読切(脚本)
〇女性の部屋
三ヶ月前、高校の同級生から結婚式の招待状が届いた。
芹沢アンナ「ん?これ誰?こんなやつ知らないんだけど」
アンナは、突如送られてきた結婚式の招待状に困惑していた。
その時
芹沢アンナ「もしもし?」
「アンナ?久しぶり。元気だった?」
電話の相手は高校時代からの友人、新山千夏からだった。
芹沢アンナ「千夏!ほっんと久しぶりね。元気よ。 どしたの?急に電話なんかしてきて」
「あのさぁ、アンナのとこにも結婚式の招待状来た?」
芹沢アンナ「来たわよ?もしかして、千夏のとこにも来たの?」
「うん。あのさ、根岸多江ってあの女だよね?」
芹沢アンナ「根岸多江?誰よその女」
「ほら、私達が高校のときいじめてたあの女よ。結局不登校になって、よその学校に転校したやつ」
芹沢アンナ「思い出した。確かにそんな女いたわね。 けど、うちら仲良かったわけじゃないよね?いじめてただけだし」
「そうよね。けど、何で招待状なんか送ってきたのかな。てか、どうする?出席する?」
芹沢アンナ「う~ん、根岸の今の姿も見たいし、旦那の顔も気になるから行ってみよっかな」
芹沢アンナ「どーせ、根岸みたいに冴えない男に違いないと思うけど。 千夏だって、興味あるんじゃない? 一緒に出席しようよ」
「まぁ、アンナが行くなら私も行こうかな。ってことは、由実のとこにも来てるはずよね?」
芹沢アンナ「そうよね。千夏悪いけど、由実に届いたか確認してもらえる?」
「分かったわ」
その後千夏から連絡が来て、由実の所にも招待状が届いたとの事だった。
芹沢アンナ「結婚式ってことは、パーティードレスが必要よね」
芹沢アンナ「どーせなら、主役より目立ってやろうかしら」
その時、インターホンが鳴った。
芹沢アンナ「はい」
「すみません。宅配の者ですが、お荷物をお届けに参りました」
芹沢アンナ「宅配ですか?」
「はい。根岸多江様からなのですが・・・」
芹沢アンナ「根岸多江。分かりました。少々お待ち下さい」
宅配業者から、荷物を受け取る。
芹沢アンナ「中身は何かしら?」
箱を開けると、そこには赤のドレスと一通の手紙が入っていた。
お久しぶりです。根岸です。結婚式当日は、是非こちらのドレスを着て、お越し下さい。
芹沢さんに会えるのを、とても楽しみにしています。
芹沢アンナ「へぇ、あの女結構気が利くじゃない。 しかも、こんな綺麗なドレス送ってきて。 試しに着てみようかしら」
赤いドレスを身に付ける。
芹沢アンナ「うん。悪くないわね。 せっかくだから、インスタに載せとくか」
〇荒廃した教会
結婚式当日、芹沢は呼ばれた教会を訪れる。
芹沢アンナ「ちょっとどういうこと?千夏も由実もいないじゃない。しかも、二人共電話に出ないし。 ここじゃないのかしら?」
「いいえ。ここで合ってますよ。 芹沢アンナさん」
芹沢アンナ「はぁ?誰よ?」
根岸多江「お久しぶりです。根岸です」
芹沢アンナ「根岸っ!結婚式は?てか、千夏と由実はどこに行ったの?」
根岸多江「あの二人なら、別の場所にいらしてますよ。 それから結婚式ですが、そんなものは行ってません」
根岸多江「最初から、あなた達をおびきだす為に、私が考えた作戦です」
芹沢アンナ「作戦ですって? どういうつもりよ?」
根岸多江「そのドレス、すっごくお似合いですよ。 芹沢さんも・・・」
芹沢アンナ「芹沢さんもって、あの二人もこのドレスを?」
根岸多江「はい。私が一針一針、心を込めて作りました。 そのドレスに見覚えありませんか?」
芹沢アンナ「えっ?」
芹沢は、自分が着てたドレスを見つめた。
根岸多江「その様子だと、お忘れの様ですね?」
根岸多江「そのドレスは、私が高校時代にデザインし、入賞したものです」
根岸多江「しかし、何者かによって私のドレスは焼却炉で焼かれ、灰になってしまいました」
芹沢アンナ「それって、まるで私達が犯人みたいな言い方じゃない?」
根岸多江「だって、犯人はあなた達じゃないですか! 私は見てましたよ?あなた達が、私のドレスを笑いながら燃やしてる所を・・・」
根岸多江「証拠だって、ちゃんと残してますから」
芹沢アンナ「・・・」
根岸多江「だから、私は決意したんです。 いつかあなた達に復讐してやると・・・」
根岸多江「長かったですわ。この数年、ずっとあなた達に復讐することだけを考えてました。 孤独の中で・・・」
根岸多江「そして、ついにこの日が来たのです」
根岸多江「芹沢さん、そのドレスを着て何か違和感を感じませんか?」
芹沢アンナ「そう言われてみれば、さっきからチクチクした痛みが・・・」
根岸多江「でしょ?それは、イラクサと言う強い毒性のあるトゲのせいですよ?」
根岸多江「知ってます?イラクサは、鋭い痛みの他に蕁麻疹や呼吸困難。 最悪の場合、死に至る場合もあるんですよ?」
芹沢アンナ「・・・死に至るですって?」
根岸多江「言いましたよね?」
根岸多江「一針一針、心を込めて作ったって・・・」
芹沢アンナ「目的は何なの?イジメの謝罪?だったらするわよ」
根岸多江「謝罪?バカ言わないで下さい。 そんなもの、私は望んでなんかいません」
根岸多江「私の望みはただ一つ・・・ あなたがこの世からいなくなってほしいことだけです」
芹沢アンナ「いなくなるって、あの二人は? まさか、あの二人もこのドレスで?」
根岸多江「相変わらず、芹沢さんは頭がいいですね。 もちろん、お友達二人もあの世であなたを待ってますよ?」
根岸多江「さぁ、そろそろ苦しくなってきたのでは? まっ、私の苦しみからしてみれば、あなたの苦しみはまだ序の口でしょうけどね」
「・・・おっ・・・お願い・・・ たっ・・・助け・・・て」
芹沢は苦しみながら、根岸に言った。
根岸多江「私もそうやって、あなたに助けてとお願いしました。 けど、あなたは助けてくれなかった。 だから、私も助けません」
やがて芹沢は倒れ、呼吸困難に陥る。
根岸多江「死のカウントダウンまで、後少しのようですね。芹沢さん、最後に会えて嬉しかったわ。 あの世では、イヤな女にならない様にね」
根岸は、教会の扉を締めカギをかけた。
序盤に抱く疑問点が、話が進むにつれ明らかになると同時に不穏さが増していき、ラストには……ゾクリとしました!読み応えのあるホラーですね!
女性による女性たちへの復讐劇は一味違った恐ろしさがありますね。ありきたりな復讐方法ではなく、相手によって踏みにじられた才能を生かした方法=毒入りパーティードレスという展開に唸りました。「一針一針、心を込めて…」というセリフには思わず背筋がゾワっと…。