コーティ 5番目の次元⑤(脚本)
〇オーディション会場(物無し)
愛理栖「だから創造者、人です!」
まるで目の前のカーテンでも開けるかのように、
愛理栖は無垢むくな瞳でそう告げた。
ひかる「・・・・・・、 なんだって!?」 僕は目を皿のようにして驚いた」
愛理栖は話を続けた。
愛理栖「この宇宙を消そうとする創造者について、 実は私もよくわかっていなんです」
愛理栖「私は幼い頃からいつか5次元の存在に生まれ変わると信じて育ちました。 ですが、不思議とその理由が私にもわからないんです」
愛理栖「私はその"意味"をどうしても知りたいんです。 そして、5次元の存在になる事で、 この大切な日常を守りたいんです」
愛理栖「今はまだこんな漠然とした説明しか出来ないんですが、何となくは理解して頂けましたか?」
ひかる(まぁなんとなく・・・)
愛理栖「急いでいます! だからお願いします!」
愛理栖「いっ、一緒に・・・・・・、私の名前真実の名前、探してもらえませんか?」
ひかる「え〜と・・・・・・。 す、少し考えさせてもらっていい?」
あまりにも唐突な展開に、
僕の頭はすぐには整理出来なかった。
愛理栖「はい、わかりました。 やっぱり、急にこんな事をいうと誰だって混乱しますよね? ごめんなさい・・・・・・」
彼女は僕と同じように宇宙に興味を持っていた。
"自分の出生の秘密を知る事"と"世界を救う事"。
彼女は二つの理由から創造者の存在を追っていると言う。
愛理栖は『宇宙の秘密を探す会』のリーダーで、会員は彼女を除きまだ一人もいなかった。
彼女は僕に言った。
「私たちは、この世界の裏側にある真実を知ることができる唯一の存在なんです。
私たちは、世界の創造者と対話することができる唯一の存在なんです。
私たちは、この世界から脱出することができる唯一の存在なんです。
僕は本音を言うと、彼女の言葉の節々に胡散臭ささを感じていた。
どこかの信仰宗教だろうなと自分の中で結論付けていたのだ。
しかし、彼女の澄んだ目と、目の前の事に真剣に向き合おうとする直向きな姿勢に背中を押されてしまった。
僕はわらにもすがりたい状況だったので、
母を助ける何かヒントでも見つかればと思っていた。
だから、騙されたつもりでお金がかからない内は活動に参加させて貰おうと決めた。
愛理栖「ひかるさん? 参加してもらうからには もう後戻りはできません」
愛理栖「覚悟は大丈夫ですか?」
ひかる「後戻りはしないさ!」
母のことといい、周りの人達の異常な状況の変化といい。
背に腹はかえられなかった。
僕にとって、
それは文字通り最後の選択だった。