第三話 各々の業(脚本)
〇個別オフィス
影山探偵事務所
貴島あおい「その傷、大丈夫ですか?」
影山遊馬「ええ、少し痛みますが」
貴島あおい「私が探偵雇ったのが組織にばれちゃったんですね!」
影山遊馬「え?」
貴島あおい「そうなるといよいよ私の命を狙いに・・・」
影山遊馬「いやこれは違うんです、ちょっとした不注意で。それより調査結果ですが」
貴島あおい「やっぱり秘密結社の人間で間違いなかったでしょう?」
影山遊馬「残念ですが、あの男は証券会社に勤めるただのサラリーマンです」
貴島あおい「嘘!口止めされてるんですね!」
影山遊馬「え、いやそんな事は」
影山遊馬(確かにやつは裏の人間だったが、阿久津さんの話ではあの組織も取引の男も、彼女の事なんかまるで知らないとの事だった)
影山遊馬(偶然と考えるのも安易だが、これ以上かかわるわけにはいかない。さてどうしたものか・・・)
貴島あおい「それに私、最近よく車に轢かれそうになるんです」
影山遊馬(また、そんな話を・・・)
影山遊馬「あおいさん確か、向精神薬を飲まれてましたよね?」
貴島あおい「ええ、お薬がないと生きていけません」
影山遊馬「飲んだ後は出歩かないほうがいいんじゃないですか?」
貴島あおい「お薬は関係ありません!だって私を狙ってくる車って毎回同じなんですから」
影山遊馬「同じ車?どんな車種です?」
貴島あおい「そうだ!あの人だ!あの人だったんですよ!」
影山遊馬「だ、誰です?」
貴島あおい「と、いう事は・・・ぶつぶつ」
影山遊馬「思いのほかひどいな・・・これ以上相手にするのはまずいか」
貴島あおい「そういえば探偵さん、おなか減ってません?私お弁当作ってきたんです」
影山遊馬「え・・・いやそれより車の」
貴島あおい「外食ばかりで食事偏ってるって言ってたでしょ?私こうみえてもヘルシーな料理作るの得意なんですよ」
影山遊馬「・・・美味しそうだね、折角だから頂くよ」
貴島あおい「お野菜も残さず食べてね、美味しく味付けしてあるから、お肉ばっかり食べちゃだめだからね」
影山遊馬「うん・・・もぐもぐ」
影山遊馬「ああ、こりゃ本当に美味いわ」
貴島あおい「良かった、キッチン借りますね、温かいお茶淹れてきます」
影山遊馬「こうやって見ると普通に可愛い子なんだよな・・・スタイルもいいし」
貴島あおい「♪~♪♪~~」
影山遊馬「さっさと依頼終わらせて、頂くとするか」
〇高層マンションの一室
阿久津九楽「・・・最近よく降るな」
阿久津九楽「おう・・・ああ、わかった家にいるよ、雨ひどいから気をつけろよ」
阿久津九楽「気をつけろよか・・・誰が言ってんだ」
阿久津九楽「ん?」
阿久津九楽「なんだ?窓に・・・」
阿久津九楽「うわ!」
阿久津九楽「なんだ今の・・・いや、気のせいか」
阿久津九楽「最近、調子が悪い・・・かなり疲れてるのかもな」
〇走行する車内
影山遊馬「・・・最近よく降るな、梅雨でもないのに」
影山遊馬(しかしどうする?あの女思ったよりやっかいな客かもしれない)
〇個別オフィス
影山遊馬「犯人は元旦那ぁ?」
貴島あおい「はい、私を恨んでいるとしたら彼しかありえません」
影山遊馬「待ってよ、じゃあ直接問いただすか、ひどいようだったら警察にでもさ」
貴島あおい「証拠がないと警察が何もしてくれないのは探偵さんが一番分かっているでしょう?」
影山遊馬「その・・・別れた理由は?」
貴島あおい「DVがひどかったんです、変な性癖もあって、私うんざりして・・・」
貴島あおい「私わかるんです!こんな事するのあいつしか考えられない」
影山遊馬「・・・」
〇山間の集落
〇車内
影山遊馬(元旦那って、まだ18なのにちょっと無理がないか・・・)
影山遊馬(しかも、その家がこんな田舎にあるだって?無茶苦茶だよもう)
影山遊馬(・・・何言ってんだ俺、そんなやつらをずっとカモにしてきたんじゃないか)
影山遊馬(こっちが薪をくべなくても、向こうからどんどん調査依頼してくれるんだ、こんな太客はありがたく思わないとな)
影山遊馬(しかしあの女、どこから金引っ張ってきてんだ?今でも結構な額払っているのに。売りでもやっているのか)
〇山間の集落
「しかし危ないなここ、ガードレール一つないじゃないか」
「ハンドルミスったら真っ逆さまだぞ」
〇車内
影山遊馬「・・・少し眠いな」
影山遊馬「忙しいのはいいが、Aの客を相手にしたら本当疲れやすい」
影山遊馬「う・・・なんだ視界が・・・」
影山遊馬(やばい!眩暈がとまらない!)
遊馬の車が崖の目の前で危うくも停車する
影山遊馬「はぁはぁはぁ・・・」
影山遊馬「しゃれになんないって」
影山遊馬「え?」
影山遊馬「ちょっと!なんだ!?」
リアに突如激突してくる謎の車
影山遊馬「うおおお!何してんだこいつ!」
影山遊馬「やばい!降りないと!」
〇山間の集落
影山遊馬「はぁはぁはぁ・・・」
影山遊馬「なんだあいつ・・・」
影山遊馬(完全に殺そうとしてやがった・・・誰だいったい)
不可視者からの襲撃
日常が確かな音を立ててひび割れ
踏みつぶされた飴細工の様になる事をまだ知らない
深淵は今とても静かで、誰の存在も可視できない
四話へ続く
ああー!緊迫感がすごかったです!
車が後ろから押されているのがよくわかりました
Aの彼女が言ってること、全部本当になってますけど…
疲れてる、ただ影山は疲れてるだけですよね…
まさにミステリーホラー、面白いです