#7 それでも朝はやってくる(脚本)
〇睡蓮の花園
恥辱と絶望に肩を震わせる彼女は、まるで生まれたての子鹿のようで
その小さな体の大きな鼓動に、私は庇護欲を掻き立てられるのでした
彼女は吸血鬼らしいですが、私にはただのか弱い少女にしか見えません
「推せるか?」と問われると、そうですね
〇睡蓮の花園
土田 文香「ママになりたい」
シェリル「えっ?」
土田 文香「・・・」
土田 文香「あっ・・・何でもないです」
シェリル「ママ・・・」
サリア「ねえ・・・消してよ」
サリア「お願いだから・・・」
シェリル「貴方、そっちの方が可愛いわよ」
サリア「そっち・・・?」
シェリル「無理に、吸血鬼らしく振る舞わなくていいんじゃない?」
シェリル「貴方が強さを誇示するのって、弱さを隠すためよね」
サリア「・・・」
シェリル「私から見た貴方はね──」
〇黒
孤高を気取っているけれど
その実、とんでもなく寂しがり屋
本当は認められたい、理解してほしい
しかし、理解されない
そんな貴方は、他人を見下すことで
自分を肯定するしかなかった
自分が人に理解されないのは
他人に理解力がないからだ・・・と
「異物」である自分を「特別」だと
思い込むことで、自我を保っている
リアリストのようで、ロマンチスト
他人を「見たいものしか見ていない」と
揶揄するけれど
実は自分が一番、見たいものしか見ていない
人に「不安」を煽るのは
自分自身が、目を背けたいから
抗えない不安や・・・
ずっと一人で生きていく恐怖から
一寸先は闇・・・
暗いトンネルの先の、出口が見えない
〇睡蓮の花園
シェリル「ねぇ」
シェリル「「見えない」って、怖いでしょう?」
サリア「え・・・?」
シェリル「悪い方へ、悪い方へと想像力を働かせてしまう」
シェリル「「未知」が「不安」を煽り、 「不安」は「恐怖」へと変貌を遂げる」
サリア「それ・・・私の・・・」
シェリル「ええ。貴方の決め台詞らしいわね」
シェリル「良い言葉だと思うわ。だから私も」
シェリル「貴方の「想像力」を利用させてもらったの」
サリア「・・・」
シェリル「将来は不安よね。そんな貴方に、闇を照らす一筋の光を与えた」
シェリル「その光に縋った貴方を、さらに強い恐怖で調理した」
シェリル「「共に生きるパートナー」という餌に貴方が食い付いたのも」
シェリル「「生き地獄」という奈落に怯えたのも」
シェリル「どちらも、その先を想像してしまったせいよ」
シェリル「こんなもので人生は狂わないし、あんな動画で祭りなんか起きないのに・・・ね」
サリア「・・・」
シェリル「それに・・・」
シェリル「一人でだって、生きていけるわ」
土田 文香「・・・」
〇睡蓮の花園
そう語る彼女の横顔はどこか自嘲的で
その物憂げな瞳は朝日に反射して
紅く、揺らめいていました
綺麗だ、と思いました
〇睡蓮の花園
土田 文香「・・・」
サリア「動画消して・・・」
シェリル「ああ、投稿したというのはウソ」
シェリル「仮にホントだとしても、私フォロワー0人だから」
シェリル「投稿したところで、誰も見ないわよ」
サリア「良かった・・・」
サリア「命よりも大事な何かを失うところでした」
シェリル「大袈裟ね」
シェリル「まぁ、私が煽ったのだけれど」
土田 文香「あのー・・・」
「・・・」
土田 文香「もしかしてお二人は、友達がいない?」
シェリル「何故そう思ったのか気になるけれど・・・」
シェリル「私には文香さんがいるわ」
サリア「私にも動物さんたちがいます」
土田 文香「あー・・・」
土田 文香「うーんと」
土田 文香「良かったら、連絡先交換しません?」
シェリル「文香さんの電話番号なら知っているけれど」
土田 文香「じゃなくて、メッセージ」
土田 文香「ライム交換しましょう」
サリア「人間風情が・・・」
サリア「何が狙いです?」
土田 文香「いやあ、ちゃんとお友達になりたいなあって」
サリア「お友達・・・?」
サリア「私と人間が?」
サリア「ハッ。脳がイカれ腐りやがりましたか?」
サリア「吸血鬼の私と人間の貴方が友達?」
サリア「奴隷の間違いでは?」
土田 文香「さっきまであんなに泣いてたのに、すごいなこの人」
シェリル「私と文香さんは既に友達よ」
土田 文香「そうですね。でも、私は二人にも友達になってほしいんです」
シェリル「そう来たか」
土田 文香「お二人は、あまり仲が良くないみたいですし」
土田 文香「これを機に・・・」
サリア「くだらない」
サリア「帰って寝ます」
土田 文香「あっ」
シェリル「そういうものよ。吸血鬼って」
土田 文香「その吸血鬼について、詳しく聞きたかったんですけどね」
土田 文香「今回のバトル?も一体何なのか・・・」
シェリル「じゃあ、聞かせてあげるわ」
シェリル「ベッドの上で」
土田 文香「えっ?」
〇空
〇空
〇豪華なベッドルーム
GAZE ON
episode 7
『それでも朝はやってくる』
サリア「・・・」
サリア「人の家のベッドで、何してるんですか?」
シェリル「まぐわい」
サリア「最悪」
シェリル「冗談よ。この子に吸血鬼について教えていたの」
土田 文香「吸血鬼って良いですね〜」
サリア「そうですか。出てってください」
シェリル「冷たいわね」
土田 文香「冷たいですね」
シェリル「そうだ。私明後日、ゲルニカとの戦いが控えているの」
シェリル「それまでここに泊めて頂戴」
サリア「は・・・?」
サリア「ゲルニカ・・・?」
シェリル「貴方もご存知よね。殺戮のゲルニカ」
シェリル「10000年級の吸血鬼と呼ばれる、伝説の」
サリア「・・・私、マッチングしたことあります」
シェリル「えっ」
シェリル「彼女と戦って生き延びたの?」
サリア「・・・」
サリア「開始と同時に降参しました」
シェリル「なるほどね」
サリア「アレは化け物ですよ。まともに相手するなんて馬鹿げてる」
サリア「長生きしたいなら関わらない方がいいです」
シェリル「ふーん」
シェリル「それ聞いて、ワクワクしてきちゃった」
サリア「・・・」
土田 文香「シェリーさ〜ん」
土田 文香「また戦うの〜?」
シェリル「戦うわ!戦うに決まってる!」
シェリル「私の戦う姿、たんと目に焼き付けなさい!」
土田 文香「わ〜い」
サリア「・・・」
サリア「ゲルニカ・・・」
〇黒
〇基地の広場(瓦礫あり)
軍人「寄るな!化け物!」
軍人「ヴッ・・・」
ゲルニカ「化け物はどっちだよ」
ゲルニカ「蛆虫のように次から次に湧きやがって」
「ひっ・・・!」
「カ・・・ハッ」
ゲルニカ「共食いでもしてろよ」
ゲルニカ「なんなんだよほんと」
ゲルニカ「虫が湧くのはこの星が腐ってるから?」
ゲルニカ「やべ、げっぷ出そう」
ゲルニカ「・・・」
ゲルニカ「何見てんだよッ!」
どうにも脳内で声がすると思ったのは、イラストが内包している要素を自分と混ぜて台詞に落としているからなのかなと思いました。キャラが生き生きしてて素敵です。
ストーリーは、吸血鬼という後ろ楯を使ってすごく人間めいた、かさぶたをガムテープでひっぺがすような内容を扱っているのがいいですね。推しはまた変わるのか、変わらないのかも楽しみです。