エピソード1:殺され屋(脚本)
〇電器街
纏 白檀「・・・・・・」
纏 白檀「つまらないな」
彼女――纏(まとい)白檀(びゃくだん)は小説家だ。
纏 白檀「(街に出れば何かネタでも拾えるかと思ったがーーハズレか)」
彼女は、自らの創作意欲を掻き立てる刺激に飢えていた。
〇電器街
纏 白檀「ん?・・・・・・あれは・・・・・・」
纏 白檀「『殺され屋』・・・??」
白檀が何となしに目を向けた、路地裏への入り口。
そこには、『殺され屋』というプレートをかかげた少年が立っていた
〇ビルの裏通り
纏 白檀「やあ、少年」
フシ「!!」
フシ「え、何、お姉さん。お客様・・・・・・?」
たった、ひとこと。白檀は、少年から警戒されていることを読み取った。
纏 白檀「(何だ、罰ゲームの類だったか)」
冷静に考えれば、『殺され屋』など職業として成り立つはずもない。
そう思い当たった白檀は、乾いた笑いを路地に落とした。
纏 白檀「いや、面白い看板だと思ってね。・・・・・・話を聞いてみたかったんだ。殺され屋とやらのさ」
フシ「・・・・・・」
纏 白檀「(ああ、やはり)」
少年の沈黙を肯定と捉えた白檀の肩ががくりと落ちる。
が、次の瞬間少年から発せられた言葉に、白檀は顔を勢いよく上げた。
フシ「ねえ、それ・・・・・・お金くれる?」
纏 白檀「!!」
フシ「お姉さん、「不死」は知ってるでしょ?俺ね、それなの」
フシ「今まで何度も殺され放題やって来たよ。だから話ならたっくさんできる!」
フシ「ひとつ幾らで買ってくれるの?いくつ聞きたい?」
纏 白檀「?・・・・・・??」
フシ「いやこの前さ、お姉さんくらいの人に殺され屋なんてドートクうんぬん!って言われたから警戒しちゃった。ごめんね?」
纏 白檀「・・・・・・」
警戒をあらわにしていた少年の、てのひらを返したようなマシンガントーク。
主に、金と災難について。
そして「不死」についての。
一度にもたらされた多くの情報に、白檀の頭は常にない程せわしなく動いた。
纏 白檀「(そうか、忘れていた。不死といえば確かここ数年――十年?位前に騒がれていたっけ)」
纏 白檀「殺しても死なない、いや蘇生する「人間だったはずの何か」。黎明期に社会問題化していた気がする)」
纏 白檀「(不死なら、確かに殺され屋を理論上は営める)」
纏 白檀「(この少年、・・・・・・金についての言い様がなかなかがめつかったな。必要な境遇か)」
頭の中で、瞬時に組みあがる不恰好なピース。それに己の願望を足せば、かちりと綺麗にはまるではないか。
そんな気持ちに行き着いた白檀の頭が、答えをはじき出すのにそう時間はかからなかった。
纏 白檀「まずは試しにひとつ聞いてみたいな。金なら出すよ、少年」
フシ「やった、商談成立!」
金、災難、、、不死。言葉の意味はネガティブな感じがしますが、内容はそのような感じは払拭されるようなものでした。ストーリも楽しく一気に読ませて頂きました。
殺され屋…利用する人はどんな欲求があるのでしょう。
人を殺してみたいとか…殴りたいとか…そういう感じなのかな。
でも不死って、結構辛いと思います。
ゴールのないレースのようで…。