7 同情と戦闘(脚本)
〇広い屋上
???「さっきからワシのことを『キモキモ』言いおって!」
久遠 陽菜(くおん ひな)(しゃべった!)
(‥こやつ キモいよお)
蛾夷(がい)「ワシの名は、蛾夷(がい)!」
蛾夷(がい)「緋紗様に、名前を付けていただいたのじゃ~♪」
蛾夷(がい)「ぎゅふふん♪」
玲仁(れいじ)・神狐「陽菜」
玲仁(れいじ)・神狐「気をつけよ‥あやつはもはや、下等妖怪ではない」
久遠 陽菜(くおん ひな)「え? どういうこと?」
玲仁(れいじ)・神狐「あのような下等なあやかしは、通常、言の葉を交わすこともなく」
玲仁(れいじ)・神狐「ただ無益な悪戯を行うのみじゃ」
玲仁(れいじ)・神狐「されど」
玲仁(れいじ)・神狐「あやつは言の葉を結び、地蔵へと変幻自在の術を操っておる」
玲仁(れいじ)・神狐「強き者より名を授かると、位も上がるのじゃ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「そうなの!?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「キモキモって強い‥のかな?」
玲仁(れいじ)・神狐「陽菜、我があのような者に負けるはずなかろう」
久遠 陽菜(くおん ひな)「そ、そっか! うん! だよね!」
蛾夷(がい)「話は終わったかの~? きゃふう♪」
蛾夷(がい)「ワシが凄いんじゃないかって話じゃろ?」
蛾夷(がい)「どんどん話してええよ~♪」
蛾夷(がい)「ワシ、時間稼ぎで来とるからなぁ」
蛾夷(がい)「にしても‥ お前ら、来るのが速すぎるんじゃ~!」
蛾夷(がい)「もっとも~っと地蔵にしたかったのに!」
蛾夷(がい)「でゅふでゅふ♪」
蛾夷(がい)「ワシ、ずーっと山の中でひとりぼっちだったんじゃ~」
〇山道
信心深い少年「おじぞうさま、お参りにきたよ」
信心深い少年「‥なむなむ」
信心深い少年「また来るね!」
〇山道
〇山道
信心深い老女「‥ふぅ‥ふぅ」
信心深い老女「よっこらせっと! お地蔵様‥お参りに来ましたよ」
信心深い老女「山道はキツイけんど、わたしが元気なうちは会いに来ますからねえ」
〇山道
〇山道
ワルガキA「ヤー! 俺がいちばん強いんだー!」
ワルガキA「シャキーン!」
ワルガキA「シャキンシャキーン!」
ワルガキA「お? こんなところに地蔵!」
ワルガキA「きったね! 苔だらけ!」
ワルガキA「俺がカッコよくしてやるぜ!」
ワルガキA「キャハハ! カッコよくなったー!」
〇山道
〇山道
酔っ払い「うぃー‥なんだこの道ぃ」
酔っ払い「近道だって聞いてたのに‥ひぃっく」
酔っ払い「ちっとも近道じゃねーじゃねーかよぉ!」
酔っ払い「‥たくよぉ‥ひっく ‥ん?」
酔っ払い「なんだあ? このふざけた地蔵は‥」
酔っ払い「てめー! 俺のこと馬鹿にしてんのかああ!」
酔っ払い「どーだあ! 俺の蹴りは!」
酔っ払い「ぎゃはははは!」
地蔵(‥さない‥‥許‥さない!)
〇山道
〇山道
緋紗(ひさ)・九尾の狐「んん? これは‥朽ち果てた地蔵か?」
緋紗(ひさ)・九尾の狐「ずいぶんと邪の思念を滞留させておるなぁ」
緋紗(ひさ)・九尾の狐「のお地蔵‥動けるようにしてやろうか?」
緋紗(ひさ)・九尾の狐「地蔵よ‥動きを示せ」
緋紗(ひさ)・九尾の狐「‥美しくないのぉ」
緋紗(ひさ)・九尾の狐「まあよいわ‥わらわは緋紗。 名をやろうぞ」
緋紗(ひさ)・九尾の狐「‥‥お前の名は」
緋紗(ひさ)・九尾の狐「蛾夷(がい)」
蛾夷(がい)「が‥‥い‥‥?」
蛾夷(がい)(はっ! ワシ‥しゃべれとる~!)
蛾夷(がい)「ワシ、ひささまのためなら、なんでもするんじゃ~」
緋紗(ひさ)・九尾の狐「ふふっ、そうか」
緋紗(ひさ)・九尾の狐「では、わらわのために働けよ?」
蛾夷(がい)「はいい~!」
〇広い屋上
蛾夷(がい)「──というのが、緋紗様との出会いじゃ~♪」
蛾夷(がい)「緋紗様は、すごいんじゃ」
蛾夷(がい)「人間を従えておってな!」
久遠 陽菜(くおん ひな)(人間って‥佐恵のことだ!!)
蛾夷(がい)「その人間は、キレイな石を持っとるんじゃが」
蛾夷(がい)「緋紗様は、その石にさわれなくて機嫌が悪くてなぁ」
蛾夷(がい)「あ! でも人間界を気に入ったみたいで」
蛾夷(がい)「その人間の中に潜んで、視察をしとるわ」
蛾夷(がい)「視察した後の緋紗様は、めちゃくちゃ機嫌がいいんじゃ~♪」
蛾夷(がい)「ワシに、塩むすびのお土産をくれるんじゃ!」
蛾夷(がい)「ええじゃろ~?」
蛾夷(がい)「ぎゅっふぎゅっふ♪」
久遠 陽菜(くおん ひな)「ね、ねえ! 佐恵は‥無事、なの?」
蛾夷(がい)「あ゛? 佐恵ってなんだ!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「緋紗のそばにいる人間のことだけど」
蛾夷(がい)「ああ、人間のことか」
蛾夷(がい)「無事、とはどういうことじゃ?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「怪我とかしてないかってことだよ~」
蛾夷(がい)「ふーん‥怪我はなかったと思うぞ」
久遠 陽菜(くおん ひな)「そっか、良かった」
久遠 陽菜(くおん ひな)(キモキモって 意外と普通に会話できるじゃん)
久遠 陽菜(くおん ひな)「あのさ‥昔、酷い目に遭ったのは可哀想だと思うけど」
久遠 陽菜(くおん ひな)「だからって、人間を地蔵に変えちゃうのは違うと思うよ?」
蛾夷(がい)「お‥おおお前!」
蛾夷(がい)「なんでワシの過去を知っておるんじゃ!」
蛾夷(がい)「なんで緋紗様のそばに人間がいることを知っておるんじゃ!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「ええ!? さっき自分でペラペラ話してたじゃん」
久遠 陽菜(くおん ひな)「時間稼ぎで来た、とかさ」
蛾夷(がい)「どぴゃ!!」
蛾夷(がい)「な、な、何で『時間稼ぎ』のことまで‥」
蛾夷(がい)「全部、計画が筒抜けじゃ~!」
蛾夷(がい)「これが、巫女のチカラか!!」
(もしや もしかして)
(こやつ キモキモって)
(利口ではない? おバカ?)
蛾夷(がい)「えらいこっちゃ! えらいこっちゃ! 緋紗様に叱られる!」
蛾夷(がい)「そうじゃ!」
蛾夷(がい)「緋紗様に『痛めつけてこい』って言われとった!」
蛾夷(がい)「行~く~じょ~!!」
〇階段の踊り場
― 数分前 ―
青柳 当麻(あおやぎ とうま)「はぁ‥久遠さんと玲仁様、どこにいるんだろう?」
青柳 当麻(あおやぎ とうま)(今の声!!)
青柳 当麻(あおやぎ とうま)「久遠さん!?」
〇広い屋上
玲仁(れいじ)・神狐「陽菜! 大事ないか!?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「あっぶな~‥顔に頭突きされるかと思った」
久遠 陽菜(くおん ひな)「玲仁、引き寄せてくれてありがとう」
玲仁(れいじ)・神狐「陽菜、あやつの動きをよく見るんじゃ!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「わ、分かった!」
地蔵「・・・」
久遠 陽菜(くおん ひな)「‥‥首だけ?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「止まっ‥た?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「いやあ! 増えたああああ!!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「ひええええ! すっごい音したよ~!」
玲仁(れいじ)・神狐「陽菜! 我から離れるでないぞ!」
久遠 陽菜(くおん ひな)(どうしよう‥逃げるだけで精一杯)
久遠 陽菜(くおん ひな)(玲仁の攻撃が当たらない‥!)
久遠 陽菜(くおん ひな)(私を護りながら、だから?)
久遠 陽菜(くおん ひな)(せっかく覚えた呪文、唱えられないよお!)
〇モヤモヤ
久遠 陽菜(くおん ひな)(術が使えるようになっても‥)
久遠 陽菜(くおん ひな)(‥完全に足手まといだ、私)
〇屋上の入口
青柳 当麻(あおやぎ とうま)「はぁっ! はぁっ!」
青柳 当麻(あおやぎ とうま)「屋上‥この先か!」
〇広い屋上
青柳 当麻(あおやぎ とうま)「久遠さん! 玲仁様!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「青柳くん! 来ちゃダメ!!」
玲仁(れいじ)・神狐「陽菜! 危険じゃ!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「当たった!」
玲仁(れいじ)・神狐「蛾夷(がい)! これ以上の苦痛を味わいたくなければ、退け!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「いやああああ‥‥ ムカデ地蔵~」
玲仁(れいじ)・神狐「我の声は届かぬか‥」
玲仁(れいじ)・神狐「やむを得ん」
玲仁(れいじ)・神狐「雨の恩恵をチカラとせん!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「玲仁の攻撃、効いてそう!」
玲仁(れいじ)・神狐「まだじゃ!」
玲仁(れいじ)・神狐「水幻結界 水木流転」
〇広い屋上
〇広い屋上
青柳 当麻(あおやぎ とうま)「いっけ~! 玲仁様!!」
久遠 陽菜(くおん ひな)「玲仁~! 頑張って~!」
「もしかして ロックオン?」
玲仁(れいじ)・神狐「陽菜! 青柳!」
玲仁(れいじ)・神狐「水龍!!」
玲仁(れいじ)・神狐「・・・」
〇空
〇空
〇広い屋上
「助かっ‥‥た」
玲仁(れいじ)・神狐「二人とも、無事か?」
久遠 陽菜(くおん ひな)「玲仁! ありがとう!!」
青柳 当麻(あおやぎ とうま)「さすがです! 玲仁様!」
青柳 当麻(あおやぎ とうま)「あんな化け物を倒せるのは、玲仁様しかいないですよ!」
青柳 当麻(あおやぎ とうま)「玲仁様に来ていただいて良かった!」
青柳 当麻(あおやぎ とうま)「これで小林たちも、元に戻りますよね!」
青柳 当麻(あおやぎ とうま)「俺、先に戻ります!」
青柳 当麻(あおやぎ とうま)「玲仁様! 本当に、ありがとうございました!!」
久遠 陽菜(くおん ひな)(私、全然役に立てなかったな‥)
目が開いた地蔵怖いですね!😂
妖怪さん、ひどい目に遭ったお地蔵さんだったのか……この流れでは、緋紗に懐いて当然ですね😢胸が痛いです。
キモキモの過去がかわいそうで同情しましたが、それはそれとして、ムカデ地蔵が怖かったです😱
エフェクトがつくと迫力がすごい……!
そして、小林似の地蔵が、といっていたのに、別人だったんですね🤣
ああ、青柳くん。完全に応援に回ってしまった。これはもう他に神系の恋敵でも出てこないと第三者の力で二人を離すのは難しいかな。
そして陽菜は今回の結果には納得してない様子ですね。無茶しないといいのですが。