9 死神と恋 ―天郷編―(脚本)
〇黒
(くんくん)
‥いい匂い
(女性の声)「ねえレヴィオス? お皿を運んでくれない?」
(男性の声)「ん、わかった」
〇簡素な部屋
久遠 陽菜(くおん ひな)「ん‥ここ、どこだろ?」
(女性の声)「レヴィ~! うそでしょ? も~!」
(男性の声)「わりぃ! セリー!」
(女性の声)「はい! じゃあ、これで片付けお願いね!」
(男性の声)「おぅ」
(女性の声)「私、ちょっと彼女の様子みてくるわ」
???「あら!」
???「目が覚めたのね!」
???「気分は、どう? 落ち着いたかしら?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「は、はい」
???「ああ、そんなに緊張しないで?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「あの‥ここは、天郷‥ですか?」
???「ええ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「(ホッ)」
久遠 陽菜(くおん ひな)「ちなみに狐神の集落、ではないですよね?」
???「そうね、でもここから、そう遠くはないわよ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「そう、ですか」
???「もしかして、あなた‥人間界から?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「え! なんで‥」
セリーナ「ふふっ、私はセリーナ」
セリーナ「ねえ、お名前を伺っても?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「あ‥陽菜といいます」
セリーナ「陽菜♪ 素敵な名前ね!」
セリーナ「人間界からの転送って、かなり体力を消耗しそうよねぇ」
セリーナ「お腹とか、空い──」
セリーナ「てる、みたいね」
久遠 陽菜(くおん ひな)「恥ずかしい‥」
セリーナ「ちょうど、食事の準備ができたところなの」
セリーナ「一緒に食べましょう?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「はい」
〇西洋風の部屋
久遠 陽菜(くおん ひな)(美味しそ~♪)
セリーナ「どうぞ、座って~♪」
久遠 陽菜(くおん ひな)「はい」
???「セリー、割れた皿‥片付けた」
セリーナ「はーい、もう気をつけてよね?」
???「あ‥起きたんだ」
セリーナ「陽菜! 彼はレヴィオス」
セリーナ「あなたをここまで運んできたの」
久遠 陽菜(くおん ひな)「ええ! 重かったですよね!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「すみません‥」
レヴィオス「‥別に」
セリーナ「な~に、カッコつけてんの」
セリーナ「陽菜? レヴィはぶっきらぼうだけど」
セリーナ「可愛い子を前にして、恥ずかしがってるだけだから!」
レヴィオス「んな! セリー! 勝手な事を!」
セリーナ「へぇ~、陽菜は巫女なのね」
セリーナ「神狐様に求婚されて、ここには神器の剣を探しに?」
セリーナ「なんだか忙しそうね」
久遠 陽菜(くおん ひな)「あはは‥求婚は出会ってすぐにだったし」
久遠 陽菜(くおん ひな)「冗談かもしれませんけど」
レヴィオス「バカヤロウ、神がそんな冗談言うか」
セリーナ「こ、こら! バカとか言わないの!」
セリーナ「でも、まあ‥レヴィは、冗談なんか言ったことなかったわね」
久遠 陽菜(くおん ひな)「‥‥あの?」
セリーナ「あ‥えっとね、陽菜」
セリーナ「レヴィは、元死神なの」
セリーナ「で、私は死神に求婚された人間」
セリーナ「神様に求婚された陽菜の先輩になるわね♪」
久遠 陽菜(くおん ひな)「ええ~!!」
セリーナ「陽菜、食器の片付け、手伝ってくれてありがとう」
久遠 陽菜(くおん ひな)「いいえ、このくらい」
セリーナ「あ、ちょっと待ってて?」
セリーナ「食後のお茶、いかが?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「いただきます♪」
セリーナ「陽菜? 私、あなたを狐神の集落へ案内しようと思ってるのだけど」
セリーナ「案内するのは、明日でもいいかしら?」
セリーナ「今日は、うちに泊まっていかない?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「えっ、いいんですか?」
セリーナ「うんうん♪ 私、陽菜ともっとお話ししたいと思ってて!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「え‥じゃあ、お言葉に甘えていいですか?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「私もセリーナさんのお話、聞きたいです」
セリーナ「いいよいいよ♪ なんでも聞いて♪」
久遠 陽菜(くおん ひな)「えっと‥じゃあ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「レヴィオスさんとの馴れ初め、とか‥?」
セリーナ「うふふっ、いいわよ~」
セリーナ「でも‥レヴィには、話したこと内緒よ?」
セリーナ「そうね、私とレヴィの馴れ初めは」
セリーナ「死神だったレヴィの勘違いが始まり」
〇黒
私は両親を亡くしていて
幼い妹のアリアと二人で暮らしていたの
〇宿舎の部屋
アリア「えへへ~♪ おね~ちゃん!」
アリア「アリア、お姉ちゃんのこと だ~い好き!」
アリア「ら~♪ ら~ら~ら~♪」
アリア「アリア、お歌上手でしょ? うふふ♪」
アリアは歌が大好きで
明るく優しい子だった
‥‥でも
アリア「ケホケホッ! お姉ちゃん、苦しいよお‥」
セリーナ「アリア、大丈夫? お水飲む?」
アリア「ん‥う‥ゲホゲホゲホ!!」
セリーナ「きゃあああああ!!!! アリア! アリア!!」
アリアは、病に侵されてしまった
入院をするお金なんてなくて
薬だけでその場をしのいでいたの
アリア「お姉‥ちゃん? アリ、ア‥元気になったら」
アリア「また‥お姉ちゃんに、お歌‥聞かせ‥‥たい」
セリーナ「うん‥うん‥楽しみにしてる」
セリーナ「いっぱい寝て、元気になろうね?」
アリア「‥うん」
日々、生気を失っていくアリアが心配で
私は夜中に目を覚ますことが
多くなっていたの
〇宿舎の部屋
レヴィオス「あれ? 生きてる‥なんで?」
セリーナ「だ、誰!?」
〇宿舎の部屋
レヴィオス「・・・」
セリーナ「あ、あなた何者ですか!? 勝手に人の家に‥」
セリーナ「‥‥あの‥?」
レヴィオス「‥あ!えっと‥」
レヴィオス「あんた‥アリア?」
セリーナ「え? いえ、私はセリーナです」
セリーナ「アリアは、そっちのベッドに‥」
レヴィオス「やっべ~、間違えた」
レヴィオス「生きた人間に俺、見えるようにしちまった」
セリーナ「さっきから何をブツブツ言ってるんですか?」
セリーナ「あなたは──」
レヴィオス「俺はレヴィオス。魂の管理者」
レヴィオス「死神って言った方が人間にはわかりやすいか?」
セリーナ「死‥神‥?」
セリーナ「まさか‥‥アリア!?」
セリーナ「いや‥いや! いやよおおおお!!」
セリーナ「ねえ! アリア! 目を開けて?」
セリーナ「お姉ちゃんって‥喋ってよ‥」
レヴィオス「もう、抜け殻だ」
セリーナ「そ‥んな! アリアを‥アリアの魂を‥戻して! 戻してよお!」
レヴィオス「うわっ! やめろ! 俺にふれるな!」
レヴィオス「あっぶねー‥」
レヴィオス「俺にふれると、死んじまうぞ!!」
レヴィオス「あんた、妹をまた苦しませたいのか」
セリーナ「‥え?」
レヴィオス「あんたが言ってるのは、そういうことだ」
レヴィオス「魂を戻しても、病は治らない」
レヴィオス「苦しみ続けるだけだ」
セリーナ「‥‥私は、ただ、アリアに‥」
セリーナ「うっ‥うう‥‥アリアぁぁ」
レヴィオス「最後に妹に会わせてやる」
セリーナ「‥ほ、本当?」
レヴィオス「ああ、その代わり、俺が見えるって他言するな」
セリーナ「は、はい! そんなことくらい‥」
レヴィオス「ん、じゃあ‥」
アリア「あ! おね~ちゃん♪」
セリーナ「アリ‥ア?」
アリア「お姉ちゃん! アリア、もう全然苦しくないの!」
アリア「すっごくいい気分♪」
セリーナ「うん‥そっか、良かっ‥た」
アリア「やだぁ、お姉ちゃん! 笑ってるの? 泣いてるの? どっちー? もおー」
セリーナ「アリアに会えて‥嬉しくて、嬉し泣きっていうんだよ?」
アリア「ふ~ん」
アリア「お姉ちゃん」
アリア「アリア、ずっとお姉ちゃんのこと、見てるから」
アリア「淋しくないからね?」
アリア「アリア、お姉ちゃんの笑った顔が大好き!」
アリア「見たいなあ? お姉ちゃんの笑顔!」
セリーナ「うん‥‥‥こう、かな?」
アリア「うん! その笑顔、最高~♪」
セリーナ「あ! アリア‥」
レヴィオス「時間だ」
セリーナ「う゛う゛ぅぅぅ! あ、あ‥あああああああ!!」
セリーナ「アリア! ううっ‥ アリア! アリア! アリアぁぁ‥‥」
死神は攻略対象じゃなかったんですね。というか、突然差し込まれた妹の死が重すぎました。メインより大分きつくないですか。
契約対象を間違ったのに妹は既に死んでるとは。見えるようにすることと魂が抜けることは別問題なんですね。
触れてはいけない彼と果たして恋愛は成立するのか。続きを読みます
9.10話は一気読み‼️
連続投稿ありがとうございます😊
馴れ初め、というから甘~いラブラブなものを想像していたら……涙腺が😢 ショートエピソードなのに、涙が……😭
新展開と新キャラ登場もあり、感情が揺さぶられっぱなしでした😂