閉じの巫女

Saphiret

エピソード2(脚本)

閉じの巫女

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〇グラウンドの隅
根木真琴(ねぎまこと)「え・・・」
  差し出された血だらけの手につい、足がすくんでしまう
  夏美は私の視線を追って血濡れた自分の手、そして制服や上履きを見た
浅野夏美(あさのなつみ)「どうかした?」
根木真琴(ねぎまこと)「えっ!」
根木真琴(ねぎまこと)(あんなに出血してこんなに平気な顔しているなんて・・・)

〇黒背景
  その頃──
  奈良の豊岡神社では・・・

〇祈祷場
葉室清正(はむろせいしょう)「・・・」
  宮司の葉室が祭事用に出しておいた皿がふいに割れた
葉室清正(はむろせいしょう)(やはり・・・何かおかしい)
葉室清正(はむろせいしょう)(もしや”疎の封印”に異変が・・・?)
  表情を硬くし、すっと立ちあがると引き出しから硯箱を取りだした

〇日本庭園
  杉の枝に結び付けた文を、三方の上に乗せ
  それを神社の裏庭に静かに置く
葉室清正(はむろせいしょう)(こんな古風なやり方で本当に伝わるのか・・・)
葉室清正(はむろせいしょう)(いや、前兆が順番通りに現れたのだ)
葉室清正(はむろせいしょう)(迷うな)
  背を向け、祭壇の前に戻りご神体に向かって祝詞(のりと)をあげる

〇グラウンドの隅
浅野夏美(あさのなつみ)「なんかお腹すいちゃった 駅前のワッフル、食べに行く?」
根木真琴(ねぎまこと)「夏美」
浅野夏美(あさのなつみ)「うん?」
根木真琴(ねぎまこと)「やっぱりこのまま帰るなんて心配だよ」
根木真琴(ねぎまこと)「病院でなくてもせめてお家の人に迎えに来てもらうか」
根木真琴(ねぎまこと)「保健室の須藤先生に見てもらおうよ」
浅野夏美(あさのなつみ)「えー、平気だけどなあ」
根木真琴(ねぎまこと)「お願い」
浅野夏美(あさのなつみ)「ふふ、真琴の心配性 は~い、分かりましたぁ」
  そのだらけた返事の仕方が、何となくいつもの夏美らしくなくて気になった
根木真琴(ねぎまこと)「あっと、スマホ・・・」
  ポケットを探って、
  さっきスマホを落としたことを思い出した
浅野夏美(あさのなつみ)「ああ、あれ?」
  夏美がすっと手を伸ばしスマホを拾う
浅野夏美(あさのなつみ)「あー、これも汚れちゃったね」
根木真琴(ねぎまこと)「どうしよう・・・ じゃあまず保健室の須藤先生に相談してくる」
  その時、数人の走ってくる足音が聞こえた
根木真琴(ねぎまこと)(あっ、あれは)

〇日本庭園
  祈りを捧げていると────
  背後の裏庭でバサリと羽音がした
葉室清正(はむろせいしょう)(来たか!?)
  振り向きたい欲望を必死にこらえ、祝詞を上げ続けると・・・
  再び大きな羽音が鳴り、すぐに遠ざかっていく
  ゆっくり振り向くと
葉室清正(はむろせいしょう)(文がなくなっている)
葉室清正(はむろせいしょう)「烏が運ぶというのは本当だったのか・・・」
葉室清正(はむろせいしょう)(あとは「木人どの」に託すしかない)

〇グラウンドの隅
  駆けつけてきたのは────
戸田瀬里奈(とだせりな)「ひっ、これマジ!?」
柳川るみ(やながわるみ)「あっ!」
片野晶子(かたのあきこ)「ちょっと、どうだったの?」
片野晶子(かたのあきこ)「あっ!?」
片野晶子(かたのあきこ)「・・・生きてる」
戸田瀬里奈(とだせりな)「晶子、これ、どーゆーこと?」
片野晶子(かたのあきこ)「知るかよ」
柳川るみ(やながわるみ)「信じらんないんだけど・・・」
片野晶子(かたのあきこ)「・・・まっ、いいや」
片野晶子(かたのあきこ)「学級委員さあ」
片野晶子(かたのあきこ)「あんた勝手に柵に寄りかかって、勝手に落ちたんだからね」
片野晶子(かたのあきこ)「死んでないんだから大騒ぎすんなよ」
根木真琴(ねぎまこと)「えっ」
根木真琴(ねぎまこと)(片野さんに押されて落ちたのに!)
  ぐっと拳を握り締める
  けど、やはり震えてしまう
根木真琴(ねぎまこと)(でも、でも・・・言わなきゃ)
根木真琴(ねぎまこと)「あれは 片野さんが掴みかかったせいで・・・」
片野晶子(かたのあきこ)「ああっ!?」
根木真琴(ねぎまこと)「ひっ」
浅野夏美(あさのなつみ)「真琴を怖がらせないで!」
根木真琴(ねぎまこと)「夏美・・・」
浅野夏美(あさのなつみ)「真琴、須藤先生の所へ行ってきなよ」
根木真琴(ねぎまこと)「でも・・・」
浅野夏美(あさのなつみ)「いいから 私、交渉上手なの知ってるでしょ ねっ」
  夏美の、どこか威圧的な笑顔に反論を飲み込む
根木真琴(ねぎまこと)「・・・うん、じゃあ、なるべくすぐ戻る、」
根木真琴(ねぎまこと)「夏美、気をつけて」
浅野夏美(あさのなつみ)「ふふ、ありがとう」
  ひとまず保健室へ急ぐことにした
片野晶子(かたのあきこ)「友情だね~」
浅野夏美(あさのなつみ)「羨ましい?」
片野晶子(かたのあきこ)「全然」
片野晶子(かたのあきこ)「それよりさっき言ったこと、分かっ・・・」
  晶子が言い終わらないうちに、夏美は拾ったスマホを明子のスカートで拭った
片野晶子(かたのあきこ)「何してんだよ!?」
  晶子が振り上げた手を夏美ががしっと掴む
片野晶子(かたのあきこ)「あっ!」
浅野夏美(あさのなつみ)「いいよ、黙っててあげる」
  言うや否や、夏美が晶子の腹部を強く殴りつける
片野晶子(かたのあきこ)「ぐふっ!」
戸田瀬里奈(とだせりな)「うそ」
柳川るみ(やながわるみ)「あ、晶子!」
浅野夏美(あさのなつみ)「お望み通り、私達だけでケリをつけよ?」

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