Xヒーロー

語り部

第20話 きっかけ(脚本)

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〇宇宙戦艦の甲板
  2021年 北海道 余市 日本海沖 掃海艦いずしま 船上
人造兵器 カロル・シヴェータ「最優先目標、斎王幽羅発見。これよりプロトコル『зов весны(春呼び)』を行います」
  そう言うと人造兵器はボクシングの構えをとり、斎王に距離を詰める
  斎王が能力で地面に潜ろうとした瞬間
  潜るよりも早くパンチを打ち込み、斎王を殴り飛ばす
斎王幽羅「う、嘘っ···俺が潜るより『早く殴ってきた!?』そんなのあり···!!?」
  驚いていた斎王に人造兵器は近づきながら喋る
人造兵器 カロル・シヴェータ「出力調整、インストールされた音声を再生。『生きてる事後悔させてやる』」
  若い男の声で再生された音声、斎王はそれが誰のものかわからなかったが
  『じわじわ嬲り殺しにされる』という事を体全身で理解し、立ち上がるふりをして地面に潜る
  人造兵器はその場から微動だにせず、その姿から『森に生える木々』を連想させる程
  一切動かなかった。そんな人造兵器を斎王は壁から飛び出し襲いかかろうとするも
  斎王の方を一切見ず、関節などないかのようなありえない方向に腕を曲げ
  斎王の首を掴み、壁際まで移動する。そして斎王にこう問いかける
人造兵器 カロル・シヴェータ「『今すぐ警察に行き自首をしろ』お前達Xヒーローは目障りだ」
斎王幽羅「くっ···そうしなきゃいけない理由が···あるのか···!?」
斎王幽羅「うっ···ぐぅ···!」
人造兵器 カロル・シヴェータ「今すぐ警察に行って自首しろ、お前達Xヒーローは目障りだ」
  腹部を一発、また一発と殴っては一方的に自首を促してくる人造兵器
  斎王は何とか痛みに耐えながらも、それでも自首する事を拒んでいた
  そして人造兵器はとんでもない事を言い始める
人造兵器 カロル・シヴェータ「命令デリート、音声メッセージ再生」
  再生された音声は女性が激しく抵抗しながら無理やり性行為を行われている様子の物だった
  しかし、斎王はこの声の主である女性を知っていた。
斎王幽羅「なんで··· ··· ···なんでお前らが···?『母さんがレイプされた時の音声』なんて持ってるんだ···?」
人造兵器 カロル・シヴェータ「警察に行って自首をしろ、お前達Xヒーローは目障りだ」
斎王幽羅「ロシア正教が関わっていたのか···?それとも紅色派か···?」
  再度人造兵器が斎王の腹部を殴ろうとした時、斎王の姿が蜃気楼のように揺らぎ始める
人造兵器 カロル・シヴェータ「高エネルギー検出、危険度上昇の為殺害プロトコル実行」
斎王幽羅「あの場にいた20人ちょっとの人間は父さん、婆ちゃん、冷羅さんの3人が皆殺しにしたはずだ。一体誰がこの音声を···?」
人造兵器 カロル・シヴェータ「音声メッセージ再生『生きてる事後悔させてやるよ』」
斎王幽羅「答えろ!!誰が『母さんを殺せと命じた』!!」

〇施設内の道
  海上自衛隊駐屯地 敷地内
凪園無頼「弱すぎてウケんだけどー。そんなんで俺ら捕まえるとかほざいてたわけー?」
一般兵「くっ···なんなんだお前···!その竜巻、能力じゃないのか!!?」
キング「凪園、負傷兵が来たから助けるぞ。そいつらは後回しだ」
凪園無頼「だりーけど斎王が言ってたし、しゃーねーか。はーい、救急箱はここでーす」
一般兵「おのれ、負傷兵にとどめを刺す気か!撃て、撃てェ!!」
  しかし慌てて海士長がそこに割って止めた
清水 海士長「よせ!我々は斎王幽羅に助けられた、今はこいつらは恩人だ!」
一般兵「し、しかし海士長···指名手配犯ですよ···!?何かの罠では···」
清水 海士長「たとえ罠でも『負傷兵を逃がすよう我々を助けた』事実は変わらん」
  しかし、そこにキングが割って入る
キング「てめェ!斎王1人にしてきたのか!?ふざけんな、クソアーミーが!!」
キング「あの船に『何がいる』かわかってんのか!?喧嘩王のクローン兵器なんだぞ!!?」
一般兵「黙れ!極悪猟奇殺人犯の仲間が!!灰色の悪魔なんぞ死んで当然の男だ!!」
  その言葉を聞き、凪園は普段見せたことの無い鬼の形相で一般兵を睨みつける。
  しかしキングはそれを止め、自分たちだけで斎王を助けに行く事を提案。直ぐ行動に移そうとするも
清水 海士長「岩永二等兵!口を動かす暇があるなら負傷者を運び、今すぐ医療処置をしろ!急げ!」
清水 海士長「それとあんた達!悪いが自衛隊で再度部隊を編成して出撃する、それまで待ってもらおう」
  そしてこの言葉を聞いた凪園は声を荒らげながら海士長に喋りかける
凪園無頼「うぜェんだよクズがっ!こうしてる間も斎王は戦ってんだよ、てめェらが居ても邪魔なんだよクソども!」
凪園無頼「メディアに踊らされてるだけの能無しが、物事を見抜く目も無ェ奴が偉そうにすんなクズ!」
キング「行くぞ凪園、あっちは3人に任せて俺らは軍艦に向かうか」
清水 海士長「お、おい待て!行くな!クソっ···今すぐ曹長に報告せねば···」

〇施設内の道
  反対側 鸞、フェード、エンチャントサイド
フェード「残るはお前だけだ、趙。奥の手があるならさっさと出すんだな」
  フェードの足元には20人近くの中国人が倒れており、傷こそ負っているが死には至らないものであった
  残る1人に対しフェードは環首刀を突きつけ、そして趙と呼ばれる男はそれに答える
紅色派の中国人「ちっ···使えない奴らだ。まぁいい、お望み通り奥の手見せてやるよ」
  男はそう言うと羽根扇を取り出し、構える。
  フェードは素早く懐に入り、切り裂こうとするも
  男が羽根扇を振ると、フェードはその場で転倒しすぐさま距離をとる
紅色派の中国人「どうした転んだりして。『運が悪かった』んだろうな~?」
フェード(『運』··· ··· ···?あの羽根扇は『孔明扇』、諸葛孔明は運で乗り切ったラッキーマンではない)
フェード(なんだ···なんの能力なんだ···?)
  孔明扇とは名前の通りかの三国志の軍師『諸葛孔明』が手にしていた、羽根扇である
  一般的には羽根扇と呼ばれるが中国の一部地域では今でも孔明扇という名前が使われているのである
紅色派の中国人「固まっちまってどうした?来ないならこっちから行くぞ!!」
  男は懐から銃を取り出し、フェードに向かって射撃。
  フェードは当然のように弾丸を切断し、再び距離を詰める。
フェード「現実を引き裂け『ゲート・ディメンション』!!」
  フェードの身につけてるグローブが紫色輝く。フェードは異次元の開口を作り出そうと環首刀を振るおうとした瞬間
  男はまた羽根扇を振るう。今度はフェードが作り出す異次元の開口がなぜか極端に小さくなっていた
フェード「なっ···異次元の開口が『開きずらくなった』!?こんな事今まで一度もなかったはず···!」
  一瞬、気を取られたフェードに向かって男は銃を撃つ。
  咄嗟にフェードは避けようとするも肩と脇腹に銃弾を受けてしまう
フェード「素人が···『腹部と心臓』を狙ったな···?素人がよく狙う場所だ、避けやすくて助かったよ···」
紅色派の中国人「の割には被弾したなフェード。弾丸は抉ったか?それとも掠めたか?どっちにせよ」
紅色派の中国人「この『孔明扇』さえあれば、お前の心臓を撃ち抜くのもわけないがな」
フェード(クソッ···鸞は今エンチャントの方を手伝っている、キングと凪園はいつの間にかいなくなってるし···)
フェード(まずい···早く決着を付けないと、失血で自滅しかねない···)

〇施設内の道
  対岸付近 エンチャント、鸞サイド
  エンチャントと鸞は硬直状態にあった。はたから見ればイヴァン司教とただ向かい合ってるように見えるが
  実際付近に行ってみると、鸞とエンチャントはイヴァン司教の空間魔術により
  イヴァン司教との距離が『5km』程離れていた。空間魔術によりイヴァン司教と2人の間の空間が歪んでいるのである
鸞「一体どういう原理でこうなってるんだ···?」
エンチャント魔導法士「知らん!ワシが教えていない魔術だ、クソっ···独学かはたまた教えてもらったか···とにかく奴に近づかねば!」
  突如目の前にイヴァン司教が現れ2人は構える。イヴァン司教はニコニコとしながらゆっくり近づく
鸞「攻撃を誘ってるつもりだろうが、俺はそこまで馬鹿じゃないぞ?『鳥獣忍術 鴕鳥』!!」
  鸞は術をかけたと同時に走り出す。イヴァン司教もそれを見てなぜか釣られて走り始めた
鸞「訳が分からないって顔だな、当然だ『ダチョウが何か考えて走る事はない』んだからな」
  勝ちを確信しエンチャントが魔法陣を構えたその時
  エンチャントに異常重力が働き地面に叩きつけられる。上を見上げると先程鸞と一緒に走っていたはずのイヴァン司教がそこにいた
エンチャント魔導法士「複製魔術か、ワシが読んでいないと思ったか?」
  にやっと笑みを浮かべ普通にエンチャントは立ち上がる。しかしイヴァン司教は驚く様子を見せなかった
エンチャント魔導法士「まぁ当然の反応だ、重力は星の中心に引っ張られる力だがその正体は地球の『遠心力と引力の合力』」
エンチャント魔導法士「当然どちらかが弱ければどちらかにエネルギーが負け、重力をも克服できる」
エンチャント魔導法士「バスケットボールを指先で回すあれも、回転力が弱ければ引力に負け転げ落ちる」
エンチャント魔導法士「お前に教えていたはずだ『絶対』はありえないと。さて···終わらせるぞイヴァン司教」
  魔法陣を作り出し、そこから作り出した鞭でイヴァン司教を拘束しようとするエンチャント
  しかし、それは起こった。
イヴァン司教「空間魔術は絶対無敵です。それをお見せしましょう」
  イヴァン司教は自身を真っ二つに裂き、無理やり攻撃を回避して見せた
エンチャント魔導法士「っ··· !空間自体を裂いて回避したのか···!?どこで覚えたそんな事!!」
イヴァン司教「ふふっ···あなたと同じく『独学』ですよ?私は貴方を越えたいんですエンチャント魔導法士」
エンチャント魔導法士「ワシを···越えるだと···?」
イヴァン司教「えぇ、かつて喧嘩王と同じ時代を生きた魔術師。三代目の時代に行った戦闘は目を見張るものも多かった」
イヴァン司教「私もそんな姿に憧れ魔術協会に入り、貴方の下で魔術を学ぶことにしました」
イヴァン司教「貴方は当時から多くの魔術師を教育していた。私は1番になりたくて必死に学んだ」
イヴァン司教「しかし貴方は私に才能があると言いながら、他者に目を向けあまつさえ『あいつ』を冠位十階の二位に推薦した」
イヴァン司教「なぜ···なぜ私を一番にしてくれなかったのですか···!」
  エンチャントはイヴァン司教に話始める
エンチャント魔導法士「お前は『向上欲』が強すぎる、だからそのセーブ役としてあいつを冠位十階の二位にしてお前を三位に収めた」
エンチャント魔導法士「お前が二位の座につけば次に狙うはただ1つ『魔術法皇』のみ。魔術法皇になる方法は1つ」
エンチャント魔導法士「『先代法皇の死』のみだ、お前はそのまま行けば当時の魔術法皇を殺してでもその地位を手に入れているだろう」
イヴァン司教「っ···!そんなの決めつけです!それに私以上の野心家はいました、スティーブやロイド、ハミルトンも···!」
エンチャント魔導法士「そいつらが『法の外側』に行くと確信はあるのか?」
エンチャント魔導法士「確かにスティーブやロイド、ハミルトン達は野心家だ。口を開けば地位や名誉の事ばかりだった」
エンチャント魔導法士「だがその為に他人を蹴落とす事をしなかった。お前はどうだ?」
  詰めるエンチャントに対しイヴァン司教は返した
イヴァン司教「Blood, Toil, Tears and Sweat(犠牲なくして勝利なし)。自身の成長の為の踏み台ですよ」
イヴァン司教「貴方も今までそうしてきたのでしょう?エンチャント先生」
エンチャント魔導法士「確かにワシはお前以上に多くの人間を踏み台にしたかもしれん、だがな···」
エンチャント魔導法士「お前のように『そのことに悔いる心がない』状態ではないわ。寝る前は必ず主に祈りを捧げるし」
エンチャント魔導法士「毎日欠かさず過去の事を主に懺悔する。お前は礼拝もミサも殆ど来なかった、自身の力の事だけ考えていた」
エンチャント魔導法士「ワシはお前より罪の数は多いが『赦しを乞う』姿勢を主に伝え続けている」
エンチャント魔導法士「お前は『踏み台にした者たちへ何かした事はあるのか?』」
  エンチャントのその一言を聞き、イヴァン司教は召喚魔術を使い『剣』を作り出す
イヴァン司教「どうしても私の力を認めたくないらしいですね。もういいです、私はこれから貴方を殺し『虚の魔術師』を名乗ります」
エンチャント魔導法士「ふん、何が虚の魔術師だ。中身は空っぽですってアピールしたいのか?」
エンチャント魔導法士「来い『イヴァン・スロヴェーコフ』。お前の魔術じゃ勝てないって教えてやるよ!!」
  To Be Continued··· ··· ···

次のエピソード:第21話 糸通し

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