆に省かれていることもあるとか」
近衛尊文「それはそうだ。あくまで小説として 世に出すものだからな」
江西紫「そうですか」
江西紫「でも『魔王に心臓が2つある』という 設定は、ずいぶんと斬新でしたね」
近衛尊文「・・・・・・」

〇おしゃれな居間
近衛尊文「確かに魔王には心臓が2つあった しかしそれは、小説には書かれていない」
大和要「え・・・」
近衛尊文「しかも魔王に心臓が2つあることは、クリスタリアでも限られた者しか知らなかった」
近衛尊文「私のような騎士団の者か お前のような戦士か」
近衛尊文「あるいは・・・」
大和要「魔王自身・・・」
近衛尊文「そういうことだ。小説に書かれていないにもかかわらず、この事実を江西紫は知っていた。つまり意味はわかるな?」
大和要(そんな、まさか・・・ 紫が魔王ラピスだなんて・・・)
  言葉を失う要に、尊文は顔を近づけ
  更に畳み掛ける。
近衛尊文「正体を明かさないのは、何か良からぬことを企んでいるからに違いない、と私は睨んでいる。そうは思わぬか?」
大和要「そっ、そんなはずはない! 紫に限って、そんな・・・!」
近衛尊文「ふん、どうだか」
近衛尊文「貴様が魔王と馴れ合うのはどうでも良い」
近衛尊文「だが、葵さんを悲しませるようなことが あれば・・・」
  間近に迫る尊文の目つきが
  鋭く細められる。
近衛尊文「――許しはせん。・・・覚えておけ」

〇おしゃれな居間
  言うだけ言って尊文が立ち去った後、要は1人呆然とキッチンで立ち尽くしていた。
大和要(紫が、魔王ラピスだった・・・?)
大和要(だとしたら、ずっと俺に隠して・・・ 俺を騙していたってことなのか?)
大和要(でも、俺みたいに記憶を取り戻したのが 最近ってことだって考えられるし・・・)
大和要(いや、でも)
大和要(たとえそうでも、思い出した時点で打ち明けてくれればいいだけのことじゃないか)
大和要(何も言わないってことは、つまり──)

〇黒背景
近衛尊文「正体を明かさないのは、何か良からぬことを企んでいるからに違いない、と私は睨んでいる。そうは思わぬか?」

〇おしゃれな居間
大和要(いやいや! まだそうと決まったわけ じゃない。決まったわけじゃ・・・)
  まとまらない思考がぐるぐると脳内を巡り
  要はその場でうずくまる。そこへ──
姫野葵「要くん? どうかしたんですか?」
大和要「葵、さん・・・」
姫野葵「! 顔色が真っ青です。どこか具合でも?」
大和要「いや、大丈夫・・・ そういうわけじゃ、ないから・・・」
大和要(紫が魔王ラピスの生まれ変わりかもなんて とても葵さんには言えないよ)
  カーネリア姫は、オニキスとラピスの
  最後の対決を目の当たりにしている。
  ラピスの剣がオニキスの体を切り裂き
  それが致命傷となってオニキスが死に
  ゆく姿を、見ているのだ。
大和要(もし俺の友達が魔王の生まれ変わりだ なんて知ったら、葵さんがどれだけ傷 つくか・・・)
  しかし、目の前の葵は凛とした表情で
  要を見つめた。

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