プロローグ②(脚本)
〇黒背景
???「────・・・ということだから、君たちには彼女の面倒を見てあげてほしいんだよ」
???「いや・・・突然人を誘拐してきてその言い草はどうかと思いますが」
???「ええ・・・中々パンチの効いた皮肉だなあ・・・」
──・・・声が聞こえる。
何故自分がこうして再び思考しているのか、そもそも命を落としたはずではなかったのか
考えれば考えるほどわからないことばかりで、中途半端に鮮明になりつつある脳内はただただ混乱を主張していた。
???「まぁ、確かに・・・こんなことは言いたくありませんけれど 昏睡している女性を男性が抱えて連行する絵面は中々ですわね」
???「っていうかウチの生徒ちゃんじゃなくない? オフレコにしといたほうが良いやつ?」
聞こえてくる声は若い男女複数名。
そのどれもに聞き覚えは無い。
とにかく現状を把握しなければ。
その一心で指先に力を入れてみれば、予想とは反してぴくりと体が動いたのがわかった。
また、刺された直後はひどく重たく、持ち上がりそうになかった瞼も
その気になれば開くことは不可能では無いらしい。
〇おしゃれな居間
このまま狸寝入りを決め込んで、見知らぬ人間の前で転がったままになるわけにもいかない。
そう覚悟を決めて目を開いたその先には
全く覚えのない景色が広がっていた。
パッと見ただけの第一印象は、どこかきちんと整えられた執務室のような。
纏まっているようでいて、意外と書類が散乱している。
分かり易い例えを挙げるなら、校長室や学校に設置された応接室に近い雰囲気を感じる。
少なくとも、自分とそう変わらない年頃の若者たちが立ち入るにしては、あまりにも格式ばった場所であった。
???「・・・えぇと。その・・・大丈夫か?」
イノリ「は、はい!」
???「ああ、よかった。 言葉は通じるようだな」
体を起こした私に気が付いたのか、真っ先に話しかけてくれたのは、どこか落ち着いた様子の黒髪の青年だった。
元々背は高いようだが、気を使ってくれているのかソファに転がされている私と視線をそろえるように腰を曲げてくれている。
???「俺はアベル。 聞きたいことは色々あると思うが、ひとまず現状を説明するなら・・・いや、何と言えばいいか」
今さっき会ったばかりの相手だというのに、ここまで気を使わせてしまうのも申し訳ない。
「大丈夫です」の代わりに小さく頷いて、自分の名前を口にしようと顔を上げる。
しかしそれを遮るように、大きな音を立てて新たな人物が入ってきたのは、言葉を紡ぐ間もない次の瞬間のことだった。
???「会議の時間から!!! 10分以上過ぎていますが!!!」
あまりにも勢いよく飛び込んできたその人物を前に、私へ向けられていた視線はすべて綺麗に扉の方へと移動した。
四方八方から見つめられるのは確かに気持ちのいいものでは無いものの、ここまで勢いが良いと逆に呆気に取られてしまう。
しかし、そんな私の考えとは裏腹に
扉を開いてやってきたその人は表情に怒りを浮かべたまま大股で私の前に立つ面々に近づいた。
???「あら、クラウス。 そんなに怖い顔をしては眉間の皺が消えなくなってしまいますわよ」
???「そうだよ書記ちゃん~ ほら、口角下がってるし」
クラウス「そりゃ口角も下がるし皺も増えますよ」
クラウス「「偶には生徒会室じゃなくて会議室で話し合いたい」って言い始めたのは 他でもないお二人じゃないですか!」
クラウス「言っておきますが、僕は最善を尽くしましたからね」
クラウス「生徒会がなんでわざわざ会議室を?って言われる中で部屋を予約しましたし」
クラウス「僕は書記として! 数十分前からスタンバイしてましたし! 資料だってきちんと用意していたんですからね!」
クラウスと呼ばれたその青年は、勿論完全に初めて顔を合わせた人物である。
だが、なんだか既に不憫の片鱗が見えていることに加え、恐らく年下であろうこともあって、
初対面ながら不思議と同情してしまうのは仕方がないと思いたい。
アベル「あ、あぁ。 いや、悪かったなクラウス」
クラウス「いえ・・・。 まぁ、何事もスムーズに進む方が珍しいことはもうわかっていますから」
先ほどまで声を荒げていたクラウスだったが、そんなクラウスもアベルに対しては多少落ち着いて言葉を紡ぐらしい。
ほんの少しだけ沈んだ様子を声色に滲ませるクラウスだったが、
そんなクラウスが顔を上げた瞬間、特に意識もせずに彼を眺めていた私の視線とクラウスの瞳がかち合った。
クラウス「・・・ん? すみません、会長。 見慣れない方がいらっしゃるようですが」
彼のこの反応はもっともである。
というよりも、私自身もこの現状を把握できていないのだ。
仲間を呼びに来たと思ったら見知らぬ女が居座っているなんてホラー以外の何物でもない。
そんな私の想像とクラウスが考えていることは概ね同じであったらしく
クラウスは特に物怖じする様子を見せることなく私に近づき
不審なものを見る目を隠すことなく私を眺めて口を開いた。
クラウス「どちら様ですか? 用事があるのであれば、この部屋の外で伺いますが」
イノリ「あ、いや・・・その、私は・・・」
クラウス「生徒ではありませんよね? すみません、来訪者の話は伺っておらず」
良くも悪くも真面目なのか、クラウスの言葉に迷いはない。
だが、このまま言葉を詰まらせ続けるのは得策ではないだろう。
そんなことを考えていれば、傍目から見ても私が必要以上に戸惑っていることがばれてしまったのか
アベルが私とクラウスの間に割り込むように立ち上がると
周囲を見渡し口を開いた。
アベル「準備をしてくれていたところすまない、クラウス。 申し訳ないが、今日の会議は一旦中止だ」
アベル「状況を整理しよう。 俺達は勿論だが、彼女もまた混乱しているはずだ」
アベル「・・・それを含めて、俺達に面倒を見ろと言っているんでしょう」
アベルに視線を向けられた男性は、何を返すことも無く穏やかに微笑んでいる。
これ以上ないほど優しい表情をしているというのに、その瞳の奥が冷えているような気がして恐ろしくなった。
再び室内に静寂が訪れる。
次は誰が言葉を放つのか。
それを全員が探るような雰囲気の中、その沈黙を破ったのは
???「すみませ~ん!遅くなりました!」
???「・・・・・・」
???「・・・あれ? 俺、なんかやっちゃいました?」
ここにきて新たに登場した青年であった。
〇おしゃれな居間
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
???「え、な、何?」
???「ごめん、待って! 本当に何!? や・・・やり直そうか!?入り直すところから!」
アベル「あ、あぁ、いや。 悪かったな、アーノルド」
アベル「だがこう、色々立て続けに起こされるとちょっとな。 加減してくれ」
アーノルド「え、なんか俺が悪いことしたみたいになってる・・・?」
一瞬ひりついていた筈の空気は、
彼────アーノルドの途端に解れていった。
先程までの緊張とは裏腹に、僅かに出来た隙にほっと息をつく。
会ったことも話したこともない相手だが、大きな不安と緊張に苛まれる中で
唐突に登場したアーノルドの存在は大きかった。
???「・・・」
そんな中、強く視線を感じて思わずそちらに目を向けてみる。
先程から他のメンバー達の発言に頷いたりと小さな反応こそしていたものの
取り立てて大きな発言の無かった黒髪の女性。
そのすみれ色の双眸には、困惑を滲ませる私の顔がしっかりと映り込んでいた。
???「・・・説明」
イノリ「へ?」
???「・・・」
イノリ「あ、えっと・・・その・・・」
???「・・・」
イノリ「す、すみません・・・」
気まずい。
これ以上なく、気まずい。
恐らく彼女としては私に謝罪してほしかった訳では無いのだろうが、何となく言葉が見つからなくて視線は地面に移動した。
アベル「あ~・・・」
アベル「なんだ? この雰囲気は・・・」
???「説明」
アベル「あ・・・あぁ~! そうだな、八重。 ハハ・・・脱線したか。悪かった」
アベルが場を取り持つようにそう言うと、八重と呼ばれた女性はこくりと頷き目を伏せる。
そこに怒りや呆れといった感情が滲んでいる様子は無く、
そこで初めて、彼女が話題を元に戻そうとしてくれていたことに気が付いた。
イノリ「あ、あの・・・」
八重「・・・?」
イノリ「・・・気を使って頂いて、ありがとうございます」
八重「・・・」
ほんの少しだけ上がった口角に安堵して、改めるように頭を下げる。
微妙な空気が流れていた場がほんの少し和んだのを確認したのか
私と八重のやり取りを見届けてから
アベルは小さく咳ばらいをし
穏やかながら、どこか落ち着いた様子で私と真っすぐ向き合った。
アベル「色々聞きたいことはあると思うが、まずは話を戻させてもらうぞ」
アベル「あいつが──・・・ フィレンツ先生がお前の面倒を見ろと言っている手前、危険人物であるとは流石に考えてはいない、が・・・」
アベル「こういうのはお互いに状況をすり合わせておいた方が後々面倒も無いだろうしな」
アベル「言いにくいことがあれば無理に話す必要は無いぞ」
アベル「俺達が聞いているのは、お前が学校の庭園で気絶していたという話だけだ」
アベル「正直なところ、俺達もわかっていないことの方が多い」
アベル「・・・どうやってこの学校にやってきたのか、聞いてもいいか?」
私にそう語り掛けるアベルの声色は優しかった。
一部、明らかに怪しい私に
訝しげな視線を向ける人もいるものの
向けられる視線の殆どはフラットなものである。
アベルが話していた通り
現状確認・把握が主な目的であるという話に違いは無いらしく
私は、思い出せる限りの記憶を
まるでバケツいっぱいに入った色水をひっくり返すように広げて手繰り寄せた。
イノリ「自己紹介が遅くなってごめんなさい。 名前・・・名前は、イノリといいます」
イノリ「この場所に来るまでのことは、明確には覚えていなくて。 そもそもこの場所が何処なのかもさっぱりではあるんですが・・・」
アベル「そうか・・・。 イノリ、じゃあこの場所で目覚めるまでのいちばん新しい記憶について教えてくれるか?」
イノリ「は、はい」
〇血しぶき
忘れようとして、忘れられるようなことじゃない。
この場所で目覚める直前。
あの時に感じた痛みも、熱さも、鮮明に私は覚えている。
イノリ「目覚める前・・・あの日は確か、寝坊したんです。 もう随分眠っていたみたいで、急いでも授業の頭には間に合わないくらい・・・」
???「授業? どこかの学校にでも通ってたの?」
イノリ「は、はい。大学に通ってました。 って言っても、そんなに大きな大学じゃありませんでしたけど・・・」
イノリ「・・・えぇと、それで・・・ もう間に合わないから、開き直ってきちんと準備をしてから向かおうと思ったんです」
イノリ「母が入院しているんですが、その日は母に着替えを持ってくるよう頼まれていましたから その準備もしてました」
イノリ「その日は随分空が晴れていて・・・」
イノリ「きっといい日になるって」
イノリ「そんなことを考えたり、していたんですけど」
〇空
目を瞑れば、今もあの瞬間が蘇る。
ああ、本当に。
「家を出た瞬間、知らない人に襲われました」
「綺麗な装飾のナイフで、胸を突かれて」
「怖くなるくらい、口から血が溢れて止まらなかったんです」
「・・・そこで意識を失いました」
あの日の空は、嫌気がさすほど澄み渡っていた。
〇おしゃれな居間
イノリ「だからその・・・私、てっきり自分は死んだものだと思っていて・・・」
イノリ「刺されたはずなのに傷らしい傷は無い上に、服だって血で汚れていたのが綺麗になっている理由は」
イノリ「私自身もわかっていないところではあるんですけど・・・」
私の記憶に残る直前の一幕は、
口にしてみればしてみるほど現実味を感じない。
これを信じろと言われても無理な話だ。
きっと、口を挟むことなく私の話を聞いてくれていた彼らも、
私の話には呆れて物も言えないに違いない。
嫌な想像ばかりが働いて思わず俯けば、再び訪れた沈黙にいたたまれなくなる。
不審者の妄言に何と返せば良いのか言葉を選んでくれているのだろう。
だが、地面に突き刺さっていた視線を持ち上げちらりと周囲を確認すれば、視界に飛び込む面々の表情は三者三様であった。
不信感を丸だしにしているかと思いきや、それに似た表情はあまり見られない。
それどころか、暫くきょろきょろしていると、
かなり明るい声のトーンで声をかけられ振り返った。
???「結構不思議体験してるのに。 君メンタル強いね~。取り乱したりしないんだ」
イノリ「え?」
???「あ、別に皮肉言ってるわけじゃないよ 年頃の子ならパニック起こしてもおかしくない状況だなって思っただけだから」
イノリ「・・・・・・確かに?」
???「少々よろしくて? 昨日今日のところで若い女性が被害にあった殺傷事件なんて報道されていたかしら」
???「ざっと調べたけどこの辺じゃ聞かないね~・・・ 国際ニュースでも取り上げられてないな~」
???「あら・・・そう。 まぁ被害者が一人であればそこまでの規模で拡散はされないのかしら」
???「いや~、でも話聞いた感じ人ひとりは確実死んでるし。 ほんとなら普通に事件じゃん?」
クラウス「わざわざ国際ニュースを追わずとも、彼女の出身国の情報から洗えば良いのでは? 流石に報道しているでしょう」
???「あら、それもそうですわね! 流石だわ、クラウス」
???「優秀な後輩を持てて、先輩は幸せだよ~」
クラウス「またそんな適当なことを・・・」
クラウス「・・・ということですから、あなたの出身国を伺っても?」
イノリ「え?そりゃ、日本ですけど・・・」
クラウス「いや、その・・・町の名前までは流石の僕も把握しきれていませんから」
クラウス「大きな括りにはなってしまいますが、〝国の名前〟で、教えて頂きたいですね」
クラウス「日本・・・は聞いたことがありませんが、音で考えるならイラ国あたりでしょうか。 錦副会長」
八重「・・・無い」
クラウス「そ、そうですか・・・」
イノリ「ちょ、ちょっと待ってください! 私が言っているのは国の日本ですよ!」
動揺で声が大きくなっている自覚はあった。
だが、日本を知らないと言わんばかりのその反応に嫌な予感がしたのだ。
私の身に起きたことを話した時、赤髪の青年に言われた通り、
あんな出来事に遭遇しておきながら今の私は妙に落ち着いている。
だがそれは、決して私の肝が据わっているわけではなく
こうして言葉の通じる話し相手がいるというその事実が大きかった。
クラウス「何度も教えて頂いているところ申し訳ありませんが、僕たちも無限に時間があるわけじゃありませんよ」
クラウス「少なくとも、僕が把握している国の中に あなたが仰る〝日本〟は存在していません」
イノリ「で、でも!」
クラウス「僕が信用できないということであれば、他の方に確認していただいて構いません」
クラウス「──・・・まあ、僕には人を騙す趣味なんてこれっぽちもありませんがね」
はっきりと私の伝えた日本の存在を否定するクラウスに言われるがままに周囲を見渡して息をのむ。
皆口を挟もうとはしないものの、浮かべる表情が伝える言葉は概ね同じであった。
心臓が、大きな音を立てて跳ねた。
何度か考えかけた可能性に首を振る。
それは私にとってはあまりにも非現実的だった。
イノリ「そ、そもそもここって日本じゃないんですか? 私、皆さんと言葉も通じてますし・・・!」
半ば悪足搔きのようなその問いに、クラウスはピクリと片眉をあげた。
その先に続く言葉が、どうか私の〝考えすぎ〟を否定してくれますように。
イノリ「ド・・・ドッキリ! ドッキリ、なんですよね?」
イノリ「ここは日本の・・・ほら、ロケ地?みたいな! 今右上に観察してる人たちが映ってるんですよね?」
イノリ「私は最初から刺されてなんていないし 怪我だってしてないし 流れてたのは血じゃなくて血糊なんですよね?」
イノリ「そう・・・そうじゃないと、可笑しいです」
イノリ「だ、だって」
イノリ「だってじゃあ、そうじゃなかったら、私は・・・」
イノリ「一体、どこに来てしまったっていうんですか」
祈るように握り込んだ拳は、とっくにほどけてしまっていた。
──・・・何となく、気楽に考えてしまっていたのだと思う。
確かに、右も左もわからない場所と、見覚えの無い人たちに囲まれてはいるものの
言語は通じる上に、私を保護しようと言ってくれているのだから。
現実味も無かった。どこかふわふわと掴みどころ無く漂うような気分でもあった。
頭の片隅で、「きっと何とかなったのだろう」だとか、そんなことを考えていた自分がいた。
突然、一人で知らない場所に放り出された心地になった。
周囲には先ほどから私を気遣ってくれる人々がいるというのに、それでもただただ孤独だった。
ここは一体どこなのだろう。
私は戻ることが出来るのだろうか。
私を育ててくれた母はまだ、病院で私を待っていてくれるかもしれないのに。
つい先ほど貰った赤髪の青年からの言葉が、今はただ耳に痛かった。
アベル「・・・・・・」
崩れるようにしゃがみこみ、子供のように顔を覆った私の涙を拭うように
アベルの指先が私の頬に触れた。
その手つきがあまりに優しくて、思わず顔を持ち上げれば
初めて言葉を交わした時と同じように、優しい笑みを浮かべたアベルがそこにいた。
アベル「・・・すまない、イノリ。 確かにクラウスの言う通り、教えてくれたお前の故郷は、恐らくここにはない」
アベルは、私を見つめる視線を逸らさぬまま、濁すことなく言い切った。
けれど、その言葉に冷たさはない。
まるで諭すように紡がれる言葉に、私が出来ることはただ黙って耳を傾けることだけだった。
アベル「ここは────・・・」
アベル「ここは、トワイライト魔導大学校。 7つの国から成り立つ連合国家の中央に建つ、歴史的に見ても最大規模の学術機関だ」
アベル「きっと、ここはお前が知る場所ではないと思う」
アベル「・・・知らない場所に一人放り出されて不安だろう。 お前の気持ちに寄り添ってやれなくてすまなかった」
アベル「だが、安心してくれ。 ここには困っている人間にはなんだかんだで手を貸してやる奴ばかりなんだ」
アベル「俺達に出来ることがあるなら協力しよう。 微力かもしれないが、帰る方法だって一緒に探してやれる」
アベル「・・・だから、そんなに不安そうな顔をしなくたっていいんだ」
はっきりとそう口にしたアベルの言葉に、私はコクコクと頷き返して嗚咽を呑み込んだ。
本当ならばきっと、もっと心を込めた礼の言葉を尽くすべきなのだ。
けれど今はただ、ただ。
イノリ「ア・・・アベルさん」
アベル「あぁ」
イノリ「ありがとうございます・・・」
アベル「・・・あぁ。いいんだ。 気にするな」
たった一言、そう口にするのが精いっぱいだった。
〇星座
────トワイライト魔導大学校
突然わけもわからず飛ばされた先で起きる彼らとの出会いが、私の運命を大きく変えることを
この時の私はまだ、知る由も無かった。
〇黒
7つの国から成り立つ連合国家。
その中心部に聳え立つトワイライト。
トワイライト魔導大学校──
カナン歴0年に設立されたカナン最大の学術機関であり
同連合国の行政機関の役割をも担っていた。
時は過ぎ、カナン歴995年。
今日も新しい生徒が入学したようだ。
カナンには古来より
誰が残したのか分からない予言がある。
────1000年、1000年だ。
カナンが1000年の時を迎えるとき
終焉が訪れる。
プロローグ END
To Be Continued────・・・