カルキノス

安藤・R・ゲイツ

第14話 『井戸の底』(脚本)

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〇観測室
  天体観測室の中では、蕗子と正岡が驚いた顔で椅子の上に置かれた絵を見つめていた。
鎧坂蕗子「絵の内容が変わった・・・。 これが凪の心を表す『手がかり』?」
正岡きらり「そうです・・・やっぱりこれですよ!」
正岡きらり「この絵の中に、ここから出るための重要な情報が秘められているはず・・・!」
鎧坂蕗子「・・・・・・」
正岡きらり「凪ちゃんや観測会の皆さんのことが表れてるはずなんです!」
正岡きらり「よく見てみましょう!!」
正岡きらり「夕暮れの・・・どこかの建物の屋上ですね。 雨が降ってるみたい」
鎧坂蕗子「人がふたり、建物の端でなにかしてる? ふたりから離れたところにも数人・・・」
鎧坂蕗子「すみません、何も引っかかるようなことは」
正岡きらり「え、そんなはずは・・・。 絶対に何かヒントがあるはず」
鎧坂蕗子「・・・・・・」
正岡きらり「ど、どうですか・・・?」
鎧坂蕗子「やっぱり私たちや観測会に結びつくようなものは何も・・・そもそもこの場所がわからない」
正岡きらり「場所がわからない・・・?」
鎧坂蕗子「この建物のことです、少なくとも私たちは私の家以外で会うことはありませんでした」
鎧坂蕗子「こんな場所、知らない」
正岡きらり「知らないなんて、そんな・・・」
鎧坂蕗子「ごめんなさい・・・けど、私たちに関わるものが浮かび上がるなら、例えばこの観測室か、あるいは夜空や星座の絵とか」
正岡きらり「で、でも心を表す『手がかり』は『井戸の底』の主人に関わるものって・・・!」
鎧坂蕗子「井戸の底?」
正岡きらり「今、私たちが直面している現象の名前です」
正岡きらり「仕事で調べ物をしていた時に、とある文献で偶然目にして」
鎧坂蕗子「・・・・・・」
正岡きらり「えっと・・・その主人、つまり凪ちゃんは──今、選択をしているんです」
鎧坂蕗子「選択・・・凪が・・・?」
正岡きらり「人は、人生における重大な選択に迫られた時、かけがえのない時を模した精神世界を舞台に、その選択を下す」
正岡きらり「というのが『井戸の底』という現象なんです」
鎧坂蕗子「待って下さい、あの子は今寝たきりなんです。 選択なんてできる状態では・・・」
正岡きらり「えっ・・・? あ・・・そ、そういえば」

〇観測室
醍醐蓮介「正確には自殺未遂なんだけど、まだ目が覚めてないんだ」

〇観測室
正岡きらり「じゃ、じゃあ・・・寝たきりの彼女が無意識のうちに目覚めるか、このまま死んでしまうかを選択してる、とか・・・?」
鎧坂蕗子「・・・!!」
正岡きらり「だとしたら・・・私たちを排除しようとするあの黒いなにかは、凪ちゃんの死にたいという願望の現れなのかも・・・!」
鎧坂蕗子「死・・・!?」
正岡きらり「勘ですけど・・・でもあの黒くて冷たいイメージは、やっぱり死のイメージが当てはまるのかなって」
鎧坂蕗子「・・・なら、黒いなにかと対立する私たちは、生のイメージ・・・?」
正岡きらり「・・・そ、そうです!! 私たちは生のイメージなんだ!」
正岡きらり「生のイメージの私たちは、凪ちゃんの死を止めるために来た・・・」
正岡きらり「つまり、ふたりで凪ちゃんを説得するための方法を見つけて、説得できれば──」
鎧坂蕗子「でも、その方法はどうやって見つけるんですか・・・?」
鎧坂蕗子「それに、もし私たちが失敗してしまったら、あの子は・・・」
正岡きらり「だ、大丈夫!」

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