勇者の姉とビン詰め魔王

久望 蜜

第6話 勇者の終わり(脚本)

勇者の姉とビン詰め魔王

久望 蜜

今すぐ読む

勇者の姉とビン詰め魔王
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇闇の要塞
  魔王城

〇要塞の回廊
イーノク「遅い!」
イーノク「何で、いつまで経っても刺客が帰ってこないんだ?」
イーノク「まさか──」
イーノク「遊び呆けているな!?」
イーノク「あのサメ野郎め!」
イーノク「まあいい」
イーノク「帰ってきたら、たっぷりこき使ってやるからな!」
エブリー「報告〜」
エブリー「サメ野郎が、魔女の里周辺でやられたって」
イーノク「は?」
エブリー「以上、報告終わり〜」
イーノク「待て待て待て」
イーノク「なぜ、サメがやられているのだ?」
イーノク「それでは、ヴィンセントはどうなったというのだ?」
イーノク「まさか──」

〇黒

〇山の中
ライラ「──というわけで、私たちは旅をしているの」
カニーラ「じゃあ、そのビンは本当に魔王なんすか!?」
ライラ「ルーくんたちには、内緒ね」
カニーラ「あたし、魔王の封印の弱め方を教えちゃったっすか・・・?」
ビンス「いや、実行するつもりはないのだから、問題あるまい」
ライラ「それに、ビンスくんの封印が無事に解けたら関係ないし!」
カニーラ「もし、あたしが封印を解けていたら、大罪人だったじゃないっすか!」
ライラ「大丈夫よ、誰も魔王が封印されていることは知らないんだから」
カニーラ「何で、そんな能天気なんすか〜」
ビンス「諦めろ、ライラはこういうやつだ」
カニーラ「そうだ、それより魔王なら兄貴がどうなったか知っているんじゃないっすか!?」
ビンス「・・・それなのだが、兄がどれだったかわからぬのだ」
ビンス「さすがにカニになったものがいたら忘れぬだろうが、人型を維持していたらわからぬ」
ビンス「それに、我のもとに来る前に倒れたり、」
ビンス「魔王討伐を諦めたりしたパーティーもあると聞くからな・・・」
ライラ「そもそも勇者って、同時に何人も存在しない称号のはずだよね?」
ライラ「聖教が、当代の勇者を一人だけ任命するわけだから」
ライラ「なのに、そんなに短い期間で勇者パーティーが結成されるのも、おかしな話じゃない?」
ビンス「そういえば、ここ数年、勇者の攻めてくる頻度が異常なのだ」
ビンス「そこで、新たな勇者が誕生したから見てきたらどうかと側近に勧められて、」
ビンス「ライラの村を訪ねてみたら、こんなことに・・・」
カニーラ「じゃあ、ビンスさんでも兄貴のことはわからないんすね・・・」
ビンス「すまぬな・・・」
ライラ「だったら、聞きこみしながら行こう」
ライラ「大丈夫」
ライラ「案外、簡単に見つかるかもしれないし!」
カニーラ「ライラさん・・・」
カニーラ「ありがとうっす!」

〇黒
  近くの街

〇中世の街並み
ライラ「まずは、とりあえずこの街から聞きこみね!」
カニーラ「了解っす!」
カニーラ「あたしも手伝うっす!」
ライラ「本体より小さい! かわいい〜」
カニーラ「えへへっ」
ライラ「ビンスくんたちは当てにできないから、助かるよ」
ビンス「我だって、人の姿に戻れれば聞きこみくらい・・・」
ライラ「はいはい、ビンスくんは別のところで期待しているよ」
ビンス「ぬう・・・」
ライラ「それじゃあ、聞きこみ開始!」

〇怪しげな酒場
ライラ「この街に、勇者パーティーが来たことはありますか?」
バーテンダー「勇者パーティーなら、今も街にいるよ」
ライラ「えっ!」
バーテンダー「あいつら、魔王討伐にも行かず、ずっと飲んだくれてやがる!」
バーテンダー「街の荒くれものだ」
ライラ「それに、お兄さんが・・・?」
カニーラ「信じられないっす・・・」
ライラ「どこに行ったら、勇者たちに会えますか?」
バーテンダー「街外れの潰れた酒場にたむろっているみたいだけど・・・」
バーテンダー「悪いことはいわないから、近づかない方が身のためだよ」
ライラ「わかりました」
カニーラ「教えてくれて、ありがとうっす!」

〇中東の街
ライラ「そういえば、カニーラのお兄さんって、どんなカニなの?」
カニーラ「んー、そうっすね」

〇水中
  ぼーっとしていて、天然で、ドジのくせに、
  カッコつけで──
  どうしようもないカニだけど──
  誰にでも優しい兄っす

〇中東の街
カニーラ「だから兄貴のこと、大好きっす」
ライラ「そっか」
ライラ「だったら、絶対見つけなきゃね」
ライラ「あ!」
ライラ「ここみたいね」
カニーラ「中に、人がいるっす!」

〇荒れた小屋
ゴロツキ「おい、そろそろ聖教から貰っている軍資金が尽きるぞ」
ゴロツキ「どうする? いよいよ、魔王討伐に行くか?」
勇者「こんなはした金で? 冗談!」
勇者「魔王討伐に行って無事ですむわけがねえのに、命をかけるにしちゃ安すぎるだろう」
ゴロツキ「だ、だよな」
ゴロツキ「魔女も仲間にできなかったしな」
勇者「金がなくなれば、街のやつらから奪えばいいんだよ」
勇者「幸い、武装だけはしっかりしているからな」
勇者「加護が盛りだくさんのペンダントに、」
勇者「聖剣」
勇者「人間相手なら、敵なしだ」

〇中東の街
ライラ「何てやつらなの!」
ライラ「勇者のくせに人を護るどころか、その力を使って人を害そうとするなんて・・・」
ライラ「許せないよ!」
カニーラ「そうっすね!」
カニーラ「兄貴はこのパーティーにいないようですし、懲らしめてやるっす!」
ビンス「二人とも、少し落ちつかぬか」
ライラ「落ちついていられないよ!」
ライラ「大体、何で聖剣と勇者の証をあいつらも持っているの?」
ライラ「ルーくんと全く同じものを・・・」
ビンス「この数年、魔王城に攻めてきた勇者は皆、あの聖剣を持っていた」
ライラ「え?」
ビンス「おそらく、聖教が一枚噛んでいるのだろう」
ライラ「どういうこと?」
ビンス「我も、それ以上のことはわからぬ・・・」
ライラ「そっか・・・」
ライラ「でも、あの人たちを勇者のままにはしておけないよ」
カニーラ「戦うっすか?」
ライラ「カニーラのいうとおり、少し懲らしめてやらなきゃね」
ライラ「ビンスくん、勇者相手だけど、封印はそのままで大丈夫?」
ライラ「もし、弱めるなら──」
ビンス「いや、このままでよい」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第7話 勇者の始まり①

コメント

  • 偽勇者の乱発?なにやら不穏ですね💦
    ルーくんの選出は大丈夫なのかな……
    カニーラちゃんの変身は便利ですね😄

  • 聖教が複数の勇者を選出!?
    なんだか少しシリアスな展開になりそうですね…
    それでも姉パーティと弟パーティなら難なくやっつけてくれそうな気もします(笑)

  • 今回のタイトルを見て、ルーくんの身に何か…😰 と不安になりましたが、何とも痛快なお話で😊 今回のダメ勇者メンバーは仲間にしたくないですよね😂
    ストーリーだけでも本当に面白いのに、ビンスくんとカニーラさんの豊かな表情が加わると、もうタマリマセン✨

コメントをもっと見る(4件)

ページTOPへ