指先に魔法はいらない

星月 光

chapter03 愛憎の泥濘(脚本)

指先に魔法はいらない

星月 光

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〇怪しげな酒場
「カンパーイ!」
「かーっ、うめえ!」
「どんどん持って来ーい!」
船乗り「・・・・・・」
「どうした?」
船乗り「・・・こんなことしてていいのかな」
船乗り「ダイン公の依頼では、海に捨てろって」
「お坊ちゃんを殺したくないって おまえも言ってたじゃねえか」
船乗り「そうだけど・・・」
「貴族のお坊ちゃんが あの島で生き残れるわけねえ」
「オレたちが手を下さなくても ならず者か魔物の餌食になるさ」
船乗り「でも・・・」
「黙ってりゃわかんねえって」
「このことは他言無用だぞ」
船乗り「わかってるよ」
「さ、どんどん飲むぞー!」
船乗り(あの少年、ピオノノだったっけ)
船乗り(サントエレン島でどうしてるかな・・・)

〇西洋の市場
ピオノノ・ダイン「キャベツと」
ピオノノ・ダイン「オニオンと」
ピオノノ・ダイン「スクイ―ド・・・」
ピオノノ・ダイン「ひっ・・・!」
サフィ「すごーい! 動いてる!」
マーサ・ミラー(島民)「これ、王都の人は食べないのよね」
ピオノノ・ダイン「たっ、食べ物なのか!?」
マーサ・ミラー(島民)「揚げても焼いてもおいしいのよ」
ピオノノ・ダイン(魔物じゃなくて・・・?)
サフィ「買い物、これで終わりですか?」
ピオノノ・ダイン「あ、ああ」
サフィ「アストリッドのところに戻りましょっか」
ピオノノ・ダイン「うん・・・」
ピオノノ・ダイン(今日からの宿泊場所 アストリッドさんに相談してみよう)
ピオノノ・ダイン(ボクはともかく、サフィは 野宿ってわけにはいかないし)
サフィ「はい」
ピオノノ・ダイン「え?」
サフィ「荷物、持ちますよ」
ピオノノ・ダイン「いや、ボクが持つよ」
サフィ「だってピオは剣を持ってますから」
サフィ「もしなにかあったとき 剣を振れないと困りませんか?」
ピオノノ・ダイン「確かに・・・」
ピオノノ・ダイン「じゃあ、頼んでもいいか?」
サフィ「はい!」
ピオノノ・ダイン「昨日の奴らが来ても 今度こそ遅れは取らない」
ピオノノ・ダイン「だからボクから離れないでくれよ」
サフィ「は・・・はいっ」
ピオノノ・ダイン「・・・なんて」
ピオノノ・ダイン「魔術もまだ使えないし 剣術だって中途半端なボクが言っても」
ピオノノ・ダイン「安心なんかできないよな・・・」
サフィ「・・・心配なことがあるとすれば」
サフィ「ピオがまた傷つくんじゃないかって」
サフィ「だから無茶はしないで 危なくなったら逃げましょう!」
サフィ「負けるが勝ち、です!」
ピオノノ・ダイン「う・・・うん」
サフィ「さ、行きましょ!」

〇立派な洋館

〇貴族の応接間
クレメント・ダイン「首尾はどうだ」
執事長フランク・カッター「船乗りたちに金を握らせ 始末するよう命じました」
執事長フランク・カッター「ピオノノ様は今ごろ 海の底で眠っておられるでしょう」
執事長フランク・カッター「しかし、本当によろしかったのですか?」
執事長フランク・カッター「ご子息を手にかけたことが知れれば もはや弁明の余地はありますまい」
クレメント・ダイン「スペルロイドは息子ではない」
クレメント・ダイン「わたしの子どもは モルゲッタが生んだ子だけだ」
執事長フランク・カッター「さようでございます」
クレメント・ダイン「あれの正体を知るのはごく一部」
クレメント・ダイン「スペルロイドを養子に迎えたなど 世間に知られるわけにはいかぬ」
執事長フランク・カッター「心得ております」
クレメント・ダイン「念のため、船乗りどもも始末しろ」
執事長フランク・カッター「承知いたしました」
執事長フランク・カッター「ジュリアン様はいかがなさいます」
執事長フランク・カッター「ジュリアン様はピオノノ様を 慕っておられますゆえ」
クレメント・ダイン「ジュリアンはまだ子どもだ いくらでも言いくるめられる」
クレメント・ダイン「ナタリア姫のこともある あれのことは早々に忘れるはず」

〇おしゃれな居間
ピオノノ・ダイン「おじゃまします・・・」
サフィ「アストリッド、いませんね?」
ピオノノ・ダイン「どこかに出かけたのかな」
アストリッド「ああ、戻ったんだ」
サフィ「買ったもの、どうします?」
アストリッド「キャベツとオニオンは そこの木箱に入れといて」
アストリッド「スクイードは・・・そうだね」
アストリッド「半分はフリットで もう半分はマリネにしようか」
ピオノノ・ダイン「アストリッドさん、相談が・・・」
アストリッド「じゃ、作っといて」
アストリッド「主食は昨日作ったカレーでいいよね」
ピオノノ・ダイン「いや、あの・・・」
アストリッド「居候なんだから家事ぐらいやってもらうよ」
アストリッド「ただでさえ、魔術を教えるための 時間も取らなきゃなんないのに」
アストリッド「おまえらの食事まで面倒見ろっての?」
ピオノノ・ダイン「ここに住まわせていただけるのですか?」
アストリッド「住み込みのほうが効率がいいからね」
アストリッド「他に行きたいところがあるなら別だけど」
ピオノノ・ダイン「ありがとうございます・・・!」
アストリッド「部屋は2階に用意したけど 掃除は自分でやりなよ」
アストリッド「2部屋のどっちを使うかは おまえらで相談して決めろ」
サフィ「あたしも住んでいいんですか?」
アストリッド「部屋、余ってるから」
サフィ「ありがとう!」
サフィ「アストリッドっていい人ですね」
アストリッド「・・・バカなこと言ってないで さっさと作り始めてくれる?」
ピオノノ・ダイン(よかった・・・)
サフィ「頑張っておいしい料理、作りましょ!」
ピオノノ・ダイン「う、うん」
ピオノノ・ダイン(・・・どうしよう)
ピオノノ・ダイン(料理なんてやったことない・・・)

〇L字キッチン
サフィ「ピオ 先に軟骨と内臓を取らないと」
ピオノノ・ダイン「そ、そうなのか」
ピオノノ・ダイン「ひっ!」
ピオノノ・ダイン「うっ・・・動いてる 気持ち悪い・・・!」
サフィ「それ、あたしがやるから ピオは野菜を切ってくれますか?」
ピオノノ・ダイン「ご・・・ごめん」
ピオノノ・ダイン(野菜なら切れるよな)
サフィ「それだと指、切っちゃいますよ」
サフィ「切るときは猫ちゃんの手です!」
ピオノノ・ダイン「猫ちゃん?」
ピオノノ・ダイン「・・・こうかな」
サフィ「そうそう!」
ピオノノ・ダイン「詳しいんだな」
サフィ「記憶を失う前はコックさんだったんです」
ピオノノ・ダイン「そうなのか?」
サフィ「たぶん」
サフィ「ついでにスープも作りましょっか」
サフィ「次はこれを切ってくれますか?」
ピオノノ・ダイン「うん・・・」

〇貴族の応接間
ジュリアン・ダイン「フランク マーサが呼んでいたよ」
執事長フランク・カッター「かしこまりました すぐに参ります」
執事長フランク・カッター「旦那様、失礼いたします」
ジュリアン・ダイン「お疲れではありませんか、父上」
ジュリアン・ダイン「兄上が冤罪で流刑に処されるなんて 心労がたたるのも無理はありません」
ジュリアン・ダイン「でも、きっと兄上は 魔術を覚えて帰って・・・」
クレメント・ダイン「ジュリアン」
クレメント・ダイン「おまえはピオノノを恨んでいないのか?」
ジュリアン・ダイン「・・・なぜ、わたしが兄上を?」
クレメント・ダイン「おまえはナタリア姫が好きなのだろう?」
クレメント・ダイン「ダイン家の現状を鑑みれば ナタリア姫との婚姻は望めまい」
ジュリアン・ダイン「・・・今はナタリア様のことより ダイン家のことを考えねばなりません」
ジュリアン・ダイン「父上、どうか無理はなさらないで」
ジュリアン・ダイン「母上が亡くなり、兄上がいなくなって このうえ父上までと思うと・・・」
クレメント・ダイン「・・・・・・」
ジュリアン・ダイン「そうだ!」
ジュリアン・ダイン「少し休憩して、お茶にしませんか?」
クレメント・ダイン「必要ない」
ジュリアン・ダイン「そうおっしゃらずに」
ジュリアン・ダイン「母上がお好きだった オリオーラ産の茶葉が手に入ったのです」
クレメント・ダイン「・・・ではいただこうか」
ジュリアン・ダイン「はい!」

〇海辺

〇おしゃれな居間
サフィ「いただきまーす!」
サフィ「おいしー」
アストリッド「スープにスクイード入れたんだ」
サフィ「頭が余ったので入れてみました!」
サフィ「どうですか?」
アストリッド「食感もいいし、味も悪くない」
アストリッド「ほんとに料理人だったんじゃない?」
サフィ「えへへ」
ピオノノ・ダイン「・・・・・・」
サフィ「どうしたんですか?」
ピオノノ・ダイン「いや、えっと」
ピオノノ・ダイン(あの不気味な生き物を食べるのは ・・・ちょっと勇気がいるな)
ピオノノ・ダイン(なんてサフィには言えないし)
アストリッド「スクイードに抵抗があるってわけ?」
サフィ「そうなのですか?」
ピオノノ・ダイン「抵抗というか・・・その」
アストリッド「ま、この島の外じゃ食べないしね」
アストリッド「――それとも」
アストリッド「大貴族のお坊ちゃんには 刺激が強かったのかな?」

〇華やかな裏庭
ジュリアン・ダイン(父上、喜んでたな)
ジュリアン・ダイン(・・・やはり父上は 母上を愛しておられたんだ)

〇華やかな裏庭
ジュリアン・ダイン「母上のお話を聞かせていただき ありがとうございます」
ジュリアン・ダイン「ときどきはこうして 母上とのお話を聞かせてください」
クレメント・ダイン「・・・よかろう」
ジュリアン・ダイン「よかった・・・」
ジュリアン・ダイン「頑張っておいしいお茶を淹れますから!」
クレメント・ダイン「ああ、楽しみにしているぞ」

〇華やかな裏庭
ジュリアン・ダイン(脳天気なものだな)
ジュリアン・ダイン(自分は長男をないがしろにしていたくせに)
ジュリアン・ダイン(次男に毒を盛られているとは 夢にも思っていないようだ)
ジュリアン・ダイン「待っててくださいね、兄上」

〇おしゃれな居間
サフィ「大貴族・・・?」
アストリッド「ワーズワース王家に仕える三大貴族 ダイン、ポルト、サイラス」
アストリッド「こいつはその一角 ダイン家のお坊ちゃんってわけ」
ピオノノ・ダイン「なぜ・・・」
アストリッド「弟から手紙が届いた」
ピオノノ・ダイン「ジュリアンから?」
ピオノノ・ダイン「・・・あっ」
アストリッド「なんとしても兄を助けたいから 力を貸してほしいってさ」
アストリッド「兄想いの弟がいて幸せだね?」
ピオノノ・ダイン「ジュリアンがそんなことを・・・」
サフィ「えっと・・・ 偉いおうちの人ってことですか?」
アストリッド「ま、そうだね」
サフィ「それなのにスペルロイドなんですか?」
アストリッド「確かにね」
アストリッド「ダイン家の長男ピオノノ・ダインは 当主クレメント・ダインの庶子」
アストリッド「そういうことになってたはずだけど」
ピオノノ・ダイン「・・・ええ」
ピオノノ・ダイン「ボクの正体を知るのは、王宮でも一部です」
ピオノノ・ダイン「ボクが無罪を証明すれば ボクがスペルロイドだと知られてしまう」
ピオノノ・ダイン「だから父は、ボクを流刑にするよう 陛下に進言したんです」
サフィ「どうして・・・!? お父さんなんでしょう?」
ピオノノ・ダイン「ボクはスペルロイドだ」
ピオノノ・ダイン「ボクはあの人の・・・息子じゃない」
サフィ「でも・・・!」
アストリッド「・・・わからないな」
アストリッド「お貴族様ってのは 名誉を重んじるものじゃないの?」
アストリッド「スペルロイドを庶子ってことにして 不義密通の罪を被ってまで」
アストリッド「ダイン公はなにを守ろうとしてるの?」
ピオノノ・ダイン「・・・母です」
アストリッド「モルゲッタ・ダイン?」
アストリッド「10年前に死んだ人間をどう守るって?」
ピオノノ・ダイン「17年前の事件―― 陰謀と言ったほうが正しいかもしれない」
ピオノノ・ダイン「苦境に立たされた母を守るため 父は多くのものを犠牲にした」
ピオノノ・ダイン「ボクが・・・いや」
ピオノノ・ダイン「ボクたちが製造されたのも、そのためです」

次のエピソード:chapter04 運命の足音

コメント

  • こんばんは!
    ピオノノとフィアの仲が少しずつ縮まっていくところはとても癒やされますね

    コックさん!それは料理が得意なわけですね

    世界観の作り込みがしっかりとしていて楽しいです

  • 場面ごとに変わる空気感、可愛らしいキャラビジュアルの口から紡がれるシビアな現実、そしてダイン家😱 もう読むのが止められません😊
    回を重ねるごとにジュリアンくんの恐ろしさが…😰

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