コーティ 5番目の次元④(脚本)
〇オーディション会場(物無し)
そして、愛理栖は僕が話を最後まで言い終わる前に強い口調でそう割り込んできた。
愛理栖「ひかるさんは私の大切な幼馴染ですし、私ずっとずっと前からひかるさんと・・・・・・、」
「あ、痛い、痛い!!」
ひかる「おい、急に頭を庇って大丈夫か、 愛理栖ちゃん!?」
愛理栖「だ、大丈夫です。 もう治りましたから」
ひかる「いや、全然大丈夫じゃないだろ。 待ってて、直ぐに救急車呼ぶから!」
愛理栖「やめてください!!」
ひかる「そっか。 僕にはわからない事情とかかな」
ひかる「どっちにしても僕の車で病院に行こう。 愛理栖ちゃん」
ひかる「君はそこで少し待ってて! 僕はここからすぐ近くの駐車場に車を取りに戻っててくるから」
愛理栖「違います! ひかるさん、あなたは何か勘違いをしています」
愛理栖「お気持ちは本当にありがとうございます。 ですが、これ以上ひかるさんに誤解をさせて迷惑をかけしまっても」
愛理栖「なのでハッキリ言います」
愛理栖「今、私は生理とかじゃありませんよ」
ひかる「ごめん・・・・・・。 女性の口から言わせちゃうなんて、僕は男として最低だね」
愛理栖「そんな落ち込まないでください。 私はひかるさんをデリカシーが無いなんて思っていませんから」
愛理栖「この症状、実は今回だけに限ったことでは無いんです。 今日ひかるさんと久しぶりの再会を果たした私は、」
愛理栖「一旦家に戻ったんです。 そして、ひかるさんとの過去の記憶を思いだそうとしていたちょうどそのタイミングで」
愛理栖「今回と同じように頭が痛くなりました」
愛理栖「ですので、私は本当に大丈夫ですから安心してくださいね」
ひかる「了解。 でも、無理はするなよ」
愛理栖「はい♪」
ひかる「よろしい♪ それで、愛理栖ちゃん? 君の話途中だったよね?」
愛理栖「そうでしたそうでした! 私、ひかるさんが女性に対して紳士的な人だってこと昔から覚えてたんですよ」
ひかる「そうなの?」
ひかる「じゃあさっきは何で?」
愛理栖「今回たまたまご縁があって再会するまでに何年も経っていますからね」
愛理栖「ひかるさんが周りの男達から悪い影響を受けて毒されていないか試したんです♪」
ひかる「ちどイ!」
愛理栖「アハハ♪」
ひかる「ちょ、そんなに笑うなよ!」
愛理栖「アハハ、ハハハ♪」
愛理栖「可笑しすぎて横腹が痛いです。 だって、今のひかるさんの表情ギャグ漫画みたいにわかりやすすぎるんですもん」
愛理栖「してやられたって悔しそうなその表情、 傑作です♪」
ひかる「こいつー!」
愛理栖「ひかるさん、でこピン痛ったーい! 暴力反対!」
ひかる「ごめん、愛理栖の反応が面白過ぎて、 ちょっとからかい過ぎた」
愛理栖「そうですよ。 調子にのり過ぎですよ!」
ひかる「お前が言うな、お前が」
ポン!
『え、何?』
『痛ぁ・・・・・・くない?』
愛理栖は反射的に頭に両手を頭に当てがった。
『愛理栖、さっきはありがとな』
愛理栖「え? なんのことですか? って、えー!? 急にどうしたんですかひかるさん!?」」
僕は何かを思いついた時のようなフットワークで、次の瞬間には驚きに目を丸くした愛理栖の至近距離まで距離を詰めていた。
しかし、僕が至近距離まで近づいた後、何故か愛理栖は目と口を閉じ正面よりやや上を向いていた。
『いいのかい、愛理栖ちゃん?』
『はい。いちいちそんなこと聞かないでくださいよ』
愛理栖の返事を確認した僕は、彼女の頭にそっと片手を載せた。
ビクッ!
『大丈夫か、愛理栖ちゃん?』
『大丈夫です。
ひかるさんの行動が私にとって予想外だったものですから、・・・・・・すみません』
僕は愛理栖の台詞対してあえてリアクションを返さなかった。
それは、なんとなく今の彼女が僕に返事を求めていない気がしたからだ。
僕はまるで愛しい飼い猫を撫でる飼い主のように、
ただただ静かにゆっくりと愛理栖の頭をさすった。
しばらくの間そうしていると、愛理栖は目を瞑ったまま僕に話しかけてきた。
『ひかるさん?
さっき私にありがとうって言ってくれましたよね?
あれはどういう意味からですか?』
『僕がどこの馬の骨ともわからないような男として自分自身を例えようとしたとき、
君はキッパリと強く否定してくれたじゃないか。
あのときは本当に嬉しかったよ。
ありがとね、愛理栖ちゃん』
『あー、あの時ですね。
実はちょうどあの時、私の心の中にある人物の声がして、
私自身に対してではなくひかさんを馬鹿にされたんです。
私が馬鹿にされるならまだ我慢できますが、
ひかるさんを馬鹿にされたのが私許せ無かったんです』
『なるほど、あのときはそういった事情があったんだね。
でもさ、同じ話を繰り返しちゃうようだけど、
愛理栖ちゃんにはまだ時間がたっぷりあるんだからさ、未来の自分の幸せをちゃんと考えた上で後悔が無いように
相手を選んでもらいたいと僕はそう思うよ』
愛理栖「はい?」
ひかる「え?」
ひかる「僕の今の説明、もしかして難しくて意味わからなかった?」
愛理栖「いえいえ違います」
ひかる「違うってどういうこと?」
愛理栖「さっきのは冗談です♪」
ひかる「冗談か〜い!!」
愛理栖「はい。 まさかとは思いますが、 中学生の私が社会人のひかるさんと結婚したいなんて本気で言うと思います?」
ひかる「え? 男女の恋愛には年の差や 出会ってすぐ勢いで親密になっちゃうケースだってあるもんじゃないの?」
愛理栖「フフフ♪」
ひかる「えー!? 何がおかしいんだよ?」
愛理栖「ひかるさんは純粋で可愛いですね。 確かに男女の間の恋には年齢は関係無いとは思いますが、私とひかるさんの場合は」
愛理栖「一緒に同じ時間を過ごした思い出の蓄積が少な過ぎなんです。 とくに私は男性を少しずつ好きになっていくタイプですし」
ひかる「え? じゃあつまり、さっきのは僕の早とちりで、 恋愛に対してがっつき過ぎだと、そういうこと?」
愛理栖「はい♪」
ひかる「グサー!!」
愛理栖「ひかるさん急にお腹を抑えてどうしたんですか!? 大丈夫ですか?」
ひかる「いや、大丈夫だけど。 ショック受けたときって普通こうやってグサー!!ってお腹抑えたりしない?」
愛理栖「どこの普通ですか、それ? しませんよ! 私、ショック受けたときグサー!!、 ってこんな大袈裟に反応する人初めてみましたよ」
ひかる「へー、そうなんだね」
ひかる「じゃあさ聞くけど、僕が愛理栖ちゃんの頭を撫でようと近づいた時に君が目を瞑ってたのはどうして?」
愛理栖「あ、あれは・・・・・・」
ひかる「あれは?」
愛理栖「私てっきりひかるさんにキスされちゃうとばっかり・・・・・・」
ひかる「あの時はそのつもりじゃ無かったんだ、 残念!」
愛理栖「グサー!!」
愛理栖「ひかるさん、あれってこんな感じですか?」
ひかる「こら、真似したなー!?」
愛理栖「はい、師匠の真似しちゃいました♪」
ひかる「まあでも、僕にキスされちゃうって思うってことは、少なくとも僕は愛理栖ちゃんに異性として意識されちゃってるってことだよね?」
愛理栖「もー! ひかるさ〜ん? またすぐそんな風に自分に都合のいいように解釈して私をからかう!」
愛理栖「違〜い〜ま〜す〜!」
愛理栖「もしひかるさんがあの時私の唇を奪おと迫ってきたら、ハンカチを口の中にねじ込んで思いっきり笑ってあげようと思ってましたから」
ひかる「グサー!!」
愛理栖「おー、またお得意のグサー!ですか。 流石師匠! 私にはそこまで上手く演技できません」
愛理栖「ところでひかるさん?」
ひかる「どうしたの?」
愛理栖「私達、いつの間にか話が大分それちゃいましたね」
ひかる「確かにそうだね。 僕達、最後どんな話をしてたっけ?」
愛理栖「え〜と確か、私の裸をみてもひかるさんは欲情しないって言う・・・・・・」
ひかる「そうだったよね」
愛理栖「まあ、でもさっきは私も言い過ぎだったなって、 今になってちょっと反省しています」
ひかる「え、どういうこと?」
愛理栖「私、世の中の多くの男性が私を見る目に対してあんな厳しいこと言いましたけど、」
愛理栖「その相手が私の内面もちゃんと見てくれて女性の生き方を大切に考えてくれる相手なら、少しは大目にみてあげてもいいかなって」
愛理栖「ひかるさんだって、本当は私の裸をみて欲情してしまったんですよね?」
愛理栖「私、大切な人には綺麗事や建前とかで誤魔化して欲しくないから聞いてます。ここは正直な気持ちを言ってもらっても大丈夫ですよ」
ひかる「大丈夫、心配しなくていいんだよ愛理栖」
愛理栖「私、ひかるさんからそんな風に言ってもらえて嬉しいです。 ありがとう・・・・・・ございます♪」
ひかる「僕は君の裸をみても絶対、欲情しないから!」
僕は君の裸をみても絶対、欲情しないから!
愛理栖「はい・・・?」
・・・・・・
愛理栖「はぁー!!?」
愛理栖「パチッ、パチッパチッ!」
ひかる「え?」
ひかる「あの・・・・・・、愛理栖さん?」
ひかる「あなたの髪に溜まった静電気がどこぞの国民的バトル漫画の戦闘民族やビリビリ中学生みたく激しく放電はじめてるみたいですけど」
ひかる「無言で下を向いて大丈・・・・・・」
『・・・・・・最低!!』
ひかる「へ?」
愛理栖「それ、逆に傷付くんですが・・・・・・」
ひかる「え? ごめん・・・・・・」
愛理栖「デリカシーを微塵も感じさせない貴重なご意見、どうもありがとうございました」
愛理栖「空気を読むということを知らない哀れなお兄さん♪」
ひかる「えー? ちょ、誤解だよー! 頼むから先ずは落ち着こう、ね?」
ひかる「先ずは一度深呼吸をしよう。 それから、ちょっと僕の話を・・・・・・」
愛理栖「ひ、ひ、ひかるさんの馬鹿野朗ォォォォォー!!!」
バカチィ~ン!!!
※擬音語です
ひかる「ぐ!?ぐはぁぉぅっっつ!!!」
愛理栖のビンタは僕の右頬にクリーンヒット!
僕の体はまるでコマのように横方向に高速回転しながら勢いよく弾け飛んだ。
本作を読んでいただいている読者が想像するイメージ空間より遥か場外まで僕はぶっ飛ばされた。
その後しばらくすると、 部屋を出ていった愛理栖は恥ずかしそうにぶつぶつ独り言を言いながら戻ってきた。
ひかる「さっきは・・・ごめん」
愛理栖「もぉう、いいですよっ!」
愛理栖「言っときますけど、 私の服はきっと、奴から私への嫌がらせで消されたんですからね。 あなたのお母さんや職場の人達と一緒で」
ひかる「はい・・・・・・、了解!」
愛理栖「本当に反省していますか!?」
ひかる「うんっ、うんっ!!」
僕は威圧的な愛理栖の迫力に押され、
素早く首を縦に振った。
愛理栖「わ、わかればまあ、今回命だけは取らないであげます」
ひかる「アハハ。 ところで話がかなり脱線しちゃったけど、 昨日君が去り際に言ってた最近の日常の異変の原因っていうのは何?」
ひかる「いいや、誰なの?」
『創造者です』
・・・・・・
ひかる「はいっ? 今なんて」
僕は耳を疑った。