4 閑炎(脚本)
〇空きフロア
《ギフト》にて──
タケル「タケルといいます よろしくお願いします」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「今日は新しい仲間が来てくれました 遠くからありがとう!」
野村おじさん「よろしくね〜 タケル君」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「そう固くならないで みんな同じ異能者だよ」
タケル「はい・・・ 凄いですねこんなに」
野村おじさん「周りにそうそういないもんね 遠くから通ってる人も沢山いるよ」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「聞きたいことがあったら遠慮なく聞いてね」
タケル「聞きたいこと・・・」
タケル「・・・」
タケル「あの、皆さんは・・・」
タケル「生まれてきた罪悪感はありますか?」
「・・・」
野村おじさん「罪悪感か・・・僕は──」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「野村さん・・・」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「先に全部言ってごらん・・・」
タケル「・・・」
タケル「なんで異能者なんかに生まれきたんだろって 両親は僕に優しいけど・・・」
タケル「それに応えられない自分が不甲斐なくて 勉強もスポーツも大して出来ないのに」
タケル「異能者ってだけでずっと不利で・・・ 周りからも疎まれて」
タケル「こんなんじゃ進学も就職も・・・」
タケル「死ねたらいいのに・・・ そんな度胸もない」
タケル「それに死んだら母さんが・・・」
タケル「どんな顔するだろうって思うと──」
タケル「うぅ・・・」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「・・・」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「一つだけわかったよ・・・」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「タケルは優しいな!」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「その心はいたって普通だよ」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「腐って異能を悪用する輩もいる でもタケルはそうじゃない」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「自分よりも両親を想ってきたんだね・・・」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「良い親御さんなんだろうね! でも自分を卑下しないで欲しい」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「俺達は堂々と生きていいんだ 皆と同じ様に普通に生きてやるんだ」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「そうすればいつか世界も気付いてくれる」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「それに・・・ 死にたくなってもいいよ」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「そんなの俺達もしょっちゅうさ ねっ? 野村さん!」
野村おじさん「そうだね〜 そんな時はヤケ酒だぁ」
タケル「僕、未成年なんでお酒飲めませんよ」
タケル「アハハ」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「もし死にたくなったらいつでもおいで」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「あっ でも遠いんだもんな・・・」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「そうだ!電話して!いつでも! 24時間営業だから俺!」
タケル「はい ありがとうございます」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「もっと年の近い子も呼んでこよう」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「梓真ってのもいるんだけど・・・ 姉が異能者ってのもあって偏見ないんだ」
タケル「その人は異能者じゃないんですか?」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「違うよ 今度会わせてあげる」
野村おじさん「他の子も呼んで来るんじゃなかったの?」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「そうだった」
野村おじさん「良い奴でしょ?」
タケル「そうですね あの・・・ヒデさんのステージって?」
野村おじさん「ステージ4・・・ それに最近、婚約者を亡くしてね」
タケル「えっ! それなのにあんなに・・・」
タケル(ステージも僕より上だ・・・)
野村おじさん「《ギフト》って名前はヒデが付けたんだ 前はもっと堅苦しい名前でね」
野村おじさん「異能はギフトなんだっていう綺麗事じゃなくてね」
野村おじさん「いつか異能がギフトと思える時代を作るんだってさ」
野村おじさん「僕らの世代じゃ無理かもだけど ヒデの気持ちを繋いでいけたらって・・・」
タケル「なんか良いですねそれ」
〇黒
〇川沿いの公園
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「・・・」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「ごめん 待った?」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「全然! 今日は誘ってくれてありがとう」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「じゃあ映画行こっか」
〇おしゃれなリビングダイニング
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「梓真! メッセージ見たか?」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「今見た これ映画の?」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「二人分用意したから憂華ちゃんと行ってくれないか?」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「なんで?」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「異能者は一緒に映画行けるなんてこと中々ないんだよ」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「彼女映画好きだから 一緒なら幼馴染の梓真がいいかなってさ」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「それとも彼女いるのか?」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「い、いないけど・・・」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)「じゃあいいじゃん」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「わかったよ」
健御 公英(タケミ ヒロヒデ)(梓咲が亡くなってからどこか暗いから 気分転換になればいいんだが・・・)
〇映画館のロビー
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)(楽しんでもらえるといいけど・・・)
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「飲み物とかいる?」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「うん、そうだね」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「買ってくるよ」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「自分のは私出すよ」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「いいよ任せて! それに俺が買った方が安いから」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)(優しい〜)
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)(でも・・・)
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)(梓咲さんといたから・・・ 対応が染み付いてるのかな)
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)(梓真君だってステージ2なのに・・・)
〇映画館の座席
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「誰かと映画館に来るの久しぶりだ」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「私も でも梓真君もなんて意外・・・」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「異能者じゃなくても 友達少ない奴はいるんだよ」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「友達少ないんだ 私も《ギフト》の人達ぐらいかなぁ」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「映画ならいつでも付き合うよ!」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「映画じゃなくても・・・」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「ごめん、なんて?」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「あっ 始まるね」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「・・・うん」
〇映画館の座席
映画館の客B「ねぇ今のどういう事?」
映画館の客A「あれはさ──」
(うるさいなぁ・・・)
「えっ!? きゃっ!?」
隼瀬 天馬(ハヤセ テンマ)「じゃかましいねんお前ら」
隼瀬 天馬(ハヤセ テンマ)「静かにせぇやボケ」
映画館の客A(なんだよコイツ)
隼瀬 天馬(ハヤセ テンマ)(それにしてもこの映画・・・ 中々にシリアスやな)
隼瀬 天馬(ハヤセ テンマ)(あんまり初デートでは観るもんやない ジャンルやど)
(静かになった・・・)
〇寂れた雑居ビル
〇レトロ喫茶
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「おもしろかったね」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「うん 犯人が意外だったね」
存外、憂華との時間は楽しかった・・・
〇学校の廊下
そういえば俺は・・・
同級生の女子「あっ、梓真・・・」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「明日どうする?」
同級生の女子「いや、行けなくなった・・・かな」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「え、なんで?」
同級生の女子「・・・」
同級生の女子「お姉さん・・・異能者なんだってね」
同級生の女子「なんで隠してたの?」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「別に隠してた訳じゃ・・・」
同級生の女子「私の家・・・ そうゆうの厳しいからさ」
同級生の女子「先がないんだったら もういいかなって・・・」
異能者との方が上手くいられるんだった・・・
〇レトロ喫茶
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「晩ごはん食べて帰る?」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「あ、どうしよっか・・・ どこか行きたいとこある?」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「私がいると外は居心地悪くなること多いから」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「家に来ない?」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「えっ?」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「あっ・・・ 私、施設というか教会に住んでるから」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「ほら私、両親に捨てられちゃったでしょ?」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「覚えてない? 親代わりのレオンさん」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「覚えてないかも・・・」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「子供のとき1回会ったきりだもんね 見たら思い出すかも」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「もしよかったら連れておいでって 今頃、晩ごはん作ってそう」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「じゃあ行ってみようかな」
鎮守 憂華(チンジュ ユウカ)「やった! その前に御手洗に行ってくるね」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「・・・」
???「おい、梓真!梓真!」
甕速 梓真 (ミカハヤ アズマ)「なんで居るんだ」
隼瀬 天馬(ハヤセ テンマ)「たまたま見かけてん なんかアシストいらんか?」
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ささやかな日常に揺らぐ復讐心。周りにいる人たちが温かいのはアズマにとって救いなのか、それとも障害でしかないのか。できればアズマの救いであればと願うばかりです。公英が特に良い奴過ぎますね。苦労人なのに、誰よりも良い人で😢そして、天馬。良いキャラですよね。彼がいると場面が和みます。
急すぎる神父の圧!
私もそちら側だ、冗談になってないし、冗談じゃあないんだろうなぁ。
相変わらず言葉のやり取り、とくに集会所のやり取りが温かくて癒されます。
公英、頼むから死ぬなよ!死にそうなんだよ君は。
次回も楽しみにしてます。
第一話からずっと重苦しい雰囲気に包まれていた今作でしたが、幼馴染との映画館デートということでほのぼのとした気持ちで見ることができました
今日のように穏やかな日々を過ごして欲しいと思ってしまいますが、アズマとしてはそうもいかないのでしょうね😓
復讐の決心が揺らいでしまうことを恐れている所をみるに、アズサが殺されることさえなければ優しい青年だったんだろうなと哀しい気持ちになります😔