第三話 100年の家②(脚本)
〇屋敷の門
柴咲 恭「いや、誰って‥だから‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「とにかく!こっちで色々確認するから!」
多聞 玲「そんな変な状況で中に入んないで! そこにいてよ!」
〇屋敷の門
柴咲 恭「そこって、ここに? ここにいろってこと?」
〇個別オフィス
多聞 玲「そこだかここだか、よくはわかんないわよ!」
多聞 玲「でも門のところにいるんでしょ!?」
〇屋敷の門
柴咲 恭「門のところにいるよ‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「じゃあ、そこにいて! わかった!」
〇屋敷の門
柴咲 恭「わかったよ‥わかったけど‥」
柴咲 恭「‥切れたよ」
〇個別オフィス
多聞 玲「さて、どうするか‥」
多聞 玲「野下に聞くしかないか‥」
〇屋敷の門
柴咲 恭「じゃあ、あの二人‥ 何なんだよ‥」
「おにーちゃーん!」
「おにーちゃーん! どこにいるのー!」
柴咲 恭「この声‥」
柴咲 恭「トワちゃんだ‥」
「おにーちゃーん! どこー!」
〇個別オフィス
多聞 玲「そんな変な状況で中に入んないで! そこにいてよ!」
〇屋敷の門
柴咲 恭「中に入るな‥か‥」
〇睡蓮の花園
岩代トワ「お兄ちゃんにもお花あげるね」
〇屋敷の門
柴咲 恭「‥‥」
〇睡蓮の花園
岩代トワ「だってー! じゃあ行こ!お兄ちゃん!」
〇屋敷の門
柴咲 恭「‥‥」
柴咲 恭「ふふっ‥」
「おにーちゃーん! どこなのー?」
柴咲 恭「‥今から行くよ」
〇黒背景
〇オフィスのフロア
真白翔太「はい、吉ヶ原製薬総務部の真白です」
〇個別オフィス
多聞 玲「お世話になってます 多聞不動産の多聞ですけど」
多聞 玲「野下部長いらっしゃいます?」
〇オフィスのフロア
真白翔太「あーっ、お世話になってますー」
真白翔太「えーっ、すいません 野下が昼食でちょっと出てまして‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「そうですか‥わかりました じゃあ携帯の方にかけてみます」
〇オフィスのフロア
真白翔太「あー‥ それが、社用の携帯ここにあるんですよね」
真白翔太「だからちょっと連絡は難しいかと‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「‥‥」
多聞 玲「じゃあ野下さんの個人携帯にかけるんで 番号教えてもらえます?」
〇オフィスのフロア
真白翔太「いやー‥さすがに個人の番号を許可なく お教えするのはちょっと‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「‥‥」
多聞 玲「いいから教えなさいよ! 緊急なの!」
多聞 玲「ここでもたついて何かあったら 全部野下さんの責任になるのよ!」
多聞 玲「それともあんたが責任とるの!?」
〇オフィスのフロア
真白翔太「えっ? いや、それは、そのー‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「いいから!早く教えなさい!!」
〇黒背景
〇山道
「おにーちゃーん! どこー!?」
柴咲 恭「睡蓮の池の方か‥」
〇睡蓮の花園
柴咲 恭「この辺りから‥」
岩代トワ「もー! 急にいなくなっちゃうんだからー!」
柴咲 恭「ああ‥うん、ごめん‥」
岩代源哉「トワ、そんな事言うもんじゃないよ 柴咲さんは具合が悪かったんだから」
岩代トワ「そうなの?まだどこか痛いの?」
柴咲 恭「いや、もう大丈夫だよ」
岩代トワ「ほんと!よかったー!」
柴咲 恭「心配してくれてありがとう」
岩代トワ「えへへ! じゃあ、またお屋敷を案内してあげる!」
岩代トワ「早くー! 行くよー!」
岩代源哉「トワー! そんなに走ると転んじゃうよー!」
柴咲 恭「何だか元気ですね」
岩代源哉「まあ、嬉しいんでしょうね あまり他の人と話すことも無いですから」
柴咲 恭「そうなんですか?」
岩代源哉「ええ‥ もう、ずっと長い事ここにいますので‥」
柴咲 恭「ずっと‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「いったい誰に会ってるの?」
〇睡蓮の花園
柴咲 恭「‥‥」
柴咲 恭「あの‥岩代さん」
岩代源哉「はい?何でしょう?」
柴咲 恭「ここでのお仕事、ずいぶん長いんですか?」
岩代源哉「そうですね、あの子が‥ トワが生まれる前からになりますか」
柴咲 恭「トワちゃんが生まれる前‥」
岩代源哉「ええ、もう10年以上前になりますか」
岩代源哉「妻と二人で、こちらへお勤めさせて頂くことになりまして」
柴咲 恭「奥様と? じゃあ、今も奥様はご一緒なんですか?」
岩代源哉「亡くなりました 確か、トワが11歳の時でしたか‥」
柴咲 恭「あっ、そうなんですか‥ 何かすいません‥」
岩代源哉「あー、いえいえ もう、ずいぶん前の話ですから」
岩代源哉「それに立派な葬式も出していただきました これもご主人様や奥様、大奥様のおかげです」
柴咲 恭「ご主人様と言いうと‥ 吉ヶ原修三郎さんの事ですか?」
岩代源哉「修三郎様は先代様です 私のご主人は一修様です」
柴咲 恭「一修‥」
岩代源哉「ええ、ご主人様にはその後も 色々と良くしていただいて‥」
岩代源哉「それに吉ヶ原家には娘さんがいなかったので、ご主人様と奥様はトワの事を自分の娘のように可愛がってくれました」
柴咲 恭「じゃあ、吉ヶ原家に子供はいなかったんですか?」
岩代源哉「あー、いえいえ 息子さんが二人いらっしゃいます」
岩代源哉「宗修さんと忠修さんのお二人が」
柴咲 恭「‥忠修‥」
岩代源哉「お二人ともトワの事を本当の妹のように 可愛がってくれました」
〇古民家の蔵
岩代トワ「‥忠くんだよ」
〇睡蓮の花園
柴咲 恭「‥‥」
岩代源哉「どうかしましたか?」
柴咲 恭「ああ、いえ‥」
柴咲 恭「あっ、そう言えば、だいぶ前に敷地内で 火事があったと聞きましたが」
岩代源哉「‥ええ、確かに」
柴咲 恭「それってどのあたりなんですか?」
岩代源哉「そうですね‥ あの時は‥本当に‥」
柴咲 恭「(あの時‥)」
岩代源哉「火事の場所‥ですよね それは‥」
岩代源哉「ここです」
柴咲 恭「ここ?」
岩代源哉「はい、この睡蓮の池があるここです ここに火事が起きた建物がありました」
柴咲 恭「‥そうだったんですか」
〇黒背景
〇個別オフィス
多聞 玲「‥‥」
「はい‥野下ですが どなたですか?」
多聞 玲「野下さん? 多聞です、多聞不動産の」
〇居酒屋の座敷席
野下真治「あー多聞さん! どうもどうも」
野下真治「あれ? 何でこの番号知ってんの?」
〇個別オフィス
多聞 玲「悪いんだけど、至急確認してほしい事があるのよ」
〇居酒屋の座敷席
野下真治「確認? 確認って、何を?」
〇個別オフィス
多聞 玲「今うちの人間が吉ヶ原邸に行ってるのよ」
多聞 玲「野下さんの、意向に沿った、調査のためにね」
〇居酒屋の座敷席
野下真治「ああっ、うん、それはね どうもね‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「本来なら委託の管理会社の人間が同行して 建物内を案内するはずだったの」
多聞 玲「だけど事情が合って、来られないって連絡があったのよ」
〇居酒屋の座敷席
野下真治「はぁ‥」
野下真治「えーっと、それがどうかしたの?」
〇個別オフィス
多聞 玲「だけど、案内されてるのよ! うちの写真家が!」
多聞 玲「管理人だって言う奴がいて そいつに案内されてるの!」
〇居酒屋の座敷席
野下真治「はぁ‥あれじゃないの? 管理会社の手違いとかじゃないの?」
〇個別オフィス
多聞 玲「はぁ?子連れなのよ!その管理人は!」
多聞 玲「しかも子供が案内してるって言ってるし!」
多聞 玲「どこの管理会社が 子連れで客の案内なんかするのよ!」
〇居酒屋の座敷席
野下真治「何かちょっと意味がわからないんだけど‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「写真家が言うにはその管理人、 名前は「岩代」って言うらしいの」
多聞 玲「聞き覚えない?」
〇居酒屋の座敷席
野下真治「「岩代」‥ うーん、わかんないなぁ」
〇個別オフィス
多聞 玲「とにかく、わけがわかんない事になってるのは間違いないの」
多聞 玲「急ぎでその「岩代」の事を調べて連絡して」
〇居酒屋の座敷席
野下真治「あー、わかったけど それ今日中に調べればいいんじゃないの?」
野下真治「そんなに急がなくてもさぁ」
〇個別オフィス
多聞 玲「‥‥」
多聞 玲「あんたねぇ‥」
多聞 玲「あんた?定年後の再就職先にって理由で あそこが吉ヶ原製薬記念館になるよう手を回ししてんでしょ?」
多聞 玲「こっちはあんたに頼まれて そのための調査をしてんじゃないの!」
〇居酒屋の座敷席
野下真治「あー‥いやぁー‥ あははは‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「どうせ自分の定年後、あそこの館長になる腹積もりなんでしょ?」
多聞 玲「こっちはそれを手伝ってやってんじゃない!!」
多聞 玲「これ以上グダグダ言ってると、その根回し手伝って来た事を、あんたの上にバラすわよ!」
〇居酒屋の座敷席
野下真治「わわっ、わかった!わかったよー」
野下真治「もうじゃあ、お昼食べたら すぐ会社に戻って調べるよ‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「昼を食べたら‥?」
多聞 玲「何食べるのよ、昼食?」
〇居酒屋の座敷席
野下真治「えっ?あの、お蕎麦だけど‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「‥蕎麦なら5分で済むわね」
多聞 玲「食べたらすぐ会社に戻って確認して! 連絡待ってるから!」
〇居酒屋の座敷席
野下真治「いや、そんな 立ち食い蕎麦じゃないんだから‥」
野下真治「切れてる‥」
野下真治「‥‥」
野下真治「店員さーん、すいませーん!」
そば屋店員「はーい?何でしょう?」
野下真治「天ぷらとビールはキャンセルで ざる蕎麦だけにして下さい」
そば屋店員「かしこまりましたー!」
野下真治「はぁ‥」
〇黒背景
〇睡蓮の花園
柴咲 恭「ここが火事の現場‥」
岩代トワ「おにーちゃーん!おとーさん! 何してんのー!」
岩代トワ「もう!早くお屋敷を案内しようよー!」
岩代源哉「そうそう、お屋敷内のご案内 すっかりトワに任せっきりにしてしまって」
岩代源哉「ちゃんとご案内させていただきますね」
柴咲 恭「ああ‥はい‥」
岩代トワ「ほらー! お兄ちゃんも早く―!」
柴咲 恭「ああ‥うん、わかったよ!」
岩代源哉「こら、トワー! またそんなに柴咲さんを引っぱってー」
岩代トワ「早くお屋敷に入ろうー!」
〇黒背景
〇走行する車内
多聞 玲「はい、多聞です」
〇オフィスのフロア
野下真治「どうもどうも、野下です」
〇走行する車内
多聞 玲「野下さん?遅いよ?」
多聞 玲「で?どうだったの?」
〇オフィスのフロア
野下真治「いや、それがね‥色々と調べたら 秘書室まで行っちゃって、話しが‥」
〇走行する車内
多聞 玲「秘書室? 何それ?どういう事?」
〇オフィスのフロア
野下真治「それがさぁ、吉ヶ原邸の扱いは いちおう総務部の管轄なんだけど‥」
野下真治「その内情については一部の役員と秘書室、というか、秘書室長しか関われないらしいんだよ」
〇走行する車内
多聞 玲「だって野下さん総務の部長でしょ? 総務部長が関われないってどういう事よ?」
〇オフィスのフロア
野下真治「だから、何と言うか ちょっと特殊らしいんだよ」
野下真治「で、その秘書室長がさ、 そっちに行くって言ってた」
〇走行する車内
多聞 玲「そっち? そっちってどこよ?」
〇オフィスのフロア
野下真治「だから吉ヶ原邸に そっちに行って自分で確かめるって」
〇走行する車内
多聞 玲「なに?何なの、それ?? 全然事情がわかんないんだけど」
〇オフィスのフロア
野下真治「多聞さん、今どこ?車?」
〇走行する車内
多聞 玲「えっ?車よ 向かってるわよ、吉ヶ原邸に」
〇オフィスのフロア
野下真治「ああ、じゃあ、よかった 現地で瑠璃崎さんと合流できるね」
〇走行する車内
多聞 玲「瑠璃崎? 誰よ、それ?」
〇オフィスのフロア
野下真治「だから、秘書室長だよ 瑠璃崎って名前なんだ」
野下真治「珍しい名前だよねー」
〇走行する車内
多聞 玲「いや珍しいとかどうでもいいから!」
多聞 玲「何しに来るのよ?その人はいったい?」
〇オフィスのフロア
野下真治「ほら、「岩代」って言ってたでしょ? その管理人だか何だか」
野下真治「確かに居たらしいんだよね、 屋敷の管理をしてた「岩代」ってのが」
野下真治「だけど‥」
〇走行する車内
多聞 玲「だけど? だけど何よ?」
〇オフィスのフロア
野下真治「亡くなってるんだよ‥とっくに」
〇走行する車内
多聞 玲「亡くなってる?」
〇オフィスのフロア
野下真治「ほら、前に屋敷で火事があったって話したでしょ?」
〇走行する車内
多聞 玲「敷地内の別宅が火災にって あれの事でしょ?」
〇オフィスのフロア
野下真治「そう、その別宅が管理人の岩代の家でね」
野下真治「その火事で亡くなってるんだよ‥」
野下真治「二人とも‥」
〇走行する車内
多聞 玲「二人‥とも?」
〇オフィスのフロア
野下真治「気の毒にね‥ 岩代とその娘さんが亡くなってるんだよ」
〇走行する車内
多聞 玲「えっ?ちょっと待ってよ‥」
多聞 玲「だって屋敷を案内されたって‥」
多聞 玲「娘に‥」
続く
うわー!ミステリーが!ものすごく濃厚!
岩代さん、霊でしたか
普通のミステリーにホラーがうまく入ってるからトリック的な要素に「霊がみえる」というのが使われていて面白いですね👍
私はホラー✕SF✕ギャグなんですけど3つのジャンル作り苦戦してるのでとても勉強になります
続き気になりますね!!✨☺️
トワとトワのお父さんがもうすでに亡くなっていたとは・・・これからどうなっていくのか気になります・・・
あ✨BGMバッチリでしたね✨☺️
次回新しい人物も出てくるようで、とても気になります!