空き家写真家

銀次郎

第二話 100年の家①(脚本)

空き家写真家

銀次郎

今すぐ読む

空き家写真家
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇山間の田舎道
柴咲 恭「だいぶ歩いたな‥」
柴咲 恭「郊外って言うか、もう田舎だよ‥」
柴咲 恭「ふぅー‥」

〇空

〇山間の田舎道
柴咲 恭「100年前の家か‥」

〇黒背景
  3日前‥

〇個別オフィス
柴咲 恭「この撮影が終わったら?」
多聞 玲「そう、よく考えたらまだ一回しか仕事してもらって無いわけだし」
多聞 玲「継続して仕事をって言うのが 教える条件だったから」
柴咲 恭「いや、まあ‥別にいいけど」
多聞 玲「それに、今回の件が終わってからの方が いろいろ理解しやすいはずよ」
柴咲 恭「理解しやすい‥どういう事?」
多聞 玲「今回の撮影、 うちのお得意様絡みの案件なんだけど‥」
多聞 玲「色々といわくのある家だから」
柴咲 恭「いわく?それって事故物件的な‥」
多聞 玲「まあ、そうなるかな」
柴咲 恭「えっ?じゃあ事故物件と撮影って 何か関係があるってこと?」
多聞 玲「それは終わったら話そうと思ってるんだけど‥」
多聞 玲「簡単に言うと、 心理的瑕疵を付加価値に変えるってこと」
柴咲 恭「心理的瑕疵を付加価値に‥?」
多聞 玲「まあ、終わったらね とにかく行って来て」
多聞 玲「はい、これ」
柴咲 恭「‥この家?」
多聞 玲「そう、この家‥」
多聞 玲「100年前に出来た、この家よ」

〇黒背景

〇屋敷の門
柴咲 恭「すごい門だな‥ここか?」

〇黒背景
  3日前

〇個別オフィス
柴咲 恭「100年前?」
多聞 玲「そう、空き家になってからは7年だけど、建物は築100年、大正12年に建てられたの」
柴咲 恭「大正12年‥」
多聞 玲「なに?」
柴咲 恭「いや、何か‥あれだよね? 何かあった年じゃなかったっけ?」
多聞 玲「へー、知ってるのね」
多聞 玲「その年、関東大震災があったの」
柴咲 恭「‥ああ、そうだ すごい地震があったんだ」
多聞 玲「10万を超える死者が出たって地震 まあ9割は火事で亡くなったみたいだけど」
柴咲 恭「この家は大丈夫だったんだ」
多聞 玲「都心じゃなくて郊外に建てたからね たいして被害は無かったみたい」
柴咲 恭「へー、運がいいんだね」
多聞 玲「まあ、運っていうより‥ 助言があったからなんだけど」
柴咲 恭「助言?」
多聞 玲「そう、助言‥ある方からのね」
柴咲 恭「ある方?」
多聞 玲「まあね‥でも、それについて今回と関係ないからまた今度ね」
柴咲 恭「また今度って‥」
多聞 玲「とにかく行って来て、この吉ヶ原邸に」

〇黒背景

〇屋敷の門
柴咲 恭「吉ヶ原‥ここだ‥」

〇黒背景
  3日前

〇個別オフィス
柴咲 恭「吉ヶ原?」
多聞 玲「そう、ねえ?吉ヶ原製薬って聞いたことない?」
柴咲 恭「吉ヶ原製薬‥?」
多聞 玲「まあ知らないか‥中堅どころの製薬会社よ 栄養ドリンクなんかを主に作ってる会社」
多聞 玲「で、吉ヶ原邸はその創業者が建てた家」
柴咲 恭「ふーん‥」
多聞 玲「‥興味無さそうね」
柴咲 恭「まあ‥でも、じゃあ、すごい家なんだね」
多聞 玲「まあね、本来ならかなり重要な建築物なんだけど」
柴咲 恭「本来なら?」
多聞 玲「そう、本来ならね」
多聞 玲「築100年の近代建築、重要文化財になっててもおかしくないんだけど‥」
柴咲 恭「へー‥」
多聞 玲「‥興味無いならいいわよ」
柴咲 恭「でも、それなら何でなってないの? その重要文化財に?」
多聞 玲「そりゃ、知られないようにしてるから」
柴咲 恭「知られないように?何で?」
多聞 玲「そう言い伝えられてるのよ」
多聞 玲「一族が絶えるまで、 この家は人目に晒してはならないって」
柴咲 恭「一族が絶える‥それって‥」
多聞 玲「みんな死ぬまでってことね」
柴咲 恭「えっ‥何それ?」
多聞 玲「で、ようやく扱える時が来たってわけ」
柴咲 恭「じゃあ‥みんな死んだの?」
多聞 玲「そう、先週ね 吉ヶ原家最後の一人の死亡が確定したの」
柴咲 恭「‥確定って、どういうこと?」
多聞 玲「失踪してるの、その最後の一人 7年前からね」
多聞 玲「でも7年経つと、 法律上は死亡扱いになるから」
柴咲 恭「そうなんだ‥」
柴咲 恭「いや、でも会社はどうなるの? みんな死んじゃったら?」
多聞 玲「もうとっくに創業家は経営から離れてるの 大株主ではあるけどね」
多聞 玲「だから死んじゃっても関係ないわけ」
柴咲 恭「そうなんだ‥でもさ‥」
多聞 玲「なに?」
柴咲 恭「何で‥人目に晒しちゃいけないの?」
多聞 玲「それは‥あの方からの助言とか まあ、色々ね」
柴咲 恭「あの方って‥さっきのあの人の事?」
多聞 玲「そう」
柴咲 恭「どうせ教えてもらえないんだろ?」
多聞 玲「まあ、今はね‥」
多聞 玲「それに色々あるのよ、 古くからのお金持ちはね」
柴咲 恭「‥その色々って、さっき言ってた事故物件がどうのってこと?」
多聞 玲「まあね‥」
多聞 玲「そりゃ100年も経ってるんだから、 住んでる人は普通に亡くなったりするわよ」
多聞 玲「だけど、普通じゃない事もね‥」
柴咲 恭「普通じゃない事?」
多聞 玲「例えば火事があって人が死んだり、それから身内のトラブルとか、まあいろいろ」
柴咲 恭「うわー‥」
多聞 玲「でも昭和40年頃の話よ だいたい今から50年以上前」
多聞 玲「ちなみに火事は屋敷じゃなくて、敷地内にあった別宅ね‥そこで何人か死んだって話」
柴咲 恭「‥じゃあ、身内のトラブルのほうは?」
多聞 玲「何か家族内で刃物沙汰らしいけど、 向こうの担当者に聞いても濁されてね」
多聞 玲「あんまり聞いてくれるなって感じだった」
柴咲 恭「向こうって、製薬会社の人ってこと?」
多聞 玲「そう、総務の部長なんだけど、 ハッキリ教えてくれないのよ」
多聞 玲「ああ、でも、吉ヶ原修三郎は普通にここで亡くなったって話よ、事件性は無しで」
多聞 玲「その奥さんは病院で亡くなったのみたいだけど」
柴咲 恭「吉ヶ原修三郎? だれ?その人?」
多聞 玲「その家を建てた人よ」
多聞 玲「それと吉ヶ原製薬の創業者でもあるけど」

〇黒背景

〇屋敷の門
柴咲 恭「門が開いてる‥入っていいのかな‥」
柴咲 恭「そうだ! とりあえず一枚‥」

〇屋敷の門

〇屋敷の門
柴咲 恭「玄関まで行ったほうがいいか‥」

〇山道
柴咲 恭「あれは‥」

〇睡蓮の花園
柴咲 恭「凄いな‥ この池、作ったのか‥」
柴咲 恭「あっ、そうだ」

〇睡蓮の花園
柴咲 恭「うっ‥この感じ‥」
柴咲 恭「あの時の‥」
岩代トワ「ちょっと!」
柴咲 恭「へぇっ!?」
岩代トワ「誰!」
柴咲 恭「えっ?あのー‥」
岩代トワ「勝手に入っちゃダメなんだよ!」
柴咲 恭「いや、あの、撮影で‥」
岩代源哉「あー、すいません」
柴咲 恭「へっ?」
岩代源哉「何か御用ですか?」
柴咲 恭「あっ、あの、撮影で‥」
岩代源哉「撮影?」
柴咲 恭「はい、多聞って不動産屋から頼まれまして」
岩代源哉「‥あー、多聞さんか そうそう、確か不動産業をなされてると聞いております」
柴咲 恭「管理人さん‥ですか?」
岩代源哉「はい、ここの管理をしております岩代です この子は私の娘でして‥」
柴咲 恭「あー、娘さん」
柴咲 恭「あっ、僕は柴咲と言います」
岩代源哉「柴咲さん、すいませんでした 娘が失礼な事を言って」
岩代源哉「ほらトワ! こっちに来て謝りなさい!」
柴咲 恭「あー、いいんですよ」
岩代トワ「私、悪くないよ!だって変な人がお屋敷に入ってきたら大変でしょ!」
柴咲 恭「変な人‥あははは」
岩代源哉「本当にすいません」
岩代源哉「ところで、多聞さんに頼まれた撮影と言うのは?」
柴咲 恭「ああ、ここのお屋敷と言いますか、 建物を撮影してきてくれと」
岩代源哉「あーなるほど‥」
岩代トワ「ねぇ?ここ綺麗でしょ?」
柴咲 恭「へっ?ここ?」
柴咲 恭「ああ、池のこと?」
岩代トワ「そうだよ! お父さんとトワの大切な場所なの」
柴咲 恭「へー、そうなんだ すごいよね、睡蓮も綺麗で」
岩代トワ「でしょー!」
柴咲 恭「お世話大変なんじゃないですか?」
岩代源哉「あはは、いやぁ、まあ‥」
岩代源哉「でも、この子の言うように 大切な場所ですから」
岩代トワ「お兄ちゃんにもお花あげるね」
柴咲 恭「あはは、ありがとう じゃあ、帰る時に貰うね」
岩代源哉「ところで柴咲さん、 お屋敷の中も撮影されますか?」
柴咲 恭「はい、そのつもりなんですけど」
岩代トワ「お兄ちゃん、お屋敷の中の写真も撮るの?」
柴咲 恭「写真? ああ、まあね 写真って言うか、画像だけど」
岩代トワ「ふーん‥ じゃあ、私が案内してあげる!」
柴咲 恭「へ?」
岩代トワ「おとーさん!いいでしょ!」
岩代源哉「ダメだよ!柴咲さんがご迷惑でしょ」
岩代トワ「お兄ちゃん、迷惑?」
柴咲 恭「えっ?あー‥ いや、迷惑ではないかな」
岩代トワ「だってー! じゃあ行こ!お兄ちゃん!」
柴咲 恭「へっ?何で手を繋ぐの?」
岩代トワ「おとーさーん!先に行くねー」
柴咲 恭「何で走るのー! あっ、じゃあ行ってきますー!」
岩代源哉「すいませーん! 私もすぐ行きますのでー!」

〇黒背景
  3日前

〇個別オフィス
柴咲 恭「管理人?」
多聞 玲「そう、管理人がいるはずだから 家の鍵開けてもらって」
多聞 玲「屋敷の事はその人がだいたい把握してる それに色々と案内するようお願いしてあるから」
柴咲 恭「そこって、案内がいるほど大きい屋敷なの?」
多聞 玲「まあ、今どきの一軒家よりはかなりね それにしっかり撮って来てほしい場所もあるし」
柴咲 恭「撮って来てほしい場所?」
多聞 玲「そう‥以前ね、まあ昭和の頃の話だけど 私宅監視をしてたのよ、吉ヶ原家は」
柴咲 恭「私宅監視‥? 何それ?」
多聞 玲「座敷牢って言えばわかる? 要は家の中で合法的に家族を監禁してたの」
柴咲 恭「監禁!?」

〇黒背景

〇お化け屋敷
柴咲 恭「ここか‥凄い家だな‥」
岩代トワ「行くよー! 着いてきてー!」

〇おしゃれな廊下
柴咲 恭「廊下広いなぁ‥」
岩代トワ「ねえ、どこから写真撮るの?」
柴咲 恭「あー、そうだな‥」
柴咲 恭「あっ!‥あのさ?」
岩代トワ「なあに?」
柴咲 恭「何か、ちょっと変わった場所ってある?」
岩代トワ「変わった場所?」
柴咲 恭「何て言うか‥隠してると言うか ちょっと秘密にしてるような場所」
岩代トワ「秘密‥」
岩代トワ「あっ! じゃあ、内緒の場所を教えてあげようか?」
柴咲 恭「内緒の場所?」
岩代トワ「そうだよ、二人だけの内緒にしてたの」
柴咲 恭「二人? お父さんと君の二人ってこと?」
岩代トワ「違うよ」
柴咲 恭「違う?」
岩代トワ「トワ」
柴咲 恭「は?」
岩代トワ「私の名前はトワだよ 君じゃないよ」
柴咲 恭「あっ、ああ、ごめん トワちゃん」
岩代トワ「それに、おとーさんも知らないの 二人だけの内緒」
柴咲 恭「えっ? じゃあ、もう一人は‥」
岩代トワ「この奥だよー」
柴咲 恭「あっ、うん」

〇黒背景
  3日前

〇個別オフィス
多聞 玲「そう、監禁 ほら、刃物でどうのって話、したでしょ?」
柴咲 恭「ああ、身内のトラブルの」
多聞 玲「その前にも事件があってね‥ しかもその犯人らしき人物が家族なの」
柴咲 恭「えっ?でもそれっていいの? 警察に知らせないと?」
多聞 玲「警察も知ってるのよ‥」
多聞 玲「ただ、まだ疑惑の段階だったのと、 その当人が心を病んでるらしいことと‥」
多聞 玲「それに何と言っても、 吉ヶ原家はこの土地の名士だからね」

〇黒背景

〇暗い廊下
柴咲 恭「こんなところがあったんだ‥」
岩代トワ「ここだよ!」
柴咲 恭「えっ?」

〇古民家の蔵
柴咲 恭「ここ?」
岩代トワ「そう、ここが内緒の場所」
柴咲 恭「‥‥ねえ、トワちゃん」
岩代トワ「なあに?」
柴咲 恭「その二人だけの内緒ってさ、 トワちゃんと誰の内緒なの?」
岩代トワ「‥‥」
岩代トワ「‥‥」
柴咲 恭「えっ?」
岩代トワ「‥忠くんだよ」
柴咲 恭「忠くん?」
柴咲 恭「あっ‥この感じ‥」
岩代トワ「‥どうしたの?」
柴咲 恭「いや‥ちょっと頭が‥」
岩代トワ「‥‥」
柴咲 恭「ごめん、ちょっと‥外に」

〇暗い廊下

〇おしゃれな廊下
岩代源哉「おや、どちらにいらっしゃったんですか?」
柴咲 恭「いや、ちょっと‥うっ」
岩代源哉「どうかされました?」
柴咲 恭「すいません‥ちょっと外に出てます」

〇お化け屋敷

〇屋敷の門
柴咲 恭「はぁはぁはぁ‥何だこれ‥」
柴咲 恭「何で急に‥」
柴咲 恭「誰だ‥」
柴咲 恭「あっ!」

〇個別オフィス
多聞 玲「ねえ、ちょっと! 全然つながらないんだけど?」

〇屋敷の門
柴咲 恭「えっ?何が?」

〇個別オフィス
多聞 玲「電話してんの!何度も!」
多聞 玲「メッセージ送っても送信不可で帰ってきちゃうし、どこに行ってたのよ!」

〇屋敷の門
柴咲 恭「どこにって、 吉ヶ原邸にちゃんと着いてるよ」
柴咲 恭「管理人さんにも会って、 いま中を案内してもらってる」

〇個別オフィス
多聞 玲「はぁ?」

〇屋敷の門
柴咲 恭「岩代さんと、それに娘のトワちゃんに」

〇個別オフィス
多聞 玲「えっ?誰?」

〇屋敷の門
柴咲 恭「だから、岩代さんだよ、管理人の」
柴咲 恭「何か娘さんも一緒にいて、その子に案内してもらってたんだ」

〇個別オフィス
多聞 玲「ちょっ、ちょっと待って! 誰よそれ?」

〇屋敷の門
柴咲 恭「誰って、だから管理人の‥」

〇個別オフィス
多聞 玲「管理人、来てないのよ」

〇屋敷の門
柴咲 恭「はぁ?」

〇個別オフィス
多聞 玲「担当の管理人が急に行けなくなったって、管理会社から連絡があって」

〇屋敷の門
柴咲 恭「えっ?どういうこと?」

〇個別オフィス
多聞 玲「管理人が来ないと鍵が開かないでしょ? それでさっきから電話してんのに」

〇屋敷の門
柴咲 恭「だって‥えっ?えっ?」

〇個別オフィス
多聞 玲「‥ねえ、あんた」
多聞 玲「いったい誰に会ってるの?」
  続く

次のエピソード:第三話 100年の家②

コメント

  • こんにちは!
    2話目もドキドキしました!とわちゃん、管理人さん、何者なんでしょうか
    後で分かった時のゾクッと感がまさにホラー

    そして監禁、警察が手を出し辛い事件、ミステリー要素もふんだんですね
    不動産屋さんとの会話があるのでまだ小休憩みたいな感じで怖くても読めます👍

  • トワちゃんやお父さんは一体何者なんでしょう⁉︎気になりますね!!😱💦100年も続いた家ですし、写真で一体どういうものが撮れるのか?(見れるのか)楽しみです!✨☺️続きをお待ちしてます✨☺️🪷

    私も少し前に知ったのですが、BGMはシーンが変わっても繋げられます!✨シーンの一番最初の設定に前の場面と同じBGM登録しておくとなります!✨☺️あえて繋げていなかった場合はすみません!🙇‍♀️💦

成分キーワード

ページTOPへ