コーティ 5番目の次元②(脚本)
〇寂れた雑居ビル
僕が廃ビルと呼んでいるその年季の入った雑居ビルは、長野市の奥まった路地にひっそりとたたずんでいた。
大通りに出るとあれほど人間でごった返しているのにここだけは人を寄せつけない。
きっと不思議な結界でもあるに違いない、
僕はそう思った。
目の前には、出入口の代わりに、地下へと続く階段があった。
〇廃ビルのフロア
『ここが廃ビルかぁ。
入口は・・・ええっと』
〇雑居ビルの入口
目の前には、出入口の代わりに、地下へと続く階段があった。
〇廃墟の廊下
奥へ進むと、入口はもう目と鼻の先で一目瞭然だった。
そして中がどうなっていたかというと、
〇オーディション会場(物無し)
長机、パイプ椅子、ホワイトボード、
本当に必要最低限なものしかなかった。
まるでそこは、廃部寸前な文化部の部室のようだった。
そして僕が、前方のホワイトボードに目を向けると、そこには・・・
あの妖精のような可憐かれんな少女の姿があった。
彼女はすぐに口を開いた。
『あなたには特別な力があるから呼びました』
『特別な・・・・・・力?』
『ねえ? あなたは最近、身の周りで妙な違和感を感じること無いですか?』
『こ、答えていいんだよね?』
『は・・・・・・い?
もちろんですが、
どうしてそんなこと聞くんですか?』
僕・・・、
試されてるのかな?
それは、我が子の成長の変化を知る母親のように実に的まとを射いた質問だった。
『君、理解わかってるのか・・・・・・?』
『どうやら図星みたいですね。
それで、こんな事が起こる原因わかりますか?』
※お母さんや職場の人が消えたこととか
『・・・・・・・・・』
僕の口からは絞しぼりきった雑巾ぞうきんのように何も出てこなかった。
『あなたの見たまま感じたままを私にただ話しさえしてくれればそれでいいつもりだったのですが・・・・・・
私、そんなに答えにくくて難しい質問しましたかね?
まあ、いいでしょう。
質問の仕方変えますね。
こんなことをなしえる人物、
お兄さんは誰だと思いますか?』
『誰って、アレ以外にそんなのありえないっしょ』
『じゃあ、誰です?』
ドクン、ドクン!
激しい心臓の鼓動という静寂だけが支配する閉鎖空間の中で、今か今かと僕からの返事を待ち望む少女。
僕はなり振り構ってなんていられなかった。
『・・・・・・ミとか?』
目の前に落としたボールペンでも拾うかのような素振りで、僕はあえて淡々と言葉を発した。
『へ・・・?
あの~、ひかるさん?
ごめんなさい。
早口でよく聞きとれませんでした。
もう一度、聞いてもいいですか?』
『キミ・・・』
「はぁ~!? もぉー!! 何で理由が『私』になるんですかー!」
『だって、愛理栖ちゃん?』
『はい?』
『君の珍しい性癖に対して僕からとやかく言うつもりは無いけど、せめて・・・・・・
服・・・・・・着ません?』
「〜♪」
「ひかるのイメージの中の自信満々な愛理栖 『エッヘン♪(*´꒳`*)』」
『あれ、嘘!?』
「何で? ええぇぇぇー!!!」
※イラストはイメージです。