山賊(脚本)
〇原っぱ
シャイローゼ「あと30分くらいで胡桃の屋敷に着くらしいけれど、あっちの方は行ったことがないからわくわくするわ!」
アレグラット「俺は祭というものに実際に行ったことがないのでわからないのですが、どういうものなんですか?」
シャイローゼ「うちの国の祭では主に城下町で屋台っていう小さな出店がたくさん出るの。 確か胡桃の地方もそうだと言っていたわ」
アレグラット「屋台には何が出ているのですか?」
シャイローゼ「主に飲食系ね。串焼きになったお肉や、パンに野菜とかを挟んだものとかがうちの国では主流よ」
アレグラット(肉・・・)
シャイローゼ「胡桃のところではゲームがたくさんあって、”しゃてき”っていう玩具の銃を使った的当てのゲームとかがあるみたい」
アレグラット(銃・・・)
シャイローゼ「まぁでも、まわっていたら色々発見があると思うし、そのときに説明して貰いましょ!」
アレグラット「ですね」
シャイローゼ「あ、あとこの場で言う話ではないかもなのだけれど・・・」
シャイローゼ「3ヶ月前、ハイサール王国が魔族に襲われて壊滅状態に陥ったっていう話、知ってるわよね?」
アレグラット「・・・はい」
アレグラット(ハイサール王国・・・ここよりずっと西にある砂の国だ。鉱物で栄えていたと聞いたな・・・)
シャイローゼ「ついこの間、王家で唯一生き残った王子が見つけられて保護されたらしいの!」
アレグラット(それだと3ヶ月間隠れられていたってことになるぞ。他の家族は死んでいるのに・・・)
シャイローゼ「そのことでお兄様があちらの国に援助をするんですって。だからおよそ1万人ほどの難民もこちらに暫く居るらしいわ」
シャイローゼ「だから、もしそちらの人と会うことがあったら優しくしてあげてね」
アレグラット「言われなくたって、そのつもりですよ」
シャイローゼ「ふふっ、ありがとう」
「お二方、もうじき着きますのでご準備を・・・」
シャイローゼ「わかったわ、ありがとう」
シャイローゼ「楽しみね!」
アレグラット「・・・はい」
〇大きな日本家屋
シャイローゼ「わぁ、凄い・・・見たことのない家の造りだわ・・・」
アレグラット「1度本でみたことがあったのですが、実際にみると凄く圧倒されます」
「遠路はるばるよくおいでくださいました」
蝶ケ夜胡桃「一家一同心よりお待ちしておりました」
シャイローゼ「初めまして。私はノルマータイ家長女、シャイローゼです。こちらこそお招きいただきありがとうございます。そしてこちらは・・・」
アレグラット「お初にお目にかかります。ノルマータイ・シャイローゼ様の近衛騎士、カルウェリー・アレグラットです」
蝶ケ夜胡桃「ん?え、え~と?」
蝶ケ夜胡桃「私が誰かわからない・・・?」
「?」
蝶ケ夜胡桃「私は、あなたたちの友達である、蝶ケ夜胡桃です・・・」
「え~!/!!」
シャイローゼ「嘘・・・いつもと雰囲気が違いすぎてわからなかったわ・・・ごめん!!」
アレグラット「誠に申し訳ありません・・・お恥ずかしい限りです」
蝶ケ夜胡桃「せっかくだと思って、髪型を変えて、からかってみたのよ」
シャイローゼ「そうよね!いつもより物凄く大人っぽくて驚いちゃったわ!」
アレグラット「あの、ちなみにそちらのお召し物は・・・?」
蝶ケ夜胡桃「あ、これね!これは”浴衣”っていうの。ざっくり言うと民族衣裳みたいな物なのかしら」
蝶ケ夜胡桃「2人の分もあるから、良かったら着てみてほしいな!」
シャイローゼ「えぇ、ぜひ!」
アレグラット「お願いします」
蝶ケ夜胡桃「あと、今日は両親が祭の準備で忙しくしててもう屋敷にいないの。だからゆっくりしてね!」
蝶ケ夜胡桃「改めて、今日はよろしくね!・・・と言いたいんだけど」
蝶ケ夜胡桃「さっき、西の方の山に山賊がいたらしくって、正直お祭りどころじゃないのよね・・・」
シャイローゼ「え、大丈夫じゃないわよね?それ・・・」
蝶ケ夜胡桃「うん、詳しくは中で話そう」
〇古風な和室(小物無し)
蝶ケ夜胡桃「──それで、さっきの話しの続きなんだけど」
蝶ケ夜胡桃「その山賊達は大体15人くらいらしいの。そしてさっき小さな女の子が5人程人質としてさらわれたわ」
蝶ケ夜胡桃「交換条件は、10万ザルック。とてもじゃないけど少しキツいわ・・・。それに、こういうのはお金で解決することじゃない」
シャイローゼ「ええそうね。お金を渡したら、また繰り返されるだけだもの」
蝶ケ夜胡桃「人数が多いだけでも厄介なのに、西の山は今の時期も霧がある。それに何より小さな子供が人質に・・・」
蝶ケ夜胡桃「それに、住民達を怖がらせたくないから大事にはしたくないし、早めに対処したいの」
蝶ケ夜胡桃「・・・ということでアレグラット!あなたに蝶ケ夜家から正式に依頼を出したいのだけれど」
蝶ケ夜胡桃「あなたと蝶ケ夜家の護衛5人の少数精鋭で山賊達を捕まえてきてほしいの。お礼は終わった後に話し合いましょ。引き受けてくれる?」
アレグラット「僕は是非とも行かせてほしいです。良いでしょうか、シャイローゼ様」
シャイローゼ「・・・良いわ。許します。でも無茶と殺人はダメよ?」
アレグラット「勿論です」
蝶ケ夜胡桃「じゃあ交渉成立だね。なるべく早く子供達を救出してほしいから今すぐにでも行ってほしいのだけれど、大丈夫?」
アレグラット「はい、問題ありません。行きましょう」
蝶ケ夜胡桃「じゃあ動きやすい服を用意させるわ。突き当たりの部屋で待っていて」
〇山道
15分後
アレグラット「前方から馬の足音のような音が聞こえます」
悠生「わかった、では各自武器の準備を」
トットラ「いやぁ、自分は気づけなかったっすよ・・・やっぱ全騎士の憧れは違うっすねぇ」
アレグラット「・・・昔、山で生存訓練を1週間させられたので、恐らくそのせいかと」
トットラ「え、マジっすか?とんでもないっすねぇ・・・」
悠生「無駄口はそこまでだ。そろそろ追い付くぞ。俺とアレグラットの2人で正面突破する」
悠生「あとの4人は人質の保護を優先しろ」
「了解」
悠生「いくぞ、掛かれ!」
山賊A「・・・ん?後ろから人の声が・・・」
山賊B「もう来やがったか。お前ら!俺たち10人以外の5人であの2人をやれ!」
悠生「はあぁ!」
山賊「ぐあぁぁ!!」
アレグラット(さすが精鋭部隊、強いな)
アレグラット「負けるわけには、いかない」
トットラ「ぜやぁぁあ!」
トットラ「よし、ここの10人はやれたな」
トットラ「皆、大丈夫だよ!お兄さん達が助けに来たからね!」
女の子「ほんとうに?こわかったよお・・・」
女の子「ぐすっ・・・はやくおうちにかえらせて・・・」
トットラ「そうだね、早くおうちに帰ろう。お兄さん達に捕まって!」
山賊の長「くそっ、このままじゃ負ける・・・。!!」
女の子「キャアッ!」
兵士「グアッ!」
山賊の長「オイコラお前ら!このガキの命が惜しけりゃ俺たち全員を逃がせ!そうしたらガキ全員を引き渡してやる!」
兵士「クソッ・・・俺のせいです。すみません・・・」
悠生「謝るのは後だ!だがこれは面倒くさいな・・・」
トットラ「他の4人は僕たちにについて来て!走ろう!」
アレグラット「・・・なぁ、あいつを捕まえられれば先程の兵士も罰も喰らわなくて済むか?」
悠生「あ?あぁ・・・まぁそうだな・・・」
山賊の長「早く決めろ!じゃないとこのガキ殺すぞ!」
アレグラット「なら良い。俺に任せろ」
アレグラット「お前は他の賊が動かないか警戒してくれ」
悠生「・・・了解した」
アレグラット(簡単かつ、強固な拘束魔法で捕らえよう。人質の子は傷つけないように・・・)
アレグラット(拘束魔法 レベルⅢ 「鎖の檻」)
山賊の長「ぐっ・・・?!身体が、動かないっ・・・!」
女の子「きゃっ・・・」
──ポスッ
アレグラット「・・・怪我はないか?」
女の子「う、うん。大丈夫!ありがとうお兄ちゃん!」
悠生(まさか・・・今のは無詠唱魔法!?1国に1人使えるものがいるかいないかのレベルの魔法だぞ!?)
悠生(それをあんな軽々と・・・)
悠生(お前は・・・今まで──)
悠生「──お前は今までどんな生活をしてきたんだ?」
アレグラット「・・・家柄を保つために厳しく育てられただけだ」
アレグラット「それより、早く戻ろう」
悠生「・・・あぁ」
悠生「そいつらを馬車の中に入れておけ。俺が馬を走らせるから、皆は中で賊を見張ってくれ」
兵「了解!」
悠生(答えになってなかったなー)
〇大きな日本家屋
悠生「只今戻りました、胡桃様」
蝶ケ夜胡桃「お疲れさまです。拐われた子供達を助けてくださり、ありがとうございます」
蝶ケ夜胡桃「悠生達は報告書を書き終えたら、今日の祭の警備まで休んでいてください」
悠生「承知しました」
蝶ケ夜胡桃「アレグラットはこっちに」
アレグラット「承知しました」
〇屋敷の大広間
蝶ケ夜胡桃「失礼します」
蝶ケ夜胡桃「”父上”、アレグラット様をお連れいたしました」
アレグラット(父上って・・・まさか蝶ケ夜家の当主か?)
蝶ケ夜家当主「おお、よく来てくれた」
蝶ケ夜家当主「座ってくれ」
「失礼します」
アレグラット(確か正座・・・だよな?)
蝶ケ夜家当主「この度は山賊達の討伐、捕縛をし、村の子供達を助けてくれてありがとう。心から感謝する」
アレグラット「光栄です。しかし、本日私がしたことは当然の事ですので、気になさらないでください」
蝶ケ夜家当主「・・・君みたいな心優しい青年で良かったよ」
蝶ケ夜家当主「して、アレグラットよ。褒美は何がいい?」
蝶ケ夜家当主「なんならうちの娘、胡桃と婚約するか?」
「ええっ?!」
蝶ケ夜胡桃「ち、父上!あまり変なことは言わないでください!」
蝶ケ夜家当主「いやしかし、ここまで良い男は滅多におらんぞ?」
アレグラット「・・・ご当主様、胡桃様も私も、まだ若い身ですし、互いの心というものがあります」
アレグラット「私にはもったいないくらいのお話でしたが、ひとまずはお断りさせていただきます」
蝶ケ夜家当主「・・・そうだな。実はさっきのは冗談で、私もまだ娘を嫁に出したくはなかったんだ」
蝶ケ夜家当主「だが、互いに惹かれあうことがもしあったら、そのときは君を婿として受け入れよう」
アレグラット「ありがとうございます」
アレグラット(言葉選び、多分あってるよな?)
蝶ケ夜家当主「話を戻すが、褒美は何が良い?申してみよ」
アレグラット「ご当主様の御心のままに」
蝶ケ夜家当主「そうか、なら我々の方からそちらに何か送り届けよう。楽しみにしていれくれ」
アレグラット「ありがとうございます」