制作秘話のフルコース

オカリ

デザート「天翔ける稲荷さま」(脚本)

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〇古びた神社
じいや「蝉時雨が聞こえておりますね」
じいや「タップノベルのセミはミンミンゼミ よく蝉の鳴き声として使われる蝉です」
じいや「ちなみにオカリ氏が好む蝉は ツクツクボウシ」
じいや「楽曲のように続く一連の鳴き声、たまに 鳴き下手なセミが聞こえるのも乙ですね」
じいや「そんな夏の風物詩である蝉の声── ヒグラシなどは夕涼みに鳴く印象ですが」
じいや「時たま早朝、朝5時頃に鳴く ヒグラシもございます」
じいや「もし昔の命名者が、日暮れではなく 夜明けに聞いたのだとしたら」
じいや「『ヒグラシ』ならぬ『ヨアカシ』 ──なんて名前になったかもしれません」
じいや「デザート「天翔ける稲荷さま」 手に取って頂き感謝いたします」
じいや「本フルコースの最後を締める本作は、 オカリ氏の中で最も評価された作品です」
じいや「そうですね・・ シナリオ単体では「モミの木」が 上手くまとまったと感じますが」
じいや「心に残る傑作はメテオシスターが (将来的に)なる予定ですが」
じいや「スチル、演出、キャラクター含め 作品としてのトータルの完成度なら」
じいや「おそらく「稲荷さま」が作品中で 頭一つ抜きん出ているのかと」
じいや「まさにオカリ氏の当時の 集大成でありました」
じいや「ちなみに、こちらの表紙・・ よく見るとですね」
じいや「ペットボトルロケットの先端が 御神体に換装済みであったりします」
じいや「読了後に意味がわかる── そんな表紙にございました」
じいや「・・・・・・それにしても」
じいや「猛暑が過ぎますね 場所を変えましょうか」

〇おしゃれな食堂
じいや「ひと時ばかり涼んだ所で──」
じいや「まずはコンテストからお話しします」
じいや「「天翔ける稲荷さま」は 2022年秋に開催された“お祭り”こと 「トリプルコラボコンテスト」」
じいや「通称「トリコン」に投稿し 最優秀賞を頂いた作品です」
じいや「2022年「秋」と書いたのには 理由がございまして」
じいや「本コンテスト、TapNovelでの 募集期間は2022年11〜12月です」
じいや「しかしながら、その物語に出演する 「美少女」キャラのコンテストも 並行して開催しておりました」
じいや「イラスト募集期間は9月から 10月20日までであったため」
じいや「2022年9月から年末にかけては ずっと「トリコン」期間だったのですね」
じいや「さて、こちらのコンテスト トリプルの名の通り──」
じいや「「絵師(GENSEKI)」 「作家(TapNovel)」 「声優(viviON)」の3者が共催」
じいや「「美少女」の立ち絵イラストを募り、 作家はそのキャラで物語を紡ぎ、 そして受賞作には声が吹き込まれる・・」
じいや「まさに「お祭り」と称するに 相応しいコンテストでした」
じいや「ちなみに従来コンテストは全て冒頭に 「第1回」が付いておりますが」
じいや「本コンテストには付いておりません 「1回きりのお祭り」なんだとか」
じいや「怪人コンやキュン、ひと駅等には 「第1回」とありますが・・ 第2回の可能性はあるのでしょうか?」
じいや「おそらくありませんが、さておき」
じいや「そんなトリコンに参加したオカリ氏ですが その前に一つだけ、「参加を諦めた」 コンテストがございました」
じいや「2022年8〜10月に大日本印刷と 共催したコンテスト・・ 「第1回タテ読みカラー漫画  シナリオコンテスト」です」
じいや「こちら名前の通り最優秀賞作品は 原作として漫画化されます」
じいや「デビュー直結のコンテスト 原作者志望のオカリ氏にとっても 垂涎の副賞だったことでしょう」
じいや「ではなぜ参加しなかったのか 「繁忙期と重なった」 「長編コン連載で手一杯だった」、など」
じいや「個人的な理由もありますが・・ 最大の要因は「お題が難しかった」 からではないかと振り返ります」
じいや「そのお題とは「憎しみと愛」 想定読者は「28〜40歳の女性」」
じいや「当時のオカリ氏の呟きです 「難しい」より「分からない」が 適当かもしれません」
じいや「ですが、一応考えてはいたらしく・・ ボツにしたプロットがありました」
じいや「こちらです」
じいや「目を通して「おや?」と気付いた方も いらしゃるかもしれません」
じいや「ええ、この時のアイデアは後に 松竹と共催されたコンテストの応募作 「原液のサカズキ」の原型となっています」
じいや「あとは、既に応募された作品を読み 「やはり自分には難しいぞ」・・と」
じいや「募集形態も読切ではなく連載方式、 作品作りに時間がかかると踏んだそうで」
じいや「なので参加を諦め、 「その分のリソースを全て  トリコンに注ぎ込もう」と、 方針転換致しました」
じいや「Twitter(X)では 「DNPコンやったらぁ!」とか 呟いていたそうですが・・・」

〇田舎の学校
じいや「続いては内容について」
じいや「なぜペットボトルロケットだったのか キッカケは後輩との世間話でした」
じいや「その後輩は中学生の頃 科学部に所属していたらしく」
じいや「その話の中で初めて 「ペットボトルロケットの全国大会」 の存在を知ったのですね」
じいや「主催はなんと「JAXA」です しかも世界大会まであるらしく」
じいや「「ペットボトルロケットをどこまで遠く  正確に飛ばせるかに捧げる青春」 ・・オカリ氏に深く刺さったのでしょう」
じいや「「こんな世界があるのか!」という驚きは 「伝えたい、書きたい!」に代わりました」
じいや「アイデアは出ました しかし問題は美少女です」
じいや「もちろん美少女が直接ロケットを 飛ばしても良いのですが・・」
じいや「美少女キャラは高校生ほどの 年齢層が多く、腑に落ちません」
じいや「ならばいっそ、違う存在なら?」
じいや「話のベースはペットボトルロケットの 大会・・競技会です」
じいや「天候や風、当日の気圧など 人事尽くせど運が絡む競技」
じいや「神頼みをするならば、いっそ神様を 直接登場させようと転換します」
じいや「さらに幸運なことに、ある絵師の方が Twitter(X)に「和服の美少女」を投稿」
じいや「オコジョをモチーフにした和装獣耳少女 表情のリクエストを募集していたため・・」
じいや「オカリ氏は「稲荷さまVer.」の 色違いをリクエストしたそうです」
じいや「表情ではなく衣装のリクエスト、 募集にそぐわない内容でしたが」
じいや「なんとご快諾、それどころか 細かい装飾や表情の希望まで 聞いて頂けることに」
じいや「その稲荷さまを見ながらオカリ氏、 着々とシナリオの準備を始めます」
じいや「募集開始は11月からですが、 その1ヶ月前の10月1日時点で このようなメモ書きがありました」
じいや「当初の構想では 「神が神通力で競技の手助けする  フリをして、自信を付けさせる」 ・・という内容だったようですね」
じいや「しかし、頭に過ぎるのが 長編コンでの評価コメントです」
じいや「前々回参加した長編コンでは 「後半にかけて盛り下がる」と オカリ氏は評されておりました」
じいや「ならば 「誰がどう見ても尻上がりな  物語にしてやろう!」と思い立ちます」
じいや「よくある手法は・・解決したと思ったら 更なる問題が現れる、でしょうか」
じいや「神通力でロケット直接操作というのも 面白くありません 稲荷さまのイメージに合いませんし」
じいや「古来より神頼みは気象との関連性が深く、 ならば能力もそちらにして・・」
じいや「天候という「人では不可能な」障害のみ 神が直接解決するという構図に」
じいや「しかもペットボトルロケットで 直接向かう展開ならば 面白くも盛り上がるのではないか」
じいや「イメージとしては読者の方に 「うおおおお!行けぇぇぇえ!!」 ・・と、思って頂けるような」
じいや「そこを突き詰めた結果、 「先端部を御神体に換装」 「ロケット発射で直接向かう!」 という内容になったのですね」
じいや「あとはその一見突拍子もない展開が 発想として理解できるよう伏線を張ります」
じいや「冒頭部「田の神」のくだりや グラウンド移動時の「御神体から顕現」 小僧の「不便だね」発言に対する弁解等」
じいや「稲荷さまが「何やらすんじゃ!」と 怒ったのも御神体換装発射展開に 収束したい意図がございました」
じいや「そして本シナリオではもう一つ 意識した点がございます」
じいや「ずばり、漫画家の水○悟史先生が提唱する 二重終幕(ダブルエンド)です!」

〇地球
  二重終幕(ダブルエンド)とは!
  一度物語を終わらせた後に後日談などを
  入れ、もう一度物語を終わらせる──
  二重のエンディングにより物語の
  体感ボリュームを増す手法であるッ!!!
  参考文献
  水上○志著、「ま○が左道」
  旧題「おれのまんが道」第22回より

〇空港の滑走路(飛行機無し)
じいや「稲荷さまの場合ですと・・」
じいや「台風を吹き飛ばし、大会を成功させ 小僧に“最後の言葉”を贈るまでが 「ひとつ目のエンディング」」
じいや「成長した小僧が本物のロケットを前に 回想し、今度は本物で再演するのが 「ふたつ目のエンディング」ですね」
じいや「これにより読後感も爽やかに、 読み応えある内容になると確信しました」
じいや「最終的にはダメ押しの写真スチルを ラストに加えることで、ある意味 「トリプルエンド」に致しましたが」
じいや「字数制限が上限2000字に 戻った点も大きかったでしょう」
じいや「少ない字数でボリューム感を出すのに 相応しい手法でした」

〇散らかった居間
じいや「10月中旬、概ねシナリオが 完成いたします」
じいや「11月の募集開始までまだ 2週間以上ありました」
じいや「しかしその間、オカリ氏の本業の方が 忙しくなったのであまり制作できず」
じいや「シナリオの推敲と、挿入予定の スチル制作に向けた準備しか できない中・・」
じいや「迎えた11月1日、 不測の事態が勃発します」

〇SNSの画面
じいや「コンテスト開始早々、メーカーを開き 稲荷さまを探します」
じいや「しかし、何度探してもあの 「緋袴姿の稲荷さま」が見つかりません」
じいや「これにはかなり動揺したらしく 当時オカリ氏は・・」
じいや「と、文字通り途方に暮れておりました」
じいや「そこでオカリ氏、11月1日に Twitter(X)のDMで絵師の方に コンタクトを取りまして」
じいや「リクエストに応えて頂いた御礼と、 改めて経緯をお伝えいたしました」
じいや「実際、絵師の方でも確認できず どうやらうまくシステム上に 取り込めなかったようです」
じいや「その絵師の方には重ねて御礼を お伝えしたのち、再度物語を 練り直すこととなりました」
じいや「しかし、そう簡単に稲荷さまの イメージに合致する方はおりません」
じいや「「え、これボツにするの・・?」 とかなり動揺する中で」
じいや「一筋の光明が如く巡り合った 立ち絵キャラのイラストこそ・・」

〇古びた神社
  李央さま作「和風きつね娘」の
  イラストにございました
  ・・・ちなみにこちら
  表情差分が
  コンテスト当時より
  多彩になっております
  「笑う・照れる・泣く・困る・苦しい」
  の5つの新規表情に加え、
  「怒る」は迫力が増すなど
  従来の表情にも変化が
  今もし「天翔ける稲荷さま」を
  リメイクしたら・・
  
  きっとまた違った性格に
  なっていたかもしれませんね

〇散らかった居間
じいや「というのもオカリ氏、「和風きつね娘」を 稲荷さまに配役するにあたって・・」
じいや「シナリオ上のほぼ全てのセリフを 修正しております」
じいや「表情変化やイメージから 「従来通りのセリフでは違和感が生じる」 ・・と判断したのでしょう」
じいや「例えば──・・」

〇木造の一人部屋
小僧「あれ?」
稲荷さま「ぺっと・・な、うん」
小僧「まさか知ら──」
稲荷さま「神に知らぬものはない」
稲荷さま「だが願いとは口に出すもの 申してみよ」
稲荷さま「ただしっ」
稲荷さま「・・専門用語ナシで頼む」
  このシーンですね
  頬を染めながら恥ずかしそうに
  「頼む」とお願いしていますが・・
  10月時点でのプロットでは
  「もちろん専門用語ナシでな!」
  と、あくまで神の立ち位置は崩さない
  命令口調でした
じいや「つまり元々の設定では 「神と人間」の距離感がやや遠く」
じいや「「ニヤリと笑って画策する  イタズラ好きで大胆不敵な神様」 ・・というイメージでしたが」
じいや「稲荷さま改訂の際には 見開く表情と赤面のギャップを いかにして生み出すかに注力し、」
じいや「「赤面したり怒ったり呆れたり、  感情豊かで隙はあるけど、  導く姿勢やっぱり神様」 という稲荷さまのイメージに変更」
じいや「その方向性に沿って口調や状況を 細かくチューニングした形ですね」
じいや「そんな形で修正を繰り返し、 シナリオ推敲後は演出へ入るのですが」
じいや「説明に入る前に、オカリ氏が 「やらかしてしまった」事例を ご紹介します」

〇青(ディープ)
じいや「まずはこちらをご覧ください 「天翔ける稲荷さま」の初期表紙です」
じいや「続いては、現在の表紙です」
じいや「お分かり頂けたでしょうか」
じいや「1枚目の初期表紙ではイラストに 透過処理と鏡像反転を加えています」
じいや「意図として「見守る演出」として透過、 「飛翔方向」に合わせた鏡像反転」
じいや「オカリ氏にとって反転自体が 「顔や視線の方向を左右変更する機能」 ・・程度の認識だったそうで」
じいや「しかし、こうした加工は 描いた方がキャラに込めた 意図や思いを損ねる行為です」
じいや「例えば稲荷さまなら 着物に注目しましょう」
  和装であるため、衿元は相手から見て
  「y」の形になっています
  これを鏡像反転すると・・
  衣服は左前になってしまいますね
じいや「左前の着物は死者に着せる「死装束」 おおいに意味が変わってきます」
  他にはこの様なケースも
  刀は必ず左に差します
  通行時に刀と刀がぶつからない為ですが
  反転すると「侍としてあり得ない」
  右差しに変わってしまいます
  これでは非常に失礼とされる
  「鞘あて」も起きかねません
じいや「着物に限らず、シャツの場合でも 反転すればボタンの位置が男女逆に」
じいや(反転)「また、利き腕や顔の特徴なども 構成要素への解釈も変わる事でしょう」
じいや「そうですね、無理矢理ライターの感覚に 当て嵌めるのであれば・・」
じいや「一人称を「俺」から「僕」に 勝手に変えられる」

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コメント

  • 物語構成表や細部まで気を配った演出等、大変参考になりました。稲荷様を初めて見た時に驚いた完成度の高さはこんな風に築かれていたんですね。

  • フルコースとても素晴らしいお味でした!!✨ありがとうございました✨☺️このフルコースで学んだことを作品作りで活かしたいですね✨😆

    レストランの名前もオシャレですね✨

    こだわりを持って一つ一つ仕上げているのがわかり、感動しました✨😆
    このような作品を作っていただき、ありがとうございました✨😊

  • 制作秘話面白かったです。特にオカリさんの創作に対する姿勢が知れたのが良かったですね。インテリジェンスに裏打ちされたアイデアが素晴らしいだけでなく、気持ちを起点にするにも、体験を基にするにも、作品つくりに丁寧に真摯に取り組んでいらっしゃることが伺え、華々しい受賞歴にも納得です😊
    これは見習わねば!

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