📖秘密の読書会📖

ぽむ

エピソード1 叔父の蔵書(脚本)

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〇洋館の一室
  「さて・・・と。」
  
  パチッ

〇洋館の一室
  明かりをつけると、
  たくさんの蔵書が並んでいる。
  この部屋にたどり着くまでにも、
  通路という通路に、
  大量の本が、積み重なっていたのだ。
椿「よく、家が倒れなかったわよね・・・」
  この部屋は客を入れて
  読書会などを開く読書部屋なのか、
  立派な音響設備とソファーが、
  置かれていた。
椿「さて、片付けなきゃ・・・ どこからやろう」

〇葬儀場
  ことの発端は、
  ワタシが叔父の葬式に参加したことだった。
遠い親戚「ツバキちゃん!ツバキちゃんよね! まあ〜大きくなって〜」
椿「は、はいどうも・・・」
  とあるひとりの女性に、声をかけられた。
  正直、顔に見覚えもなく、
  小さい頃に母に連れられていたところで、会ったことがある位の
  遠い親戚だった。
  ワタシは
  とびきりの営業スマイルを
  するしかなかった。
  というのも、叔父には
  可愛がってもらっていたものの、
  叔父の兄妹には子どももなく、
  はとこ以上の繋がりのため、
  親戚筋とは、縁がないのだ。
  本家筋の曾孫、といえば、私くらい。
遠い親戚「お話があるの。 ちょっとコチラへ。 いいかしら?」
椿「はい、どうも〜」
  (どうせ、また相続の話でしょ。
   と、ウンザリしていた。)

〇古めかしい和室
  ワタシは奥の部屋に通された。
遠い親戚「単刀直入に言うわね。 アナタの叔父さんの住んでいた お家のことなんだけど・・・」
椿「ハイ。 ワタシも何度となく遊びに行かせていただきました」
  叔父の家は、都内一等地にある大きな邸宅だった。
  庭も広く、古めかしい井戸まである。
遠い親戚「土地の権利は叔父様にはなくて、 地主さんの意向により、 お家を明け渡さなければ いけなくなったの」
椿「はぁ・・・」
遠い親戚「そこでね、アナタ、本がお好きだったわよね?」
椿「ええ、まぁ・・・嗜む程度には」
遠い親戚「そちらの蔵書など家財をアナタに相続していただけたらと思って」
遠い親戚「アナタの叔父様が集めた本ですし、建物は取り壊しになってしまう予定ですから、もったいないと思って」
遠い親戚「ね、形見分けと思って。 お願いよ」
椿「はぁ・・・」
  という口車に乗せられて、
  処分費用をワタシに出させる魂胆なのだろう、と感づきながらも
椿「わかりました、叔父の家を片付けたらいいのですよね?」
遠い親戚「あら、嬉しいわ〜 きっとアナタのオジサマも そうして欲しいと思うのよね。 良かったわ〜」
  という流れで・・・

〇洋館の一室
  大量の蔵書の前で
  途方に暮れたワタシがいるのです。
椿「えーと、どうしようかな」
椿「まず、分類分けからかしら・・・」
  正直、この部屋で過ごすことは
  私の秘密基地のようで楽しかった。
  叔父の仕事柄、
  (といっても詳しくは知らないのだが)
  書店さんとの繋がりや、
  作家さんたちとも交流があったようで
  叔父宛の銘が入った、
  難しい本も児童書も沢山あったから。
椿「ダメだわ、あると読んでしまう。 作業が進まない・・・」

〇古本屋
  途方にくれた私は、
  コレクションを手放すのは
  本当に心苦しいし忍びないが
  処分してしまうよりも
  少しでも誰かに読んでもらえたら
  叔父も納得してくれるだろうと
  (勝手に)解釈し、
  引き取りに応じてくれる
  本屋を探すことにした。
  叔父は読書会を開いて
  本の楽しさを広めたり、
  悩める人の相談に乗っていたり
  近所の子どもたちに塾を開いたりして、生計を立てていたようだ。
  また新人支援もしていて
  美術品や絵画も飾られていると共に
  お礼状が添えてあった。
  それらもまた、著名になられた方ばかり
  とはいえ、叔父はとても立派でも
  私はただの凡人。
  評価や鑑定の知識もなく
  宝の持ち腐とは、この事だと
  痛感している。

〇古書店
  カララン
本屋の主人「いらっしゃい」
椿「こんにちは、ちょっと相談したいことが、 ありまして・・・」
椿「このお手紙の差し出し人をご存知ですか?」
本屋の主人「これですか? 見せていただいても?」
本屋の主人「そうですね、私です」
椿「そうですか。 実は私の叔父でして。 先日、病気で他界したのです」
本屋の主人「そうでしたか、それは知りませんでした」
椿「葬儀などは内々で済ませてしまったものですから。ご連絡が遅くなって申し訳ありません」
椿「そこで・・・ 叔父の蔵書について、お願いがあり、 こちらに来たのです。」
本屋の主人「そうですね、 こちらで立ち話もなんですから、 奥へどうぞ」

〇おしゃれな居間
本屋の主人「紅茶ですが、どうぞ。 スリランカ産のダージリンです。 最近は手に入りにくくなってまして。」
椿「すみません、ありがとうございます。」
  私はことの顛末を伝えた。
  その人は、
  静かにうなづいて聞いてくれた。
本屋の主人「それで、その蔵書を処分したいと?」
椿「ええ」
本屋の主人「それはダメだ! 手放しては、いけません!」
椿(・・・び、ビックリした・・・)
本屋の主人「すみません、声を荒らげたりして。 そちらのコレクションされた蔵書は いずれも価値の高いものです」
本屋の主人「普通の買取書店さんでは 分からないでしょうけど・・・」
椿(物静かな人だと思っていたけど、 本については 熱い人なのかもしれない。)
椿「とはいえ、 保管しておく場所もお金もなくて。 どうしていいのか途方に暮れています」
本屋の主人「そうですね、提案があります。 僕に預けて頂くというのはいかがでしょう?」
椿「預ける?」
本屋の主人「そうですよ。 こちらで読書会を開くのです。 貴方様主催で」
椿「でも、私には本の詳しい知識も プレゼン能力もございませんよ?」
本屋の主人「主催と言ってもお名前だけでいいですよ。 詳しい解説など会の準備なども 私が請け負います」
本屋の主人「主賓席で、お話をしてくださるだけでいいのです。来ていただいたお客様に本を知って買って貰えたら、代金をお支払いします」
椿「ああ・・・そういうことなら。 保管にも困っていますし。 会に参加すれば良いのですよね?」
本屋の主人「そうですね。 でしたら計画を立てますので、 都合の良い日にちを教えてくださりますか?」
椿「はい、よろしくお願いします」
  こうして、書店主との不思議な会は
  始まっていくのでした。

〇黒
  つづく

次のエピソード:エピソード2 不思議な本屋

コメント

  • おぉー!✨面白いですね✨☺️
    これから読書会が始まるのですねー!✨😆
    イケメン本屋の店主もいて2人の関係性も今後どうなるのか楽しみです!✨

  • ぼくも本は嗜む程度ですが、整理しているとよんでしまう、主人公のことよくわかります。ぼくは人生の節目に何度となく本や漫画を全処分しているのですが、本があると落ち着くしわくわくします。真面目ですみません、すっごいすてきなお話でした!

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